Effect of recombinant human nerve growth factor eye drops in patients with dry eye
Marta Sacchetti, et al. (Italy)
Br J Ophthalmol 2020(1);104:127-135.
・神経成長因子(NGF)は、中枢および末梢神経系、内分泌、免疫および視覚系の機能の調節に重要な役割を果たす。臨床研究により、神経栄養性角膜炎および自己免疫性角膜潰瘍の患者におけるマウスNGF(mNGF)点眼薬による点眼治療の安全性と有効性が証明されている。
・さらに、ヒトと動物の両方の研究からのデータは、NGFが眼表面の創傷治癒と感受性を刺激し、涙液産生と結膜杯細胞密度を増加させることを示している。
・最近、眼疾患の治療のために大腸菌で生産された新しい組換えヒトNGF(rhNGF)が導入された。2017年7月、ヨーロッパで中等度から重度の神経栄養性角膜炎に対するrhNGFの点眼製剤治験が行われ、安全性と有効性を証明した。
・この研究ではドライアイ(DED)患者における組換えヒト神経成長因子(rhNGF)点眼薬の安全性と有効性を評価する。
・対象と方法:中等度から重度のDEDと診断された成人患者グループ1(G1)20人(女性16人、男性4人、平均年齢48.4±12.0歳))はrhNGF点眼薬1日2回、20μg/ mL、28日間使用した。
・グループ2(G2)20人女性17人、男性3人、平均年齢55.9±14.8歳)はrhNGF点眼薬1日2回、4μg/ mL、28日間使用した。(図1)
・rhNGF点眼液の両方の濃度は、治療期間の終わりにDEDの徴候と症状の有意な改善を誘発し、それはフォローアップの終わりまで部分的に続いた。OSDIスコアは、終了時に有意な改善を示した(G1ベースライン55.5±21.8、4週間32.6±16.2、p <0.001、G2ベースライン:52.4±21.8、4週間:35.7±22.8、p = 0.0035)。
・眼表面損傷も改善した(NEI角膜合計スコア:G1ベースライン:5.2±2.0、4週間:1.3±2.2、p <0.001; NEI結膜トータルスコアベースライン:8.1±3.5、4週間2.5±1.4、p <0.001)およびG2ベースライン:5.9±2.7、4週間:3.0±3.3、p <0.001;結膜トータルスコアベースライン6.8 ±2.7 、 4週間4.5±2.1、p <0.001)。
・涙液層パラメーターの有意な増加がグループ1で観察された(シルマーテストI:ベースライン4.1±3.3 mm / 5分、4週間9.4±7.8 mm / 5分、p = 0.0006; TFBUTベースライン3.4±2 秒、4週間6±2.5 秒、p = 0.0015、グループ2では有意差はなかった(シルマー試験タイプI:ベースライン5.2±3.7 mm / 5分、4週間8.2±6.8 mm / 5分、p = 0.0734、TFBUTベースライン3±2.4 秒、4週間2.5±1.3 秒、p = 0.4087
・全身、局所の大きな合併症は認められなかった。
・結論: 4μg/ mLと20μg/ mLの両方でのrhNGF点眼薬は、局所または全身の安全性を認めた。中等度から重度のDEDの患者で良好な結果を示した。(CH)
Utility of CLOCK CHART binocular edition for self-checking the binocular visual field in patients with glaucoma.
Ishibashi M, Matsumoto C et al(近畿大
Brit J Ophthalmol 103(11): 1672-1676, 2019
・緑内障者が視野の自己チェックができるチャート(CLOCK CHART binocular edition:CCBE)を開発した。
・このチャートは4つの指標を10,15,20,25度に配置してあり、30度時計回り回転毎に4つの指標が見えるかどうか確認しながら360度回転して使用する。
・1回転で12試行となる。大きさはA3判で、測定円は直径35cmで、30cmの距離で近見視力を矯正した上で検査を行った。
・今回44名88眼の緑内障者(64.4±13.1歳)と32例64眼の正常者で行った結果を報告する。
・中心30度以内に10dB未満の2つ以上の連続点があった場合を視野以上とすると、CCBEの検出感度はHFAの85%、Estermanの82%の感度があった。
・このテストは運転免許に関しての有益な自己採点方法になるだろう。(TY)
Hypotensive efficacy of topical brimonidine for intraocular pressure spikes following intravitreal injections of antivascular endothelial growth factor agents: a randomised crossover trial
Tina Felfeli, et al. (Canada)
Br J Ophthalmol 2019(10);103:1388–1394
目的:ブリモニジン点眼はアドレナリンα2受容体に選択的に作用し、房水産生を抑制するとともに、ぶどう膜強膜流出路を介した房水流出を促進する事で眼圧下降効果を示し、注射後の一過性眼圧上昇予防の良い選択肢となる。
抗VEGF硝子体内注射を受けている非緑内障眼の一時的な注射後の一過性眼圧上昇に対するブリモニジン点眼の効果を調査すること
対象と方法:加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、または網膜静脈閉塞(BRVO)に続発する黄斑浮腫のために、抗VEGF硝子体内注射(1回以上の治療を受けた)を受けた合計55人。
連続した2回の硝子体注射時の1回目または2回目のどちらかで、注射の20分前にブリモニジン点眼1滴を投与した。20分前という時間は、薬剤の効果を得るのに必要な適切な時間と、処置のしやすさを考慮して選択された。
ラニビズマブ硝子体内注射(0.5 mg / 0.05 mL、Lucentis; Genentech)またはアフリベルセプト硝子体内注射(2 mg / 0.05 mL、Eylea; Genentech)を30ゲージ針を使用して行なった。
眼圧は注射前、注射直後(T0)、10分後(T10)、20分後(T20)に、 Tono-Pen XLで測定された。測定値のばらつきを減らすために、各時点3回の平均IOP測定値が使用された。
除外:緑内障、ステロイド点眼使用、前房眼内レンズ、LI、硝子体手術既往
結果:55人58眼、平均年齢74.3(148.2〜94.4)歳。
2回の受診時全ての注射前IOP(13.8 [3.4] mm Hg)と比較して、T0(38.4 [12.6] mm Hg)、T10(20.5 [6.2] mm Hg)およびT20(16.4 [4.3] mm Hg)で有意に増加した (p <0.001)。また、すべての症例でT0〜T10とT0〜T20、およびT10〜T20の間でIOPが大幅に低下した(p <0.001)。
T0では、ブリモニジン点眼使用時(34.2 mm Hg:17.3-63 mm Hg)と比較して、使用なし時IOP(41.6 mm Hg:17-81 mm Hg)は有意に高かった (P<0.001)。
T10では、ブリモニジン点眼使用時(18.5 mm Hg:8.3–33.3 mm Hg)と比較して、使用なし時IOP(21.9 mm Hg:12–42.7 mm Hg)でも有意に高かった(p = 0.001)。
T20では、ブリモニジン点眼使用時(15.9 mm Hg:8.7–29 mm Hg)と比較して、使用なし時IOP(17.3 mm Hg:10–29.7 mm Hg)が有意に高かった(p = 0.043)。
使用なしの2眼はT0でIOPが70 mm Hg以上であったため、前房穿刺を施行した。 T0では、ブリモニジン点眼使用時と比較して、使用なし時のIOPが有意に高い割合で50 mm Hgを超えていた(p = 0.036)。さらに、T0でIOP上昇が20 mm Hgを超えていた割合はブリモニジン点眼使用50%、使用なし75.9%だった(p = 0.002)。
ブリモニジン点眼に関連する副作用はなかった。
結論:非緑内障眼への抗VEGF剤の硝子体内注射後の一過性眼圧上昇は、注射の20分前にブリモニジン点眼することで効果的に減少することを示している。この予防法は、現在の診療に容易に組み込むことが出来る。(CH)
Prevalence of cystoid macular oedema, epiretinal membrane and cataract in retinitis pigmentosa
Gerald Liew, et al. (UK)
Br J Ophthalmol 2019(8);103: 1163-1166
目的:網膜色素変性症(RP)患者における治療可能な合併症(嚢胞様黄斑浮腫、CME、網膜上膜、ERMおよび白内障)の有病率の報告。
対象と方法:169人338眼、平均年齢47.1歳(±18.4)、男性46.8%、女性53.2% 。
大半は常染色体劣性、孤発例だった。
結果:CMEは172眼50.9%に存在した。これらの患者のうち、73.7%は両眼だった。CME患者のうち、31.3%が軽度で治療されず、37.4%がアセタゾラミド内服で治療中、29.3%がドルゾラミド点眼で治療され、2%が治療後だった。
ERMは77眼22.8%に存在し、79.1%は両眼だった。
白内障は79眼23.4%、その内71.7%は両眼だった。眼内レンズ挿入眼は38眼11.2%。
多変量解析では、CMEは若い年齢(OR 0.81、95%CI 0.67〜0.98)に関連していたが、性別には関連していなかった。 ERMおよび白内障/眼内レンズ挿入眼の患者は、CMEを発症する可能性が低かった(OR 0.19、95%CI 0.09〜0.40およびOR 0.37、95%CI 0.16〜0.84)。 CMEは常染色体優性遺伝(71.4%)の患者で最も一般的であり、常染色体劣性/孤発例(58.9%)が続き、X連鎖遺伝(12.5%、p <0.001)で最も少なかった。
結論: RP合併症の有病率は高く、多くの症例が両眼性である事がわかった。若年、常染色体優性遺伝、ERMおよび白内障を発症していない事はCMEのリスク増加と関連していた。RPの患者を定期的にスクリーニングすることが臨床的に有益であることを示唆する。(CH)
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日本での網膜静脈分枝閉塞症の現在の治療:日本の網膜専門医の調査結果
Current practice in the management of branch retinal vein occlusion in Japan: Survey results of retina specialists in Japan.
Yuichiro Ogura, et al. (名古屋市立大学)
Japanese Journal of Ophthalmology (2019) 63(5):365-373
目的:日本の網膜専門家による現在の網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)管理と臨床治療パターンを解明する。
方法:2017年5月28日に、BRVO管理と臨床診療について41人の網膜専門家に調査した。多肢選択式の回答を含む37の質問。
結果:ほとんどの専門家31/40(77.5%)は、BRVOに続発する黄斑浮腫(ME)の診断に眼底検査とOCTを使用している。24/40(60.0%)は、中心窩の浮腫と傍中心窩の浮腫の両方を治療目的と考えているが、27/41(65.9%)は前者のタイプの浮腫のみが視力に影響すると考えている。また、11/41(26.8%)が中心網膜厚(CRT)が300μm以上の場合、治療が必要な浮腫を判断している。
浮腫が3〜6か月間持続していると、視細胞への不可逆的な損傷につながると予想しており、大多数(31/41、75.6%)は黄斑浮腫が2か月またはそれ以下だと不可逆的な視細胞の損傷を引き起こさないと考えている。
39 / 41(95.1%)は網膜出血が視細胞の損傷を引き起こし、40 / 41(97.6%)は抗VEGF療法が新たな出血を抑制し、血液の消失を加速させると考えている。
全員がellipsoid zone(EZ)および外境界膜(ELM)の状態を評価し、これを視覚的予後因子と見なしている。
無灌流域(NPA)については、19/39(48.7%)がFAとOCTAの両方を使用して存在と範囲を評価している。
31/40(77.5%)は、抗VEGF療法がNPAを減少または維持できると考えている。BRVOに続発するMEの場合、抗VEGF療法が最初の選択肢であり、ほとんどの専門家(82.4%)が初回注射に続いてPRN治療を選択する。ME再発を繰り返す患者の場合、16/41(39.0%)が抗VEGF単剤療法を最大1年間継続し、患者が希望する限り39.0%)継続する。
治療を変更する場合、14/39(35.9%)は抗VEGF治療とレーザー療法の併用治療を選択し、10/39(25.6%)は硝子体手術を行い、6/39(15.4%)は抗VEGF剤とステロイド注射を併用する。
結論:この調査は、日本の網膜専門医によるBRVOの診断と治療に関する現在の意見を示し、予後不良の要因としてのEZ / ELMの損傷と、第一選択治療としての抗VEGF療法に関する一般的な見解を明らかにした。将来的には、BRVO治療、特に抗VEGF療法の臨床データを蓄積し広めることにより、個々の患者の病状や状況に合わせて治療計画が改善されることが期待されている。(CH)
Association between glaucomatous optic disc and depressive symptomes independent of light exposure profiles: a cross-sectional study of the Heijo-kyo cohort.
Yoshikawa T et al(奈良医大)
Brit J Ophthalmol 103(8): 1119-1122, 2019
・緑内障では光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive RGCs:ipRGCs)の欠損によりサーカディアンリズムのずれが起こる。
・緑内障患者には鬱の人が多いことが知られているが、光暴露との関連がまだ不明である。
・ある地域の平均年齢70.9才の770人について、緑内障性視神経症の有無を眼底カメラで撮影し、鬱状態については老人用の鬱スケール(GDS)で測定し、また、昼間ならびに夜間の周囲環境の光の強さを2日間、測定した。
・抑圧症状(GDS score≧6)は114/770(14.8%)でみられ、緑内障視神経症は40/770(5.2%)でみられた。
・抑圧症状の発現は緑内障視神経症のみられた症例で、より多かった(30.0%:14.0% p=0.005)。
・多変量ロジスティック回帰分析では、抑圧症状のodd ratioは緑内障性視神経症の見られたものでは有意に高く(OR=2.64 95%CI=1.30-5.36 p=0.007)、光暴露などの影響しそうな交絡因子で補正後でも有意に高かった(OR=2.45 95%CI=1.18-5.08 p=0.016)。(TY)
‘Van Herick Plus’: a modified grading scheme for the assessment of peripheral anterior chamber depth and angle
Ramanjit Sihota, et al. (India)
Br J Ophthalmol 2019; 103(7):960-965
【目的】
従来のvan Herick法の改良法の正確さとAS-OCTとの関連を評価
【対象と方法】
・40歳以上の有水晶体眼95名
・瞳孔に届かない程度の短い垂直スリット光を下方の角膜輪部に30度の角度で当てる
・前眼部写真を撮影し、周辺部の前房深度(PAC)および角膜厚(PCT)、角膜と虹彩のなす角度(ICA)を記録、AS-OCTと比較
・PAC:PCT比を以下の4群に分ける;Ⅰ(<1/4)、Ⅱ(1/4-1/2)、Ⅲ(1/2-1)、Ⅳ(>1)
【結果】
・ICA:本法25.66±0.77°、AS-OST 24.86±8.48°
・本法のICAと、AS-OCTでのtrabecular-irideal angle(TIA)およびscleral spur angle(SSA)とは有意に相関(それぞれr=0.918;p<0.001, r=0.903;p<0.001)、差の平均は0.797°
・AS-OCTでの狭隅角眼(TIA<20°)において、本法PAC:PCT比のグレードⅠで区切ると、ROC曲線にて感度85.2%、特異度88.2%
・本法の写真と診察所見との一致性は、緑内障専門医でκ=0.74と良好な一致、一般眼科医ではκ=0.57と中等度の一致
【結論】
下方隅角に短い垂直光を当てる評価法は、簡便であり周辺の前房深度および隅角を比較的正確に評価できる。この方法はAS-OCTとよく相関しており、隅角閉塞が疑われる患者の信頼できるスクリーニング法になりうる。(MK)
Outcomes of ultrathin Descemet stripping automated endothelial keratoplasty (UT-DSAEK) performed in eyes with failure of primary Descemet membrane endothelial keratoplasty (DMEK)
Shmuel Graffi, et al. (Italy)
Br J Ophthalmol 2019(5);103:599-603.
目的:初回デスメ膜角膜内皮角膜移植術(DMEK)の不全症例に対する超薄型角膜内皮移植術(UT-DSAEK)の結果を評価すること。
対象と方法:初回DMEKの移植片不全後にUT-DSAEK(100μm以内)を受けた患者の21眼 (男性10人、女性11人、平均年齢69.2±7.2歳)、偽水晶体水疱性角膜症3眼、フックス角膜内皮変性症18眼。
合併症、矯正視力、角膜内皮細胞密度(ECD)、中心移植片厚(CGT)を検討した。
結果:併存疾患のない17眼(加齢黄斑変性2眼、網膜剥離の既往1眼、進行した緑内障1眼を除外)のみを考慮した場合、視力は術後6ヵ月後の視力は、20/40以上は100%、20/25以上は53.3%、20/20以上は26%だった。 術後12ヵ月後では20/25以上92%、20/20以上31%だった。
平均術前ドナーECDは2514±149 cells / mm2、術後6ヵ月1704±319 cells / mm2、術後12ヶ月1534±369 cells / mm2に減少した。術後12ヶ月での平均ECD損失率は38.9%であった
UT-DSAEKの6ヵ月後、CGTは平均81±34μm(範囲34-131μm)だった。
術中合併症はなかった。術後合併症は1眼でUT-DSAEKの2日後に移植片にしわを認めた。 4眼でIOL混濁を発症し、そのうち2眼がIOL交換を受けた。
結論:UT-DSAEKは初回DMEKの移植片不全後に、再DMEKの結果に匹敵する優れた視力結果、合併症のリスクが低い事を示した。(CH)
Randomised, prospective clinical trial of platelet-rich plasma injection in the management of severe dry eye
Marcel Y Avila, et al. (Colombia)
Br J Ophthalmol 2019(5);103 :648-653.
目的:多血小板血漿(PRP)療法とは、自分の血液中に含まれる血小板の成長因子が持つ組織修復能力を利用し、本来備わっている「治る力」を高め、治癒を目指す再生医療である。
涙腺に対するPRP注射の有効性と現在の標準治療とを比較した。
対象と方法:シェーグレン症候群と診断された重症ドライアイ患者。PRP群15眼(59.2±3.4歳)に0、30、60および90日目にPRP注射と1日に5回ヒアルロン酸点眼を行った。対象群15 眼(52.7±3.5歳)は1日5回ヒアルロン酸点眼を行った。角膜染色の変化、シルマー試験、涙液層破砕時間(TBUT)、眼表面疾患指数(OSDI)の変化を調査した。
眼窩外縁の外側の3分の1、上縁部から4mmの深さにPRP注射(1mL)を行った。これは涙腺の位置に相当する(図2)。
結果:シルマー試験ではPRP群はベースライン時5.4±0.7 mmから90日目受診時9.2±1.0 mmまで増加したが、対照群はそれぞれ5.6±0.40 mmから5.3±0.7 mmと増加しなかった(p <0.002)。(図3)
ベースライン時のTBUTはPRP群4.0±0.4秒、対照群4.2±0.3秒であり、この差は有意ではなかった(p = 0.655)。 90日目受診時ではPRP群6.4±0.4秒、対照群で4.4±0.3秒で、PRP群で有意に改善でした(p = 0.0055)(図4)。
ベースライン時の眼表面染色の値は、PRP群2.5±0.15、対照群2.6±0.16であった。これらの値は、90日目受診時にPRP群1.2±0.18、対照群2.4±0.18に減少し、群間で有意差を認めた(p <0.001)。(図5)
OSDIスコアはPRP群と対照群はベースラインで同様で、群間に有意差はなかった。 90日目受診時にPRP群は59±4.0から34±4.0、対照群54±3.5から55±2.5に減少し、群間で有意差を認めた(p<0.001)。
結論:PRP注射は、涙腺機能を改善するための安全で効果的な治療法であり、重症ドライアイ患者の管理においてヒアルロン酸点眼治療より優れていることがわかった。これは重度のドライアイに対する新しい代替治療法である。(CH)
Cycloplegic refraction by 1% cyclopentolate in young adults: is it the gold standard? The Anyang University Students Eye Study (AUSES)
YY Sun, et al. (China)
Br J Ophthalmol 2019;103(5):654-658
【対象と方法】
・Anyang Univercity Students Eye Studyの一環
・7971名の学生に調節麻痺剤(サイプレジン+ミドリンP)を点眼、調節麻痺前後の屈折度をオートレフケラトメーターで測定
【結果】
・7793名(97.8%)が完遂、平均年齢20.2歳、男子学生36.8%
・等価球面度数(SE)は調節麻痺の有無で有意に変化(P<0.01)
・SEの差は遠視群で1.80D、正視群で1.26D、近視群で0.69D、全体で0.83D
・遠視方向へのずれが0.25D以下は11.1%、0.5D以下のずれは34.1%
・調節麻痺剤を使用しなかった場合、遠視眼は6.2%・正視眼は5.7%少なく見積もられ、近視眼は12.1%・高度近視眼は6.1%多く見積もられた
【結論】
調節麻痺剤の不使用は、中国人の青少年コホートにおいて近視・正視・遠視の分類を有意に誤った方向に導いた。この年代に対する疫学研究では調節麻痺剤の使用が必須である(MK)
Intravitreal injection of a Rho-kinase inhibitor (fasudil) combined with bevacizumab versus bevacizumab monotherapy for diabetic macular oedema: a pilot randomised clinical trial
H Ahmadieh, et al. (Iran)
Br J Ophthalmol 2019;103(5):922-927
【対象と方法】
44眼のDME患者を前向きランダムに割付け;①アバスチン(1.25mg)単独、②アバスチン(1.25mg)とROCK阻害剤fasudil(50μM/L)硝子体注射の併用、ともに月1回で3回投与
【結果】
・3M後の視力は両群とも有意に改善、ただし6M後も有意な改善が続いたのは②併用療法群のみ
・3M後、6M後ともに視力改善度は②併用療法群が有意に良好
・6M後の視力改善(>15文字):①単独群10%、②併用群54.5%
・①単独群では3→6Mで視力悪化するも②併用群では悪化みられず
・中心部網膜厚も3M後は両群ともに有意に改善も、6M後は②併用群のみ有意な改善
【結論】
ROCK阻害剤を硝子体に追加投与することで、DME患者への抗VEGF剤の効果を強めて長引かせることが出来るかもしれない(MK)
Ultrasonic measurement of optic nerve sheath diameter: a non-invasive surrogate approach for dynamic, real-time evaluation of intracranial pressure.
Chen L et al(China)
Brit J Ophthalmol 103(4): 437-441, 2019
・視神経鞘直径ONSDが頭蓋内圧ICPの変化で影響を受けるかどうかを検討した。
・腰椎穿刺LPの5分前と5分後にONSDを84例(43.5±14.7歳)で測定した。
・ICPが高かった18例もこの検討に含めた。
・ONSDの変化の中間値はー0.11(0.05-0.21)mm、ICPの変化の中間値はー30(20-40)mmH2Oであった。
・脳脊髄圧の低下に伴って、80/84例(95%)ではONSDの減少がみられた。
・その中間値は4.13(4.02-4.38)mmから4.02(3.90-4.23)mmへの減少である。
・ONSDと腰椎穿刺前のICPは有意に相関し(r=0.482 p<0.01)、ONSDの減少とICPの減少も有意に相関していた(r=0.451 p<0.01)。(TY)
Correlation between aqueous flare and residual visual field area in retinitis pigmentosa.
Nishiguchi K et al(東北大)
Brit J Ophthalmol 103(4): 475-480, 2019
・網膜色素変性症RPの123例227眼、黄斑ジストロフィMacDyの35例68眼、コントロールCtrlの148例148眼で前房フレア(Laser flare cell meter)、視機能(Goldmann視野と視力)、黄斑構造(OCT)を検討した。
・前房フレアはRPでMacDyやCtrlより有意に高く(p<0.001)、視野と有意に相関していたが(r=-0.379 p<0.001)、視力とは相関がなかった(r=0.083 p>0.2)。
・前房フレアは黄斑厚と相関していたが(r=0.234 p=0.0004)、中心窩厚とは相関がなかった(r=0.122 p=0.067)。
・前房フレアは黄斑合併症とは関連がなかった。
・前房フレアは年齢(p<0.001)、視野(p<0.001)、平均黄斑厚(p=0.037)と相関していた。
・前房フレアは網膜変性全体の程度を反映していると考えた。
・前房フレアは眼内炎症による血液網膜柵の破綻を反映しているからであろう。(TY)
Correlation between aqueous flare and residual visual field area in retinitis pigmentosa
Koji M Nishiguchi, et al. (東北大学)
Br J Ophthalmol 2019(4);103:475-480.
目的: 網膜色素変性症(RP)における前房水フレア、視機能、黄斑部構造との関連を調査する。
対象と方法:RP群123人(227眼)、黄斑ジストロフィー群35人(68眼)、対照群(裂孔原性網膜剥離になった患者の健眼)148人(148眼)のデータを分析した。3群間の房水フレアの違い、およびRP群での房水フレア、視力、視野面積および黄斑部厚(直径1.0mmおよび6.0mm)との関連を調べた。
結果:房水フレアは、黄斑ジストロフィー群(6.9±3.6)または対照群(6.8±5.2)よりもRP群(11.6±22.1)で高かった。房水フレアは残存視野面積と負の相関があることが示された。BCVAはRP群(0.44±0.62 logMAR)と黄斑ジストロフィー群(0.56±0.48 logMAR)の間で統計的に有意差はなかった(p = 0.132)。(図2) 房水フレアと BCVAでは相関は検出されなかった
黄斑部厚は、直径1.0mm区域よりも直径6.0mm区域で房水フレアとより密接に相関していることが明らかになった。
また、嚢胞様黄斑浮腫、黄斑上膜、および黄斑変性の有無にかかわらず、房水フレアのレベルを比較したところ、有意差は認められなかった。(図3)
右眼と左眼を別々に評価しても、これらの関連付けはすべて同様だった。(図1)
結論:房水フレアと視野面積はRP患者で相関していた。房水フレアは、中心窩よりも全体的な網膜変性の程度をより密接に反映している可能性がある。(CH)
Diagnostic value of ganglion cell-inner plexiform layer for early detection of ethambutol-induced optic neuropathy
Ju-Yeun Lee, et al (Korea)
Br J Ophthalmol 103(3): 379-384, 2019
EBはRGC障害性がありとくに小口径のpapillomacular bundle axonに作用する。ミトコンドリアの機能不全により軸索輸送障害が生じるのではないかと考えられている。これまでEONでpRNFLとmGCIPLが傷害されるという報告はあるが、初期の診断に使えるか検討。
3週間以内に発症した15例28眼のEB視神経症(Ethambutol-induced optic neuropathy(EON))と53例100眼の正常コントロールを比較。CirrusSD-OCTで測定したpRNFLとmGCIPL厚をAU-ROC曲線と感度を検討した。
EON群:平均年齢61.4±14.5(34-81)歳、女性が60%、症状出現から受診まで平均8.9±5.6(1-17)日、初診時の矯正視力は有意に悪い(LogMAR:0.49±1.54)、
OCT測定値:
平均mGCIPL thickness 73.5±12.4 µm (EON) vs 83.7±5.3 µm (control), (p<0.001).
検出能力:
すべてのmGCIPLと下方以外のpRNFL、でAUROCは0.5以上となったが、mGCIPL特にminimum thicknessのAUROCが最大で0.863であった。
初期のEONではmGCIPL、特にその最小値が診断能力が高い(MM)
Microinterventional endocapsular nucleus disassembly: novel technique and results of first-in-human randomised controlled study.
Lanchulev T, Chang DF et al(NY USA)
Brit J Ophthalmol 103(2): 176-180, 2019
・101名101眼のGrade3-4+の白内障に対して行った結果を報告する。
・Ctrl群はtorsional PEAのみで、miLOOP群は手動のnitinol(ニッケルとチタン合金)製の細いル-プ器具を使用した。
・白内障は進行したものだけを対象とし、85%以上の症例では術前の視力は0.1以下のものとした。
・平均的な積算PEAエネルギ-はCtrl群では32.8±24.9、miLOOP群では21.4±13.1であり、Ctrl群で53%大きかった。
・内皮細胞消失率は両群とも7-8%で有意差はなかった。
・miLOOP使用時の前後嚢破損例は0%、PEA中の後嚢破損はmiLOOP群で4/53(7.5%)、Ctrl群では5/48(10.4%)であった。(TY)
Atypical epiretinal tissue in full-thickness macular holes: pathogenic and prognostic significance.
Bae K et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 103(2): 251-256, 2019
・211例225眼の黄斑円孔症例で、非典型的な網膜前膜AET(atypical epiretinal tissue)を持ったもの26眼(11.6%)とAETを持たないもの199眼とで術後成績を比較した。
・手術1年後の円孔閉鎖はAET群では92.3%、非AET群では99.5%であった(p=0.003)。
・1年後のlogMARはAET群では0.38(小数点0.42)、非AET群では0.21(小数点0.61)で有意差があった(p=0.046)。
・AET群では術後成績が悪かったが、これはAETが慢性的に黄斑部に重篤な障害を与える病的な変化であることを示している。(TY)
Macular dysfunction in patients with macula-on rhegmatogenous retinal detachments
Kunihiko Akiyama et al (Japan)
Br J Ophthalmol 103(2): 404-409, 2019
Macula-on のRRDで、術後視力良好であっても視機能低下を訴える患者がいる。コントラスト感度を用いた研究で血流障害が示唆されたものはあるが、本研究ではfocal macular ERGを用いた機能評価を行った
黄斑部を含まない連続32症例32眼の網膜剥離患者
RRDの範囲(象限)、裂孔の象限、アーケード血管を含む剥離の有無、3時間以上のgiant tearの有無の4つのstatusに分けて評価
黄斑部に15°の刺激を与えてFMERGを2回以上記録しノイズの少ないデータを採用
a波、b波、OPsについて患眼と僚眼で比較し、RRDのstatusが各コンポーネントに影響を与えるかを観察
結果:27眼で解析可能であった
僚眼と比べ患眼では各コンポーネントの振幅低下がみられたが、潜時は変化がなかった
RRDの部位での低酸素がエンドセリンを介して黄斑部血流量の低下をきたした可能性(MM)
Corneal shape changes of the total and posterior cornea after temporal versus nasal clear corneal incision cataract surgery
Ken Hayashi et al (JAPAN)
Br J Ophthalmol 103(2): 181-185, 2019
過去の報告では2.8mmより大きな切開では鼻側切開のほうが耳側切開よりも惹起乱視が大きいとされている(術後6週で1.65D vs 0.74D:Barequet et al. :JCRS 2004)が、2.4mm切開の白内障手術において左眼の手術を上方に座って行うか、耳側に座って行うかの違いを検討する
100例100眼左眼の白内障手術をランダムに2.4mm耳側あるいは鼻側角膜切開で行い、角膜乱視の術前後の変化、術後2日、2,4,8週目の変化を比較検討
術後2日、8週目では両群の変化はなかったが、2,4週目の角膜乱視は鼻側切開群の方が大きかった
角膜全体としては楔状の平坦化が、角膜後面では局所的な急峻化を認め、4週までは差があったが8週目には0.17Dの差となり、両群で差を認めなかった。
2.4mm以下の切開創であれば、鼻側からの切開でも耳側からの切開でも術後2ヶ月後には差がなくなるため、角膜形状という観点からは術者の好みで良いと考えられる(MM)
Baseline choroidal thickness as a short-term predictor of visual acuity improvement following antivascular endothelial growth factor therapy in branch retinal vein occlusion.
Nadim Rayess, et al. (PA, USA)
Br J Ophthalmol 2019(1);103:55-59.
目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫(ME)を有する患者における視力回復の予測因子としての初期脈絡膜厚を評価する。
対象と方法:未治療のBRVOと診断され、MEに対する3か月連続月1回の抗VEGF注射で治療された症例。
傍中心脈絡膜厚(SFCT)は、EDI-OCTの内蔵のキャリパーソフトウェアを使用して、網膜色素上皮(RPE)と考えられる高反射な線を基準線とし、RPE 底部から強膜との境界線までの距離とした。
BRVOの眼と他眼の両方について、ベースライン時と3ヶ月後の追跡調査時に脈絡膜厚測定値を記録した。そして抗VEGF注射治療のレスポンダー群およびノンレスポンダー群のベースライン特性を比較した。
結果:39人40眼。その内レスポンダー群23眼、ノンレスポンダー群17眼。
ベースライン時のSFCTは、ノンレスポンダー群(193.3±63.6μm;P=0.0036)および他眼(202.2±67.1μm; P=0.022)と比較して、レスポンダー群(240.4±73.1μm)においてより厚かった。
注射後3ヶ月で、レスポンダー群202.4±70.1μm、ノンレスポンダー群154.6±59.0μmと減少した。(共にp<0.001)
より高いベースライン時のSFCT(SFCTの100μmの増加ごとに)は、単変量解析ではレスポンダーの予測因子であるが多変量解析では予測因子ではなかった。
ベースライン時の視力はレスポンダー群1.15 ±0.55 logMARでノンレスポンダー群0.57 ±0.42 logMAR (p<0.001)と比較して有意に悪かった。
注射後3ヶ月で、レスポンダー群0.59±0.32 logMAR (p<0.001)に改善したが、ノンレスポンダー群では0.58±0.54 10gMARであった(p=0.962)
より悪いベースライン時視力(0.1 logMARの増加ごとに)は、多変量解析において視覚改善の予測因子であった。
結論:ベースライン時脈絡膜厚が厚いBRVOの未治療患者は、抗VEGF療法後の短期調査で視力改善する可能性が高かった。さらに、より悪いベースライン時視力はスネレン視力2ライン以上の視力改善と強く相関することがわかった。 BRVOにおける視力の予測因子としての脈絡膜厚の役割をさらに評価するためには、さらに大規模な前向き研究が必要である。(CH)
Yellow (577 nm) micropulse laser versus half-dose verteporfin photodynamic therapy in eyes with chronic central serous chorioretinopathy: results of the Pan-American Collaborative Retina Study (PACORES) Group
Jose A Roca, Lihteh Wu, Jans Fromow-Guerra, Francisco J Rodríguez, Maria H Berrocal, Sergio Rojas, Luiz H Lima, Roberto Gallego-Pinazo, Jay Chhablani, J Fernando Arevalo, David Lozano-Rechy, Martin Serrano(USA-CA)
Br J Ophthal 2018;102(12):1696-1700
【対象と方法】159眼の慢性CSC患者(網膜下液>6か月)に対して、黄色マイクロパルス光凝固(MP)*を施行した92眼と半量PDT**を施行した67眼とをretrospectiveに比較
*IQ577(IRIDEX社)、波長577nm、duty cycle 5%、ゼロスペーシング、スポットサイズ100-200μm、出力320-660mW、凝固時間200msec
**ベルテポルフィン3mg/m2、照射エネルギー・時間は通常通り
【結果】12Mのフォローアップで、
MP群:視力(LogMAR)0.41→0.21(P<0.0001)、48.9%(45/92眼)で3段階以上の視力改善、48.9%(45/92眼)で視力維持、2.2%(2/92眼)で3段階以上の視力低下
中心網膜厚:baseline時402→1M後310→3M後263→6M後252→12M後310μm、視力と平行して改善
半量PDT群:視力(LogMAR)0.50→0.47(P=0.89)、19%(13/67眼)で3段階以上の視力改善、73%(49/67眼)で視力維持、7%(5/67眼)で3段階以上の視力低下
中心網膜厚:baseline時352→1M後293→3M後211→6M後207→12M後224μmと改善するも視力改善なし
12M後の網膜下液の残存:MP群7.6%(7/92眼)、半量PDT群4.5%(3/67眼)(P=0.2067)
再治療:MP群の17.4%(16/92眼)、半量PDT群の9%(6/67眼)
合併症:MP群なし、半量PDT群で1例にCNV出現
【結論】PDTとMPともに黄斑部の形態を解剖学的に改善させた。PDTのない施設では、黄色MPが十分な代替治療となりうる(MK)