Swimming goggle wear is not associated with an increased prevalence of glaucoma
Maria Franchina, et al. (Australia)
Br J Ophthalmol 99(2): 255-257, 2015
目的:小さくてきつい水泳用ゴーグルを頻繁に付けていると眼圧が上昇するとの報告がある。
成人スイマーでの緑内障有病率が増加しているか検討した。
対象と方法:オーストラリア、パースで、4種類の一般的なスイミングゴーグルを使用している人にアンケート調査、icareでの眼圧測定、Humphrey SITA fast、OCTで神経線維層の厚さを測定した。
スイマー群 204人 平均年齢55.3歳 男性81人、女性123人、水泳回数平均週1回 3.5時間
83.8%がいつも装用 48.5%が10年以上装用
非スイマー群 99人 平均年齢58.56歳 男性66人、女性33人
結果: スイマー群 15.1±3.6 mm Hg、 非スイマー群 15.3±3.9 mm Hg
スイマー群 右94.0μm、左93.7μm 非スイマー群 右93.0μm、左93.7μm
スイマー群のなかで、ゴーグルのタイプやゴーグル装用期間での相違もなかった。
結論:水泳ゴーグルをつけることは、緑内障の危険がないことを示唆す。(CH)
Topical bromfenac reduces the frequency of intravitreal bevacizumab in patients with branch retinal vein occlusion
Masahiko Shimura, et al. (NTT東日本東北病院)
Br J Ophthalmol 99(2): 215-219, 2015
目的:BRVOからの2次的なMEのためにベバシズマブ硝子体注射治療期間中のブロムフェナック点眼の効果を評価した。
対象と方法: 50歳以上で発症3ヶ月未満 BRVOによるMEで、視力logMAR 0.5〜1.0、中心窩厚(FT)400μm を認めた症例のうち、初回の硝子体注射から3ヶ月以内にFT300μm以下、視力改善が認められた40眼(表1)。
3ヶ月後、2回目のIVB受けた。2回目の注射の日から0.1%ブロムフェナック点眼を開始(20眼)、コントロールには人工涙液を使用した(20眼)。
2剤とも1日4回点眼とした。(基礎研究では点眼後2時間で濃度ピークになり、12時間後次第に減少していった。眼内濃度を維持する為に4回とした。)
FT400を超えたら繰り返しIVBを施行した。
初回の硝子体注射から56週間、4週毎に経過観察した。
結果:ブロムフェナック群 コントロール群
IVB回数 3.8±1.1回 4.8±1.2回 (p=0.014)
最終FT 317.6±79.6μm 313.8±90.5μm
最終視力 logMAR 0.353±0.206 logMAR 0.347±0.158
56週後もブロムフェナック群では5例、コントロール群では6例がFT400μm以上となり、追加のIVBを施行した。
副作用はなかった。
結論:BRVOによるMEに対し、ブロムフェナック点眼がIVBの回数を減らし、IVBの効果を維持する可能性がある。(CH)
Silicone band loop myopexy in the treatment of myopic strabismus fixus: surgical outcome of a novel modification
Bhamy Hariprasad Shenoy et al (India)
Br J Ophthalmol 99(1):36-40, 2015
・2008年1月から2012年12月に行われた近視性内斜視手術15名26眼でシリコンバンドを用いた 術後最低2か月の観察期間を経たもの
・眼球運動は1.最小限の制限から 4.まったく動かないまでの4段階に分けた
・輪部から10-12㎜で結膜切開 LRとSRを同定し、その間に強膜トンネルを作成
シリコンバンド240をSR-トンネル-LRと通して、スリーブで束ねて固定
必要に応じてMR recessionを追加
・11眼で両眼手術、4眼は片眼手術 10眼でMR recession(5-7.5mm)を追加
1眼では両眼のloopを行って1か月後にMR recessionを両眼に追加
1眼は両眼のloop後、LR5.5㎜resectionとMR7㎜ recessionを実施
・術前4眼で水平方向の複視 → 術後1眼で軽度の複視
・平均SE -16.3±6.3D(-6 ~ -27D) AL 31.98±3.02mm(26.8-36.46)
・外転制限: -2.9±1.2 → -1.5±1.3 上転制限:-2.8±1.1 → -1.2±0.9
・斜視角: 水平 -79.3±32.3PD(30-130) → -16.9±17.4PD(0-50)
73%で20PD以内の成功 53.3%で10PD以内の成功
下斜視 –8.9±10.1PD → -0.64±1.33PD(0-4)
・2眼で異物感のため摘出
・現在主流の方法は糸でSRとLRを縫合する方法だが、直筋の絞扼、前部毛様体循環の絞扼、そして不可逆的であるという欠点がある。
・この方法で最大約40PDの内斜視の矯正効果があった(MM)
Systemic pharmakinetics following intravitreal injections of ranibizumab, bevacizumab or aflibercept in patients with neovascular AMD(日本の眼科85:1713,2014)
Avery RL et al(CA USA)
Brit J Ophthalmol 98(12): 1636-1641, 2014
・Ranibizumab(RA)やbevacizumab(BE), aflibercept(AF)硝子体注射後の血中薬物動態、VEGF濃度について検討した。
・56眼の滲出性AMDに対して、RA(0.5mg)、BE(1.25mg)、AF(2.0mg)を1か月毎に硝子体内注入し、血清内動態を1回目と3回目の注入後に検討した。
・第1回目の注射後の最高血中薬物濃度、28日間の累積面積はAFではRAの5倍と9倍で高かったが、BEではRAの9倍、35倍と高かった。
・3回目投与時の結果から、BEとAFでは血中薬物濃度の蓄積があったが、RAではなかった。
・AFは血漿のVEGFを大きく抑制するが、RAでは変化は少なかった。
・3種とも硝子体注射後に急速に血中に入るが、その後の動態は違う。
・RAは血中半減期は2時間で、すぐに消えるが、BEは血中半減期は20日、AFは5-6日であり、長期間全身暴露があり、血漿中freeのVEGFを著明に抑制していることから、RAが動脈血栓症に関する事象が一番少ないと考えた(図)。(TY)
Fine needle diathermy occlusion of corneal vessels.
Faraj LA et al(Egypt)
Brit J Ophthalmol 98(9): 1287-1290, 2014
・2004~2012に極小針ジアテルミー(FND)を行った40例42眼について報告する。
・使用した針は10-0ナイロンの3/8側面カット針であり、単極ジアテルミーで最少パワーにして、針に触れ、角膜が軽く白色化するまで凝固した。
・症例は角膜脂肪変性、角膜移植前処置、血管を伴った難治性角膜移植後の拒否反応などである。
・角膜脂肪変性では14/17(82.3%)で有効。
・血管を伴ったハイリスクの角膜移植の術後1年目の生着率は84.6%。
・14眼では2-5回のFND再治療が必要であった。
・そのうち9眼は角膜脂肪変性、5眼は角膜移植の術前処置であった。(TY)
Evaluating the safety of air travel for patients with scleral buckles and small volumes of intraocular gas
Jason Noble et al. (Department of ophthalmology and vision sciences, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada)
Br J Ophthalmol 98(9): 1226-1229, 2014
・12名12眼のうち、強膜バックルあり6名、無し6名。15%C3F8ガス置換を伴うPPV手術後約1ヶ月で航空機旅行を想定した室内で評価した。
・室内は毎分300フィートの割合で最高高度8000フィートまで徐々に減圧される。
・開始前と開始後5分ごとに眼圧を計測した。開始前平均13±3㎜Hgから8000フィートでの26±9㎜Hgまで上昇した。
・バックルありの患者は無しの患者に比し、頂点が低かった。(20±5㎜Hg対32±8㎜Hg、P=0.013)
・眼圧上昇も少なく(7±1㎜Hg対19±7㎜Hg、P=0.001)、基準からの上昇割合も低かった(62±25%対140±40%)。
・少量の硝子体内ガス注入眼では模擬飛行による減圧状態で明確な眼圧の変化を示したが強膜バックル施行の患者には変動が少なく、このような患者は危険な眼圧上昇なしに航空機での旅行に耐えられると思われた。
・強膜バックルを施行の患者はシリコンバックル自体で眼球が硬くなっていることと、その形状の変形も眼圧上昇を防いでいると思われる。
・しかしながら基準の眼圧が高い場合は離陸直後に疼痛を訴え、旅行後に緑内障性視神経症が認められた症例もある。(YM)
Proton beam irradiation for non-AMD CNV: 2-year results of a randomised clinical trial
Ling Ghen et al. ( Retina service, Massachusetts eye and ear infirmary, department of ophthalomlogy, harvard medical school, Boston, Massachusetts, USA)
Br J Ophthalmol 98(9): 1212-1217, 2014
・AMD以外の原因で二次的に発生したCNVに対する陽子線照射(PBI)治療後の安全性と視力結果を評価する。
・AMDではなく二次的にCNVが発生し、視力が20/320以上の患者46名。PBIを16又は24CGE(cobalt gray equivalents)で照射に無作為に分類し、FAGを含む全眼科的検査を術前と術後6,12,18,24か月に施行した。
・術後1年で16CGEと24CGE群で視力低下が1.5ライン以下であった症例は各々82%と72%、2年後は各々77%と64%であった。
・軽度の合併症として放射線血管炎が17.6%で進行した。CNVはAMD以外でも病的近視、眼ヒストプラズマ症、angioid streaks、などのブルッフ膜の異常で発生しうる。
・自然経過は悪く、治療効果も様々である。中心窩外にはLKも有効であるが中心窩下には行なえない。
・PDTは近視由来の中心窩下CNVには有効であるが、効果は2年は続かない。抗VEGF治療はAMD由来のCNVほど効果が無い。
・その上抗VEGFとPDTは頻回に再治療を要し、患者には危険や不便が加わる。
・放射線治療は一度で済み、選択性から正常組織への損傷も少ない利点がある。
・当初はAMDの二次的CNVのための治療とされ、血管内皮細胞の増殖を妨げCNV複合体内のサイトカイン産生炎症細胞を防ぎ、繊維芽細胞の増殖を減らして、瘢痕形成をすすめる原理である。
・正常組織への放射線照射の合併症は正常組織への照射が主因だが、陽子線治療(PBI)は線量は90%以上が標的に照射されるため損傷は最小となる。(YM)
Cataract surgery in small adult eyes
Gianluca Carifi et al. (Moorfields eye hospital, London, UK)
Br J Ophthalmol 98(9): 1261-1265, 2014
・眼軸20.9㎜未満で高屈折IOL度数(前房固定で30D、後房固定で35D以上)、眼手術の既往の無い症例にPEA-IOL手術を行ない、術中、術後合併症を観察した。
・5年の観察期間で22,093眼中39眼が相当したが術中に重篤な合併症は無かった。
・術後、重篤な合併症(網膜剥離や慢性術後ぶどう膜炎)は2例に認めた。
・術後視力は24眼(62%)で㏒MAR0.30より良好であったが、3眼のみは不良であった。
・10眼(26%)は先天性又は遺伝性の小眼球で視力は低下した(P<0.0001)。
・高屈折IOL度数が必要な小眼球はまれだが、他の先天性又は後天性眼合併症を有しやすい。しかしながら結果は満足のいくものであり、手術の合併症は少ない。(YM)
Predictive factors for non-response to intravitreal ranibizumab treatment in age-related macular degeneration
Misa Suzuki et al.(Keio university school of Medicine)
Br J ophthalmol 98(9): 1186-1191, 2014
・AMDの初回治療として3か月毎月のIVR後9か月までPRN治療を行なったAMD患者141名141眼は12か月目でIVR後、浸出が増悪する眼底所見と100㎛以上の中心網膜厚の増加で視力が悪化したが、㏒MAR0.2以上の悪化をIVR無反応症例と判断した。
・視力の評価では14.9%、眼底所見では17.0%が無効であった。
・視力で評価すると線維血管性PEDと漿液性PEDが、眼底所見で評価すると線維血管性PEDとI型CNVが無反応と関連していた。
・Yamashiroらの報告ではPCVの14.3%と、典型的AMDの14.3%はIVRの効果が無い為PDTを開始し、Krugerらの報告では血管新生AMDの15%は、無効だったとある。
・今回もこれらの報告に類似する。線維血管性PEDは視力でも眼底所見からでも共に無効例の危険因子であるが、原因を推測すると、RPE直下の線維組織が脈絡膜毛細血管からの酸素拡散を減少させ、結果としてRPEからの漏出液の能動輸送を妨害することとなる。
・微細な環境を維持するRPEの能力が減少し、光受容体機能がそこなわれる。Type1CNVではRPEバリア機能が保たれていて薬剤の浸透が不充分なため眼底所見では無効に見えてもRPEバリア機能のためAMD領域の急速な進行が無く、視力では無効例の危険因子とならなかったと考えられる。(YM)
Enhanced depth imaging optical coherence tomography of the choroid in migraine patients: implications for the association of migraine and glaucoma.
Dadaci Z et al(Turkey)
Brit J Ophthalmol 98(7): 972-975, 2014
・Auraがあるかどうかは不問として、29名の頭痛患者で、発作時と緩解期で脈絡膜厚を測定した(58眼)。
・測定部位は中心窩と、中心窩から500μm間隔で鼻側と耳側の3か所である。
・片側の頭痛患者では発作時には全か所で脈絡膜厚が有意に増加していた。
・例えば中心窩では頭痛側眼では、発作時:緩解時は、408.8±77.7:373.5±76.5(p<0.001)、対側眼では、386.6±81.8:386.0±82.0(p=0.427)。
・両側の頭痛患者では右眼では5/7か所で、左眼では7/7か所で発作時に肥厚していた。
・頭痛と緑内障はいずれも三叉神経支配であることで、神経炎症として関連があると考えている。(TY)
Change in choroidal thickness and axial length with change in intraocular pressure after trabeculectomy.
Saeedi O et al(MD USA)
Brit J Ophthalmol 98(7): 976-979, 2014
・20例21眼の線維柱帯切除眼で術前と術後1W,1,3,6Mで脈絡膜厚を測定した。
・脈絡膜厚は中心窩周囲6mmの平均とした。
・全例で脈絡膜厚は術後眼圧下降とともに肥厚しており、1mmHg下降で3.4μm(95%CI=2.5-4.3 p<0.0001)、眼圧1mmHg下降で、1.7%増加(95%CI=1.3-2.0% p<0.0001)の肥厚であった。
・眼軸長は1mmHg下降で6.8μm短縮(95%CI=4.9-8.6 p<0.0001)であった。(TY)
Evidence of early ultrastructural photoreceptor abnormalities in light-induced retinal degeneration using spectral domain optical coherence tomography.
Aziz MK et al(NC USA)
Brit J Ophthalmol 98(7): 984-989, 2014
・5000 luxを3時間照射した後のOCT像を、3h、24h、3D, 1W, 1M後に調査した。
・照射中の1h、2hでも調べた(TY)
Long-term outcomes of fine needle diathermy for established corneal neovascularisation.
Trikha S et al(UK)
Brit J Ophthalmol 98(4): 454-458, 2014
・角膜新生血管は視力低下をきたすし、外見上も悪い。
・52例56眼に対して微小針でのジアテルミー(FND)での治療を行い、その安全性と経過(平均18.9か月:1-56か月)を報告する。
・角膜新生血管の原因は単純ヘルペス25例53%などである。
・術中合併症は角膜実質あるいは結膜下出血(2%)であった。
・結果は、68.1%では平均6.9週の初期経過で軽快した。
・最終的に89.3%は2回、3回で全例が軽快した。
・角膜ヘルペス後のものでは、視力は術前0.82±0.69(小数点0.15)→0.62±0.65(0.23)に改善した。
・方法は10-0ナイロン糸を新生血管の角膜侵入部のすぐ傍の角膜半層(輪部では500μ深)に通し、ナイロンの針に単極ジアテルミーを2-3秒作用させた。
・術後は2週間デキサメサゾン0.1%を1日4回、単純ヘルペスの時は抗ヘルペス内服も同時に使用した。
・この方法は安全で有効な方法であると考えた。(TY)
Subfoveal choroidal thickness measurements with enhanced depth imaging optical coherence tomography in patients with nanophthalmos
Ali Demircan et al. (Turkey)
Br J Ophthalmol 98(3): 345-349, 2014
小眼球とは他に特別な奇形が無いのに先天的に眼球容積の小さい物を言う。小眼球では遠視、浅前房、水晶体・眼球容積比の高値、短眼軸、厚い強膜、閉塞隅角緑内障、uveal effusionのような病変の合併がある。加えて後極では黄斑低形成、嚢胞、偽乳頭浮腫、色素性網膜ジストロフィー、脈絡膜肥厚がありうる。
眼血流の約85%を受け取り、網膜外層に酸素を供給する脈絡膜の機能不全は光受容体の機能低下となり、AMD,CSC等の病変に関与しうる。これまで脈絡膜の評価はIA,Bモードであったが最近はEDI-OCTで評価が可能となった。
対象は62名62眼、2群に分類し、研究群は小眼球で基準は眼軸(20㎜以下)浅前房(3.0㎜未満)中等度から高度遠視(+3.5D以上)。対照群は健常な正視眼。
結論:SFCTは小眼球では明らかに高値であった。組織科学的には異常な強膜膠原繊維とグリコサミノグリカンの代謝の変化、強膜細胞により生産されたフィブロネクチンの増加を示す。
<小眼球で脈絡膜が肥厚する理由>
①小眼球の強膜は異常に厚く、そのため蛋白への脈絡膜血管透過性を減弱させ、渦静脈を圧縮する。蛋白分子は脈絡膜内で一定の水の体積を有するため、脈絡膜血管が充血する。この説は小眼球でのuveal effusionの説明となる。
②脈絡膜の肥厚は異常な強膜の結果として起こるのではなく、これこそが異常強膜の原因と把える説。脈絡膜が厚いほど色素上皮や網膜からの異常のバリアとなる。(YM)
Cataract surgery outcome in eyes with keratoconus
Martin P Watson et al. (UK)
Br J Ophthalmol 98(3): 361-364, 2014
白内障、球面IOL移植を行なった円錐角膜眼64名92眼に術前ケラトメトリーの値の修正と結果を評価する。円錐角膜軽度(平均K値<48D)35眼、中等度(平均K値48から55D)40眼、強度(平均K値>55D)17眼。
結論:平均K値55D以下に球面IOLを使用する時は軽度近視を目標とするならば実際のK値を使用するが、円錐角膜が強度ならば実際のK値を用いるとかなり遠視化するため標準K値を用いることが推奨される。(YM)
Low levels of 17-β-oestradiol, oestrone and testosterone correlate with severe evaporative dysfunctional tear syndrome in postmenopausal women: a case-control study
Caterina Gagliano et al, (Italy)
Br J Ophthalmol 98(3):371-376, 2014
ドライアイ(DES)は男性よりも女性に多くみられ、特に妊娠中・授乳中・避妊薬内服中・閉経後により多く認めるため、性ホルモンとの関係が示唆される。
マイボーム腺(MG)が油層を産生するが、涙腺やMGにアンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロンやプロラクチンのレセプターが存在している
涙腺の正常な働きにはアンドロゲンレベルが重要で、プロラクチンやエストロゲンも涙液産生に重要な役割を果たしている。
また、閉経後の女性にMGDが多くみられる。
アンドロゲン欠乏や抗アンドロゲンの点眼治療をすると、油層の状態が有意に悪化し、アンドロゲンを刺激する治療を行うと、MGから油分の産生が高まり、BUTの延長が見られる
エストロゲンの絶対量は体重、性別、年齢によって影響される
目的:性ホルモンと蒸発亢進型ドライアイとの関係を調査する
方法:1年以上無月経、血清FSH値12mIU/mL以上、エストラジオール値15pg/mL以下の女性44例。MGDのある蒸発亢進型ドライアイを有する22例(グループA)とMGDを認めない22例(グループB)。
排尿後体重(0.1kg単位)、朝8時の空腹時ホルモン値、血糖、脂質(TG,TC,HDL)、144項目の食物摂取状況、角膜を染色してスリットランプの検査、涙液の浸透圧、シルマーテスト、BUTを検査、自己評価の症状をスコア化
結果:患者背景に有意差なし 体重は標準範囲BMI 22.5kg/m2(20.0-25.0)
性ホルモン濃度と浸透圧、シルマー値、BUTは有意に相関
グループAとBでは浸透圧、シルマー値、BUT、自覚症状のスコアは有意差あり
結論:閉経後の女性ではドライアイになるリスクがあり、アンドロゲン・エストロゲンが低いことが蒸発亢進型の発症に関与していると考えられる。これらの結果より今後蒸発亢進型のドライアイに対して、ホルモン治療が有用となるかもしれない。(MM)
Intracameral recombinant tissue plasminogen activator(r-tPA) for refractory toxic anterior segment syndrome.
Dotan A et al(Israel)
Brit J Ophthalmol 98(2): 252-255, 2014
・眼内レンズ挿入後の難治性のTASSに対する遺伝子組み換えt-PA(r-tPA)の前房内注入効果を検討した。
・2010/5-2011/11で、白内障手術の前房フィブリンが発生し、ステロイド結膜内注入等には反応しなかった40例40眼に対してr-tPAの25μg/0.1mlを前房内注入した。
・注入時期は術後10-49日(20.3±9.6)であり、注入後1日で32例(80%)では完全緩解、8例(20%)で部分緩解が得られた。
・1か月後では95%が完全緩解であった。(TY)
The effect of nicotine on choroidal thickness
Ozgur ZM, Cinar E, Kucukerdonmez C (Turkey)
Br J Ophthalmol 98(2):233–237, 2014
【対象と方法】若く健康な被験者16名と性・年齢とをマッチさせたコントロール16名
被験者群にはニコチン4mg含まれたガムを摂取、コントロール群はプラセボ
ベースライン、摂取1時間後の脈絡膜厚をSD-OCTで測定
(日内変動の影響を避けるため10-12時に測定)
【結果】ニコチン摂取群の中心窩網膜厚はベースライン時(平均337.00μm)に比べ摂取1時間後(平均311.00μm)に有意に減少(P=0.001)。中心窩と外の5測定点いずれも有意に減少していた(P<0.05)。コントロール群の中心窩網膜厚はベースライン時(平均330.50μm)→摂取1時間後(平均332.00μm)と有意な変動みられなかった(P=0.271)
【結論】ニコチンは経口摂取後に脈絡膜厚の有意な減少をきたす。この急激な変動はニコチンの血管収縮作用により眼血流が減少した結果によるのかもしれない。(MK)
Pazopanib eye drops: a randomised trial in neovascular age-related macular degeneration
Danis R,et al. for the Pazopanib Eye Drops Study Group(US-WI)
Br J Ophthalmol 98(2):172–178, 2014
【目的】AMDによる中心窩下CNVに対するPazopanib点眼の効果を評価
【対象と方法】70名のAMD患者(中心窩下minimally classic CNVまたはoccult CNV)ランダムに3群に割付け;5mg/mLを1日3回点眼、2mg/mLを1日3回点眼、5mg/mLを1日1回点眼(3回点眼のうち2回がプラセボ)。28日間点眼し、中断や抗VEGF剤注射のレスキューなどなかった例はさらに5か月間点眼を延長。29日目の矯正視力と中心窩網膜厚(CRT)を測定。
【結果】どの群もベースライン時に比してCRTの有意な減少がみられず。層別解析ではCFH のTT genotypeを持ち5mg/mLを1日3回点眼した群ではCRTの有意な減少がみられた(P=0.01)。
5mg/mLを1日3回点眼した群では平均視力が有意に改善(全体で4.32文字;P=0.002、CFH TT genotypeで6.96文字;P=0.02、CFH CT genotypeで4.09文字;P=0.05)
【結論】5mg/mLのpazopanib点眼は投与後29日において矯正視力の改善をきたした。しかしAMDによる黄斑浮腫の改善はCFH Y402Hの TT genotypeのみでみられた。(MK)
Management of recurrent corneal erosions: are we getting better?
Rita Mencucci, Elenora Favuzza
Editorial: Br J Ophthalmol 98(2): 150-151,2014
1872年に最初の再発性角膜びらん(RCES)がintermittent neuralgic vesicular keratitisとして報告。元々は外傷既往に関連するもの、その後角膜上皮やBowman膜の不整と関連。
1944年Chandlerによって one of the most remarkable disorders of the eyeと言われた
そして現在においてもgreat challengeとされている
治療の目的は上皮の基底膜への接着を強め、症状の緩和と再発の予防
治療の歴史:
19世紀の終わり 抗生剤眼軟膏の夜間点入と圧迫眼帯
1900年のはじめには科学焼灼(chemical cauterization)が導入された。角膜上皮を剥いで、塩素水・トリクロロ酢酸・ヨウ素水を用いて焼灼する
1960年代と70年代は潤滑剤の点眼・ゲル・軟膏とパッチ、現在も主流
効果ないときは急性期にはbandage contact lensが考えられる。
保存的治療で難治な場合は
1980年代になりsuperficial keratectomy(ジストロフィー)、anterior stromal puncture(外傷)が報告。しかし前者は再発予防において満足する結果ではなく、後者は再発予防には効果的だが、周辺部の外傷後のものにしか用いることができないという問題がある
1980年代の半ば エキシマレーザーを用いたphototherapeutic keratectomy(PTK)が導入非常に正確な組織除去と広範囲の治療が得られる点で有効で成功率は74-100%と報告。
外傷眼での成功率がジストロフィー眼よりも高い。
欠点はhazeと屈折値の変化と高額な治療機器が必要
それに代わる治療法:
medical therapy: metalloproteinases, oral tetracycline and topical corticosteroidの単独あるいは併用療法や自家血清療法(ファイブロネクチン)が報告
surgical approach:alcohol delamination(ALD)がDuaらによって2003年に報告
PTKがBowman膜の一部を破壊するのに対して、ALDは破壊しない
2012年Cochrane reviewはRCESに対する治療においてよくデザインされたトライアルが必要であると報告(MM)