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American Journal of Ophthalmology

2024
262巻

隅角閉塞と角膜輪部幹細胞との関係

American Journal of Ophthalmology 262巻 (6号) 2024

Correlation between anterior chamber angle status and limbal stem cell deficiency in primary angle-closure glaucoma.
Mao J et al(China)
Amer J Ophthalmol 262(6): 178-185, 2024
・前房角(ACA)の開放か閉塞状態と角膜輪部上皮幹細胞(LEBCs)の濃度との関連について、PACG患者29名54眼で検討し、54眼のCtrlと比較した。
・超音波生体顕微鏡UBMでのACA状態を計測し、共焦点顕微鏡でのLEBCs密度を4象限で評価した。
・UBMは仰臥位で、3、6、9、12時部位で測定し、虹彩周辺部が線維柱帯部に接触していれば隅角閉塞と判定した。
・PACG群の重症度は、ハンフリー視野計のMD値で判定した。初期はMD>―6dB、中期はMDが―6dB~―12dB、末期はMD<―12dB。
①PACG群での上下鼻耳側のLEBCsの平均密度は、Ctrl群より低かった。
②初期、中期、末期PACGでは、LEBCs密度は、隅角閉塞度に応じてCtrl群より少なかった(p<0.05)。
・初期、中期のPACGでは、開放隅角眼よりもLEBCs密度は少なかった(p<0.05)。
③比較分析では、初期のPACGではLEBCs密度は4象限で有意差があったが(p<0.05)、中期PACGでは3象限で有意差(p<0.05)、末期PACGでは2象限のみで有意差があった(p<0.05)。
・このことから、初期のPACGでは隅角閉塞がLEBCs密度に顕著に影響するが、末期では隅角閉塞と病勢の進行が関与していると考えられ、緑内障は角膜輪部の幹細胞密度の減少を伴いながら進行すると思われる。
・隅角閉塞は房水の流れを障害するだけでなく、LEBCs密度を下げ、輪部幹細胞不全(LSCD)を発症する要因になる。(TY)

2024
261巻

中心性網脈絡膜症の強膜厚について

American Journal of Ophthalmology 261巻 (5号) 2024

Scleral thickness in simple versus complex central serous chorioretinopathy.
Imanaga N et al(琉球大)
Amer J Ophthalmol 261(5): 103-111, 2024
・217例217眼の中心性網脈絡膜症CSCを単純CSC167眼と複雑CSC50眼に分けて、強膜厚を測定した。
・強膜厚は前眼部OCTを利用し、4直筋直下の4か所で、強膜岬から6mmの強膜厚を測定した。
・単純CSCと複雑CSCは、自発蛍光とOCTでのRPE変化で分類した。
・複雑CSCは単純CSCよりも、年齢が有意に高く(p=0.011)、男性に多く(p=0.01)、両眼に多く(P<0.001)、視力が悪く(P<0.001)、中心窩脈絡膜厚が厚く(P=0.025)、下液の被包化の頻度が高く(p<0.001)、毛様体脈絡膜の滲出が多かった(p<0.001)。
・CSC眼では正常眼よりも強膜厚が厚いことは以前に報告しているが(Ophthalmol Retina 5:285, 2021)、複雑CSCの強膜厚は上、下、耳、鼻側の全ての位置で単純CSCよりも厚かった(全て p<0.001)。
・複雑CSCは多変量解析では、単純CSCよりも高齢(OR=1.054 95%CI=1.013-1.097 p<0.001)、男性(OR=10.445: 1.151-94.778 p<0.001)、両眼(OR=7.641: 3.316-17.607 p<0.001)、4方向の平均強膜厚(OR=1.022: 1.012-1.032 p<0.001)であった。
・CSCでは強膜が厚く、殊にcomplex CSCでは更に厚い事から、渦静脈が強膜を貫通する部位での絞扼が渦静脈うっ滞の主因と推測される(TY)

2024
259巻

米国での円錐角膜の有病率と経済的負担

American Journal of Ophthalmology 259巻 (3号) 2024

Singh RB, Parmar UPS, Jhanji V. Prevalence and economic burden of keratoconus in the United States. Am J Ophthalmol 2024; 259: 71-78.
・米国でMedicaidとChildren’s Health Insurance Program (CHIP) に登録されている国民で円錐角膜と診断された者を対象とした。
・円錐角膜の有病率について2016年1月から2019年12月までのコホート研究(前向き研究)を行った。対象は約69,502,000名(米国民の20~21%)。Alaska, Utah, Alabama, Vermontの4州を除いて全土の加入者である。
・円錐角膜の有病率は、2016年では0.04% (27,801/69,502,000)、2016年の0.03% (16,266/54,219,600)から増加している。性別では女性の方がtotalで52.47%とやや多く、年代ではどの年でも18-39歳が高い有病率・有病者数を示し、40-64歳がそれに次いでいた(Table 2)。民族ではBlackがもっとも多く、次がHispanicだった。
・上記有病率の結果を得て、円錐角膜による個人の経済的損失について、2011年にRebenitschらが報告した方法(Am J Ophthalmol 2011; 151: 768-773)に則って、クリニックへの通院、コンタクトレンズ、手術、手術合併症などにかかわる生涯の負担額の平均値と中間値で示した。期間中のインフレ補正も行って算出し、米国全国民に換算した結果も示した。(KH)

2024
259巻

米国眼科の指導的立場にいる女性の割合

American Journal of Ophthalmology 259巻 (3号) 2024

Vought R, Vought V, Lin M, et al. Gender representation among ophthalmology fellowship directors in 2022. Am J Ophthalmol 2024; 259: 166-171.
・米国では医学生における女性の割合が2019年には50.5%と初めて過半数に達したが、学問や教育の分野での指導的立場にいる女性は少なく、とくに眼科を含む外科系診療科では2016年の時点で約27%にとどまっている。
・眼科での実情を詳しく知るために、2022年での「Fellowship Director」の女性の割合を調べた。(ちなみに、米国での眼科医における女性の割合については、日本での日眼や日眼医に該当する高い組織率のある団体がないため、眼科医総数自体が不明のようである:平野私見)
・Fellowship Directorはわが国での卒後教育体系ではあまり理解できない地位だが、臨床指導体制では大学の主任教授的な、かなり偉い人。学位とMDがあって、今回の研究ではその肩書は、わが国言う講師(assistant professor)が19%、准教授(associate professor)が30%、教授(professor)が51%である。
・眼科でFellowship Directorの任に就いている女性は全体の29%。Fellowship Directorたちの眼科研修を終えてからの平均期間は男性の24年に対して女性は17年であった。
・Program typeおよび国内の地域についてはとくにFellowship Directorの男女比に差はなかった。
・専門分野で言えば、小児眼科と斜視では女性の比率が高く、緑内障、神経眼科、網膜硝子体手術では小さかった。眼科手術の分野では、眼形成と網膜硝子体手術のFellowship Directorの女性比率が低く、角膜・外眼部・屈折矯正手術の分野では比較的高い比率であった。(KH)

2023
251巻

焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズの比較

American Journal of Ophthalmology 251巻 (67号) 2023

Extended Depth of Focus Versus Trifocal for Intraocular Lens Implantation: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis.
Karam M, Alkhowaiter N, Alkhabbaz A, Aldubaikhi A, Alsaif A, Shareef E, Alazaz R, Alotaibi A, Koaik M, Jabbour S. (Saudi Arabia)
Am J Ophthalmol. 2023 Jul;251:52-70. doi: 10.1016/j.ajo.2023.01.024. Epub 2023 Feb 1. PMID: 36736751.
【目的】
焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較
【対象と方法】
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い、EDOF眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較した研究をレビュー
【結果】
2,200眼が参加した22の研究が同定
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して、
球面(平均差[MD]=-0.23、P = 0.001)と等価球面度(MD = -0.11、P = 0.0001)で有意な改善
円柱度数(MD = -0.03、P = 0.25)や乱視度数には差が認められなかった
三焦点眼内レンズは、
無矯正近方視力(MD = 0.12、P < .00001)および遠方矯正下の近方視力(MD = 0.12、P = .002)に優れていた
術後の矯正遠方視力(MD=-0.01、P=0.01)はEDOF群で有意に改善したが、
術後の非矯正遠方視力(MD=0.00、P=0.84)、非矯正中間視力(MD=0.01、P=0.68)、遠方矯正下の中間視力(MD=-0.01、P=0.39)には差が認められなかった。
デフォーカス曲線は、
近方視力では三焦点眼内レンズが、中間視力ではEDOF眼内レンズが有利であった
眼球収差、CS、ハロー(オッズ比=0.64、P=0.10)、グレア、患者満足度は、
両群に有意差はみられなかった
三焦点眼内レンズは、
QoV質問票スコアの改善(MD = 1.24, P = 0.03)および眼鏡からの自立(オッズ比 = 0.26, P = 0.02)と関連していた
【結論】
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して非矯正近用視力を改善した。
非矯正遠用視力、中間視力、ハロー、グレアは両群間で統計学的な差はなかった。(MK)

2023
256巻

原発閉塞隅角症疑PACSがPACに進行する要因の検討

American Journal of Ophthalmology 256巻 (12号) 2023

Amer J Ophthalmol 256(12):27-34, 2023
Cho A et al(CA USA)
Role of static and dynamic ocular biometrics measured in the dark and light as risk factors for angle closure progression.
・原発閉塞隅角症疑PACSが原発閉塞隅角症PACに進行する要因について、静的ならびに動的な眼の生体パラメータを、未治療眼において検討した。
・動的な計測にはAC-OCTを用いて明所と暗所での差を求めた。
・対象は861例861眼で、そのうち36例がPACSからPACへの進行例である。
・明所と暗所のTISA500値(mm2)が進行と相関があったが(p<0.001)、その差には相関がなかった(p≧0.08)。
・年齢(Hazard ratio=1.09/年)、IOPが高い(HR=1.13/mmHg)、明所でのTrabecular iris space aera:TISA500(HR=1.28/0.01mm2)が有意に進行のリスクであった(p≦0.04)。
・進行リスクはTISA500の下四分位は、明所ではHR=4.56(p<0.001)で、暗所のHR=2.89(p=0.003)よりも強く相関していた。(TY)

2023
256巻

隅角切開手術の単独手術と白内障同時併用時での効果

American Journal of Ophthalmology 256巻 (12号) 2023

Amer J Ophthalmol 256(12):118-125, 2023
Zhang Yu et al(China)
Influence of goniotomy size on treatment safety and efficacy for primary open-angle glaucoma: a multicenter study.
・POAGに対して、PEA+IOL手術(PEI)と同時あるいは単独で行った隅角切開(120,240,360度切開)の効果と安全性について、多施設で検討した。
・手術成功とは術後眼圧が追加手術なしで、6-18mmHgで、IOPが20%以上低下したものとした。
・追加点眼薬が必要な場合は条件付き成功、不要な場合は完全成功とした。
・231例を平均14.4±8.6か月(6.0-48.0)経過観察した。
・眼圧下降、術後点眼薬数、生命表分析では、3群間に有意差は見られなかったが、前房出血は360度切開が最も多かった。
・12か月後の完全と条件付き成功率は、単独手術では、120,240,360度切開で、35.1%,46.1%,45.0%(完全)、66.4%,75.1%,75.1%(条件付き)。
・PEI併用手術では、52.9%,61.6%,51.4%(完全)、67.0%,82.7%,79.5%(条件付き)であった。
・POAGにおいて、120,240,360度切開は、PEIを同時に行っても、行わなくても、眼圧下降効果はほぼ同等であり、360度切開は前房出血をきたしやすく、120度切開で十分であると考えた。(TY)

2023
255巻

網膜馬蹄形裂孔の検出における超広角走査型レーザー検眼鏡と強膜圧迫を併用した眼底検査の感度

American Journal of Ophthalmology 255巻 (11号) 2023

The Sensitivity of Ultra-Widefield Fundus Photography Versus Scleral Depressed Examination for Detection of Retinal Horseshoe Tears
ANDREW C. LIN,et al. (California, USA)
Am J Ophthalmol 2023(11);255: 155– 160.
・目的:超広角走査型レーザー検眼鏡(UWF)は、強膜圧迫を併用した双眼倒像検眼鏡下眼底検査(SDE)と併用して網膜周辺疾患の評価に使用されている。
・眼科の遠隔診療ではこの検査への依存度が高まっているため、UWF単独で実施した場合の網膜周辺部の疾患の検出に対する有効性を評価することは重要である。
・今回、網膜馬蹄形裂孔(HST)の検出におけるUWF画像の感度を評価する。
・対象と方法:2020年1月1日から2022年12月31日までにSDEでHSTと診断され、レーザー治療を受けた患者を対象とした。
・123人(男性64人(52.0%)、女性59人(47.9%)、平均年齢57.3±13.1歳)、右眼69例(51.1%)、左眼66例(48.9%)。HSTに対するUWF画像診断を網膜専門医によるSDEと比較した。
・結果:SDEで確認されたHSTのうちUWF確認されたのは左右合わせて69 例(51.1%) だった。
・上方、下方、鼻側、耳惻でそれぞれ7/41例(17.1%)、8/25例(32.0%)、7/14例(50.0%)、47/55例(85.5%)だった。
・結論:HSTの半数近くがUWF画像では見逃された。特に上方での感度が低いことを示している。
・主な原因として、熟練した撮影者の確保、アーチファクト(睫毛、眼瞼縁、フェイスマスク、まぶしさ)、真の色調ではないことが考えられる。
・ HSTの治療の緊急性とRDによる重大な視覚障害の可能性を考慮すると、PVDまたはHSTを示す症状の評価において眼底検査の代替として UWF 画像に依存すべきではない。(CH)

2023
254巻

アクリルIOLに対するBBGの染色性

American Journal of Ophthalmology 254巻 (10号) 2023

Amer J Ophthalmol 254(10):104-113, 2023
Itoh K(室蘭)
Stainability of acrylic intraocular lens with Brilliant blue G: An in vitro study.
・アクリルIOLのbrilliant blue G(BBG)への染まりやすさについてin vitroで調査した。
・親水性アクリルIOLとしてLentis Comfort(LS313)を、疎水性アクリルIOLとしてX70、W60R、CP2.2R、YP2.2R、XC1、XY1を用いた。
・BBG濃度は、0.025, 0.25, 2.5, 25 mg/mlを使用 (当院では0.5mg/ml濃度のBBGを使用)
・すべてのIOLは時間と濃度に比例して内部までBBGに染色され、ほとんど脱色されなかった。
・親水性アクリルIOLで顕著であった。(TY)

2023
254巻

正常眼圧緑内障の進行に対する早朝血圧の影響

American Journal of Ophthalmology 254巻 (10号) 2023

Amer J Ophthalmol 254(10):161-176, 2023
Baek MS et al(Korea)
Morning blood pressure surge and glaucomatous visual field progression in normal-tension glaucoma petients with systemic hypertenision.
・高血圧の内服薬を使用中で、正常眼圧緑内障患者(NTG)と新規に診断された127名127眼において、ベースライン時に早朝血圧急上昇(MBPS)がある患者の視野変化について、最低2年間経過をみた。
・対象者全員はベースライン時に24時間血圧モニター(ABPM)検査を受け、経過中に最低5回の視野検査を受けた。
・視野進行はEarly Manifest Glaucoma Trial criteriaで判断した。
・平均5.2年の経過観察で38眼(29.9%)で視野進行があった。
・多変量Cox回帰分析では、ベースライン時のMBPSが大きいほど(HR=1.033 p=0.024)、夜間の平均動脈圧(MAP)の最低値が低いほど(HP=0.965 p=0.031)、有意で独立した視野進行の予測因子であった。
・生命表分析では、視野進行の予測見込みは、ベースライン時のMBPSがより高いことであった(p=0.021)。(TY)

2023
253巻

老眼におけるピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液1日2回投与の安全性と有効性

American Journal of Ophthalmology 253巻 (9号) 2023

Safety and Efficacy of Twice-Daily Pilocarpine HCl in Presbyopia
SHANE KANNARR, et al. (Kansas, USA)
Am J Ophthalmol 2023(9);253: 189–200.
・目的:老眼患者を対象に、ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液を1日2回(6時間間隔)、14日間両眼投与したときの安全性、有効性、薬物動態を対象と比較して評価する。
・対象と方法:日常生活に影響を及ぼす近見視力低下の訴えを有し、薄暗くても明るくても両眼近見視力が20/40~20/100である健康状態の良好な成人(40~55歳)を対象とした。ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液を1日2回投与群と非投与群に無作為に割り付けた(1:1)。主要エンドポイントは14日目2回目点眼の3時間後において、遠見視力をほぼ低下なしに、両眼近見視力が3 line以上改善とした。第2エンドポイントは遠見視力をほぼ低下なしに、両眼近見視力が2 line以上改善とした。
・ピロカルピンの血中レベルは、参加者の約 10% で評価された。
・結果:主要エンドポイントと第2エンドポイントを達成した参加者の割合は、対象よりも ピロカルピン投与群の方が統計的に有意に高く、群間差はそれぞれ 27.3% (P < .01) と 26.4% (P < .01)だった。
・最も一般的な副作用は頭痛で、投与群10 人 (8.8%) と 非投与群4 人(3.4%) で認めたれた。網膜剥離、硝子体剥離、網膜裂孔、硝子体黄斑牽引の報告はなかった。
・薬物動態は14日目の1日2回目の投与後、蓄積指数はC maxあたり1.11、AUC 0-tauあたり1.03であり、投与期間中の全身への影響は最小限であった。
・結論:ピロカルピンは2つのメカニズムで近見視力を増強する。(1)虹彩括約筋の収縮によるピンホール効果(2)毛様体筋の収縮に関与し、水晶体の中心がsteepになり、近方物体への焦点を改善する。
・ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液1日2回投与は、遠見視力を損なうことなく、近見視力の有意な改善を示した。 投与期間中、ピロカルピンの全身蓄積はほとんど認められなかった。(CH)

2023
249巻

視神経乳頭陥凹と脳容積との関連

American Journal of Ophthalmology 249巻 (5号) 2023

An association between large optic cupping and total and regional brain volume: The Women’s Health Initiative.
Wang C et al(IL USA)
Amer J Ophthalmol 249(5): 21-28, 2023
・視神経乳頭陥凹と脳容積との関連を検討した。
・Women’s Health Initiative (WHI) Sight Examination研究で、cup-to-disc ratio(CDR)測定を行ない、WIH Memory研究でMRI検査で脳容積を測定した65~79歳の緑内障を持たない471名の女性(69.2±3.6歳、92.8%が白人)を対象とした。
・CDR値は両眼の立体写真をとり、縦のCDR値を求めた。
・どちらかの眼で、CDR値が0.6以上のものを大きなCDRと規定して解析した。
・471名の女性のうち、34名(7.2%)が大きなCDRであった。
・MRIでの側脳室の大きさは、大きなCDRの人はそれ以下のCDRの人と比較して、3.01cc大きかった(95%CI=0.02~5.99 p=0.048)。
・また、大きなCDRの人は、前頭葉の大きさが4.78cc小さく(95%CI=-8.71~0.84 p=0.02)、後頭葉の大きさが1.86cc小さかった(95%CI=-3.39~-0.3 p=0.02)。
・大きなCDRの人は視神経や脳の加齢を示している可能性がある。(TY)

2023
248巻

動脈炎性AIONで見られる特徴的な黄斑部OCT所見

American Journal of Ophthalmology 248巻 (4号) 2023

Paracentral Acute Middle Maculopathy as a Specific Sign of Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (France)
Kevin M. et al, Am J Ophthalmol 248(4),1-7: 2023
・動脈炎性AION(A-AION)と非動脈炎性AION(NA-AION)の鑑別においてParacentral acute middle maculopathy(PAMM)の診断的有用性を調べた。
・PAMMは巨細胞性動脈炎(GCA)でしばしば見られることが報告されており、A-AION50名のうち、7名は同側に、1名は対側にPAMMを認めたとの報告がある。
・2人に1人がcentral retinal artery(CRA)とposterior ciliary artery(PCA)が共通の幹を持ち、その部分が病変となるとA-AIONとPAMM両方の原因となる。
・診断名を知らない3人のドタクターが、45名のAION(A-AION 17, NA-AION 28)のOCTを調べ、PAMMの感度、特異度、陽性および陰性的中率を調べることを目的とした。
・結果:PAMMはA-AIONのみで認めた(N=4) 
・特異度(GCA陰性時にPAMM陰性)100%、陽性的中率(PAMM陽性時にGCA陽性) 100% であったが、感度(GCA陽性時にPAMM陽性)19.1%、陰性的中率(PAMM陰性時にGCA陰性) 63.0%であった。
・PAMMはA-AIONに特異的な所見であった。
・PAMMは網膜毛細血管叢の中層〜深層にかけての血流低下による網膜中層の虚血所見である
・結論:PAMMはA-AIONで特異的な所見であり、どのようなAIONでも黄斑部のOCTを撮影しPAMMの有無を確認すべき(MM)

2023
247巻

HAL眼鏡は近視の進行を抑えるか?

American Journal of Ophthalmology 247巻 (3号) 2023

Spectacle lenses with highly aspherical lenslets for slowing myopia: a randomized, double-blind, cross-over clinical trial.
Sankaridurg P et al(Australia)
Amer J Ophthalmol 247(3): 18-24, 2023
・高度に非球面化した小型レンズ眼鏡(HAL)と通常の単一視眼鏡(SV)とで、近視の進行度を調査した。
・対象は119名の7ー13歳の球面等価度数-0.75~-4.75Dのベトナムの小児である。
・HALかSVをランダムに割り当て、6か月後(Stage1)にレンズを交換し、6か月後(Stage2)に今度は両群にHALを割り当て、それぞれ、Group1(HAL-SV-HAL:HSH)、Group2(SV-HAL-HAL:SHH)として調査した。
・HSH群:SHH群は全て初期値との比較であるが、Stage1では度数変化は-0.21:-0.27D p=0.317、眼軸は0.07:0.14mm p=0.004であり、Stage2では度数変化は-0.32:-0.05D p<0.001、眼軸は0.16:-0.04mm p<0.001、Stage3では度数変化は-0.18:-0.27D p=0.203、眼軸は0.07:0.08mm p=0.65であった。
・このことからHALは近視の進行度をゆっくりにすると考えらえた。(TY)

2023
246巻

Saggig Eye症候群の顔貌の特徴

American Journal of Ophthalmology 246巻 (2号) 2023

Analysis of facial features of patients with sagging eye syndrome and intermittent exotropia compared to controls.
Kunimi K et al(静岡)
Amer J Ophthalmol 246(2): 51-57, 2023
・Sagging Eye症候群(SES)と他の疾患との顔貌を比較した。
・60歳以上の23名のSES、28名の間欠性外斜視(IXT)と35名の正常者の顔貌を3名の眼科医が評価した。
・平均年齢は72.7±7.4才である。
・評価内容は上眼瞼の沈み具合、眼瞼下垂、下眼瞼の弛みについてスコアをつけた。
・緑内障、視力が悪い人、6△以上の上下斜視、正位状態を保てないIXT、眼筋麻痺の既往者、眼手術既往者やプロスタグランディン使用者などは除外した。
・上眼瞼の沈み具合はSESではCtrl群やIXT群より有意に高かったが(p<0.001)、下眼瞼の弛みはIXT群でCtrl群より有意に高かった(p<0.05)。
・加齢性の眼窩結合織の退化はSESでは上眼瞼で、IXTでは下眼瞼で強いことがわかった(TY)

2023
246巻

眼内レンズ眼での角膜内皮移植術後の眼内レンズ石灰化

American Journal of Ophthalmology 246巻 (2号) 2023

Intraocular Lens Calcification After Pseudophakic Endothelial Keratoplasty
Benjamin Memmi, et al. (France)
Am J Ophthalmol 2023(2);246: 86– 95.
・目的:最近報告されている角膜内皮移植(EK)の合併症は眼内レンズ(IOL)の石灰化である。その発生率や危険因子を調査する。
・対象と方法:1992 年 12 月から 2022 年 6 月の間に施行された 2,700 例の連続した角膜移植術症例を対象とした。
・全てのEK症例では、術後の瞳孔ブロックを回避するために、6 時に虹彩切開術を施行し、前房内に100%空気または空気 80% + SF6ガス 20% を注入した。
・手術後 24 時間は厳密な仰臥位を維持するように指示した。
・結果:2700 例の角膜移植手術のうち、全層角膜移植術(PK)1772例、 EK588例、表層移植術(LKP)340例だった。
・IOL 石灰化は14 例で認められた。13 例はEK後、1 例PK後に発生した。
・EK後の IOL 石灰化の発生率は、術後12か月で 0.4%±0.3%、36か月で 3.1%±0.9%、60か月で 4.5%±1.3% だった。
・IOL 石灰化の発生は、IOLの材質と有意に関連していた。
・13 例のうち 11例 (84.6%) が親水性アクリル IOL 、 1例 ( 0.3%) 疎水性アクリル IOL、1 例 (0.6%) の材質不明の IOLだった。
・DSAEK 眼と比較して DMEK眼で石灰化率が有意に高かった (P < .001)。
・ DMEK後12か月で 0.0±0.0%、36か月で 15.6±5.9% 、 DSAEK後12か月で 0.6%±0.4%、36か月で 0.9%±0.5%。
・また、前房タンポナーデで 80% 空気 + 20% SF6ガスを注入した症例の方が、100% 空気の症例と比較して有意に高かった (P < .001)。
・前房内空気、20% SF6ガス再注入症例では有意差を認めなかった。
・結論:前房内の空気またはSF6ガスは、IOL の表面を変化させるか、IOL 表面の近くでミネラルの過飽和を引き起こすことにより、石灰化を促進する可能性があると仮定されている。
・また空気注入や再注入は血液 – 房水関門の破壊する可能性も考えられる。
・DMEK後の IOL 石灰化が多いことが判明したが、これはDMEK眼の前房内に SF6ガス注入をより頻繁に使用することに関連していると思われる。
・角膜内皮障害のある患者に親水性アクリル IOL を使用しないように注意する。
・患者がすでに親水性の IOLを使用している場合は、SF6ガスを避け、100% 空気を使用する必要がある。(CH)

2023
245巻

黄斑円孔術後視機能の予測

American Journal of Ophthalmology 245巻 (1号) 2023

Full-thickness macular hole: Are supra-RPE granular deposits remnants of photoreceptors outer segments? Clinical implications.
Govetto A et al(Italy)
Amer J Ophthalmol 245(1): 86-101, 2023
・連続する143例149眼の黄斑全層円孔の最低12か月後の術後視力について、形態から検討した。
・RPE上の顆粒状の沈着物は149眼中121眼(81.2%)で見られた。
・円孔縁がスムーズなものは58眼(38.9%)で、凸凹なものは91眼(61.1%)であった。
・また、手術前の経過観察中にスムーズな辺縁から凸凹の辺縁に変化したものは8%にみられた。
・単相関分析では、RPE上の顆粒状沈着物の存在が術後視力の不良に関連していた(p<0.001)。
・単相関と多変量解析で、凸凹の辺縁が術後視力不良に有意に関連していた(p<0.001)。
・また、辺縁の凸凹の症例では術後の形態の回復が有意に不良であった(p<0.001)。
・RPE上の顆粒状沈着物や辺縁の凸凹は黄斑円孔での視細胞の破壊の指標であり、辺縁の凸凹は深層の視細胞の不可逆的な障害を意味しているだろう(TY)

2023
245巻

白内障手術後の眼圧変化

American Journal of Ophthalmology 245巻 (1号) 2023

Intraocular Pressure changes Following Stand-Alone Phacoemulsification: An IRIS Registry Analysis
Adam L. Rothman, et al. Am J Ophthalmol 245(1): 25-36, 2023 (USA)
・2013年1月から2019年9月までの期間でIRIS(Intelligent Research in Sight)Registryから1,334,868名の患者(緑内障患者336,060名、非緑内障患者 99,808名)を抽出
・片眼白内障単独手術術後90日まで左右の眼圧を比較
・結果:術後最初は眼圧スパイクのため手術眼が高いが、術後13日目からは手術眼の方が術後90日まで有意にコントロールよりも眼圧が低くなった。
・全体でも、緑内障群、非緑内障群でも術後90日の時点では術前よりも眼圧が低かった。(MM)

2022
235巻

電子タバコと視力障害

American Journal of Ophthalmology 235巻 (51号) 2022

Association Between E-Cigarette Use and Visual Impairment in the United States,
Abhinav Golla, Angela Chen, Victoria L. Tseng, Samuel Y. Lee, Deyu Pan, Fei Yu, Anne L. Coleman(US-CA)
Am J Ophthalmol 2022; 235:229-240
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.09.014.

【目的】
米国の成人集団において、電子タバコの使用と視覚障害との間に関連があるかどうかを明らかにする
【対象と方法】
・米国疾病対策予防センターの行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)
・2016-2018年次の電話調査に回答した、米国50州および3準州の18歳以上の成人1,173,646人
・下記の質問によって電子タバコの使用(現在、以前、または一度もない)を調査
“これまでの人生で、1回でも電子タバコを使用したことがありますか?”
“現在、電子タバコをどう使用していますか?“ ⇒ ”毎日・数日に1回・全く使用しない”
・主要アウトカムは視覚障害
“あなたは目が見えないか、メガネをかけていても目が見えにくいか?” という質問に対する
 ”はい “または “いいえ ” で定義
【結果】
・電子タバコを使用したことがない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.34(95%CI 1.20-1.48)
以前の電子タバコ使用者:1.14(95%CI 1.06-1.22)
・紙タバコの使用経験がない662,033人のサブグループでは、電子タバコの使用経験がない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.96(95%CI 1.48-2.61)、
以前の電子タバコ使用者:1.02(95%CI 0.89-1.18)
【結論】
BRFSS 2016-2018集団において、電子タバコの使用経験がない場合と比較した現在の電子タバコ使用者は、紙タバコの喫煙状況とは無関係に、視覚障害の高いオッズと関連していた。(MK)

2022
234巻

ブルーライトカットIOLとAMD発症率

American Journal of Ophthalmology 234巻 (50号) 2022

Effect of Blue Light-Filtering Intraocular Lenses on Age-Related Macular Degeneration:
A Nationwide Cohort Study With 10-Year Follow-up
Jiahn-Shing Lee, Pei-Ru Li, Chiun-Ho Hou, Ken-Kuo Lin, Chang-Fu Kuo, Lai-Chu See(Taiwan)
Am J Ophthalmol 2022;234: 138-146
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.08.002.

【目的】
白内障手術後の加齢黄斑変性症(AMD)の発症率を明らかにし、ブルーライトフィルター付き眼内レンズ(BF-IOL)と非BF-IOLを使用したAMD発症率を比較
【対象と方法】
・台湾国民健康保険研究データベースを用いて実施した、全国規模のコホート研究
・2008年~2013年に両眼の白内障手術を受けた患者186,591人
・最初の白内障手術日から、AMD発症・死亡・追跡不能・2017/12/31に達する、のいずれか先に発生するまで追跡調査
・BF-IOL群と非BF-IOL群間のベースラインのバランスをとるために、傾向スコア・マッチング(propensity score matching、PSM)を使用
【結果】
・BF-IOLは21,126人(11.3%)、非BF-IOLは165,465人(88.7%)の患者に移植
・BF-IOL群の患者は、非BF-IOL群と比較して、
若年層が多く、男性が少なく、白内障手術年数が異なり、
高収入、非肉体労働者が多く、都市部や郊外の患者が多く、慢性疾患が少ない傾向がみられた
・白内障手術後の平均追跡期間が6.1年(範囲:1~10年)で、
非滲出型AMDと滲出型AMDをそれぞれ12,533人と1655人で発症
・非滲出型AMDと滲出型AMDの発症率(1000人年当たり)は、
BF-IOL群でそれぞれ9.95と1.22
非BF-IOL群で11.13と1.44
・PSM後もAMDの発生率はBF-IOL群と非BF-IOL群の間で統計的差異は観察されず
非滲出型AMD(ハザード比、0.95;95%CI、0.88-1.03)
滲出型AMD(ハザード比、0.96;95%CI、0.77-1.18)
【結論】
台湾では、白内障手術後のAMDの発生率は1000人年あたり11.59人であった。BF-IOLを10年まで使用しても、AMDの発生率において非BF-IOLに対する明らかな利点はなかった。(MK)

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