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American Journal of Ophthalmology

2020
211巻

80歳以上のドナーからの角膜を用いたデスメ膜内皮角膜移植の結果

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Outcome of Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty Using Corneas from Donors≧80 Years of Age
FRIEDERIKE SCHAUB ,et al. (Germany)
Am J Ophthalmol. 2020(3);211:200-206.
目的: 80歳以上のドナーからの角膜がデスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)に適しているかどうかを調査する。
対象と方法:高齢ドナー(80歳以上)を若いドナー(<80歳)と比較した。 DMEK術後3および6か月、1、2、および3年の最高眼鏡矯正視力(BSCVA)、内皮細胞密度(ECD)、角膜中心厚(CCT)と前房内再空気注入率。
DMEKの適応には、FEDが86.6%、PBKが8.9%、ジストロフィー(先天性遺伝性内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィーを含む)0.9%、および以前に実施されたDMEKまたはDSAEK後の移植片不全1.1%、全層角膜移植術後の移植片不全2.5%。
結果:DMEK 術後1,748 眼の内、284眼(16.2%)は高齢ドナー組織(平均ドナー年齢83.96±3.19歳)を使用、1,464眼(83.7%)は若いドナー組織(平均ドナー年齢65.27±9.57歳)を使用した。ドナー組織術前平均ECDはそれぞれ2,678.27±181.36cells / mm2、2,715.49±223.79cells / mm2だった。
BSCVAの結果は、術後のすべての時点で同等だった。若いドナーのCCTは、術後早期でより厚かったが、中期では両グループで同等だった。 ECD値は、術前および術後2年間で80歳未満のドナーで有意に高かった(P<0.024)。再空気注入率は両グループで同等だった。
結論:80歳以上の高齢のドナーは、若いドナーと比較してDMEK手術後に同等の結果をもたらす。DMEK手術のために80歳以上のドナーからの角膜を使用することは、世界的なドナー不足に有効である。(CH)

2020
209巻

悪性緑内障に有効な治療と回復までの時間

American Journal of Ophthalmology 209巻 (1号) 2020

Atalie C et al (USA)
Am J Ophthalmolo 209(1):141-150, 2020
・2007-2017年にDuke Glaucoma Serviceにて悪性緑内障(MG)と診断された55名64眼をレトロスペクティブに調査し、どのような因子が有効であるかを調査
・過去の手術内容と回数、MGの既往、緑内障病歴の有無、ある場合は緑内障の病型、レンズの状態、術前眼圧、点眼・内服状態、MGに対する治療内容、術後の前眼部所見、視力、眼圧を調査
・Anatomic resolution(AR) : 散瞳薬を用いずに中央、周辺部の前房が深くなった状態
・Complete resolution(CR) : anatomic resolutionに加えて、IOP<22mmHg
・およそ3/4の症例がACGであり、MGを生じた手術は緑内障手術であったが、2例はVitrectomy術後であった(1例はRD,もう1例は角膜移植+Tubeインプラント硝子体挿入)
・60.94%(n=39/64)は手術後30日以内にMGと診断
・1例を除くすべてで最初は保存治療(1例は術中診断のためその場でPPVを実施)
・YAGを含めた保存治療は12.5%(8/64)で有効だったが、87.5%(56/64)は手術治療が必要であった
・98.4%(63/64)で最終的にCRとなったが1例は眼球摘出となった
・Vitを行ってもMGを発症した症例があり、またVitを行っても追加手術が必要となる症例があった
・影響する因子
・3回未満の術前手術、3剤未満の術前点眼、30mmHg以下の術前眼圧の場合、VitrectomyがCRとなりやすかった
・レンズの状態、以前のYAG治療歴は有意差なし
・診断から30日以内のVitではCRとなりやすいようだが有意差は出なかった
・外来でのYAG治療、CAIの内服は有効
・Vitrectomy治療:30日以内の手術;視力改善は有意差ありだが、眼圧、点眼数は有意差なし(改善までの期間は有意差あり:後述)
・PPVでもCore Vitでも視力、眼圧、点眼数に有意差なし
・回復までの期間
・解剖学的構造(12.7±22.9週)、IOP(23.8±66.5週)、最終視力(28.8±45.8週) 有意差あり
・治療方法での差は無し
・術後炎症によるものや、前眼部の構造回復とTMの機能回復に差があるためか。
・クリニックでのHealonによる前房形成、YAGによる前部硝子体膜切除、点眼と散瞳薬に加えてCAIの内服はMGの回復を速めた
・CAI内服は房水産生とともに、硝子体腔の脱水効果によってMGに対して有効であったと考えられる
・前房形成は硝子体のレクトミーWindowへの嵌頓や浅前房によりTM閉塞し機能低下をきたすのを予防するためか?
・解剖学的構造は3剤未満の点眼群、CAIの内服が有意に短期間に改善した
・閉塞隅角緑内障はリスク高い
・レクトミー術後は構造、眼圧、視力ともに回復が遅い
・30日以内のVit:視力、眼圧、構造変化ともに有意に短縮したがCRへの影響は少ない(MM)

2019
208巻

近赤外光での自発蛍光

American Journal of Ophthalmology 208巻 (12号) 2019

Improved diagnosis of retinal laser injuries using near-infrared autofluorescence.
De Silva SR et al(UK)
Amer J Ophthalmol 208(12): 87-93, 2019
・近赤外光を使用したの自発蛍光(NIR-AF)の有効性について12例のレーザー網膜外傷例を対象に検討した。
・SLOでは488 nm励起光と500 nmのバリアフイルター使用。
・Optosでは532 nmの緑色の励起光を使用、眼底カメラ型では580 nmの励起光と600 nmのバリアフィルターを使用しているが、このNIR-AFでは787nmの近赤外光を励起光として使用し、RPEや脈絡膜内のmelaninとmelanolipofuscinから発生した信号を受け取ると考えられる。
・NIR-AFでは中心が高輝度、周辺が低輝度の像が得られた。
・通常の眼底カメラでは色素変化としか映っていない。
・OCTではellipsoid zoneの欠損として描写されている。(TY)

2019
206巻

プロスタグランジン点眼で瞳孔間距離が狭くなる

American Journal of Ophthalmology 206巻 (22号) 2019

Shortening of Interpupillary Distance after Instillation of Topical Prostaglandin Analog Eye Drops
Ichiya Sano, et.al.(自治医大)
Am J Ophthalmol 2019; 206:11-16
・2004-2017、両眼にプロスタグランジン(PGA)点眼を開始した152例をretrospectiveに解析
・コントロール群としてPGA点眼未使用の緑内障患者61例
・PGA点眼は2-24M継続、瞳孔間距離(IPD)は点眼開始0-2M前および開始後3-24Mにオートレフラクトメーターを用いて測定
・IPDは治療後に有意に短縮;PGA群 -0.80±2.1mm(P<0.001)、コントロール群 0.05±0.96mm(P=0.69)

・ビマトプロスト点眼群(-2.20±0.97mm)が他のPGA群(-0.65±2.09mm)よりも有意に短縮量が大きい(P<0.001)
・IPD≧2mm短縮;ビマトプロスト85.7%、トラボプロスト20.0%、ラタノプロスト18.2%、タフルプロスト17.2%
・IPD≧3mm短縮;ビマトプロスト35.7%、トラボプロスト12.0%、ラタノプロスト14.5%、タフルプロスト12.1%
・PGA点眼で24M以内にIPDが有意に減少する。その効果はビマトプロストが他のPGAより大きい。オートレフラクトメーターは非侵襲的で迅速にプロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)を数値化してくれる。(MK)

2019
205巻

角結膜化学熱傷を前眼部OCTAで評価

American Journal of Ophthalmology 205巻 (21号) 2019

Anterior Segment Optical Coherence Tomographic Angiography Assessment of Acute Chemical Injury
Simon S.M. Fung, et al. (UK)
Am J Ophthalmol 2019;205:165-174
・化学熱傷に続く輪部結膜の虚血を通常所見と前眼部OCTAで比較
・急性化学熱傷10例15眼
・前眼部写真で輪部結膜の上皮欠損と虚血を判定
・OCTA(Optovue社のAngio Vueに前眼部用アダプター装着)で撮影した結膜輪部の虚血と比較
・輪部虚血の範囲;臨床所見 2.3±3.6時間、OCTA 5.1±4.2時間(P=0.03)ともに結膜上皮欠損の範囲(7.3±5.1時間)より狭い
・OCTA縦断解析にて血管エリアは0.2±0.1%回復
・受傷3M後の視力は、輪部結膜フルオ染色(r=0.67, P=0.006)およびOCTAによる輪部結膜虚血(r=0.76, P=0.001)と有意に相関
・OCTAは急性化学熱傷に伴う輪部結膜虚血の範囲および改善を他覚的に明らかにすることが出来る。OCTAにり、臨床所見で予想されたより広範囲に輪部虚血があることが明らかになり、それは視力改善と高く相関した。OCTAは眼の化学熱傷のマネージメントに有用である。(MK)

2019
204巻

眼表面症状のある患者のニキビダニの影響

American Journal of Ophthalmology 204巻 (20号) 2019

Demodex mite infestation and its associations with tear film and ocular surface parameters in patients with ocular discomfort
DF Rabensteiner, et al. (Austria)
Am J Ophthalmol 2019;204:7-12
【対象と方法】
・オーストリアのドライアイ眼科クリニックで眼表面の不調を訴えた連続229例
・睫毛を採取(眼瞼あたり4本、計16本)しデモデックスの存在を検索、ドライアイ症状および眼瞼パラメータとの関連を調査
【結果】
・92例(40.2%)の患者にデモデックスが存在、睫毛16本あたり平均3.3匹
・デモデックスに荒らされた患者は、’sleeves’(円柱状のフケ)の増加、Marxラインスコアの増加、マイボーム分泌物の質の低下が、健常者と比べて有意にみられた
・ドライアイのパラメータは有意差なし
【結論】
・デモデックスは眼表面の不快感を自覚する患者に頻度が高い
・本論分の患者あたりのデモデックスの数は、アジア発の既報のそれより低い
・デモデックスは瞼縁の変化と関連しており、眼瞼炎およびマイボーム腺機能不全の病態に関わっていることが示唆される(MK)

2019
208巻

レーザー網膜障害を疑ったら近赤外線画像を撮る

American Journal of Ophthalmology 208巻 (12号) 2019

Improved Diagnosis of Retinal Laser Injuries Using Near-Infrared Autofluorescence
De Silva, Samantha R. et al.(UK)
Amer J Ophthal 208(12):  87 – 93, 2019
【結論】
近年、携帯型レーザーによる網膜損傷の発生率が増加していることが報告されている
我々は、他の方法では結果が様々になる、網膜レーザー損傷の診断とその全容は、NIR-AFによって示されるのが最善であることを示した
我々は、携帯型レーザーによる二次的な黄斑損傷が疑われる患者の調査にNIR-AFを含めることを提案する。(MK)

2019
207巻

水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮損傷の予防における水素の影響:前向き無作為化臨床試験

American Journal of Ophthalmology 207巻 (11号) 2019

Effects of Hydrogen in Prevention of Corneal Endothelial Damage During Phacoemulsification: A Prospective Randomized Clinical Trial
Tsutomu Igarashi, et al. (日本医科大学)
Am J Ophthalmol 207(11):10-17, 2019.
・水素(H2)は、フリーラジカル、特にヒドロキシルラジカル(・OH)を除去することが報告されている。水溶液中での超音波振動は、・OHを生成する。この研究では、灌流液にH2を溶解し、水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮細胞に対する影響を調べた。
・対象と方法:両眼に同レベルの白内障(グレード3以上)がある32人(年齢:75.4±7.68歳、男性17人、女性15人)。
・水晶体超音波乳化吸引術は、片眼にH2の溶液を使用し、反対眼には従来の溶液を使用して行った。角膜の中心部の内皮細胞密度(ECD)は、術前および術後1日、1週間、3週間に非接触鏡面鏡を使用して測定された。ECDは、特に手術直後に自動測定が不正確になる可能性があるため、撮影された角膜内皮細胞(最低50個の細胞)の中心を手動でクリックする中心法を使用して測定された。
・表1の様に総手術時間、AVE、APT、EPT、使用した灌流液の量は2つのグループ間で有意差はなかった。深刻な術中合併症もなかった。
・手術前の2つのグループのECD(平均値±SD)は、対照グループでは2743±331 cells / mm2、H2グループでは2713±351 cells / mm2(P = 0.31)だった。
・ECDの減少率(平均±標準偏差)は、対照グループでは術後1日目16.0%±15.7%、1週間15.4%±16.1%、3週間18.4%±14.9%だった。 H2グループでは、術後1日目6.5%±8.7(P = .003)、1週目9.3%±11.0%(P = .039)、3週目8.5%±10.5%(P = .004)。すべての時点でH2グループで有意に小さかった。
・結論:灌流液に溶解したH2は、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷を軽減した。これは、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷のかなりの部分が酸化ストレスによって引き起こされること、およびH2が臨床的水晶体超音波乳化吸引術に有用であることを示唆している。(CH)

2019
206巻

プロスタグランディン点眼薬と瞳孔間距離

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Shortening of interpupillary distance after instillation of topical prostaglandin analog eye drops.
Sano I et al(自治医大)
Amer J Ophthalmol 206(10): 11-16, 2019
・Prostaglandin analogs(PGAs)点眼薬の持続的な使用後に発生するprostaglandin-associated periorbitopathy(PAP)の客観的な視標として瞳孔間距離(IPD)の変化を調査した。
・視力が両眼とも0.5以上で、観察期間中に手術を受けなかった152名を対象とし、61名のCtrl眼と比較した。
・Bimatoprost, travoprost, latanoprost, tafluprostの両眼使用の前と後(2-24ヶ月)で自動屈折計で瞳孔間距離を測定した。
・IPDは使用前の63.1±3.0から62.3±3.2mmとなり、-0.80±2.1mm有意に短縮した(p<0.001)が、Ctrl眼では変化がなかった。
・Bimatoprost点眼(-2.20±0.97)では他のPGAs(-0.65±2.09)より有意に短縮度が大きかった(p<0.001)。
・2mm以上、あるいは3mm以上短縮した比率はbimatoprost: 85.7%と35.7%, travoprost: 20.0%と12.0%, latanoprost: 18.2%と14.5%, tafluprost: 17.2%と12.1%であった。 (TY)

2019
206巻

PEA後の持続する前眼部ぶどう膜炎

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Risk factors associated with persistent anterior uveitis after cataract surgery.
Reddy AK et al(CO USA)
Amer J Ophthalmol 206(10): 82-86, 2019
・ぶどう膜炎や自己免疫疾患の既往のない人で合併症のない超音波白内障手術後に持続的な前眼部ぶどう膜炎(persistent anterior uveitis:PAU)を発生するリスクファクターを検索した。
・2019例3013眼のうち、48例61眼(2.0%)でPAUを発生していたが、African Americansが白色人種よりもPAUを発生しやすかった(RR=11.3 95%CI=6.4-20.2 p<0.0001)。
・視力や眼圧には影響はなかったが、61眼中18眼(29.5%)でCMEを発生していた。(TY)

2019
206巻

緑内障手術既往眼での角膜内皮移植

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Comparison of endothelial keratoplasty techniques in patients with prior glaucoma surgery: A case-matched study.
Lin SR et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 206(10): 94-101, 2019
・緑内障手術の既往のある眼でDescemet membrane endothelial keratoplasty (DMEK)46眼とDescemet’s stripping endothelial keratoplasty (DSEK)46眼の術後成績を比較した。
・術前のBCVA最高矯正視力は両群でほぼ同じであったが、術後の最高矯正視力の改善速度はDMEKの方がDSEKより早く、1年後に20/20以上の視力がでたのはDMEKでは3眼(7%)であったがDSEKでは0眼、1年後に20/40以上の視力が得られたのはDMEKでは22眼(47%)であったがDSEKでは7眼(15%)で有意差があった(p=0.002)。
・Graft failureはDMEKが0%、DSEKが17%で、有意差があった(P=0.006)。(TY)

2019
205巻

網膜静脈閉塞とHDL-Cコレステロール(善玉)との関連

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Retinal vein occlusion is associated with low blood high-density lipoprotein cholesterol:  A nationwide cohort study.
Kim J et al(Korea)
Amer J Ophthalmol 205(9): 35-42, 2019
・網膜静脈閉塞RVOと血液のHDL-Cコレステロール(善玉)との関連を調べた。
・韓国のNational Health Screenig Programで検査した20歳以上の23,149,403名を対象とし、RVO群は2009-2015で最初に診断された117,639名である。
・RVO群は非RVO群に比較して、年配者が多く、body mass indexが高く、ウエストが太く、空腹時血糖値や血圧が高く、総-CとLDL-C(悪玉)、脂質が高く、糸球体濾過機能とHDL-Cが低く、糖尿病や高血圧者が多かった。
・HDL-Cの上位1/4群に比較して、HDL-Cの下位1/4群はRVOのhazard ratioは1.12 (95%CI= 1.10-1.14)であった。RVO発症とHDL-Cとの相関は若年者、男性、喫煙者、DM者、高コレステロール血症者で強かった。
・また、HDL-Cの低値は肥満あるいは高血圧と有意に相乗効果があった。(TY)

2019
205巻

角膜移植と眼内炎

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Endophthalmitis rates and clinical outcomes following penetrating and endothelial keratoplasty.
Borkar DS et al(PA USA)
Amer J Ophthalmol 205(9): 82-90, 2019
・全層角膜移植(PK)と内皮移植(EK)後の眼内炎の頻度を、Philadelphiaの数か所の病院の病歴を2012年から2018年にかけて調査し、感染性と思われる眼内炎を調査した。
・3069症例で、PKは1676眼、EKは2292眼で、66.4±17.5歳であり、そのうち16例で眼内炎が発症し、PK後が12/1676例(0.7%)、EK後が4/2292例(0.2%)で、EK後が有意に少なかった(p=0.01)。
・14例で培養結果が判明しており、4例(29%)は培養陰性、7例は細菌性(表皮ブ菌、MRSA、連鎖球菌、インフルエンザ菌、大腸菌、セラチア)であり、3例が真菌であった。
・また、PKあるいはEK単独手術よりも、PK/EK手術時に前部硝子体切除を行った群で有意に眼内炎が多かった(OR=8.66 95%CI=2.98-25.18 p<0.01)。
・PK後の眼内炎の方がEK後の眼内炎よりも最終視力は悪く(p=0.01)、graft failureも多かった(p=0.02)。(TY)

2019
205巻

糖尿病と視神経周囲の神経線維層厚cpRNFLT

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Glucose tolerance levels and circumpapillary retinal nerve fiber layer thickness in a general Japanese population: The Hisayama Study.
Fujiwara K et al(九州大)
Amer J Ophthalmol 205(9): 140-146, 2019
・耐糖能と視神経周囲の神経線維層厚cpRNFLTとの関連を調べた。
・久山スタディでの2809名(40-79歳)のうち、1324名を対象とした。
・耐糖能は75g経口ぶどう糖負荷試験で求めた。
・年齢や性で調整した平均xpRNFLT値は、負荷試験が正常であったものに比して、前糖尿病(p=0.04)あるいはDM者(p=0.004)で有意に薄かった。
・年齢や性で調整したcpRNFLTは空腹時血糖が高いほど、負荷2時間値が高いほど薄かった(いずれもp<0.05)。
・耐糖能が低いことが有意にcpRNFLTの菲薄化に関連していた事から、前糖尿病期から神経線維は欠損し始め、高血糖がcpRNFLTの菲薄化に影響していることが示唆された。(TY)

2019
205巻

緑内障眼の白内障手術後の眼圧上昇を防ぐための局所的降圧薬の効果

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Effect of Topical Hypotensive Medications for Preventing Intraocular Pressure Increase after Cataract Surgery in Eyes with Glaucoma
KEN HAYASHI, et al. (林眼病院)
Am J Ophthalmol 2019(9);205:91–98.
・開放隅角緑内障(POAG)または偽落屑症候群(PE)を伴う眼の水晶体超音波乳化吸引術後早期のIOP上昇を防ぐために、3つの緑内障点眼、トラボプロスト(プロスタグランジンF2a)、チモロール(β-ブロッカー)、およびブリンゾラミド(炭酸脱水素酵素阻害剤)の効果を比較した。
・水晶体超音波乳化吸引術を予定しているPOAGまたはPEの患者165人の合計165の眼を3つのグループに無作為に割り当てて、術後すぐに各薬剤を投与した。
・眼圧(IOP)は、接触型眼圧計(iCare眼圧計)を使用して、術前1時間、手術終了時、術後2、4、6、8、および24時間後に測定した。25mmHgを超えるIOP上昇の発生率をグループ間で比較した。
・術前に処方された緑内障点眼薬は、手術前日に中止された。
・手術が完了すると、IOPは15〜25 mm Hgに調整されたiCare眼圧計で測定。
・165人の患者のうち、2人の患者(1.2%)が分析から除外された。
・163人の患者(98.8%)、平均年齢72.0±8.0歳、男性52人女性111人。
・平均年齢、性別、左右眼の比率、術前の等価球面値、術前視力、緑内障の種類、核硬化度、手術時間、およびその他のベースライン特性と手術因子は、3群間で有意差はなかった。
・術前1時間および手術終了時に、グループ間で平均IOPに有意差は認められなかった。平均IOPは、術後4〜8時間で有意に増加し、その後すべての群で術後24時間で減少した(P <.0001)。平均IOPは、術後4、6、および8時間で、トラボプロストまたはチモロール群よりもブリンゾラミド群で有意に低く(P < 0.0374)、術後2および24時間で群間で有意な差はなかった。術前IOP、年齢、および性別を調整した後、術後2時間の平均IOPは3群間で有意差はなかった。術後4、6、および8時間で、平均IOPは、トラボプロストまたはチモロール群よりもブリンゾラミド群で有意に低く(P < 0.0374)、トラボプロストとチモロール群の間に有意差はなかった。術後24時間で、平均IOPは3群間で有意差はなかった。
・IOPの増加が25 mm Hgを超える眼の数(割合)は、ブリンゾラミド群で6眼(11.1%)、チモロール群で15眼(27.8%)、トラボプロストで22眼(40.0%)だった。25 mm Hgを超えるIOPスパイクの発生率は、トラボプロストおよびチモロール群よりもブリンゾラミド群で有意に低いことが明らかになった。
・POAGまたはPE眼の平均IOPが、合併症のない水晶体超音波乳化吸引術手術の4〜8時間後に著しく増加し、術後24時間で術前IOPレベルに戻ったことを示した。
・ブリンゾラミドは、緑内障の眼白内障手術後早期IOP増加を、トラボプロストまたはチモロールよりも効果的に減少させる。(CH)

2019
205巻

耐糖能と視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Glucose tolerance levels and circumpapillary retinal nerve fiber layer thickness in a general Japanese population: The Hisayama Study.
Fujiwara K et al(九大)
Amer J Ophthalmol 205(9): 140-146, 2019
・耐糖能異常とcpRNFLT(視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚)との関連について、日本人の40-79才の1324名について検討した。
・耐糖能は75g糖負荷試験で判定した。
・境界型糖尿病および糖尿病では正常者に比較して有意にcpRNFLTが菲薄化していた(p=0.04, p=0.0004)。
・また、耐糖能レベルの増悪とともにcpRNFLTは有意に菲薄化した(p<0.05)。
・境界型糖尿病の段階から網膜神経線維層の変化が出現し、血糖上昇により視野障害のリスクが高まることが示唆された。藤原他.臨眼76(1):10,2022。(TY)

2019
203巻

緑内障点眼群と手術群の眼圧日内変動

American Journal of Ophthalmology 203巻 (7号) 2019

Fluctuations of the intraocular pressure in medically versus surgically treated glaucoma patients by a contact lens sensor.
Muniesa MJ et al(Spain)
Amer J Ophthalmol 203(7): 1-11, 2019
・隅角が開放している緑内障77名91眼を点眼加療中の59眼(66.6±8.5歳)と緑内障手術眼32眼(68.3±12.5歳)に分け、眼圧の24時間変動をcontact lens sensor(CLS)で測定した。
・緑内障手術眼32眼の内、11眼(34.3%)は点眼加療中である。
・手術群のCLS値は100±41mV eqであったが、点眼群では131±69であり有意差があった(p=0.010)。
・最高値は手術群で160±187、点眼群で303±176で有意差があった(p=0.001)。
・夜間のピークがなくなっているものは、手術群で12眼(42.9%)、点眼群で8眼(13.8%)(p=0.011)であり、CLSの最高値、最低値は点眼群では手術群よりも有意に大きかった(p=0.001とp=0.006)。(TY)

2019
201巻

POAGにおける白内障手術と視野障害進行率の関係

American Journal of Ophthalmology 201巻 (5号) 2019

Cataract Surgery and Rate of Visual Field Progression in Primary Open-Angle Glaucoma
Ji H Kim et al (USA)
Am J Ophthalmol 201(5): 19-30, 2019
POAGにおいて白内障手術の前後でIOPと視野障害の変化を調査
対象:99名134眼のPOAG患者をレトロスペクティブに検討
コントロール:IOL術後10年以上10回以上の視野検査を行った症例29例36眼の経過を前半5年、後半5年で分けて視野障害進行率を検討
平均観察期間:術前6.5(4.7-8.1)年、術後5.3(4.0-7.3)年
IOPのパラメータ(平均眼圧、標準偏差、ピークIOP)はすべて低下したものの、視野関連の指標(MD,VFI, pointwise linear regression(PLR), pointwise rate of change(PRC),Glaucoma Rate Index(GRI))は術後進行していた。
術前にレクトミーがしてある群は白内障手術前後の進行率に有意差はなかった(Table 5)
Baseline MDと術後のピークIOPが悪いことが術後の視野障害進行率と相関あり(Table6)
コントロールでは前半と比べて後半の進行が早い
GRI: -0.36(±10.85) : -9.71(±14.78)
MD slope: -0.29(±1.63) : -1.27(±1.79) dB/year
VFI slope: -0.66(±1.19): -0.77(±1.07) %/year
緑内障の経過として直線的に視野障害が進行するのではなく、後半に加速していく(図)
結論:白内障手術で眼圧は術後下がるが、術前と比べて視野障害の進行を遅くしているとはいえない(MM)

2019
200巻

ドライアイを伴う糖尿病および非糖尿病における涙液の炎症性サイトカインの分析および臨床的相関

American Journal of Ophthalmology 200巻 (4号) 2019

Tear Inflammatory Cytokines Analysis and Clinical Correlations in Diabetes and Nondiabetes With Dry Eye
RONGJUN
LIU, et al. (China)
Am J Ophthalmol 2019(4);200: 10-15.
目的:糖尿病におけるドライアイの病因は主に、涙腺の微小血管の損傷および角膜知覚の障害による涙の刺激性分泌減少であると考えられている。
眼球表面の特徴と涙の炎症性サイトカインのレベルを評価することによって、糖尿病におけるドライアイ(DE)の理解を深めること。
対象と方法:DM(+)DE(+)群 32人、DM(+)DE(-)群 24人、DM(-)DE(+)群 29人、DM(-)DE(-)の対照群 29人。(表1)
眼表面疾患指数(OSDI)、涙液層破壊時間(BUT)、シルマー試験I法、角膜フルオレセイン染色(CFS)および角膜感受性を含む眼表面特性を評価した。
さらに涙液中のEGF、IL-17A、IL-Iβ、およびTNF-αの分析、それらの臨床相関関係を調査した。
結果:DM(-)DE(+)群のOSDIスコアが他の3群のそれよりも有意に高いことを示した(それぞれP = 0.001、P <.0001、P <.0001)。また、DM(+)DE(+)群のOSDIスコアは正常群よりも高かった(P = 0.033)
BUT値は対照群と比較して他の3群は 有意に低かった(それぞれP <.0001、P = .019、およびP <.0001)。
DM(+)DE(+)群およびDM(-)DE(+)群のCFSスコアは他の2群より有意に高かった(全てP <0.0001)。
DM(+)DE(+)群およびDM(-)DE(+)群は、対照群と比較して低いシルマー試験I法スコアを示した(P = 0.001およびP = 0.01)。また、より低い角膜感受性を示した(P = 0.007およびP = 0.042)。
涙液中のEGFレベルはDM(+)DE(+)群で有意に増加した。
DM(+)DE(+)群では、EGFのレベルはCFSスコアと正の相関があり、シルマー試験I法とEGFに負の相関があった。
DM(-)DE(+)群では、涙液中のIL-1βおよびTNF-αのレベルは、CFSスコアと正の相関が見られた。
結論:DM(+)DE(+)群およびDM(-)DE(+)群は対照群と比較して角膜感受性が有意に減少していた。また、涙液中のEGFのレベルは、DM(+)DE(+)群における眼球表面パラメータと相関していた。これは、糖尿病におけるDEの診断のバイオマーカーとなる可能性がある。(CH)

2019
200巻

傍乳頭深層微小血管脱落と視野障害進行の関係

American Journal of Ophthalmology 200巻 (4号) 2019

Parapapillary Deep-Layer Microvasculature Dropout and Visual Field Progression in Glaucoma
Ji Min Kwon, et al (Korea and USA)
Am J Ophthalmol 200(4): 65-75, 2019
138名138眼のPOAG患者を平均5.5年観察 OCTAと過去5回以上のVFを比較
55眼(39.9%)がVF進行 SD IOP、ベースラインMDとPSD,DH、βPPA+BMが大きい、LC欠損が有意に進行群に多かった。
上記で調整してもDropoutがある群の方が進行の割合が高かった:50/84(59.5%) vs 5/54(9.3%) P<0.001 OR 3.64-5.68
微小血管脱落群のうち、34/84例40.48%、脱落なし群の49/54例(90.74%)は進行していない:微小血管脱落がないことは病態が落ち着いている状態を示すが、血管脱落があることは直ちに視野進行を示すものではないOCTAによる傍乳頭深層血管脱落は以前の視野障害進行と関係している(MM)

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