Effect of herpes simplex keratitis scar location on bilateral corneal nerve alterations: an in vivo confocal microscopy study
Chareenun Chirapapaisan,et al.( Thailand)
Br J Ophthalmol. 2022 Mar;106(3):319-325.
・目的:生体レーザー共焦点顕微鏡法 (IVCM) を使用して、単純ヘルペスウイルスが原因の瘢痕位置が両側角膜上皮下神経叢に及ぼす影響を評価すること。
・対象と方法:片側単純ヘルペスウイルスが原因の角膜瘢痕がある39人39眼(研究グループ)と、年齢と性別が一致した24人24眼の健康なボランティア(コントロールグループ)。
・研究グループ (39眼) は、角膜瘢痕の位置に基づいてさらに 2 つのサブグループに分けられた。角膜瘢痕の位置が角膜の中央 5 mm ゾーン内にある場合は中央瘢痕 (CS 21眼)、それより外側は周辺瘢痕とした(PS 18眼)。複数の瘢痕のある患者は除外された。
・結果:研究グループの神経密度は、中心角膜 および周辺角膜 (9.13±0.98 and 6.26±0.53 mm/mm2, p<0.001) で、コントロールグループ(22.60±0.77 and 9.88±0.49 mm/mm2)より有意に減少していた。同様に、研究グループの健眼もコントロールグループと比較して、中心部 (17.63±0.91 mm/mm2、p=0.002) および周辺部 (8.36±0.45 mm/mm2、p=0.016) で有意な神経損失を示した。
・CS 眼では中心角膜 (8.09±1.30 mm/mm2)および角膜周辺全体(5.15±0.62 mm/mm2)の両方でコントロールグループと比較し有意に神経密度が減少していた。 (p<0.001)。
・PS眼では中心角膜 (10.34±1.48 mm/mm2, p<0.001)および周辺角膜の瘢痕が認められた側のみ(4.22±0.77 mm/mm2, p<0.001) 神経密度が減少していた。
・研究グループの健眼の神経密度は、CS 眼では中心角膜で減少したが(16.88 ±1.27 mm/mm2、p=0.004)が減少したが、周辺は減少しなかった。PS 眼では患側の瘢痕場所を反映する部分のみ減少が認められたが(7.20±0.87 mm/mm2、p=0.032)、中央は減少しなかった。
・角膜知覚は患眼の角膜全体で低下していた。健眼は低下していなかった。
・結論: HSV が原因の角膜瘢痕を有する患者は、両側角膜上皮下神経密度の減少を示した。そのため、両眼の神経栄養性角膜症が発生する可能性が高くなり、注意する必要がある。
・両眼に影響するのは、第一に神経系の中枢調節が健眼の神経ダウンレギュレーションを開始する可能性、第二に三叉神経脊髄路は一度脊髄まで下降して左右交差してから再度上行することから、HSV が罹患した眼から対側の眼に直接拡散する可能性考えられる。(CH)
Compression sutures combined with intracameral air injection versus thermokeratoplasty for acute corneal hydrops: a prospective-randomised trial.
Zhao Z et al(China)
Brit J Ophthalmol 105(12): 1645-1650, 2021
・円錐角膜の急性水腫に対して、角膜圧迫縫合+前房内空気注入(CSAI)と角膜熱形成(TKP)の結果を20例20眼の症例で、6ヶ月の経過を観察した。
・両群とも2週間後には浮腫は軽減した。
・角膜瘢痕の最大厚みは両群に有意差はなかった。
・6か月後の最高視力のlogMARはCSAIは0.52(0.37-0.85)、TKPは0.96(0.70-1.34)で、CSAIの方が有意に良かった(p=0.042)。
・また、角膜内皮密度はCSAIが2677.8±326.7、TKPが1955.3±298.1cells/mmで、有意にCSAIが良かった(p<0.001)。
・角膜曲率でもCSAIの方がより平坦になっていた(52.13±4.92:63.51±5.83D p<0.001)。(TY)
When gold standards change: time to move on from Goldmann tonometry?
Gazzard G et al(UK)
Brit J Ophthalmol 105(1): 1-2, 2021
・眼圧測定にはGoldmann applanation tonometry(GAT)が標準になっている。
・GATは角膜頂点を平坦にする力から眼圧を推定しているため、角膜厚について重大な仮定をしており、角膜厚が薄い場合には低く、厚い場合には高い眼圧となるし、角膜の硬さによって値は変化し、また再測定時の測定誤差が±2mmHg程度ある。
・Ocular Response Analyzer(ORA)は空気で角膜を変形させることによって角膜hysteresisを測定する。
・この角膜hysteresisは緑内障の視野進行と関連があるとの報告が多くある。
・この予測にはORAの方がGATよりも良いという報告も多い。
・緑内障の進行測定にはGATからORAに移行することも良いのではないか(TY)
Upside-down position leads to choroidal expansion and anterior chamber shallowing: OCT study.
Li F et al(China)
Brit J Ophthalmol 104(6): 790-794, 2020
・脈絡膜厚の変化が前房深度に影響するかどうかを検討した。
・34例68眼の健常者で、脈絡膜厚の変化を調査する指標として1.5分間の倒立検査を行ない、15分間後の変化をみた。
・倒立で脈絡膜厚は226.39±52.44から238.34±54.84μに増加し(p<0.001)、複雑な計算式で求めた脈絡膜循環指数は0.3357±0.0251から0.3004±0.0190に減った(p<0.001)
・前房深度は3.21±0.22から3.13±0.21mmに減少した(p=0.075)。
・強膜岬から500μの部位の隅角の広さは0.65±0.24から0.58±0.20に狭くなった(p=0.007)。
・倒立による眼圧上昇は上強膜静脈圧の上昇だけでは説明できない。脈絡膜厚の増大が隅角閉塞のメカニズムのひとつであろう。(TY)
Changes in intraocular pressure during reading or writing on smartphones in patients with normal-tension glaucoma.
Ha A et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 104(5): 623-628, 2020
・正常眼圧緑内障患者でスマートフォンを読んだり書いたりすると眼圧が上がるのか、濾過手術既往眼ではどうかについて検討した。
・40例40眼のNTG眼と、38例38眼の濾過手術後のNTG眼で検討した。
・100ルックスの照明下でスマートフォンでの仕事を5、15,25分行い、仕事後の5、15分で検査した。
・Baseline眼圧は点眼群は13.9±1.6、濾過群は13.6±1.7mmHgであったが、仕事5分後は点眼群は15.5±1.8と11.5%の眼圧上昇(p<0.001)、25分後は17.5±2.2と25.9%の眼圧上昇があった(p<0.001)。
・仕事の中止後5分でBaseline以下に戻った(13.1±1.7)。
・濾過群では5分後に14.9±1.7と9.4%上昇(p<0.001)したが、25分後も15.0±1.6と10.3%にとどまり、仕事終了後5分後は14.0±1.9と2.8%であった。
・スマートフォンで眼圧は上昇するが濾過群でその変動は小さかった。(TY)
Appositional angle closure and conversion of primary angle closure into glaucoma after laser peripheral iridotomy.
Qiu L et al(China)
Brit J Ophthalmology 104(3): 386-391, 2020
・レーザー虹彩切開LPI後の隅角接触(appositional angle closure:AppAC)とPACが原発閉塞隅角緑内障PACGへ移行する関連を調べた。
・中国人のLPI後のPACの約25%が5年以内にPACGになると言われている。
・5年以上で5回以上の視野結果のあるLPIを受けた患者について検討した。
・AppACの診断は超音波検査で、線維柱帯と虹彩が同位置にあった場合とした。
・PACのPACGへの移行の診断は、緑内障性視神経症の発症と対応した視野欠損の発生があった場合とした。
・58例80眼の平均経過観察期間は6.67±1.33年であり、PACへの移行は20眼で見られ、その頻度はAppACが2象限を越えたものでは7/12(58.3%)で、2象限以下であったもの13/68(19.1%)より有意に多かった(p<0.005)。
・移行しなかった群と比較して移行群では年齢(67.0±8.63:61.15±8.24)と垂直C/D比(0.52±0.16:0.39±0.13)がいずれも有意に高かった(p<0.05)。
・以上から、高齢で、垂直C/D比が大きく、AppACが広く、眼圧変動の大きい方がPACGに移行しやすいことが分かった。(TY)
Effect of partial posterior vitreous detachment on spectral-domain optical coherence tomography retinal nerve fibre layer thickness measurements.
Liu Y et al(WI USA)
Brit J Ophthalmol 104(11): 1524-1527, 2020
・部分的な後部硝子体剥離(partial PVD:pPVD)がSD-OCTでの傍乳頭網膜神経線維層RNFL厚測定に影響があるかどうかを検討した。
・101例101眼の緑内障疑い者を55眼のpPVD(+)眼と46眼のpPVD(-)眼に分けて検討した。
・pPVD(-)眼には後部硝子体が完全に接着しているものと、後部硝子体が完全に剥離した両者が含まれる。
・RNFL厚はpPDV(+)群では96.7±9.9であり、pPVD(-)群の90.7±14.6μよりも有意に厚かった(p=0.02)。
・殊に下方ではp=0.004、上方ではp=0.008と有意差が強かったが、鼻側(p=0.10)、耳側(p=0.25)では有意差がなかった。
・加齢による変化を考慮しても有意差があった(p=0.05)。
・この理由は一つには硝子体の牽引力が外境界膜に伝わり、RNFLを厚くしているためであろう。
・また、硝子体乳頭牽引症候群では視神経乳頭への牽引力が視神経乳頭の腫脹を来し、網膜へも影響している可能性もある。
・OCTでRNFL厚を検査する場合、pPVDについても考慮する必要があるだろう。(TY)
Comparison of various surgical techniques for optic disc pit maculopathy: vitrectomy with internal limiting membran (ILM) peeling alone versus inverted ILM flap ‘plug’ versus autologous scleral ‘plug’.
Babu N et al(India)
Brit J Ophthalmol 104(11): 1567-1572, 2020
・23例の視神経乳頭ピット黄斑症(ODP-M)に対して、内境界膜剥離のみのGrp1(8例)、翻転内境界膜で蓋をしたGrp2(7例)、自己強膜で蓋をしたGrp3(8例)の3群に分け、手術結果を検討した。
・手術前の状況には3群に差はなかった。
・術後、全ての群で中心窩厚と網膜下液SRFは減少した(p<0.05)。
・完全な解剖学的復位はGrp1,2,3で、25.0%、85.7%、87.5%、視機能改善は12.5%、28.6%、12.5%であった。
・Grp2の1眼は術後1ヶ月目に全層黄斑円孔となった。
・翻転内境界膜であっても強膜であっても、ピットに蓋をすることは有効であった。
・手術方法は全例でSF6ガス置換を行い、1週間のうつ伏せ姿勢をとった。
・Grp2では乳頭耳側のILMをdiamond-dust membrane scraper(DDMS)を使用して翻転させた。
・Grp3では1x1mmの強膜表層を25Gトロカールを23Gに変えて硝子体内へ移動させ、DDMSを用いてピット部に蓋をした。(TY)
Role of internal limiting membrane peeling in the prevention of epiretinal membrane formation following vitrectomy for retinal detachment: a randomised trial.
Kumar V et al(India)
Brit J Ophthalmol 104(9): 1271-1276, 2020
・裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術時のILM剥離と黄斑前膜ERM形成について検討した。
・症例は黄斑剥離期間が3ヶ月以内、proliferative vitreoretionpathy gradeがC1以下、黄斑症の既往がない患者60眼である。
・PPVのみ行ったGroup1(30眼)、ILM剥離を行ったGroup2(30眼)に分けて検討した。
・剥離は全例治癒したが、黄斑部ERMはGrp1では6眼20%、Grp2では0眼であった(p=0.002)。
・最終的なCDVAは両群間で有意差はなかった(p=0.43)。
・神経線維層障害はGrp1では0眼、Grp2では12眼40%で発生したが(p<0.001)、最終視力には影響していなかった(p=0.84)。
・最終CMTはGrp1では266.0±37.5μ、Grp2では270.0±73.7であり、有意差はなかった(p=0.62)。(TY)
Real-world management of treatment-naïve diabetic macular oedema in Japan: two-year visual outcomes with and without anti-VEGF therapy in the STREAT-DME study
Masahiko Shimura, et al. (東京医科大学)
Br J Ophthalmol. 2020;104 (9):1209-1215.
目的:治療歴のない糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する2年間の治療後の最高矯正視力(BCVA)の結果を調査すること。
対象と方法:2010年から2015年の間、2年間治療、経過観察できた治療歴のないDMEの合計2049眼(27施設)。治療パターンによって、抗VEGF単剤療法グループ(グループA)、抗VEGF療法+薬剤および他の治療の併用療法グループ(グループB)、抗VEGF療法なしのグループ(グループC)に分類された。
DMEの治療は次のように分類:(1)抗VEGF剤(硝子体内ベバシズマブ(IVB:1.25 mg / 0.05 mL)、ラニビズマブ(IVR:0.5 mg / 0.05 mL)またはアフリベルセプト(IVA:2.0 mg / 0.05 mL)) 、(2)コルチコステロイド療法(TA療法(硝子体内TA(IVTA:4 mg / 0.1 mL)またはテノン嚢下TA療法(STTA:20 mg / 0.5 mL)))、(3)黄斑領域のレーザー光凝固術(4)硝子体切除術。
BCVAが0.3 logMAR(15文字)増加した場合「改善された」と定義され、0.3logMAR(15文字)減少した場合「悪化した」と定義。
結果:A群427眼(20.9%)、B群807眼(39.4%)、C群815眼(39.8%)のtotal 2049眼。
全体では、ベースラインBCVAは0.44±0.37logMARで、最終BCVAは0.40±0.42logMARに有意に改善した(p <0.001)。平均改善は-0.04±0.40logMAR。20/40以上の最終BCVAが46.3%で得られた。
ベースラインCMTは443.8±154.8µmで、最終CMT 335.6±154.8 µm(p <0.001)と大幅に減少し、CMTの改善は-108.2±186.8 µmだった。合計451眼(22.0%)が「改善」され、289眼(14.1%)が「悪化」した。
1234眼(60.2%)が2年間に抗VEGF剤を投与され、平均投与回数は3.8±3.3回。さらに、1077眼(52.6%)はTA 2.0±1.3回を受け、746眼(36.4%)は黄斑光凝固術1.9±1.4回を受け、597眼(29.1%)は硝子体切除術1.1±0.3回を受けた。
治療パターンに応じた2年間の結果
グループA(427眼)では、ベースラインBCVAは0.45±0.35で、最終BCVA 0.37±0.42と大幅に改善した(p <0.001)。ベースラインCMTは446.4±144.1µm、最終CMT 329.0±126.5 µmと大幅に減少した(p <0.001)。
105眼(24.6%)が「改善」し、51眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは211眼(49.4%)で20/40よりも良好だった。427眼すべてに抗VEGF剤を投与し、2年間で平均4.3±3.6回。IVB 191眼(2.0±1.4回)、IVR 224眼(3.7±3.0回)、IVA 138眼(4.7±3.3回)だった。
グループB(806眼)では、ベースラインBCVAは0.48±0.36で、最終BCVAは0.46±0.40と有意な変化はなかった(p = 0.2253)。ただし、CMTは472.8±160.1 µmから348.6±151.1 µmに大幅に減少した(p <0.001)。
188眼(23.3%)が「改善」し、141眼(17.5%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは314眼(38.9%)で20/40よりも良好だった。
806眼すべてに抗VEGF剤が投与され、2年間で平均3.6±3.1回。IVB 444眼(2.4±2.2回)、IVR 354眼(3.1±2.6回)、IVA 198眼(3.7±2.8回)だった。
他の治療法は、524眼(64.9%)がTA療法を受け(2年間で2.1±1.4回、IVTA 101眼(1.8±1.2回)とSTTA 458眼(2.0±1.3回)を含む)、361眼(44.7%)が黄斑光凝固術、295眼(36.6%)が硝子体切除術を受けた(表3)。
グループC(815眼)では、ベースラインBCVAは0.40±0.38であり、最終BCVA 0.35±0.44(p <0.001)と大幅に改善した。CMTは413.7±149.2 µmから326.2±133.5 µm(p <0.001)に大幅に減少した。
158眼(19.4%)が「改善」し、97眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは424眼(52.0%)で20/40よりも良好だった。
553眼(67.9%)が2年間にわたってTA療法(1.9±1.2回)を受け、そのうち61眼がIVTA 61眼(1.7±1.0回)、508眼がSTTA 508眼(1.9±1.2回)、385眼(47.2%)が黄斑光凝固術、302眼(37.1%)が硝子体切除術を受けた。
BCVAの改善は、グループ間で有意差を示し、グループAよりもグループBで悪化した(p = 0.020)。ベースラインBCVAは他のグループよりもグループCで有意に良かった(p <0.001)が、最終的なBCVAは他のグループよりもグループBで有意に悪かった(p <0.001)。
結論:ベースラインBCVAが20/40以上の症例の68.0%が最終BCVA20/40より良好だったが、ベースラインBCVAが20/40以下の症例だと31.5%だった。BCVAが悪化する前に、DMEの治療を開始する必要がある。
DMEの治療の最終目標は20/40を超える社会的に有用なBCVAを維持することであるが今回の調査ではわずか46.3%だった。 (CH)
Thinning rates of retinal nerve layer and ganglion cell-inter plexiform layer in various stages of normal tension glaucoma.
Inuzuka H et al(岐大)
Brit J Ophthalmol 104(8): 1131-1136, 2020
・黄斑部の網膜神経線維(mRNFL)、黄斑部の節細胞内網状層(mGCIPL)、視神経乳頭周囲神経線維層(cpRNFL)を218眼の正常眼圧緑内障NTGで調べた。
・NGTの218眼をMDが軽度(MD>-6dB)、中等度(-6dB≧MD≧-12dB)、高度(-12dB>MD>-20dB)に分け、mRNFL、mGCIPL、cpRNFL厚の年間変化量を解析した。
・この3群間で、この3つの厚みの初期値には、上鼻側のmRNFLを除き、全ての象限で有意差があった(p<0.0001)。
・mRNFL、mGCIPL、cpRNFL厚の変化量は-0.38±0.32μm/y、-0.62±0.46μm/y、-0.86±0.83μm/yであった。
・mRNFLとmGCIPLの年間変化量はどの象限でも3群間に有意差はなく同じ様に菲薄化が進んでいたが、cpRNFL厚の年間変化量は全ての象限で3群間に有意差がみられ(全てp<0.0001)、進行した群程、菲薄化の進行度が遅くなっていた。(TY)
Early transient intraocular pressure spike after cataract surgery in highly myopic cataract eyes and associated risk factors.
Zhu X et al(China)
Brit J Ophthalmol 104(8): 1137-1141, 2020
・高度近視を伴う白内障(HMC)で白内障手術後の一過性眼圧上昇について検討した。
・眼圧測定は術前、1日後、3日後、1W後、3M後であり、眼軸ALや前房深度ACD、乳頭偏位、β帯萎縮(β-PPA)なども術1週間後に写真撮影して計測した。
・94例94眼のHMCと、67例67眼の加齢白内障のCtrl群で調査した。
・術1日目の一過性眼圧上昇はCtrl群で10%、HMC群で28%で有意差があった(OR=3.277 p<0.05)。
・一過性眼圧上昇のあったHMC群はスパイクのなかったHMC群に比較して、男性が多く、ALが長く、ACDが浅く、乳頭tiltが大きく、β-PPAが大きかった(いずれもp<0.05)。
・多変量解析でも同様であった(p<0.05)。(TY)
Upside-down position leads to choroidal expansion and anterior chamber shallowing: OCT study
Li F, Li H, Yang J, et al(China)
British J Ophthalmol 104(5):790-794, 2020
【背景】
脈絡膜厚(CT)の動的変化が浅前房化を引き起こすかどうかを調べる
【方法】
健常ボランティア34名
脈絡膜厚(CT)の動的変化を調べるため、被験者は1.5分間、上下逆さまの姿勢をとった
眼圧(iCareで測定)、脈絡膜・前房のOCT画像を、ベースライン時・逆さま姿勢後・15分間安静にした後に取得
眼圧・前房深度・脈絡膜血流の変化を比較
【結果】
34名の被験者の68眼を解析
1.5分間逆さにした後、CTは226.39±52.44μmから238.34±54.84μmへと有意に増加(p<0.001)。
脈絡膜Flow indexは逆さ姿勢で0.3357±0.0251から0.3004±0.0190に減少し、前房深度(3.21±0.22mm→3.13±0.21mm、p<0.001)と強膜岬から500μmでの隅角開口距離(0.65±0.24mm→0.58±0.20mm、p=0.007)の減少が認められた
Pearson相関分析では、ベースライン時のCTとCT増加が正の関係にあることが示された(p=0.001)。
【結論】
座位から逆立ち姿勢に体位を変化させると、脈絡膜肥厚、浅前房化、脈絡膜血流低下を伴う眼圧上昇が認められた。今回のデータは脈絡膜肥厚と前室浅化の関係のエビデンスを示すものであり、隅角閉鎖の病態との関連性を示唆するものである(MK)
Changes in intraocular pressure during reading or writing on smartphones in patients with normal-tension glaucoma
Ahnul Ha et al (Koria)
Br J Ophthalmol 104(5):623-628, 2020
40名の点眼治療中の緑内障患者と38名のレクトミー手術後の緑内障患者を対象
100ルクスの暗い環境でスマートフォンを用いて読書、タイピングを実施
すべての患者は治療前眼圧より最低20%眼圧下降を得られている。
結果
点眼治療中の患者では5分後に眼圧上昇し、25分まで上昇を続けた(13.9mmHg→17.5mmHg)
レクトミー術後患者では5分後は上昇していたがその後有意な上昇はなかった(13.6mmHg→15.0mmHg)
両群とも作業中止5分後には作業前のレベルに戻った。
これまでの報告で
眼圧上昇の原因として1)調節と輻輳、2)外眼筋の収縮、3)心理生理学的なストレス、4)ドライアイ、5)首を曲げた姿勢 が示唆されている。
また、正常者でもスマホ使用にて眼圧上昇の報告有り
眼圧の変動は視野障害の危険因子でもある
ただし、今回の程度の変化が緑内障進行にどの程度影響を及ぼすかは不明
結論
低照度下でのスマートフォン作業では、コントロールされているNTG患者の眼圧上昇をきたす可能性がある。しかし、この参加者では眼圧変動はレクトミーを受けた患者は変動が小さかった。(MM)
Effect of trabeculectomy on corneal endothelial cell loss
Kazuyuki Hirooka, et al(Japan)
Br J Ophthalmol 104(3):376-380, 2020
・117眼のレクトミー術前および術後2年までの角膜内皮細胞減少を調査
・23眼は白内障手術既往、3眼は白内障と硝子体手術既往有り
・手術既往有り群:術前 2256±541cell/mm2
・無し群:術前 2483±265cell/mm2 P=0.004
・術前 2420±357cell/mm2
・術後 6M 2324±373, 12M 2276±400, 18M 2290±398, 24M 2267±446(すべてP<0.001)
・10%以上減少した者を死亡と定義すると6M,12M,18M,24Mの生存率は91%, 85%,83%,77%であった。
・Uveitic glaucomaが内皮細胞減少と相関(P=0.019)
・白内障手術を行っていない群では年齢、男性、術前内皮減少、Uveitic glaucomaが相関
・ニードリングは関係なかった
・白内障同時手術群では術前の内皮細胞減少は有意差無し
・レクトミー後には角膜内皮細胞密度は徐々に減少する(MM)
Rho-associated protein kinase inhibitor induced morphological changes in type VI collagen in the human trabecular meshwork
Mizu Okamoto et al (Japan)
Br J Ophthalmol 104(3):392-397, 2020
・タイプⅥコラーゲンは細胞外マトリックスの基本コンポーネントでありアミノ末端と炭素末端に挟まれた長さ105nmの3つのらせん状の軸からなり、2量体を形成する。タイプⅥコラーゲンのマイクロフィブリル基本構造ユニットは2量体が合わさった4量体からなり、人の繊維柱帯ではそれらが連続して一連の帯状に並んでいる。
・アミノ末端と炭素末端がある部位がouter rod-like region(ORR),その間の軸の部分がinner rod-like region(IRR)
・リパスジルを6ヶ月以上使用している患者および使用歴のない60-80歳の患者各5眼の緑内障手術時に傍シュレム管組織を採取しタイプⅥコラーゲンを電子顕微鏡で観察し、ORRとIRRを計算した
・RA(リパスジル有り)グループではNRA(リパスジル無し)グループよりもORRが短く、IRRが長かった
・リパスジル使用期間とIRR,ORRの相関は強くないが、全幅(IRR+ORR)は相関係数0.9(P=0.08)であり、全幅は投与月数と相関する傾向あり(MM)
Steroid-induced glaucoma and blindness in vernal keratoconjunctivitis
Sirisha Senthil, et al(India)
Br J Ophthalmol. 104(2):265-269, 2020
・失明:視力が(0.05)以下もしくは視野が10度以内
・ステロイド緑内障(SIG):2回連続で22mmHg以上の眼圧(SecondaryのためOHTもこの中に含めている)
・インドの三次医療機関に1992年から2009年に受診した患者をレトロスペクティブに調査結果
・4062例のVKCのうち91名157眼(2.24%)がSIG(123眼78.3%)もしくはOHT(34眼21.6%)であった。視野検査は157眼のうち121眼で実施されていた
・VKC発症年齢中央値12(IQR:7-17)歳(97%が30歳未満、87%が男性)、初診時の眼圧24.9±12.8mmHg、発症後継続期間中央値48ヶ月、ステロイド使用期間24ヶ月、C/D比0.9、MD値-21.9dB
・ステロイドの種類:特定できたのは64/157眼:52眼はStrong Steroid(うち30眼はデキサメサゾン)、12眼はフルオロメソロン10眼、ロテプレドノル2眼であった
・眼圧がコントロールができていた者は157眼中104眼66%、34%(53/157)では緑内障手術を要した(30眼でレクトミー(MMC無し)、7眼でMMC有りのレクトミー)、16眼では白内障同時手術を実施
・初診時の眼圧高値、ステロイドの使用期間の増加は緑内障手術の必要性と有意に相関した
・初診時157眼中68眼(39名)(43.3%)で失明、29名/91名(31.8%)は両眼ともSIGで失明しており、C/D比が高いほど失明と相関
・VKCでステロイドを使用している場合は眼圧の十分なモニターが必要であり、眼圧上昇を生じる場合はシクロスポリンやタクロリムスを使用する必要がある。(MM)
Decreased epithelial to corneal thickness ratio in healthy fellow eyes of patients with unilateral bullous keratopathy
Alexei N Kulikov,et al.( Russia)
Br J Ophthalmol 2020;104(2):230-234.
目的:片側水疱性角膜症(BKP)患者の健眼と健常者の眼の角膜上皮厚(ET)と中心角膜厚(CCT)の関係を調べる。
対象と方法:BKP患者17人(男性9人、女性8人、73.2±10.4歳)と健常者40人(男性20人、女性20人、69.5±9.8年)を対象とした。
ET、角膜厚 (CT)、角膜実質厚、およびETとCTの比率を測定(中心領域2 mm以内)。中心角膜上皮厚(CET)と中心角膜厚(CCT)を手動で測定し、実質厚とCET / CCT比を計算した。
結果:BKP患者の健眼の内皮細胞密度は、健常者よりも統計的に有意に低かった(それぞれ、1582±587 cells / mm2および2531±252 cells / mm2、p<0.001)。健常者の有水晶体眼と偽水晶体眼の間の内皮細胞密度に統計的に有意な差はなかった。
BKP患者の健眼では健常者と比較して、ETは統計的に有意に薄く(p <0.001)、CTは統計的に有意に厚かった(中心領域2 mm以内および角膜中心でそれぞれ28.9および30.9 µm)。中心領域2 mm以内のETとCTの比率(それぞれ0.091±0.01と0.10±0.004 (p <0.001))とCETとCCTの比率(それぞれ0.083±0.006と0.97±0.005 (p <0.0001))は健常者と比較してBKP患者の健眼で有意に低い。
結論:片側性BKP患者の健眼は、健康な年齢のマッチした対照と比較して、角膜実質の厚さの増加と上皮の薄さを示した。
明らかな角膜肥厚を伴わないCETとCCT比の低下は、片側のBKP患者の健常な眼における角膜内皮の無症状機能不全を示すと考えられる。(CH)
Comparison of changes in corneal endothelial cell density and central corneal thickness between conventional and femtosecond laser-assisted cataract surgery: a randomised, controlled clinical trial
Daliya Dzhaber, et al. et al. (US-MD)
Br J Ophthalmol. 2020;104(2):225-229.
目的:従来の水晶体超音波乳化吸引術(CPSグループ)とフェムトセカンドレーザーを使用した白内障手術(FLACSグループ)術後の内皮細胞密度(ECD)と中心角膜の厚さ(CCT)の変化を比較した。
対象と方法:67人の患者の134眼、平均年齢は68.3±9.1歳(範囲33〜88歳)、無作為に片眼をFLACS、もう片眼をCPSとした。
結果:ECDは、術後1か月ではFLACSおよびCPSグループでそれぞれ2370±580 cells / mm2、2467±564 cells / mm2(p = 0.18)、術後3か月ではそれぞれ2374±527 cells / mm2、2433±526 cells / mm2(p = 0.19)で有意差はなかった。また、2つのグループ間の平均CCT値に有意差はなかった(p> 0.05)。
I/Aの平均時間はFLACSグループで有意に長く、全体的に手術時間は長くなった。この理由は、フェムトセカンドレーザーよって引き起こされる熱効果のために、皮質が強く張り付いているためと考えられる。
結論:ECDおよびCCTの変化は、3か月のフォローアップ期間中、FLACSグループとCPSグループ間で有意差はなかった。(CH)
Efficacy of therapeutic soft contact lens in the management of gelatinous drop-like corneal dystrophy
Sayo Maeno et al. (大阪大学)
Br J Ophthalmol 2020(2);104:241-246.
・膠様滴状角膜ジストロフィ(GDLD)の全患者の15年間の記録を調べることにより、結節性病変、混濁、血管新生という特徴的な3つの臨床的特徴に対するSCL装用効果を評価した。
・11人17眼。そのうち11眼は継続的にSCLを装用しており(SCLオングループ:男性7名、女性4名)、6眼はSCLを装用していなかった(SCLオフグループ:男性3名、女性3名)。
・SCLオングループでは、SCLオフグループと比較して、結節性病変の進行率が有意に低いことが分かった(p = 0.0179)。混濁と血管新生に関して抑制効果は観察されず、視力にも有意な改善は見られなかった(logMAR値 SCLオン:平均= -0.036、SCLオフ:平均= 0.149)。SCLオングループの無手術生存期間は2770±1918日であり、SCLオフグループの1342±1323日よりも有意に長かった(p = 0.0007)。
・SCLの使用は結節性病変の進行速度が低く、手術の必要性が少なくなるため、GDLDの管理に効果的と思われる。(CH)