Brit J Ophthalmol 107(12):1782-1786, 2024
Hujanen P et al(Finland)
Immediate sequential bilateral cataract surgery: a 13-year real-life report of 56,700 cataract operations.
・FinlandのTays病院で、13年間に行われた白内障同時手術(ISBCS:immediate sequential bilateral cataract surgery)と術後眼内炎の頻度を調査した。
・2008/1~2020/12に行われたすべての白内障のデータを調査し、ISBCSの頻度、眼内炎、硝子体脱出などについて調べた。
・34,797例56,700眼の白内障手術のうち、ISBCSは13,445眼(39%)であり、2008年には4.2%で、2020年には46%に上昇していた。
・硝子体脱出は480眼(0.9%)で発症していたが、この13年間に眼内炎の発症はなかった。(TY)
Intravitreal bevacizumab improves trabeculectomy survival at 12 months: the bevacizumab in trabeculectomy study. A randomised clinical trial.
Landers JA(Australia)
Brit J Ophthalmol 108(5): 679-686, 2024
・MMC併用線維柱帯切除12か月後の成功率に対して、硝子体内bevacizumab(アバスチン)注射の効果があるかどうかを検討した。
・完全成功は点眼薬不要で眼圧コントロールができたもの、条件付き成功は点眼薬が必要になる場合とした。
・131例を無作為にアバスチン群65例と偽薬群66例に分け、12か月経過観察できた128例について検討した。
・アバスチン群を偽薬群と比較し、完全成功は94%:83%(p=0.015)、条件付き成功は98%:90%(p=0.031)であった。
・偽薬群では、6か月後、12か月後の点眼必要者が有意に多く(p=0.045、p=0.045)、1か月後のニードリング必要者が有意に多かった(p=0.035)。
・アバスチン群では1か月後の濾過胞が有意に大きく(p<0.001)、結膜炎症所見が有意に少なかった(p<00001)。
・術後、無血管濾胞になってくる率もアバスチン群でやや少ないが、有意差はなかった。(TY)
Vaccine-associated corneal graft rejection following SARS-CoV-2 vaccination: a CDC-VAERS database analysis
Rohan Bir Singh, et al. (Massachusetts, USA)
Br J Ophthalmol 2024(1);108:17–22.
・目的:米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)のワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System)に報告されたSARS-CoV-2ワクチン接種後の角膜移植片拒絶反応の症例を評価する。
・対象と方法:ワクチン接種後のワクチン関連移植片拒絶反応(VAR)発症期間、ワクチンの種類、および角膜移植の種類における VAR のリスクを評価した。
・結果:46 例 55 眼(平均年齢62.76±15.83 歳、男性27例、女性28 例)が、BNT162b2ファイザー(73.91%)および mRNA-1273モデルナ(26.09%)のワクチン接種後に VAR と診断された。全層角膜移植術(61.82%)、デスメ膜内角膜内皮植術DMEK(12.73%)、角膜内皮移植術DSAEK(18.18%)、角膜表層移植術(3.64%)、角膜上皮幹細胞移植 (1.82%)。
・全層角膜移植術および角膜内皮移植術後(DMEK、DSAEK)のVAR発症平均期間は、それぞれ8.42±9.23年、4.18±4.40年。VAR発症例の45.65%はワクチン2回目接種後に報告された。
・VARの発症期間は、初回接種およびブースター接種と比較して2回目接種後が有意に短く(p=0.0165)、全層角膜移植術と比較して角膜内皮移植術を受けた患者で有意に短かった(p=0.041)。
・結論: VAR の早期発症は、角膜内皮移植の既往歴があり、2 回目のワクチン接種後の患者で認められた。
・ワクチン接種後の角膜移植片拒絶反応は、ウイルス抗原特異的T細胞と角膜内皮細胞のヒト白血球抗原との交差反応によって起こると推測されている。
・さらに、SARS-CoV-2ワクチンに反応して産生された中和抗体は、強力なCD4+ Th1反応を引き起こすことが示されている。
・報告された VAR 症例の多くは、1 回目の接種後よりも 2 回目の接種後であり、これはワクチンの 1 回目の接種後に抗原感作が起こり、免疫反応が促進されたためと考えられる
・SARS-CoV-2ワクチン接種後の移植片拒絶反応についてこれらの患者を注意深く経過観察する必要がある。(CH)
Brit J Ophthalmol 108(1):17-22, 2024
Singh RB et al(MA USA)
Vaccine-associated corneal graft rejection following SARS-CoV-2 vaccination: a CDC-VAERS database analysis.
・SARS-CoV-2 ワクチン接種後の角膜移植片の拒否反応(vaccine-associated graft rejection:VAR)について、ワクチン接種後の発症までの期間について、1元配置分析と事後解析を行い、最終的には注射後30日以内の累積発症について検討した。
・VARと診断された46例55眼、Pfizer製BNT162b2後が73.9%、Moderna製mRNA-1273が26.1%で、年齢は62.76±5.83歳、28例(60.87%)が女性であった。
・全層角膜移植が61.8%、DMEKが12.7%、DSEKが18.2%,表層移植が3.6%、輪部移植が1.8%であった。
・移植後からVAR発症までの期間は、全層移植では8.42±9.23年、内皮移植では4.18±4.40年であった。
・ワクチン接種後のVARの発症までの期間は、初回よりも2回目の接種後で有意に短く(p=0.0165)、全層よりも内皮移植者の方が有意に短かった(p=0.041)。
佐藤美紀他。角膜内皮移植後のmRNAワクチン投与後に拒絶反応が出現した1例。あたらしい眼科41(1):79-81,2024(TY)
Brit J Ophthalmol 108(1):71-77, 2024
Asaoka R et al(浜松市)
Identifying central 10°visual subfield associated with future worsening of visual acuity in eyes with advanced glaucoma.
・ベースライン感度が進行した緑内障で、(HFA 10-2)のどこのテスト点群(VSF)の初期感度が、将来、視力(VA)の悪化と関連しているかを検討した。
・(HFA 24-2)テストの平均MDが、少なくとも1眼でー20dB以下で、最高VAが0.5以上で、IOPがよくコントロールされている進行緑内障175例175眼を対象とした。
・すべての患者は5年の追跡調査を受け、VAは6ヵ月おきに評価し、VA低下に関連した視野の感度点を解析した。
・対象は、眼圧コントロールが良く。HFA24-2で過去2年間で進行がみられなかった症例である。
・緑内障以外、視野障害をきたす病態のない20-80歳(65.0±10.2)の患者
・屈折値が+4D未満、―8D以上か、眼軸長が27.0mm未満・緑内障手術を受けておらず、白内障手術は受けていてもよいが、合併症なしの眼
・HFA24-2のデータが悪いほうの眼を対象眼とした
・導入時の眼圧は13.0±3.0、logMARは0.00±0.12、24-2のMD値は-25.9±3.6dB、10-2のMD値はー24.0±5.5dB。
・視力低下(0.2以上のlogMARの低下)は28/175眼で発生
・視力低下は年齢とは関係なく、導入時の視力が悪かったことが関連していた(p=0.017)。
・視力低下は15.4%、失明(VA=0.05未満)は3.4%で発生した。
・HFA10-2では68点のうち15点(耳側の乳頭黄斑束部のVSF)でのTD値の低下が視力低下と相関があり(p<0.05)、HFA30-2では52点のうち4点でのTD値の低下が視力低下と相関していた(p<0.05)。
・HFA(1 0-2)テストのこの領域のTDの平均は、将来のVA悪化(0R=0.92、p<0.001)の最もよい予測因子であり、失明についても、同様の傾向があった
・進行緑内障眼では、10-2での耳側の乳頭黄斑繊維束の平均TD値が低下していた場合、十分に注意する必要がある。
・進行緑内障でもHFA(10-2)は有益であることが分かった。(TY)
Brit J Ophthalmology 108(1):58-64, 2024
Yang HY et al(Taiwan)
Bleb-related infection after primary trabeculectgomy: medical chart reviews from 1993 to 2021.
・MMC併用線維柱帯切除術後の濾過胞関連感染(bleb-related infection:BRI)の頻度を検討した。
・Taipei Veterans General Hospで1993-2021年に手術を受けた1663眼で、94.57±65.23か月経過をみた症例である。
・年に1.86眼/1000眼の発症率で、28年の経過観察で24眼(1.44%)でBRIを発症し、6眼(0.36%)で眼内炎に発展した。
・BRIと関連していたものは創口操作、高度近視、高脂血症であった(いずれもp<0.001)。
・創口操作には眼圧コントロール、無血管濾過胞(bleb at risk)、濾過胞漏出が含まれる。
・60歳未満の方が創口操作頻度が高かった(p<0.001)。
・BRI発症1年後の視力には変化はみられなかったが、眼内炎を発症した症例では有意に視力低下がみられた。(TY)
Differentiating glaucoma from chiasmal compression using optical coherence tomography: the macular naso-temporal ratio
Iris Kleerekooper et al. Br J of Ophthalmol impress, 2024 (UK)
・OCTの黄斑部GCL-IPL厚(mGCIPL)を調べ、鼻側と耳側mGCIPL比(the macular naso-temporal ratio:mNTR)を求め、緑内障と視交叉圧迫病変の鑑別精度を求めた。
・Heidelberg Spectralis SD-OCT Macular volume scans(1024 A-scans, 37 B-scans volume=15×15°)
・Microsystic macular oedema(MMO)の検出も行った。
・結果:視交叉圧迫病変 31例、POAG 30例、正常 50例の111例
・全体のmGCIPL厚はPOAG-視交叉圧迫群間で有意差がなかったが、正常眼と比べ、POAGではmNTRが有意に高く、視交叉圧迫病変では有意に低かった。
(どちらもGCIPLの萎縮が見られるが、POAGでは耳側優位、視交叉圧迫病変では鼻側優位に萎縮が生じる)
・視交叉圧迫病変と緑内障の鑑別能はAUC 95.3%(95%CI 95-100%)
・平均mNTRのカットオフ値を<0.99とすると感度84%、特異度100%
・正常との鑑別は POAG 79%, 視交叉圧迫病変 89%であった
・視交叉圧迫病変:カットオフ値を<0.96とすると感度77%、特異度100%
・緑内障:カットオフ値を>1.06とすると感度60%、特異度88%
・mGCIPL厚のカットオフ値を<309μmとすると感度89%、特異度89%で正常と視交叉圧迫病変・緑内障の鑑別
・結論:mNTRはPOAGと視交叉圧迫病変の鑑別が高い精度で可能であった
Microsystic macular oedema(MMO)は視交叉圧迫病変の10%程度で認め、緑内障では通常認めない。認めた場合は頭蓋内精査必要。(MM)
Oliva-Bienzobas V, Nava-Castaneda A, Jimenez-Corona A, et al. Comparison of mini-simple limbal epithelial transplantation and conjunctival-limbal autograft for the treatment of primary pterygium: a randomised controlled trial. Br. J Ophthalmol 2023; 107: 1776-1781.
・翼状片手術後の再発について筆者らの結膜再建に用いている術式、すなわち、①結膜-輪部の遊離弁移植(conjunctival-limbal autograft: CLAu)を露出した強膜上に接着する方式と②自己の輪部上皮を2×2mmで採取して6~8つに分けて翼状片切除後の輪部に接着する方法(mini-simple limbal epithelial transplantation: mini-SLET)、をランダム化比較試験で検討した。
・drop outもあったため対象は61眼。これを乱数表で分けてCLAu 33眼、mini-SLET 28眼の術後経過(術後1日、2週間、1か月、3か月、6か月、12か月)を比較した。
・Kaplan-Meier plotの図に示すように、1年後の再発率はCLAu 8.1%に対してmini-SLETが53.5%だった。
(以下は平野の心の声)
・やはり翼状片の手術後1年は経過を見るべき。
・mini-SLETの成績があまりに悪いため、試験の途中で30例に満たないままやめてしまっている。また、2つの手術はそれぞれ別の術者が担当している。群の分け方は公平で選択バイアスはなさそうだが、手術術式についてのこういうランダム化比較試験という方法での検討というのはいかがなものか。
・縫合は行わず、fibrin glueでの羊膜や遊離弁の接着をしている。(日本ではあまり行われていないが、縫合の代わりにそういう方法もある)
・羊膜は翼状片の再発予防には効果がない。(KH)
Association of lipid-lowering drugs and antidiabetic drugs with age-related macular degeneration
Matthias M Mauschitz, et al. (Germany)
Br J Ophthalmol 2023(11);107:1880–1886.
・目的:これまでの研究で、加齢黄斑変性(AMD)とさまざまな全身薬との関係が調査されており、脂質低下薬(LLD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、炎症と酸化ストレスを軽減する可能性のある抗糖尿病薬(特にメトホルミン)はAMDの発症に影響がある経路を妨害すると考えられている。
・薬剤の使用とAMDの存在との間の関連性を調査した。
・対象と方法:欧州眼疫学コンソーシアムの14集団ベースおよび病院ベースの研究から38,694人の成人を対象とした。
・全身薬の使用とAMD有病率および晩期AMDとの関連を検討した。
・結果: 研究間の平均年齢は61.5±7.1~82.6±3.8歳、有病率はAMDが12.1~64.5%、晩期AMDが0.5~35.5%であった。
・脂質低下薬(LLD)および抗糖尿病薬は、AMDの有病率の低下と関連していた(OR 0.85、95% CI=0.79~0.91およびOR 0.78、95% CI=0.66~0.91)。 晩期AMDはどの薬剤とも関連性は認められなかった。
・結論: メトホルミンは、抗酸化作用と抗炎症作用があり、AMD の病態生理の重要な部分である RPE 内の酸化ストレスを軽減すると考えられている。
・またLLDは低密度リポタンパク質およびコレステロールの血清レベルを低下させることとは別に抗炎症作用および抗酸化作用、血管内皮改善作用があり、AMD の発症にも関与していることが報告されている。
・LLDと抗糖尿病薬の使用がAMD有病率に有益な影響を及ぼす可能性が示された。
・この発見は、AMDの多因子病因における代謝プロセスの重要性を裏付けている。(CH)
Brit J Ophthalmol 107(11):1658-1664, 2023
Nishida T et al(CA USA)
Smoking and progressive retinal nerve fibre layer thinning in glaucoma.
・POAG者で喫煙と網膜神経線維層RNFLの菲薄化スピードについて検討した。
・最低3年以上の経過観察ができ、その間に5回のOCT検査を受けたPOAG者314例466眼、平均経過観察期間6.6年(95%CI=6.4~6.7)を対象とした。
・対象となった人種は、ヨーロッパ系159名(50.6%)、アフリカ系131名(41.7%)、アジア系20名(6.4%)、その他4名(1.3%)。
・喫煙量は最初のOCT検査時のpack year(1日の喫煙箱数x喫煙年数、1パック=20本)とした。
・314例の内、121例(39%)は非喫煙者であった。
・喫煙量はRNFL菲薄化スピードと関連しており、10パック年増える毎に-0.06(95%CI=-0.11~0.00)μm/年、薄くなっていた(p=0.031)。
・8パック年を超えると、RNFLの菲薄化はより早くなっていた。(TY)
Brit J Ophthalmol 107(8):1072-1078, 2023
Mitchell WG et al(MA USA)
・Predictors of long-term intraocular pressure control after lens extraction in primary angle closure glaucoma: results from the EAGLE trial.
・原発閉塞隅角症PACに対するEAGLE trial(Effectiveness of Early Lens Extraction for treatment of PACG)のデータから、透明水晶体摘出(CLE)あるいはレーザー虹彩周辺切開(LPI)の長期間の眼圧コントロール状況について検討した。
・EAGLE trialの中のデータから、36か月の経過観察中に追加手術なしで眼圧が21mmHg未満の反応良好者と、点眼薬なしでも21mmHg未満の反応最適者について検討した。
・369例(CLEは182例、LPIは187例)が36か月間経過観察され、反応良好者はCLE群の90%、LPI群の67%であり、反応最適者はCLE群の66%、LPI群の18%で、いずれも有意差があった(p<0.05)。
・反応最適者に入ったのはCLE群(OR=10.1 6.1~16.8)、中国人(OR=2.3 1.3~3.9)、緑内障点眼薬未使用者(OR=2.8 1.6~4.8)であった。(TY)
Brit J Ophthalmol 107(7):941-945, 2023
Mansouri K et al(CO USA)
Measurement of intraocular temperature in glaucoma: week-day and seasonal fluctuations.
・22例22眼のPOAG眼(67.8±6.8歳、36.4%が女性)の眼内温度(IOT)の変動を最低1年間、遠隔操作の眼内センサーで測定したので報告する。
・このstudyは多施設での結果である(スイス、USA[コロラド・サンディエゴ]、UK、インド、オランダ、ドイツ)。
・この眼内センサーは白内障手術時に埋め込まれたものである。
・遠隔測定システムは、内蔵の温度センサーを使用して、測定された IOP を温度に対して調整する。
・患者は1日4回以上、好きな時間にIOPとIOTを記録するように指示されている。
・全部で21,102日、132,745回のデータが記録された。
・IOTは日曜日(34.57°95%CI= 34.37-34.78)に他の曜日(34.48-34.51°)よりも有意に高かった(p<0.001)。
・年内変動では7月に最高(34.8°95%CI= 34.56-34.97)で、1月に最低(34.4°95%CI= 34.15-34.56)であった(p<0.001)。(TY)
Changing operation room practices: the effect on postoperative endophthalmitis rates following cataract surgery.
Haripriya A, Chang DF et al(India)
Brit J Ophthalmol 107(6): 780-785, 2023
・COVID-19の理由で手術室の手順をかえた前後の術後眼内炎の頻度を調べた。
・2020/1-2020/5にAravind Eye Hospitalで行ったGroup-1の56,551例と、2020/5-2020/8に行ったGroup-2の29,011群で比較した。
・G1では患者はガウンを着ず、術者のグローブは患者毎に交換せずに消毒しただけで、手術室の床は患者毎に清掃せず、同じ部屋で多数の患者の術前処置と手術を行った。
・G2では患者はガウンを着て、各症例ごとに術者のグローブを交換し、手術室の床やカウンターは患者毎に清掃し、手術室には一人の患者だけが入って術前処置と手術を行った。
・術後眼内炎発症はG1ではPEAの1/27,454例(0.003%)、M-SICS(manual small-incision cat.surg.)の2/29,097例(0.006%)、G2ではPEAの0/15,061(0.0%)、M-SICSの2/13,950(0.014%)、全体ではG1の3例(0.005%)、G2の2例(0.006%)であり、有意差はなかった。
・G2で行った4つの手順は、費用が高く、無駄な手順だと思われた。(TY)
Progression of myopia in teenagers and adults: a nationwide longitudinal study of a prevalent cohort
Alexandre Ducloux, et al. (France)
Br J Ophthalmol 2023(4);107:644–649
・目的:ヨーロッパでは近視の有病率はそれほど高くないが、イギリスで行われた研究では、この数十年の間に10代の近視有病率がほぼ2倍になったという報告もある。今回、ヨーロッパの10代と成人における近視の進行を評価する。
・対象と方法: 2013年1月から2019年1月にかけて、近視の成人および10代の若者630,487人(平均年齢43.4歳±18.2歳、女性59.8%、平均SE-2.8±2.3D)を追跡調査した。データは、フランスのさまざまな地域にある696店の眼鏡店から収集された。近視は等価球面が-0.50 D 以上、高度近視は -6.00 D以上とした。
・近視の進行は、ベースライン時の眼鏡処方から12~26 か月後の再処方までの期間に、平均進行率が年間 –0.50 D以上と定義された。
・結果:平均追跡期間3.1年。近視が進行した割合は7.8%であった。
・若い年齢層(14~29歳)で割合が高く、14~15歳で18.2%、18~19歳の間で13.0%だった。
・その他、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85-100歳の各年齢層で、それぞれ11.1%、12.7%、12.6%、10.6%、12.9%と高かった。
・高度近視の発症は、ベースライン時の年齢が若いことと、近視が強いことを組み合わせると、5年間の累積発症リスクは76%に達した。
・19~23歳の年齢層では58%、24~29歳では45%だった。
・結論:若い年齢層で近視が進行する割合が高いこと、近視進行の最も重要な危険因子は、近視の度数よりもむしろ若年層であることが示された。
・65歳以降になると、近視進行の割合が高くなることが観察されたが、これは核白内障の発生により、水晶体の屈折率が近視化したと考えられる。(CH)
Risk factors for microcystic macular oedema in glaucoma.
Mahmoudinezhad G et al(CA USA)
Brit J Ophthalmol 107(4): 505-510, 2023
・POAGにおけるmicrocystic macular edema(MME)について、315名のPOAG患者において検討した。
・網膜前膜ERM以外の網膜疾患のある患者は除外し、MMEと緑内障性視野進行との関連について調査した。
・315名中25名(7.9%)にはMMEが見られ、殊に下方に多かった(84%)。
・過去にはMMEはPOAGの3.6%程度という報告もある。
・年齢と視野のMDはMME者と非MME者では57.2±8.7:62.0±9.9才(p=0.02)、-9.8±5.7:-4.9±5.3dB(p<0.001)であった。
・ベースラインでMDが悪い事(p=0.001)、年齢が若い事(0.02)がMMEの存在と相関していたが、MMEの存在とERMは相関がなく(p=0.84)、視野のMD値やVFIndex値の悪化とも相関がなかった(p>0.49)。
・Hasegawa T ProS One 2015:e0130175(TY)
Association between statin use and the risks of glaucoma in Australia: a 10-year cohort study.
Yuan Y et al(Australia)
Brit J Ophthalmol 107(1): 66-71, 2023
・45歳以上のオーストラリア人で、長期間のスタチン使用が緑内障発症に影響するかどうかを検討した。
・スタチンの使用については、2009-2016年の薬剤領収書から同定し、緑内障の発症については、少なくとも3回抗緑内障薬の領収書から同定した。
・以下の症例は緑内障発症群から除外した。①2009年以前から緑内障薬の処方があったもの、②2004~2016の間に1枚あるいは2枚の緑内障薬の処方があったもの(緑内障疑い者)、③3枚以上の緑内障薬の処方があったものでも、Ctrl群が取れなかったもの。
・年齢、性、心血管疾患をマッチさせた緑内障薬の未使用者をCtrlとした。
・緑内障発症は、経過観察期間中に緑内障薬が処方された時とした。
・スタチン内服者の率は緑内障発症群ではCtrl群より多く(40.5%:38.4% p<0.001)、高血圧治療薬内服率も緑内障発症群ではCtrl群より多かった(46.9%:45.5 % p=0.04)。
・スタチンの使用と緑内障の発症との関連はなかった(OR=1.04 95%CI= 0.97-1.11)。
・しかし、スタチン服用が3年を越す群と1年未満群とを比較すると、長期間群での発症率は有意に高かった(OR=1.12 95%CI= 1.04-1.21)。
・スタチンの種類ではロスバスタチン(クレストール)服用者がCtrl群よりも緑内障発症率が高かったが(OR=1.11 95%CI= 1.01-1.22)、他のスタチンでは有意差はなかった。
・スタチンと緑内障発症との関連は不明だが、神経保護作用をもつCoenzyme Q10の濃度低下が影響している可能性なども考えられる。
・ロスバスタチンについては、このCoenzyme Q10濃度低下に対する効果が強いことや、ロスバスタチン内服者は元来、血中コレステロール値が高いことなども考えられるが、詳細は不明である(TY)
High rate of conversion from ocular hypertention to glaucoma in subjects with uveitis
Tiffany Ma et al. Br J of Ophthalmol 106(11), 1520-1524: 2022 (New Zealand)
Retrospective observational study
・2008年1月1日から2018年7月1日までにAuckland District Health Board clinic139で2人のぶどう膜炎専門医の治療を受けた139例188眼のUveitic glaucoma もしくは高眼圧症を解析した。
・眼圧が24mmHg以上、眼圧下降薬を3ヶ月以上使用している、ぶどう膜炎から緑内障を発症したものを調査し、ぶどう膜炎の診断以前から緑内障があったものや、過去にぶどう膜炎の診断を受けたもの、ぶどう膜炎以外に緑内障となる要素(NTG,PE,pigment dispersion synd., PACG)があるものは除外した。
・Totalのフォローアップは1854.5眼年(平均9.9±8.8年)
・ぶどう膜炎の診断時の年齢は49.3歳 52.5%は男性
・非感染性:140眼(74.5%),感染性48眼(25.5%) 27眼はウイルス性であった。
・原発性29.3%, サルコイドーシス13.3%, HZV(6.9%)、HLA-B27ぶどう膜炎(6.9%)、結核(5.9%)、ポスナーもしくはCMV(5.3%)
・ぶどう膜炎と診断されてから眼圧上昇までの平均期間は2.3ヶ月だが、66眼(35.1%)は初診時に高眼圧であった。
・診断時の平均眼圧35mmHg(IQR 29-45)、視力20/30(IQR 20/25-20/60)
・144眼(77.0%)が観察期間中に緑内障となり、65眼はPPG
・41眼は中心視野障害を生じた。13眼は診断時に障害あり
・高眼圧の診断から緑内障性視神経障害を発症するまで平均1.2年
・高眼圧の診断から緑内障手術まで平均2.4年(50眼でレクトミー、18眼でチューブシャント、6眼でMIGS)
・結論:ぶどう膜炎の高眼圧症は緑内障へ早く移行した。ぶどう膜炎と緑内障の専門医の連携が重要である。(MM)
Clinical characteristics of full thickness macular holes that closed without surgery.
Uwaydat SH et al(Lebanon)
Brit J Ophthalmol 106(10): 1463-1468, 2022
・黄斑円孔の自然治癒78例(平均57.9才)について検討した。
・眼球鈍的外傷の18例、点眼や硝子体内治療18例、特発性黄斑円孔42例である。
・点眼や硝子体内治療18例の中には、POAG、DMR、網膜剥離バックル手術1例、1年以上前の硝子体手術5例などが含まれている。
・logMARは初診時の0.65±0.54(小数点0.22)から、平均33.8±37.1か月後に、0.34±0.45(小数点0.46)に改善したが(p<0.001)、7眼(9.0%)では平均8.6か月後に黄斑円孔が再発した。
・硝子体黄斑牽引は12眼(15.8%)、傍中心窩のPVDは42眼(53.8%)、中心窩の網膜前膜は10例(12.8%)、CMEが49例(62.8%)、網膜下液が20例(25.6%)にみられた。
・多変量解析では初診時視力は円孔縁の高さhight(p<0.001)、最狭部の円孔径(p<0.001)と相関していたが、最終視力は円孔底径(p<0.001)と相関していた。
・円孔閉鎖までの期間(中間値2.8ヶ月)は最狭部の円孔径(p<0.001)と網膜下液の存在(p<0.001)と相関がみられた。
・閉鎖までの平均期間は外傷では1.6ヶ月、外傷なくCME治療を行った眼では4.3ヶ月、未処置眼では円孔径が200μm未満例では4.4ヶ月、200μm以上では24.7ヶ月であった(TY)
Optic nerve sheath diameter changes at high altitude and in acute mountain sickness: meta-regression analyses.
Tsai TY et al(Taiwan)
Brit J Ophthalmol 106(5): 731-735, 2022
・標高の高い所、高山病の時の視神経鞘の直径(ONSD)について、文献調査を行った。
・標高とONSDについての8文献、248例と、高山病の有無ついて調べた5文献454例について調査した。
・ONSDは標高1000m毎に0.14mm増加(95%CI=0.10-0.18 p<0.01)。ONSDは高山病の人でより大きくなっていた。(TY)
Use of saliva flow rate measurement in minor salivary glands autotransplantation for treatment of severe dry eye disease
Jia-Zeng Su,et al.(China)
Br J Ophthalmol 2022(5);106:902–907
・目的:重度のドライアイ疾患 (DED) の治療のための小唾液腺 (MSG) 自家移植の小唾液腺の流量 (MSGFR) を測定し、治療効果を検討する。
・対象と方法:重度のDED18眼(17人)。DED の病因は、スティーブンス-ジョンソン症候群15 眼と移植片対宿主病3 眼だった。平均病歴は6年。
・手術前にMSGFRを測定し、より多いMSGFRがある上唇または下唇がドナー部位として選択された。(頬粘膜は、唇のMSGFRが著しく減少している場合のバックアップ)粘膜で覆われた唾液小葉を含む移植片を 2 片採取し、上眼瞼と下眼瞼の両方に用意したレシピエント ベッドに移植した。ドナー片の大きさはレシピエント床の約 1.5 倍のサイズにした。
・口唇の傷は、異種無細胞真皮マトリックスまたは局所粘膜回転フラップ法で修復された。
・レシピエントの上下眼球結膜から円蓋部まで解放し、可能な限りベッドを大きくし、移植片を8-0吸収糸で縫合した。
・患者は 術後3 ヶ月、1 年、その後は毎年追跡調査され、眼科検査とアンケートが再評価された。
・結果:ドナー部位は、下唇12眼、上唇5眼、頬粘膜1眼、ドナー片の平均サイズは 8.1 cm2 (6.8–10.4 cm2) だった。
・移植片の平均術前 MSGFR は 1.7 (範囲: 0.9–3.3) µL/min/cm2で平均涙液流量 0.6 ~ 1.4 µL/minと同等だった。術前 MSGFR >1.785 µL/min/cm2 の症例は、MSGFR ≤1.785 µL/min/cm2 の症例よりも手術後のシルマー試験値の大幅な改善を示した (p<0.05)。
・DED 症状のアンケートで、症状軽減率は 58.8%、シルマー テスト値は 術前0 mm から 術後3ヶ月4 mm に増加した (p<0.05)。平均蛍光染色スコアは、術前12 から術後3ヶ月10 に減少し、その後は安定していた。 TBUT スコアと BCVA は、手術前後で有意差を示さなかった。
・ドナー部位は、結果に影響しなかった。
・合併症 移植片の部分的な壊死が術後5 日目に 1 眼、下唇の局所的な一過性知覚低下が7眼、下眼瞼の移植片の一部が見えてしまう美容上の問題2眼。
・結論:MSG 移植は、重度の DED の治療に有用であることが証明された。術後の治療効果は、術前のMSGFRと正の相関があった。 MSGFR の測定とドナー移植片の部位の選択は重要である。(CH)