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British Journal of Ophthalmology

2012
96巻

全色盲は進行性疾患か

British Journal of Ophthalmology 96巻 (9号) 2012

Early signs of longitudinal progressive cone photoreceptor degeneration in achromatopsia.
Thomas MG et al(UK)
Brit J Ophthalmol 96(9): 1232-1236, 2012
・高解像度OCT(縦方向3μm)を使用して全色盲の中心窩の画像を5名の小児と3名の成人で平均16ヶ月(10-25ヶ月)の間隔をおいて2回測定し、IS/OS接合部、中心窩厚、外顆粒層厚を解析した。
・経過を見ると、10歳未満の小児(症例1-5)ではIS/OS面に進行性の形態変化があったが、40歳以上の患者(症例6-8)では変化はみられなかった。
・症例1,2では、中心窩のIS/OSの断絶が高反射帯に進展しており、症例3では初回にみられた高反射帯がIS/OS断裂となり、小さな低反射帯が発生していた。
・症例4,5では初回にみられた低反射帯が増加しており、全例で中心窩厚と外顆粒層厚が薄くなっていた。
・初期の変化は些細なIS/OSの反射の変化であり、中心窩の独特な低反射帯に進展するが、若年者にみられるこのような進行性の網膜の変化は、全色盲が進行性の疾患であり、初期に遺伝子治療を導入すれば予後が良くなる可能性のあることを示唆している。
・全色盲の中心窩の低反射帯は錐体がアポトーシスを起こした後の空胞あるいは変性産物である可能性がある。
・Adaptive Optic像では中心窩は正常者よりも暗く、密度が低くなっており、視細胞モザイクが崩壊していることが分かってきた。
・症例の選択には、Blue Cone Monochromacyを除外診断し、ERGではphotopic反応がなく、正常なscotopic反応を呈する典型的なパターン、パネルD15では症例1が2個のエラー、症例2がエラーなしであったのを除き、全例、全色盲のパターンであった。
・全例、CNGB3,CNGA3,GNAT2の対立遺伝子変異を確認した。
・経過観察中に全例、視力変化はみられなかった。

2012
96巻

網膜芽細胞腫で篩状板後方の視神経が巻き込まれていることを発見するための一般的な脳MRIの妥当性

British Journal of Ophthalmology 96巻 (9号) 2012

The validity of routine brain MRI in detecting post-laminar optic nerve involvement in retinoblastoma
Byung Joo Lee et al (Seoul, Korea)
Br J Ophthalmol 2012; 96: 1237-1241
・41人41眼、眼球摘出時平均年齢23.1か月。摘出前に5㎜スライスの脳MRIを行ない、個別に2名の放射線科医が読影し、病理組織学的診断と比較した。
・41眼中14眼は組織病理学的に篩状板後方での視神経への浸潤が確認されたが、14眼中6眼は、2名の放射線科医で共に診断されなかった。MRIの正確さ、感度、特殊性は1人の放射線科医では73.2%、35.7%、92.6%、もう1人は78.0%、42.9%、96.3%で、ほぼ同等(P<0.01)。
・3㎜以下スライスの眼窩部MRIを用いた以前の調査と比較して、5㎜スライスの一般的なMRIは網膜芽細胞腫の視神経の浸潤の発見において同等の特殊性を示したが、感度では劣っていた。
・MRIの条件としては磁場の強さ、脂肪抑制の技術、見える範囲、スライス幅などがあるが、網膜芽細胞腫の視神経への浸潤の発見には、見える範囲とスライス幅が影響する。眼窩部MRIは今回の脳全体のMRIよりも部位の狭さから、より有効となる。脳全体のMRIはまた、磁場の同時性を減少させるため十分な脂肪抑制を必要とする点でも不利となる。また、狭い部位の検査にはより薄いスライスが有利である。これらの理由により、感度の低下をきたしたと推測する。(YM)

2012
96巻

異常の無い他眼でのPCVの進行

British Journal of Ophthalmology 96巻 (9号) 2012

Development of polypoidal choroidal vasculopathy in unaffected fellow eyes
Yun Taek Kim et al (Seoul, Korea)
Br J Ophthalmol 2012; 96: 1217-1221
・片眼のみにPCVを有する患者の他眼の長期変化と血管造影上の危険因子を決定する。
・47人の患者を少なくとも12か月以上経過観察した。47眼の他眼のうち、24眼(51.1%)に脈絡膜血管拡張、27眼(57.4%)に脈絡膜血管透過性亢進、6眼(12.8%)に枝分かれした血管網(BVN)、23眼(48.9%)にICGA上、後期地図状過螢光(LGH)がみられた。活動性のPCVが認められたのは9眼(19.1%)で、そのすべてに最初からLGHがみられた。しかしながら当初LGHの特徴がみられなかった眼にはPCVは発達しなかった(P<0.001)。 PCVが発達したのは当初BVNが見られた3眼であった。しかし、明らかなBVNが無かった6眼にも進行した(P=0.08)。
・他眼にICGA上LGHが存在することは活動性PCVの発達の明らかな危険因子になると思われ、前臨床又は切迫PCVとの診断に等しいかもしれない。LGHのある眼は、活動性のポリープが無くてもPCVに進行の可能性があるとして経過観察が必要である。(YM)

2012
96巻

病的な近視眼の脈絡膜血管新生に対するベバシズマブ硝子体注射の長期結果

British Journal of Ophthalmology 96巻 (8号) 2012

Long-term results of intravitreal bevacizumab for choroidal neovascularisation in pathological myopia
Magda Gharbiya et al (Rome ,Italy)
Br J Ophthalmol 2012 ;96 :1068-1072
・近視眼の新生血管(mCNV)へのIVBの長期結果と予後に影響する因子を検討する。
・mCNV30名の32眼に3ヶ月毎に1.25mg/0.05mlIVB術前後で最良矯正視力(BCVA)とCNVの範囲を比較。年令、眼軸、BCVA、CNVの範囲、場所、PPAの範囲により予後の因子となりうるものを検討した。
・患者は病的近視(-6.0D以上又は眼軸26.5㎜以上)中心窩下又は傍中心窩CNV(傍中心窩CNVは中心窩無血管域にはかからないか、200㎛以内)。FAでCNVの漏出あり。
・継続する又は再発したFAの漏出、OCT上網膜内又は網膜下に継続する又は再発する浮腫、mCNVからの新しい網膜下出血のある場合は、同量のIVBを追加した。CNVよりのFAの漏出か、OCT上液体の貯留が無くなるまで毎月追加とした。
・術前視力30.1文字(ETDRS letters)が2年で46.6、3年で45.4。中でも特に最初の3ヶ月での改善が大きかった(P<0.0001)。 FA上漏出の継続は1年(21.9%)、2年(6.3%)、3年(0%)。中心窩下CNVよりも傍中心窩CNVの方が明らかに改善した。
・IVB療法は、3年まではmCNVの視力を改善させると証明された。IVB後はCNVが明らかに縮小したが、PDT後はむしろ拡大した報告もある。再治療を決める要因として大切なのはPPAの範囲である。脈絡膜の虚血は、VEGFを増加させる。これはCNVの活動を増加させる。ゆえにCNVのIVB治療に対する反応を減弱させる。(YM)

2012
96巻

早産の子供と満期で生まれた子供での網膜神経線維層の厚さの比較

British Journal of Ophthalmology 96巻 (7号) 2012

Retinal nerve fibre layer thickness in school-aged prematurely-born children compared to children born at term
Akerblom H et al.(Sweden)
Br J Ophthalmology 96:956-960,2012
・早産の子供たちのRNFLの厚さをOCT測って、そして満期の子供たちとの比較をすること。ROP、神経欠損あるいは早産自体が早期グループのRNFLの厚さに影響を与えたかどうか決定すること。
・早産グループ:在胎期間32週以下の子供62人(研究時の平均年齢8.6歳)
コントロールグループ:満期で標準体重の子供54人(研究時の平均年齢10.1歳)
RNFL平均の厚さと、上部、鼻側、下部、耳側のRNFLが測定された。
・RNFL平均の厚さと上部と鼻側のRNFLの厚さで、早産グループで有意に薄かった。
・満期で生まれた子供たちと比較すると、RNFLは重症ROPのある早産子供たちで減った。
・早期グループの中で、平均RNFL厚さはより重い出生体重で増加した。しかし在胎週数とは相互関係はなかった。(CH)

2012
96巻

緑内障患者の不安とうつ病に対する危険因子

British Journal of Ophthalmology 96巻 (6号) 2012

Risk factors for anxiety and depression in patients with glaucoma
Mabuchi F et al.(山梨大)
Br J Ophthalmology 96:821-825,2012
・緑内障患者における不安とうつ病に対する危険因子を評価する。
・緑内障患者408人(POAG318人、XFG43人、PACG32人とSG15人)、平均年齢は66.2±11.8歳、男性194人と女性214人
・身体的に病気の患者で最もよくある2つの心理的障害(不安とうつ病)を識別し数量化するためにHADS(the hospital anxiety and depression scale)を使用した。
HADS -不安(HADS -A)とHADS -うつ病(HADS -D)は7つの項目があり、0〜3で採点されてそれぞれの最小合計スコアは0、最大限は21。より高いスコアはより高いレベルのうつと不安を示している。
・年齢とHADS -A(P= 0.0007)に関係があった。これは、若い緑内障患者が高齢の患者と比較していっそう不安である傾向があることを示す。
・良い方の眼のHFA30-2MD値とHADS -D(P= 0.0026)と関係があった。視機能を維持することについて、いっそう不安であったかもしれない。
・医者と共同医療スタッフが緑内障患者の不安とうつ病のリスク要因に気付いて、そして不安とうつ病を引き起こすのを阻止するため眼科的ケアと同様、適切な心のケアを緑内障患者に提供することは不可欠である。(CH)

2012
96巻

糖尿病網膜症での網膜周辺部の虚血の検討

British Journal of Ophthalmology 96巻 (5号) 2012

Peripheral retinal ischaemia, as evaluated by ultra-widefield fluoerscein angiography, is associated with diabetic macular oedema.
Wessel MM et al(NY USA)
Brit J Ophthalmol 96(5): 694-8, 2012
・70例122眼の未治療の糖尿病網膜症者で、Optos 200Txを用いた超広角蛍光眼底検査での網膜虚血と黄斑浮腫の存在との関連を検討した。
・76眼(62%)で網膜虚血がみられ、DMEの存在と周辺網膜虚血の存在とは有意に相関があった(p<0.001)。
・網膜虚血のある患者では、ない患者に比較してDMEを持っている頻度が3.75倍であった(95%CI=1.26-11.13 p<0.02)。

2012
96巻

NTGにおける視神経クモ膜下腔灌流

British Journal of Ophthalmology 96巻 (4号) 2012

Cerebrospinal fluid exchange in the optic nerve in normal-tension glaucoma.
Killer HE et al(MD USA)
Brit J Ophthalmol 96(4): 544-8, 2012
・正常眼圧緑内障(NTG)では脳脊髄液(CSF)圧が低く、眼圧と視神経ONのクモ膜下腔(SAS)との篩板前後圧勾配が大きい事が軸索の死亡に関与すると考えられており、NTGではPOAGよりも頭蓋内圧(ICP)が低く、高眼圧症ではICPが正常者よりも高いことも報告されている。
・今回は、頭蓋内と視神経のクモ膜下腔(SAS)との間でのCSFの交換について、NTGとコントロールとの間に差があるかどうかを検討した。
・18名のNTG(男11、女7、64.9±8.9歳)と4名の正常者(62.8±18.4歳)で脳、眼窩のCT撮影を大槽造影法cisternographyと一緒に行った。
・脊髄穿刺を行い、圧が20cm水柱以下であることを確認後、10mlの造影剤を髄腔内に注入し、頭蓋内腔とON周囲のSAS内の造影剤濃度を測定した(単位はHU)。
・正常者ではON周囲のSAS内の濃度は529±286HU、視交差部の槽内濃度は531±208HUであったが、NTGではON周囲のSAS内濃度は144±88HUと有意に低かったが、槽内濃度は566±166HUで有意差がなかった。
・このことは、NTGでは基底槽とON周囲のSAS間のCSFの交換が低下しており、ON周囲のCSFのturnoverが減少していると考えられる。
・これは髄膜上皮細胞MECの数や体積が増え、ON周囲のSASを狭くし、CSFの流れに対する抵抗を増やしていることによるかもしれない。

2012
96巻

糖尿病網膜症における網膜血管内酸素飽和度

British Journal of Ophthalmology 96巻 (4号) 2012

Retinal oxygen saturation is altered in diabetic retinopathy.
Hardarson SH et al(Iceland)
Brit J Ophthalmol 96(4): 560-3, 2012
・網膜血管の酸素飽和度が糖尿病者と正常者で異なるかどうかを検討した。
・眼底カメラに取り付けた測定装置で586nmと605nmの色光の吸収度を測定することで、網膜酸素濃度を調べた。
・正常者では動脈は93±4、静脈では58±6%であったが、DM者では動脈が101±5、静脈が68±7であり、いずれも有意に高かったが(p<0.001)、動静脈差には有意差がなかった(p=0.53)。
・これは、毛細血管のnon-perfusionや短絡、毛細血管壁の肥厚、糖尿病者での糖化されたヘモグロビンの酸素への親和性の高さが影響しているだろう。
・糖尿病では網膜組織の一部は酸素不足に陥っているのに、大血管では酸素飽和度が高いことがわかった。

2012
96巻

虹彩腫瘍の侵襲の少ない生検法

British Journal of Ophthalmology 96巻 (3号) 2012

Trans-corneal fine cannula aspiration: Rycroft cannula aspiration technique for sampling iris tumours.
Matthews BJ et al(UK)
Brit J Ophthalmol 96(3): 329-31, 2012
・25GのRycroft cannulaを用いた、経角膜吸引での虹彩腫瘍の生体検査方法の有効性について述べた。
・前房穿刺後、前房虚脱が発生しないように粘弾物質を注入し、生検を行った。
・12例全例で組織検査が可能であり、10例が虹彩メラノーマと診断された。

2012
96巻

コーツ病に対するbevacizumabの効果と副作用

British Journal of Ophthalmology 96巻 (3号) 2012

Bevacizumab for Coats’ disease with exudative retinal detachment and risk of vitreoretinal traction.
Ramasubramanian A et al(PA USA)
Brit J Ophthalmol 96(3): 356-9, 2012
・Coats病で、全あるいは部分網膜剥離があり、網膜血管拡張部は通常の光凝固 and/or 冷凍凝固と硝子体内bevacizumab(1.25mg/0.05ml)を行った8症例を検討した。
・平均年齢は88カ月(7-240)で、5名は男児で、stageは2(1例)、3a(3例)、3b(4例)である。
・全例に網膜剥離(平均8時間分)があり、FAGでの周辺網膜虚血が7例、血管新生は0例である。
・治療は冷凍凝固が8例、光凝固が4例、bevacizumabが8例(注射回数の中間値は1回:平均1.75回:1-4回)で、平均経過観察期間は8.5ヶ月、全例で網膜症の軽快があり、全例で網膜下液の軽快、6例で網膜滲出の軽快がみられた。
・しかし、Bevacizumab注射後、平均5ヶ月後、平均1.75回の注射後に、硝子体線維化が4例で発生し、3例では牽引性網膜剥離に進展した。
・Bevacizumabを使用しない場合には、通常、この様な牽引性変化は見られないので、注意が必要。

2012
96巻

眼窩眼瞼の血管腫に対するプロプラノロールの効果

British Journal of Ophthalmology 96巻 (3号) 2012

Efficacy of systemic propranolol for severe infantile haemangioma of the orbit and eyelid: a case study of eight patients.
Thoumazet F et al(France)
Brit J Ophthalmol 96(3): 370-4, 2012
・眼科の重症な毛細血管腫8例に対してプロプラノロール内服を投与しその効果を調べた。
・propranololはアドレナリン作動性β1受容体とβ2受容体を遮断する降圧剤で、狭心症や頻脈治療にも使用される。
・3例は眼窩血管腫が生命にかかわる程度に強く、最初に全身的ステロイドとβ遮断剤で治療。
・5例はpropranololだけで治療した。全例1日当たり2mg/体重kgのpropranololを投与した。
・治療開始年齢は2-36ヶ月で、投与期間は3-10ヶ月、経過観察期間は6-30ヶ月。
・効果が十分あり、第1選択として使うのが良いと考えた。

2012
96巻

静脈閉塞症に対する抗VEGF治療時の黄斑浮腫への考慮

British Journal of Ophthalmology 96巻 (2号) 2012

Macular ischaemia: a contraindication for anti-VEGF treatment in retinal vascular disease?
Manousaridis K et al(UK)
Brit J Ophthalmol 96(2): 179-84, 2012
・VEGFを阻害することは、理論上は網膜の完全性に対して有害である可能性がある。
・黄斑浮腫と黄斑虚血が混在する患者は多数おり、どちらが、どの程度、視力障害に関与しているかを決めることは困難である。
・殊に基礎に虚血がある患者、あるいは抗VEGF剤が頻回投与された患者では、長期的にみれば黄斑虚血を悪化させている可能性がある。
・黄斑虚血のある患者で、抗VEGF剤を長期間投与するかどうかの判定には、黄斑厚測定だけでは不十分で、FA眼底検査を繰り返す必要があるだろう

2012
96巻

高度近視性の黄斑円孔治療に対する網膜分離の影響

British Journal of Ophthalmology 96巻 (2号) 2012

Retinoschisis: a predictive factor in vitrectomy for macular holes without retinal detachiment in highly myopic eyes.
Jo Y et al(大阪大)
Brit J Ophthalmol 96(2): 197-200, 2012
・高度近視性の黄斑円孔(HMMHs)に対する硝子体手術を行った22眼で、網膜分離を伴った10眼と、網膜分離のない12眼とで予後を比較した。
・網膜分離群は年齢が有意に高く(66.7±7.1:57.4±4.2 p<0.01)、術前logMAR値が悪く(0.81±0.21:0.55±0.31 p<0.05)、後部ぶどう腫が大きかった(1639±396:1129±295μm p<0.05)。
・術前の最高視力と網膜分離症の有無は有意に術後最高視力と相関していた(それぞれ、p<0.01 p=0.01)。

2012
96巻

手術室で硝子体注射を行う利点はあるか?

British Journal of Ophthalmology 96巻 (2号) 2012

Intravitreal injections: is there benefit for a theatre setting?
Abell RG, Vote BJ, et al.(Australia)
Br J Ophthalmol 96(2):1474–1478, 2012
・硝子体注射を行うにあたって外来の専用部屋(クリーンルーム)と手術室での眼内炎の発症率を比較
・2006年3月-2012年3月、同一術者がranibizumabまたはbevasizumabの硝子体注入を行った12,249眼
(2006~2008は全て手術室、その後は外来にクリーンルームが作られ33%が外来、67%が手術室)
・外来の注射専用部屋;手術室の環境に近づけ標準ガイドラインを超える環境;天井高2m以上、表面ビニール、層状・ハイフローではないが高効率の空気フィルター、部屋には4人以上入らない、手術室に順じたチェックポイントなど
・外来で施行した3,376眼のうち4眼で眼内炎発症、手術室で施行した8873眼には眼内炎発症せず(p=0.006)
【結論】硝子体注射を行うには手術室の環境が適しており、有意に感染性眼内炎の発症が少なかった(MK)

2012
96巻

裂孔原性網膜剥離の他眼の疫学調査結果

British Journal of Ophthalmology 96巻 (1号) 2012

The fellow eye in retinal detachment: findings from the Scottish Retinal Detachment Study.
Mitry D et al(UK)
Brit J Ophthalmol 96(1): 110-3, 2012
・Scottish Retinal Detachment Studyとして、2年間のScotland全体の初発の裂孔原性網膜剥離RRDの全例1202例と、1130眼(94%)の他眼の臨床所見を調べた疫学調査である。
・8.4%(95/1130)の他眼に網膜全層裂孔があり、格子様変性は14.5%(164/1130)にみられた。
・13%(148/1130)の他眼の最良視力は6/18以下であり、その原因の2位は以前に存在したRRDであった。
・7.3%(88/1202)は両眼にRRDがあり、そのうちの約60%は黄斑部が剥離する前に見つかっていた。
・両眼のRRDと片眼のRRDとの比較では、黄斑部ON率は、62.8%:40.2%、偽水晶体眼率は、40.0%:20.1%であった。

2011
95巻

糖尿病患者と緑内障発症との関連

British Journal of Ophthalmology 95巻 (12号) 2011

Diabetes: a risk factor for glaucoma?
Primus S et al(IN USA)
Brit J Ophthalmol 95(12): 1621-2, 2011
・2020年には全米で、緑内障患者は330万人、糖尿病患者は720万人に達し、DMのうち、45%近くが網膜症を発症すると推計されている。
・球後や網膜微小循環の異常は糖尿病と緑内障の両者にみられる。
・一酸化窒素(NO)とエンドセリン-1(ET-1)の影響が考えられている。
・NOは血管平滑筋拡張を来たす。低NOは血管収縮を来たすが、異常に高いNOは網膜神経毒となる。
・DMでの高血糖はNO産生を抑制するとともに血管平滑筋細胞のNOに対する感受性を低下させ、血管収縮を来たす。
・OAG患者はNOの血中濃度が異常であるとの報告もある。
・また、内皮のNO生成酵素のいくつかの遺伝子多型は緑内障発症のリスクを上昇させることに関連し、緑内障病態におけるNOの機構的な重要性を示している。
・NOと反対に血管収縮を来たすET-1は、緑内障患者の前房水中に高濃度であることが分かっている。
・NOとET-1の緑内障とDMにおける役割は両疾患の血管機能不全における潜在的な機構である可能性がある。

2011
95巻

弱視者の黄斑部厚は薄くなっているか

British Journal of Ophthalmology 95巻 (12号) 2011

Analysis of spectral-domain optical coherence tomography measurements in amblyopia: a pilot study.
Park KA et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 95(12): 1700-6, 2011
・20名の片眼弱視の黄斑部の水平、垂直断をとり、網膜厚を測定した。
・中心窩、黄斑部内部(上下鼻耳側の490と500μmの平均値)、黄斑部外部(上下鼻耳側の1490と1500μmの平均値)を測定し、健眼の同部位と比較した。
・弱視眼では神経節細胞層+内網状層が、鼻耳側では黄斑部内外部とも、上下側では黄斑部外部で、有意に薄かった。
・網膜の他の層(神経線維層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層)でも、いくつかの網膜部位で有意差があった。
・この仕事では、両眼の屈折度差が1.5D未満の症例を集めたためか、黄斑部厚には弱視眼と健眼とには有意差は見られなかった。

2011
95巻

OCT測定時の頭部傾斜に対する注意

British Journal of Ophthalmology 95巻 (11号) 2011

The effect of head tilt on the measurements of retinal nerve fibre layer and macular thickness by spectral-domain optical coherence tomography.
Hwang YH et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 95(11): 1547-51, 2011
・30名の若い健常者の右眼で、OCTを用いてRNFLと黄斑厚を測定した。
・測定は頭をまっすぐにした時と、頭を右傾斜ならびに左に傾斜させて行った(測定時には視神経乳頭の回転は平均で8度から9度)。
・RNFLは上方50度、下方200度当たりが一番厚いが、頭傾斜によって測定値がずれるため、結果の評価に注意が必要である。

2011
95巻

細菌性眼内炎に対するステロイド硝子体内注入の効果

British Journal of Ophthalmology 95巻 (10号) 2011

Adjunctive use of intravitreal dexzmethasone in presumed bacterial endophthalmitis: a randomised trial.
Albrecht E et al(South Africa)
Brit J Ophthalmol 95(10): 1385-8, 2011
・細菌性眼内炎に対し、硝子体内dexamethason注射の追加治療が有効かどうかを検討した。
・対象は白内障術後眼内炎(32例)、瀘過泡関連眼内炎(13例)、その他の眼内炎(17例)で、硝子体内へceftazidime (2.225mg/0.1ml)、vancomycin (1mg/0.1ml)と、dexamethason (0.4mg/0.1ml:30例)あるいはプラセボー注射(32例)を行った。
・この注射は、必要があれば48時間後に再投与した。
・真菌などの非細菌性眼内炎が疑われた場合や、硝子体手術を行った場合は対象としていない。
・Snellen視力の改善はdexamethason群で2.79ライン、プラセボー群で1.8ラインであり、有意差はなかった。
・原因疾患群で分けた場合、白内障術後眼内炎では、dexamethason群は4.1ラインで、プラセボー群は2.7ラインより有意に良くなっており(p=0.33)、3ヶ月後の視力0.33以上の率はdexamethadon群が65%、プラセボー群が36%であった。
・Dexamethason投与による副作用もなかった事から、白内障術後眼内炎にはdexamathason硝子体内投与が安全で有効な方法と考えた。

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