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British Journal of Ophthalmology

2013
97巻

糖尿病者では線維柱帯切除術の効果は減弱するか

British Journal of Ophthalmology 97巻(5号)2013

Long-term outcomes of primary trabeculectomy in diabetic patients with primary open angle glaucoma.
Law SK et al(CA USA)
Brit J Ophthalmol 97(5): 561-566, 2013
・POAGに対する線維柱帯切除(MMC使用)の効果を網膜症のない糖尿病者29例41眼と、年齢、性、人種、術前眼圧、水晶体状態などをマッチさせた正常コントロール者64例81眼とで比較した。
・手術成功は緑内障点眼は問わず、眼圧が5を越え、15以下にコントロールされ、合併症や追加緑内障手術を必要としなかったものとした。
・60ヶ月目のKaplan-Meier生存率はDM群で57.8±9.3%、Ctrl群は68.6±5.3%であり、平均生存時間はDM群で63ヶ月(95%CI=50.3-75.7)、Ctrl群で74.6ヶ月(95%CI=67.1-82.1)であった(p=0.095)。
・平均術後眼圧(2,3,6,7年後)はCtrl群で有意に低かった(p<0.05)。
・術後合併症比率や追加緑内障手術の必要率は、両群間で有意差がなかった。
・DM患者での線維柱帯切除術の長期成績の悪い理由として、fibroblast活性が高く血管新生等によって仲介される複雑な結膜と上強膜間の創傷治癒過程によって、房水流量が減ると考えられている。
・糖尿病では血液房水柵の破綻により術後炎症が強くなることが考えられ、補助的な抗線維化物質の使用が薦められる。
・また、DM群ではCtrl群より術前点眼薬の種類が多く(3種以上の点眼を使用していたのはDM群85.4%:Ctrl群69.1%)と、有意差はなかったがDM群で多く、このような慢性的な緑内障点眼薬使用がリスクファクターになっている可能性もある。
・DMがある場合、MMC濃度を濃くしたり、作用時間を長くする方がいいかも知れない。

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