Low levels of 17-β-oestradiol, oestrone and testosterone correlate with severe evaporative dysfunctional tear syndrome in postmenopausal women: a case-control study
Caterina Gagliano et al, (Italy)
Br J Ophthalmol 98(3):371-376, 2014
ドライアイ(DES)は男性よりも女性に多くみられ、特に妊娠中・授乳中・避妊薬内服中・閉経後により多く認めるため、性ホルモンとの関係が示唆される。
マイボーム腺(MG)が油層を産生するが、涙腺やMGにアンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロンやプロラクチンのレセプターが存在している
涙腺の正常な働きにはアンドロゲンレベルが重要で、プロラクチンやエストロゲンも涙液産生に重要な役割を果たしている。
また、閉経後の女性にMGDが多くみられる。
アンドロゲン欠乏や抗アンドロゲンの点眼治療をすると、油層の状態が有意に悪化し、アンドロゲンを刺激する治療を行うと、MGから油分の産生が高まり、BUTの延長が見られる
エストロゲンの絶対量は体重、性別、年齢によって影響される
目的:性ホルモンと蒸発亢進型ドライアイとの関係を調査する
方法:1年以上無月経、血清FSH値12mIU/mL以上、エストラジオール値15pg/mL以下の女性44例。MGDのある蒸発亢進型ドライアイを有する22例(グループA)とMGDを認めない22例(グループB)。
排尿後体重(0.1kg単位)、朝8時の空腹時ホルモン値、血糖、脂質(TG,TC,HDL)、144項目の食物摂取状況、角膜を染色してスリットランプの検査、涙液の浸透圧、シルマーテスト、BUTを検査、自己評価の症状をスコア化
結果:患者背景に有意差なし 体重は標準範囲BMI 22.5kg/m2(20.0-25.0)
性ホルモン濃度と浸透圧、シルマー値、BUTは有意に相関
グループAとBでは浸透圧、シルマー値、BUT、自覚症状のスコアは有意差あり
結論:閉経後の女性ではドライアイになるリスクがあり、アンドロゲン・エストロゲンが低いことが蒸発亢進型の発症に関与していると考えられる。これらの結果より今後蒸発亢進型のドライアイに対して、ホルモン治療が有用となるかもしれない。(MM)
Intracameral recombinant tissue plasminogen activator(r-tPA) for refractory toxic anterior segment syndrome.
Dotan A et al(Israel)
Brit J Ophthalmol 98(2): 252-255, 2014
・眼内レンズ挿入後の難治性のTASSに対する遺伝子組み換えt-PA(r-tPA)の前房内注入効果を検討した。
・2010/5-2011/11で、白内障手術の前房フィブリンが発生し、ステロイド結膜内注入等には反応しなかった40例40眼に対してr-tPAの25μg/0.1mlを前房内注入した。
・注入時期は術後10-49日(20.3±9.6)であり、注入後1日で32例(80%)では完全緩解、8例(20%)で部分緩解が得られた。
・1か月後では95%が完全緩解であった。(TY)
The effect of nicotine on choroidal thickness
Ozgur ZM, Cinar E, Kucukerdonmez C (Turkey)
Br J Ophthalmol 98(2):233–237, 2014
【対象と方法】若く健康な被験者16名と性・年齢とをマッチさせたコントロール16名
被験者群にはニコチン4mg含まれたガムを摂取、コントロール群はプラセボ
ベースライン、摂取1時間後の脈絡膜厚をSD-OCTで測定
(日内変動の影響を避けるため10-12時に測定)
【結果】ニコチン摂取群の中心窩網膜厚はベースライン時(平均337.00μm)に比べ摂取1時間後(平均311.00μm)に有意に減少(P=0.001)。中心窩と外の5測定点いずれも有意に減少していた(P<0.05)。コントロール群の中心窩網膜厚はベースライン時(平均330.50μm)→摂取1時間後(平均332.00μm)と有意な変動みられなかった(P=0.271)
【結論】ニコチンは経口摂取後に脈絡膜厚の有意な減少をきたす。この急激な変動はニコチンの血管収縮作用により眼血流が減少した結果によるのかもしれない。(MK)
Pazopanib eye drops: a randomised trial in neovascular age-related macular degeneration
Danis R,et al. for the Pazopanib Eye Drops Study Group(US-WI)
Br J Ophthalmol 98(2):172–178, 2014
【目的】AMDによる中心窩下CNVに対するPazopanib点眼の効果を評価
【対象と方法】70名のAMD患者(中心窩下minimally classic CNVまたはoccult CNV)ランダムに3群に割付け;5mg/mLを1日3回点眼、2mg/mLを1日3回点眼、5mg/mLを1日1回点眼(3回点眼のうち2回がプラセボ)。28日間点眼し、中断や抗VEGF剤注射のレスキューなどなかった例はさらに5か月間点眼を延長。29日目の矯正視力と中心窩網膜厚(CRT)を測定。
【結果】どの群もベースライン時に比してCRTの有意な減少がみられず。層別解析ではCFH のTT genotypeを持ち5mg/mLを1日3回点眼した群ではCRTの有意な減少がみられた(P=0.01)。
5mg/mLを1日3回点眼した群では平均視力が有意に改善(全体で4.32文字;P=0.002、CFH TT genotypeで6.96文字;P=0.02、CFH CT genotypeで4.09文字;P=0.05)
【結論】5mg/mLのpazopanib点眼は投与後29日において矯正視力の改善をきたした。しかしAMDによる黄斑浮腫の改善はCFH Y402Hの TT genotypeのみでみられた。(MK)
Management of recurrent corneal erosions: are we getting better?
Rita Mencucci, Elenora Favuzza
Editorial: Br J Ophthalmol 98(2): 150-151,2014
1872年に最初の再発性角膜びらん(RCES)がintermittent neuralgic vesicular keratitisとして報告。元々は外傷既往に関連するもの、その後角膜上皮やBowman膜の不整と関連。
1944年Chandlerによって one of the most remarkable disorders of the eyeと言われた
そして現在においてもgreat challengeとされている
治療の目的は上皮の基底膜への接着を強め、症状の緩和と再発の予防
治療の歴史:
19世紀の終わり 抗生剤眼軟膏の夜間点入と圧迫眼帯
1900年のはじめには科学焼灼(chemical cauterization)が導入された。角膜上皮を剥いで、塩素水・トリクロロ酢酸・ヨウ素水を用いて焼灼する
1960年代と70年代は潤滑剤の点眼・ゲル・軟膏とパッチ、現在も主流
効果ないときは急性期にはbandage contact lensが考えられる。
保存的治療で難治な場合は
1980年代になりsuperficial keratectomy(ジストロフィー)、anterior stromal puncture(外傷)が報告。しかし前者は再発予防において満足する結果ではなく、後者は再発予防には効果的だが、周辺部の外傷後のものにしか用いることができないという問題がある
1980年代の半ば エキシマレーザーを用いたphototherapeutic keratectomy(PTK)が導入非常に正確な組織除去と広範囲の治療が得られる点で有効で成功率は74-100%と報告。
外傷眼での成功率がジストロフィー眼よりも高い。
欠点はhazeと屈折値の変化と高額な治療機器が必要
それに代わる治療法:
medical therapy: metalloproteinases, oral tetracycline and topical corticosteroidの単独あるいは併用療法や自家血清療法(ファイブロネクチン)が報告
surgical approach:alcohol delamination(ALD)がDuaらによって2003年に報告
PTKがBowman膜の一部を破壊するのに対して、ALDは破壊しない
2012年Cochrane reviewはRCESに対する治療においてよくデザインされたトライアルが必要であると報告(MM)
A randomized controlled trial of alcohol delamination and phototherapeutic keratectomy for the treatment of recurrent corneal erosion syndrome
Elsie Chan et al (Australia)
Br J Ophthalmol 98(2):166-171, 2014
点眼やコンタクトレンズといった従来の治療によって改善しない、再発性角膜びらん(RCES)に対してコンピュータによる無作為割り付けにて17例でAlcohol delamination (ALD)、16例でPhototherapeutic keratectomy(PTK)を行った
除外:眼手術既往眼、用手的上皮剥離以外のRCESに対する治療、ヘルペスや他の角膜、外眼部疾患、角膜知覚低下、糖尿病の既往、18歳未満
アウトカム:治療前後における起床時の痛みの強さ(0-10のスコア)、覚醒時痛、再発、視力低下やHazeを含む術後合併症、追加処置
術直後 ジクロフェナク、プレドニゾロン点眼、コンタクトレンズ
術後 クロラムフェニコール、フルオメトロン0.1%の点眼 2週間
夜間 眼軟膏3か月
症状の再発が強い場合はPTKを行った
結果:患者背景に有意差なし
調査期間:2007.5-2010.8
完全寛解:ALD群10眼(59%) PTK群6眼(38%)
部分寛解:ALD群 1眼(6%) PTK群4眼(25%)
再発: ALD群 5眼(29%) PTK群6眼(38%) 平均6Mと6.5M 有意差なし
追加PTK:ALD群3眼(6%) PTK群2眼(13%)
Haze(1M):ALD群7眼(41%) PTK群8眼(50%) 12M後には消失
ALDもPTKも有意差は無し、24か月目の傷みスコアの差は統計誤差か?
どちらの治療法も有用でALDの方がリーズナブルであり、治療オプションとなりうる(MM)
Intracameral bevacizumab as an adjunct to trabeculectomy: a 1-year prospective, randomised study.
Vandewalle E et al(Belgium)
Brit J Ophthalmol 98(1): 73-78, 2014
・POAGに対する初回の線維柱帯切除術(MMC 0.2mg/ml, 2分作用)で、bevacizumab1.25mgを終了時に前房中に注入の効果を検討した。
・69名でbevacizumab注入、69名は生食注入。
・成績は完全成功は眼圧が5mmHgを超え18mmHg以下で、30%以上の眼圧下降が得られ、光覚がなくなっていないもの。
・薬剤使用あるいは、外科的な眼圧下降処置を行って眼圧がコントロールされている者は限定成功とした。
・完全成功はBev群で有意に高く(71% vs 51% p=0.02)、needlingはBev群で有意に少なかった(12% vs 33% p=0.003)(TY)
Sebaceous carcinoma in Japanese patients: clinical presentation, staging and outcomes
Akihide Watanabe et al. (聖隷浜松病院)
Br J Ophthalmol 97(11): 1459-1463, 2013
・日本人の眼瞼に出来た脂腺癌の臨床像、管理、AJCC第7版TNM分類との相互関係。
63人63例(男性26人、女性37人)平均年齢71歳、平均経過観察期間4.2年
上眼瞼21例、下眼瞼42例、平均腫瘍径8mm (2~37mm)
・59例は最初から結節やmassが認められた。1例は乳頭状、3例は板状またはびまん性に瞼が厚くなっている状態だった。
・TNM分類: T2aN0M0(60%)、T2bN0M0(25%)、T3aN0M0(9%)T3bN0M0(2%)、T2bN1M0(2%)、
T3bN1M1(2%)
治療は冷凍凝固術、切除術が施行され、T3bN0M0の1例のみ眼窩内容除去術を行った。
冷凍凝固術を受けた患者の4例が再発した。T2aN0M0 2例、T3aN0M0 2例
5例に他の部位への結節状の転移を認めた。その内2例がT2aN0M0だった。
・最初から正しく診断されていたのは36例(57%)だった。
これは、以前の報告に比べると高い確率である。それは、脂腺癌がアジアで多いので、眼科医や病理医の認識が高いためと考えられた。
T3a以上の腫瘍は他の部位への結節状の転移ではなく、局所再発と関連していた。
以前の報告書に反して、10ミリより小さいT2a腫瘍は他の部位への転移と関連していた。(CH)
Non-responders to treatment with antagonists of vascular endothelial growth factor in age-related macular degeneration
Ilse Krebs et al. (Austria)
Br J Ophthalmol 97(11): 1443-1446, 2013
・AMDに対する抗VEGF治療の無効頻度とその理由を見いだす。
・2006.1~2008.12 アクティブなAMD患者283人334眼(男性107人、女性176人)、平均年齢76.29±8.9歳
1ヶ月毎に12ヶ月間経過観察した。
OCT所見で悪化、BCVA5文字以上低下、活動性があると判断した時点で再治療を行った。
Bevacizumab 1.25mg 使用 249眼 (74.55%)、Ranibizumab 0.5mg使用 85眼 (25.45%)
・平均投与回数 4.8±2.1回(Bevacizumab 4.7±2.1回、 Ranibizumab 5.2±2.0回)
十分に治療に反応しない目を識別するために、測定可能なデータが3つ選択された:BCVA、CRTと病変のサイズ。
・14.37%がNon-responders。(Bevacizumab 14.06%、 Ranibizumab 15.29%)
両眼治療した患者51人 両眼反応あり33人(65%)、両眼反応無し2人(4%)、片眼ずつ違う反応16人(31%)
ベースラインでの視力の悪さの他、硝子体網膜癒着が際立ってNon-respondersと関連づけられた。
病変タイプでは、Non-respondersはクラシックとラップより高かった。しかし有意差はなかった。
3ヶ月時点での視力の悪化と網膜厚の増加と病変の大きさの増加がnon-respondersと判断する適切な材料である。
十分に反応しない症例の治療のために新しい治療が開発されなければならない。(CH)
Stromal bed quality and endothelial damage after femtosecond laser cuts into the deep corneal stroma.
Kimakura M et al(東大)
Brit J Ophthalmol 97(11): 1404-1409, 2013
・150-KHz femtosecond laser(FSL)を用いて、豚眼角膜では100,300,500μmの深さで、家兎角膜では70,100,150μmの深さで角膜切開を行った。
・角膜内皮障害の比率は、残存角膜が70μmの場合には3.78±0.77%、100μmでは0.60±0.41%、150μmでは0.35±0.28%であった。
・70μm残した場合には、100μm、150μmの場合よりも有意に障害率が高かった(p=0.013 p=0.0090)(TY)
The course of uveitis in pregnancy and postpartum
Nathalie PY Chiam et al (Australia)
Br J Ophthalmol 97(10):1284-1288, 2013
・47例の非感染性ぶどう膜炎の病型・解剖学的な病変部位・子供の性別・母乳保育の状態・投薬状況・周産期のぶどう膜炎の活動性悪化(flare-up)をレトロスペクティブに調査
Flare-up: standardization of uveitis nomenclature (SUN) criteria
Two-step or greater increase in anterior cell count or vitreous haze
The worsening or development of other inflammatory features
(eg, CME, retinitis,choroiditis)
・診断時平均年齢:24.6±8.0歳(6-38歳)
・14例(26%)は2回の妊娠、2例(4%)は3回の妊娠を含む
・観察期間
妊娠前:11.2±2.4M(3.0-12.0)
妊娠中:8.6±1.4M(3.0-9.0)
妊娠後:10.0±2.8M(12.0-33.0)
・病型
原発性 21例(45%)、HLA-B27 11例(23%)
その他 15例(23%)
Juvenile Idiopathic arthritis 5例
Fuch’s heterochromic uveitis 3例
Multifocal chorioretinitis 3例
Behcet disease 2例
Sarcoidosis 2例
・Rate of flare-up (per person year)は妊娠前、妊娠初期と比べ、妊娠中期・後期で有意に減少した。出産後は妊娠前と有意差無まで増加した
・病型別に分けて検討しても同様のパターンであった
統計学的に有意差あり:Idiopathic uveitis (p=0.001)とOther subgroups (p=0.007)
HLA-B27 positiveグループは p=0.114で有意差はなかった
・病因、解剖学的な活動部位、投薬の有無、子供の性別、通院回数はどれも妊娠前、妊娠中、出産後のflare-up rateとは関係がなかった
・妊娠中にエストロゲンとプロゲステロンの上昇がTh1関連免疫を抑制し、Th2関連の免疫反応を活性化させる。そのため、妊娠中には関節リウマチのようなTh1関連自己免疫性疾患は軽快し、SLEのようなTh2関連自己免疫疾患は悪化する。
・母体循環では、regulatory T cellは胎児への免疫寛容と感染への自己免疫の間で表現型の変化が生じる。このような免疫修飾が母体の自己免疫状態に影響を与えていると考えられる。妊娠中の自己免疫システムの変化には様々な要素が関係しているようだ。
・この研究では妊娠初期には変化はなく、中期以降に活動性が減少していることが分かった。
・多くの非感染性のぶどう膜炎はTh1による病気だといえる。
・出産後1-2か月で妊娠に伴う変化が元に戻る。
・妊娠中にぶどう膜炎の活動性が低下することで、妊婦への投薬減少、胎児へのリスク減少につながるし、出産後にぶどう膜炎が再燃することに対して、重点的なケアが可能となる(MM)
Traumatic retinopathy presenting as acute macular neuroretinopathy
Martin M Nentwich et al (Germany)
Br J Ophthalmol 97(10): 1268-1272, 2013
・AMNR: 1975年に BosとDeutmanが報告した稀な疾患で、感冒様前駆症状が多くの症例であり、黄斑病変はしばしば非対称両側性の傍中心暗点をきたす楔形の暗い黄斑病変
のちのOCTの出現によってIS/OS接合部の異常と判明
・Red freeによってAMNRを疑って注意深く観察しないとしばしば見落とす
・1997年にGilliesらがindirect trauma後のAMNR様症例を4眼報告(OCTなし)
・症例1:68歳男性 交通事故 両脛骨骨折 意識消失や眼外傷はないが左眼の視力低下と傍中心暗点自覚 事故後11日目視力(0.03)、傍中心暗点、IR-SLOでdark, wedge-shaped defect、同部位にSD-OCTでIS/OSラインの乱れ、視細胞外節レベルの欠損と外顆粒層(ONL)の輝度亢進。FAGでは明らかな異常所見無。1年後には視力(1.0)まで回復、IS/OSも部分的に回復したが、暗点は持続。32か月後、ONLレベルの網膜の菲薄化がわずかにあるのみ。56か月後電話連絡では傍中心暗点は変わらず存在。
・症例2:48歳女性 交通事故後右眼に暗点自覚 視力(0.1) 眼底は小さな黄斑部傍中心の出血 FAGは明らかな異常所見無 IR-SLO SD-OCTで症例1と同等の所見 22日後には視力(1.0)に回復
・症例3:21歳女性 交通事故後左眼に暗点に変化した白点を自覚 IR-SLOのDark areaの部位と一致 右眼にもごく軽度のAMNRと暗点を認めた 視力は両眼とも(1.0) FAGは明らかな血管異常所見無 多局所ERGでは非対称性の左中心部振幅減弱 13か月後暗点は持続、Dark Lesionは消失 13年後電話連絡では暗点自覚
・症例4・症例5:上記症例同様交通外傷後暗点自覚 IR-SLOでDark area 多局所ERGで振幅減弱
・非直達外傷後の黄斑部変化はバルサルバ網膜症のように局所の血流不足、脂肪塞栓症で見られるようにな血管ダメージ、および血管の変化はなく急性の後部硝子体剥離によるものがある
・Gilliesらは非直達外傷後のAMNR類似網膜症について初めて報告 事故に伴い急激な胸郭圧が上昇し血管内圧が急上昇することで、網膜血管柵の破たんを生じると示唆した。血管外液が急激に除去されることで網膜の構造的異常が持続する。
・IR-SLOでDark areaとなった部位はMuller細胞の障害を示している
・SD-OCTではIS/OSの乱れと視細胞外節レベルの欠損を示し、非外傷性AMNRでも見られる。ONLの高輝度はMuller細胞のグリオーシスの反応を示している。網膜外層の菲薄化は日外傷性AMNRでも認められ、視細胞のロスを反映していると思われる
・多局所ERGの振幅低下もAMNRで認められる。
・非直達性外傷もAMNRの原因となりうる(MM)
Mid-term evaluation of the new Glaukos iStent with phacoemulsification in coexistent open-angle glaucoma or ocular hypertension and cataract
Pedro Arriola-Villalobos et al (Spain)
Br J Ophthalmol 97(10):1250-1255, 2013
・適応基準:18歳以上の初期から中期までの開放隅角緑内障(PEXを含む)またはOHT、手術に影響する角膜混濁無、術前最終の2回の眼圧が眼圧下降薬使用で14-30mmHg、使用していない患者は22-30mmHg、washoutした場合は22-32mmHg、白内障による視力低下0.5以下で1年間決められたスケジュールで通院できる
・除外基準:上記以外の緑内障、隅角観察不能、PASのあるもの、眼科手術既往のあるもの、外傷・眼表面の疾患、調査に影響する重大な既往歴のあるもの、その他全身疾患のあるもの
・47歳から89歳の白人20眼 POAG 8,OHT 8,PEX 4眼
・術前にCAI1週間、α-2作動薬2週間、βブロッカーとPGは4週間休薬
・視力、眼圧、角膜内皮細胞密度、前眼部パラメーター(隅角角度、前房深度、前房体積)
・二人の術者で白内障とiStent(2個挿入)の同時手術
・術後の観察で、4例で二つのうち一つのiStentが観察不能、6例で二つのうち一つが深く挿入しすぎ、1例でPASのため閉塞(レーザーで対処)
・眼圧19.95→16.75mmHg 点眼1.3→0.3 (washout 25.5mmHg)
・点眼なしで18mmHg以下(Complete success)50%、21mmHg(Relative success)以下75%
・術前のパラメーターとの相関はなし CSの方が隅角の狭いものが多かった(P=0.06)(白内障手術の影響が大きいため) (MM)
Long-term outcome of scleral-fixated intraocular lens implantation
Abbie S W Luk et al (Hong Kong)
Br J Ophthalmol 97(10): 1308-1311, 2013
・Alcon CZ70BD(PMMA, eyelets)レンズを10-0ポリプロピレンで縫着
・1997年から2008年まで最低1年以上経過観察ができた99例104眼(M51,F48)
・平均観察期間 73±43か月(12-180)
・72.1%は術後矯正視力は不変・あるいは改善し、27.9%で低下した。
・24%で術後合併症を生じた。
4眼で縫着の糸の露出があったが、糸のトリミングやローテーションを行い、視力に影響するものや追加処置は必要なかった。
IOLの偏移を2眼に認めた。(術後外傷と認知症患者)
最も多いのは角膜障害5眼であったが、それらの既往はFuch’s角膜ジストロフィー1眼、硝子体手術既往眼2眼、急性緑内障発作眼1眼、Hapticの突出により、ACIOLを入れた1眼であった。
2.9%(3眼)で眼圧上昇があり、手術を必要とした(すべて外傷既往眼)
2.9%で屈折矯正手術を要するような重篤な術後乱視を生じた
1眼で網膜剥離を9か月後に発症し、硝子体手術を行った
1眼で脈絡膜剥離を術翌日に認めたが、2週間以内に消失した
全体として13/104眼(12.5%)で追加手術が必要となった。
・既報では50か月の経過観察で縫着糸の劣化が27%で診られたと報告があるが、2例(1.9%)のみであった(MM)
The relationship between floppy eyelid syndrome and obstructive sleep apnoea
MaJesus Muniesa et al. (Spain)
Br J Ophthalmol 97(10): 1387-1390, 2013
・眼瞼弛緩症候群(FES)と睡眠時無呼吸(OSA)との関係について。
(1) OSA疑いとされた人の中のFESや眼瞼弛緩の有病率を調べる。(OSAの診断をするために入院した114人)
(2) FESと診断されている人でのOSA有病率を調べる。FESと診断された45人に終夜睡眠ポリグラフ検査を施行。
・結果
89人がOSAと診断された。mild 9人(10.1%)、moderate 24人(26.9%)、severe 56人(62.9%)。14人(16%)にFESが認められた。14人中mild 1人、moderate 2人、severe 7人。OSAではなかった25人のうちFESが認められたのは2人だった。
FESと診断された45人のうち38人がOSAと診断された。mild 3人(8%)、moderate 10人(26.3%)、severe 25人(65.7%)
・OSAは眼瞼弛緩の独立したリスク要因であることを示唆した。severe OSA患者のFES有病率は20%に達した。
FESと診断された患者でのOSA有病率は85%に達し、その大部分がsevereだった。FESの患者をみたらOSAがあるかもしれないのでエピソードを聞いて、専門家に紹介する事が重要である。(CH)
Therapeutic effect of prolonged treatment with topical dorzolamide for cystoid macular oedema in patients with retinitis pigmentosa
Yasuhiro Ikeda, et al.(九州大)
Br J Ophthalmol 97(9): 1187-1191, 2013
・網膜色素変性症に伴う嚢胞様黄斑浮腫に対するdorzolamide点眼治療の長期成績を検討した。
・症例: 10人18眼(男性1人、女性9人)、平均年齢43.0歳、両眼8人、片眼2人
1%dorzolamide点眼を1日3回した。1,3,6,12,18ヶ月毎に経過観察した。
・6ヶ月以内でベースラインから20%以上CMEが減少したのは14眼(77.8%)
6ヶ月以内でほぼ完全にCMEが消失したのは9眼、その内8眼は18ヶ月間効果が持続した。
網膜厚が改善した10眼のすべてで黄斑の感度は改善していた。(baseline: 29.7±3.6 dB 、18ヶ月後: 31.7±3.3 dB)
全例で副作用はなかった。
・dorzolamide点眼の長期使用は網膜色素変性症に伴う嚢胞様黄斑浮腫に効果的で安全であった。
治療の最初の選択肢と考えられる。
6ヶ月以内にCMEが引かない症例には他の治療が必要である。(CH)
Risk of retinal vein occlusion in patients with systemic lupus erythematosus: a population-based cohort study
Yung-Chang Yen, et al. (Taiwan)
Br J Ophthalmol 97(9):1192-1196, 2013
・SLE患者でのRVOの発生率とRVOになった患者の冠動脈疾患(CAD)、糖尿病、高脂血症、高血圧、脳卒中の同時罹患率を調べた。
・2001~2006年、新たにSLEと診断され、基準を満たした6756人(男性735人、女性6021人)を4年間経過観察した。コントロール群40536人
・SLE群のRVOの発生率はコントロール群の3.46倍だった。
0-49歳のSLE群でだけ際立って高く、0-49歳のコントロール群の7.92倍だった。
また、SLE患者の女性に多く、コントロール群の女性の3.33倍だった。
高血圧の同時罹患率のみRVOの発生率と関連していた。
・SLEでの高血圧やステロイド使用からのアテローム性動脈硬化症が網膜症の発症に関与するかもしれない。(CH)
Surgical outcomes after epiretinal membrane peeling combined with cataract surgery
Glenn Yiu, et al. (USA)
Br J Ophthalmol 97(9):1197-1201, 2013
・白内障手術併用黄斑上膜peelingと黄斑上膜peeling単独手術で、機能的、解剖学的結果を比較検討した。
・2001〜2010、少なくとも1年以上経過観察できた79人81眼(男性32、女性47)、平均年齢72.4歳
グループ1:白内障手術併用黄斑上膜peeling 41眼
グループ2:黄斑上膜peeling単独 40眼
・視力 表1
この結果は白内障手術併用でも単独手術でも視力結果は相違がないことを示す。
・平均網膜中心窩厚(CMT) 表2
白内障手術併用の方がCMTの減り方は少ないけれど、有意差はなかった。
・同等の視力結果は出るが、解剖学的にはおとる結果を出すかもしれない。
これは、併用手術の方が手術時間が長くなったり、長期間炎症が続く事により、黄斑浮腫の遷延、黄斑上膜の再発を増加させる事を示唆した。(CH)
Evidence of lower macular pigment density in chronic open angle glaucoma.
Igras E et al(Ireland)
Brit J Ophthalmol 97(8): 994-998, 2013
・黄斑色素MPは視機能、網膜を酸化による障害から予防するのに役立っているが、緑内障の様な視神経の神経変性がMPの変化を起こすかどうかについて検討した。
・POAGの40名とコントロール54名についてheterochromatic flicker photometry法で中心窩外0.5度の部位の黄斑色素濃度MPOPを測定した。
・POAGのMPODは0.23±0.42であったが、コントロール眼では0.36±0.44で有意差があった(p=0.031)が、MPODとPOAGのハンフリー視野24-2でのMDで表示した病勢との間には相関はなかった(p=0.64)。
・MPODは緑内障者では低くなっていることが分かり、緑内障者でのグレアの自覚に影響していると考えた。
・MPOD減少の要因としては、循環障害と酸化ストレスがあると考えた。
・網膜微小循環障害がカロチノイドの黄斑部への移動を障害し、MP形成が障害される可能性がある。
・また、緑内障による酸化ストレスがフリーラジカル産生を促して神経節細胞の死滅に関与するとともに、MP消失を起こすのだろう。
・初期緑内障における黄斑厚の減少やganglion cell complex(GCC)の消失がMPの同時消失を伴っているというのは十分にありうることである。(TY)
The relationship between retinal and choroidal thickness and visual acuity in highly myopic eyes.
Moreno IF et al(Spain):
Brit J Ophthalmol 97(8): 1010-1013, 2013
・46例60眼の-6D以上(-12.05±5.02:-6~-26D)、あるいは眼軸長26mm以上(28.2±2.4:26~35.3mm)の高度近視眼(56.9±17.9:18~99歳)で、黄斑症や弱視眼は除外して検討した。
・脈絡膜厚測定は、中心窩を含み500μm間隔で耳側鼻側2500μmまでの脈絡膜厚、中心窩厚、RPEから外顆粒層までの厚みを測定した。
・最高視力はlogMARで0.11±0.19、平均黄斑部脈絡膜厚は157±84.6μm(16.7~426.5)、中心窩下脈絡膜厚は166±88.7μm(13.5~486.5)、中心窩厚は221.1±30.3μm(157.5~296)、外顆粒層厚は121.3±22.6μm(74~191.5)、視細胞からRPE迄の厚みは99.5±10.8μm(71.5~115.5)であった。
・logMARは黄斑部脈絡膜厚と負の相関(r=-0.371 p=0.003)、中心窩下脈絡膜厚と負の相関(r=-0.358 p=0.004)、視細胞~RPE厚と負の相関(r=-0.346 p=0.006)があった。
・この事から、これらの3つの値は、黄斑部に病態のない高度近視眼において視力を予想する重要な因子であるが、外顆粒層厚や中心窩厚は視力に関連がないことが分かった。(TY)