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Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology

2024
262巻

マイボーム腺機能不全(MGD)患者の1年以上の経過を見て、そのマイボーム腺の変化に影響を与える要因を調べた

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 262巻(2号)2024

Wan X, Wu Y, Zhai Z, et al. Factors affecting long-term changes of meibomian gland in MGD patients. Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol 2024; 262: 527-535.
・MGDの治療で、マイボーム腺の脱落から回復あるいは悪化をきたした要因を検討するため、上海の復旦大学で1年以上経過を観察しえた患者について検討した。
・MGDの診断は症状と眼瞼縁の所見から行った。この診断基準はわが国(日眼会誌2023年127巻2号掲載のガイドライン)と共通している。
・除外基準として何らかの眼科手術後、他の眼表面疾患を有する場合、外傷の既往、眼炎症、酒さ、アトピー性皮膚炎など。原則右のみの上眼瞼のマイボーム腺所見を評価。右が除外基準に該当する場合は左の所見を検討。
・主な検討項目としては、corneal fluorescein staining (CFS), tear meniscus height (TMH), noninvasive breakup time (NIBUT)と、非接触型のマイボグラフィー(Keratograph 5M; Oculus, Wetzlar, Germany)で観察されたマイボーム腺の形状である。
・マイボグラフィーの解析にはMG自動解析装置(DMK, Guangzhou, China)を用いた。
・対象は79症例79眼。マイボーム腺として認識された領域の面積をROI (region of interest:関心領域・・画像用語のようです)で割って算出した腺の領域(AR: gland area ratio)において、初回の検査時(baseline)と最終の検査時(last visit)の比較でARが5%以上増加したものを「改善」、5%以上減少したものを「悪化」として各パラメーターとの関連を検討した。
・79例中男性が50人(63.3%)、女性29人(37.7%)、平均年齢36.03±15.78歳(6-73歳)、ARの「改善」が34.2%(27/79)、「不変」35.4%(28/79)、「悪化」30.4%(24/79)。
・改善、不変、悪化の各平均年齢は27.56±13.83歳、40.07±15.82歳、40.96±4.31歳。男性の比率は81.5%(22/27)、64.3%(18/28)、41.7%(10/24)。
・若い男性で治療による回復の可能性が高い。性差についての考察はないが、MG stem cellの増殖能が加齢とともに低下してくるため、若い人ならマイボーム腺再生の見込みはあるが、年齢とともにマイボーム腺の改善が得られなくなっていると考えられる。
・初回の検査時(baseline)と最終の検査時(last visit)の比較でマイボーム腺機能のパラメーターの中で有意な変化のあったものは、ARの他、corneal fluorescein staining (CFS)、gland signal index(SI)であった。このSIとは、マイボーム腺管内の分泌物(meibum)の光学濃度を測定したものでマイボーム腺機能の指標である。
・治療としては、IPL(intense pulsed light)が有効であり、改善例、不変例、悪化例でIPLが施されていたのはそれぞれ77.8%(21/28)、53.6%(15/28)、37.5%(9/24)だった。
・【結論】MGDの患者を1年以上経過観察すると、1/3の患者で改善が得られているが、若い患者ほどマイボーム腺の回復が期待できるため、早期にMGDを見つける必要がある。(KH)

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