眼科JOURNALトップ > American Journal of Ophthalmology > 水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮損傷の予防における水素の影響:前向き無作為化臨床試験

American Journal of Ophthalmology

2019
207巻

水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮損傷の予防における水素の影響:前向き無作為化臨床試験

American Journal of Ophthalmology 207巻(11号)2019

Effects of Hydrogen in Prevention of Corneal Endothelial Damage During Phacoemulsification: A Prospective Randomized Clinical Trial
Tsutomu Igarashi, et al. (日本医科大学)
Am J Ophthalmol 207(11):10-17, 2019.
・水素(H2)は、フリーラジカル、特にヒドロキシルラジカル(・OH)を除去することが報告されている。水溶液中での超音波振動は、・OHを生成する。この研究では、灌流液にH2を溶解し、水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮細胞に対する影響を調べた。
・対象と方法:両眼に同レベルの白内障(グレード3以上)がある32人(年齢:75.4±7.68歳、男性17人、女性15人)。
・水晶体超音波乳化吸引術は、片眼にH2の溶液を使用し、反対眼には従来の溶液を使用して行った。角膜の中心部の内皮細胞密度(ECD)は、術前および術後1日、1週間、3週間に非接触鏡面鏡を使用して測定された。ECDは、特に手術直後に自動測定が不正確になる可能性があるため、撮影された角膜内皮細胞(最低50個の細胞)の中心を手動でクリックする中心法を使用して測定された。
・表1の様に総手術時間、AVE、APT、EPT、使用した灌流液の量は2つのグループ間で有意差はなかった。深刻な術中合併症もなかった。
・手術前の2つのグループのECD(平均値±SD)は、対照グループでは2743±331 cells / mm2、H2グループでは2713±351 cells / mm2(P = 0.31)だった。
・ECDの減少率(平均±標準偏差)は、対照グループでは術後1日目16.0%±15.7%、1週間15.4%±16.1%、3週間18.4%±14.9%だった。 H2グループでは、術後1日目6.5%±8.7(P = .003)、1週目9.3%±11.0%(P = .039)、3週目8.5%±10.5%(P = .004)。すべての時点でH2グループで有意に小さかった。
・結論:灌流液に溶解したH2は、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷を軽減した。これは、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷のかなりの部分が酸化ストレスによって引き起こされること、およびH2が臨床的水晶体超音波乳化吸引術に有用であることを示唆している。(CH)

過去のアーカイブ