Iatrogenic retinal traumas in ophthalmic surgery (Review).
Tognetto D et al(Italy)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(10): 1361-72, 2008
・網膜の光化学障害:頻度は0.75-7.4%
・斜視手術時の網膜障害:0.13-12%
・局所麻酔時の網膜障害:後部ぶどう腫では0.13%、全体では0.014%
・合併症のない白内障後の網膜剥離:0.41-1.5%、後嚢破損後の網膜剥離:3.7-8.6%、核皮質落下後の網膜剥離:4.0-45.4%、各皮質落下に起因した硝子体手術後の網膜剥離:0.0-45.4%
・白内障術後のCME:1%-20%
・強膜内陥時の強膜穿孔:0.1-3.8%
・硝子体手術時の網膜裂孔:3.1-6.8%、そこからの網膜剥離:1.8-4.5%
Selective retina therapy (SRT) of chronic subfoveal fluid after surgery of rhegmatogenous retinal detachment: three case reports.
Koinzer S et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(10): 1373-8, 2008
・網膜剥離強膜内陥後に黄斑部の下液が吸収しない3症例に SRT:μs-laser治療を行った。
・レーザー施行までの期間は、5、7、13カ月後であった。
・使用レーザーはQスイッチ Nd:YLF laser(λ=527nmの30pulse)を17~61発行った。
・1~5か月後に下液は吸収し、視力改善が得られた
Obstructive sleep apnea in patients with central serous chorioretinopathy.
Kloos P et al(Switzerland)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(9): 1225-8, 2008
・中心性網脈絡膜症患者(CSC)は交感神経活動が活発であること、corticosteroidとcatecholaminレベルが高いとの報告もある。
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では交感神経活動がその重症度に比して高く、尿中catecholamin排出量が増加し、高血圧発症も重症度に比して高いことも知られている。
・活動性CSC、CSC後の色素上皮障害のある人に質問し、Epworth Sleepines Scale(ESS) scoreを取った。
・55名のうち36名が抽出され、そのうち8名(22.2%)がOSASと診断された。
・一般人口ではOSASは2-4%であり、OSASはCSC発症のリスクファクターではないかと考えた
Retrobulbar hemodynamic parameters in pseudoexfoliation syndrome and pseudoexfoliative glaucoma.
Martinez A et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(9): 1341-9, 2008
・color Doppler imaging(CDI)を用いて球後動態を調べた。
・72名72眼のPXS、70名70眼のPXG、66名66眼の年齢合わせた正常者で検討。
・眼動脈(OA)、網膜中心動脈(CRA)、耳側の短後網様動脈(SPCA)のpeak systolic velocity(PSV)、end-diastolic velocity(EDV)、Pourcelot resistance index(RI)を調べた。
・PXGではPXS、コントロールに比して、OA,SPCA,CRAのEDVが有意に減弱しており、OA,SPCA,CRAのRIは有意に高かった。
Refractive properties of the healthy human eye during acute hyperglycemia.
Wiemer NGM et al(Netherland)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(7): 993-8, 2008
・5名の健常者(年齢24.8±4.6歳)の水晶体の高血糖による変化を Scheimpflug imagingと Hartmann-Shack aberrometryで調べた。
・皮下にsomatostatinを注射30分後、oral GTT(75g)を行った。
・4名では変化がなかったが、1名で0.4Dの遠視化がおこり、水晶体前面が凸になり、水晶体の球面等価屈折度が低下した。
Visual outcome after vitreous, sub-internal limiting membrane, and/or submacular hemorrhage removal associated with ruptured retinal arterial macroaneurysms.
Nakamura H et al(琉球大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(5): 661-9, 2008
・網膜血管瘤RAMの破裂では出血は眼内のいろいろな場所に起こる。
・31人33眼のRAMについて検討。1眼を除き、全例で硝子体内、ILMの下、網膜下腔の、2か所以上に出血していた。
・ILM下に出血のある27眼中22眼(81%)は黄斑部であり、この22眼中12眼(55%)では術中まで黄斑部の出血は分からなかった。
・硝子体手術前に黄斑下の出血を評価することは困難で、視力予後の推定は困難である
AcrySof natural filter decrease blue light-induced apoptosis in human retinal pigment epithelium.
Rezai et al(IL USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(5): 671-6, 2008
・AcrySof filter(UVフィルターのみ)と、AcrySof Natural filter(UV+青フィルター)がヒトのRPE細胞の青色光誘発のアポトーシス(細胞自然死)に与える影響を検討。
・AcrySof、あるいは AcrySof Naturalのフィルターを介して、青色光(430-450nm)にRPE細胞を10日間暴露し、アポトーシスの進み具合を検討した。
・青色光の10日間露光した時にアポトーシスになるRPE細胞の割合は、86.14±3.26%(暗所保存では 20.07±5.71%)。
・AcrySof Naturalでは、AcrySofに比較して青色光で誘発されるアポトーシスは優位に減少していた。
・アポトーシス細胞の率は、AcrySof 71.16±19.11:AcrySof Nat 36.70±11.34:暗所 15.66±5.28%。
・RPE細胞に到達する青色光エネルギーは Acrysofでは 4.25mW/cm2、AcrySof Naturalでは 2.5mW/cm2であった。
・AMDのリスクの高い白内障患者では青色を除去する眼内レンズ移植が考慮されるべきだ
Increased retinal toxicity of intravitreal tissue plasminogen activator in a central retinal vein occlusion model.
Yamamoto T et al(大阪大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(4): 509-14, 2008
・tPAの毒性は虚血状態で強くなるため、特にCRVOなどの網膜虚血があると網膜毒性は強くなる可能性がある。
・有色ラットでCRVOを発生させ、その1時間後にtPA(0.075, 0.75, 3, 7.5μg)を硝子体内へ注入し、12時間後に摘出検査を行った。
・TUNEL (terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP-nick end labeling) の染色度合で網膜細胞のapotosisを評価した。
・TUNEL陽性細胞はCRVOでも、non-CRVOでも量依存性に増えていたが、特にCRVO眼では 0.75μg以上が注入された場合に有意に増えていた(p=0.002)。
・このことから、CRVO眼でtPAを使用する時は容量を減らす必要があるだろう
Long-term results of amniotic membrane transplantation-assisted bleb revision for leaking blebs.
Nagai-Kusuhara A et al(神戸大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(4): 567-71, 2008
・頑固な術後晩期の瀘過泡漏出に対する羊膜移植を併用した瀘過泡再生の長期予後について検討。
・平均年齢60(20-77)歳の6例。全例MMC併用線維柱帯切除術で、術後15(4-54)ヵ月で瀘過泡漏出が見られたもの。
・羊膜は上皮側を下にして、強膜に一部、縫いつけた。
・羊膜併用手術後、49(41-67)ヵ月経過観察したが、全例、濾泡形成は順調で、漏出はみられていない。
Bacterial adhesion to conventional hydrogel and new silicone-hydrogel contact lens materials.
Kodjikian L et al(France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 246(2): 267-73, 2008
・未使用の4種類のCLを表皮ブ菌と緑膿菌の中で37℃4時間培養した。
・1種類の標準的hydrogel CL(Etaficon A, Acuvue 2)、3種類のsilicon hydrogel CL(Galyficon A, Acuvue advance; Balaficon A, Purevisio; Lotraficon B, O2Optix)を使用。
・標準的hydrogel CL(Acuvue 2)が一番細菌付着が少なく、O2Optixが最も多かった。
・これは silicon-hydrogel CLが hydrophobicityが大きいこと、酸素透過性が高いことによるものであろう
Macular thickness after uneventful cataract surgery determined by optical coherence tomography.
Jagow B et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(12): 1765-71, 2007
・33例の黄斑疾患のない症例で片眼のみPEA+IOL手術を行ない、他眼をコントロールとし、術前、術後1日、1週間、6週間後にZeiss OCTで平均最小中心窩厚(MMFT)と平均中心窩厚(MFT)を測定した。
・術眼とコントロール眼とのMMFTの差は、術後1日 7.30±18.1(p=0.03)、1週 4.42±24.2(p=0.41)、6週 7.12±22.6(p<0.001)。
・MFTの差は、術後1日 6.96±22.8(p=0.003)、1週 10.93±19.7(p<0.001)、6週 11.36±14.8(p<0.001)。
・臨床的な黄斑浮腫は全例で見られなかった。
・黄斑の厚みと視力、超音波時間や強さ、眼軸長や前房深度などとの間には相関はなかった。
・白内障手術後には視力に影響しない中心窩肥厚があるが、subclinicalな変化である
Combination of laser photocoagulation and intravitreal bevacizumab (Avastin) for aggressive zone I retinopathy of prematurity.
Chung EJ et al(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(11): 1727-30, 2007
・活動性の未熟児網膜症にレーザー光凝固治療と硝子体内アバスチン注入治療を行った。
・在胎25週 884gの男児の両眼(活動性 stage 3 zone I ROP)に対し、レーザー光凝固と0.75mg硝子体内アバスチン注入を行った。
・3ヶ月の経過観察で、両眼にROPの寛解と急速なplusサインと新生血管増殖の消失がみられ、全身的、眼局所ともに副作用はなかった
Inhibition of corneal angiogenesis by ascorbic acid in the rat model.
Peyman GA et al(USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(10): 1461-7, 2007
・72眼のratで、角膜を硝酸銀、硝酸カリウムで化学焼灼。
・8眼づつ9群にわけた:中和しない100mg/mlのビタミンCで加療群(1群)、その他は中和したビタミンCで加療した。濃度は 100(2群), 50, 10, 5, 1mg/ml, 500, 250μg/ml(8群)、コントロール群(第9群)。
・角膜新生血管の面積(%)は、18, 17, 15, 18, 29, 30, 60, 66, 68%であり、濃度依存性であり、500μg/ml以下の濃度では効果がなかった
Spontaneous resolution of full thickness idiopathic macular hole: fundus autofluorescence and OCT imaging.
Milani P et al(Italy)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 245(8): 1229-31, 2007
・Stage IIの70歳女性の特発性黄斑円孔(IMH)が自然寛解した1例をSLOでの自発蛍光とOCT画像とともに報告。
・2003.2に2ヶ月前からの視力低下を訴えて来院。視力は0.3で変視症あり。
・2003.12受診時に0.8まで、視力改善していた。
・黄斑円孔形成時に発生していなかったPVDがIMH消失時には発生しており、同時に自発蛍光が消え、OCTでも正常化していた
Rate of epithelialisation and re-operations in corneal ulcers treated with amniotic membrane transplantation combined with botulinum toxin-induced ptosis.
Fuchsluger T et al(Germany)
Graefes Clin Exp Ophthalmol 245(7): 955-64, 2007
・角膜潰瘍に対し、羊膜移植(AMT)とボツリヌス毒typeAで眼瞼下垂を発生させて治療する試み。
・AMTを最初に行い、次にAMT、あるいは角膜全層移植 pKPを行ったA群(92眼)
・AMTを最初に行い、次にボツリヌス毒typeAを上眼瞼に注射したB群(32眼)
・最初にボツリヌス毒typeAを上眼瞼に注射し、次にAMT、pKPあるいはボツリヌス毒typeAの再注射を行ったC群(13眼)で検討。経過観察期間は 14.2±14.7ヶ月
・全体の再手術率は 45.3%、完全な上皮再生までの期間は 12.7±6.1日。
・A群の再手術率は 44.6%。AMT再手術後の再手術率は 30.4%。
・ボツリヌス毒typeAを最初に使用したC群の再手術率は 69.2%で最高であるが、AMTを追加施行後の再手術率は 23.1%と非常に良くなる。
・AMT単独あるいは、ボツリヌス毒素type Aでの眼瞼下垂は様々な原因で発生した重篤な角膜潰瘍治療に有効である
RPE-rip after intravitreal bevacizumab (Avastin) treatment for vascularised PED secondary to AMD.
Gamulescu MA et al(Germany)
Graefes Clin Exp Ophthalmol 245(7): 1037-40, 2007
・AMDに伴うPEDでRPE亀裂は自然経過でもありうるが、治療によって誘発されることもある。
・今回、Avastin治療によって発生した4例のRPE亀裂を報告(84,86,74,75歳)。
・4例はAvastin注入後1週間から1ヶ月以内に発生。
・4例中2例はPRE亀裂が発生しても視力は上昇した。
Retinal toxicity of triamcinoone’s vehicle (benzyl alcohol): an electrophysiologic and electron microscopic study.
Macky TA et al(Egypt)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(6): 817-24, 2007
・triamcinoloneの媒体としての benzyl alcohol(BA)の網膜毒性について検討した。
・24頭の有色家兎を、硝子体内に 0.1mlのBA注入群(12頭)とBSS 0.1ml注入群(12頭)に分けて検討。
・ERGを3日後、1、2、4、6週後に行い、3頭づつ1、2、4、6週目に光顕、電顕検査を行った。
・3日後のERG a波b波振幅は、BA群: 6.42±9.02と11.18±15.18μv、BSS群: 30.87±8.22と57.90±13.38μv、非注入群:36.20±7.85と64.10±9.36μvで、BA群で有意に減少(p<0.01)。
・検討期間中全てでa波b波は有意に減少していた
・神経節細胞数(網膜切片4740μm2内)はBA群:8.42±2.4、BSSと非注入群は 16.42±3.9と16.5±4.2で有意差(p<0.005)。
・内顆粒層と外顆粒層の厚みは BA群:3.78±0.96と11.77±1.29μm、BSS群:6.1±0.92と21.82±0.95μm、非注入群:7.05±1.9と22.49±1.01μm(p<0.005)。
・6週後の電顕でもBA群では神経節細胞層、内外顆粒層、視細胞層に中等度から高度の変化が見られたが、BSS群では変化がみられなかった
Muller cells as players in retinal degeneration and edema.
Reichenbach A et al(Germany)
Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol 245(5): 627-36, 2007
・ミュラー細胞は病的な状態ではKチャンネルを通した細胞間水を介して、網膜変性や浮腫形成に関与している。
・網膜虚血、炎症、網膜剥離や糖尿病などの様々な網膜症の動物モデルでは、ミュラー細胞はその主たるKチャンネル(Kir4.1) の発現が減り、ミュラー細胞膜を通した水の運搬が損なわれていた。
・ミュラー細胞による網膜の水除去を促進する薬剤開発もありうる。
・トリアムシノロンは内因性adenosineの放出を促し、A1受容体を活性化させるので、トリアムシノロンは血管からの漏出抑制とミュラー細胞による水分排出を促進することの両者で網膜浮腫を改善させるのであろう
Accommodating intraocular lenses: a critical review of present and future concepts.(Review)
Menapace R et al(Austria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(4): 473-9, 2007
・毛様筋緊張によるIOLの受動的前方移動を基礎としたIOL(Morcher社の43E/S、Human Optics社の1CU、Eyeonics社のAT-45)が市販されている。
・スプリング様の支持部で繋がった2重光学部を持ち、後方の光学部は不動で前方光学部が移動することによるものや、水晶体嚢内を弾性物質で充満させ、表面曲率を変化させて調節をうるものがある。
・ピロカルピンで刺激してレーザー干渉法によりIOLの前方移動量を測定すると、1CUでは中等度前方移動(多くの場合は+0.5D以内、稀に+1.0D)するが、AT45では反対に後方移動していた。
・生理的な近見刺激では前例にIOL移動はみられなかった。
・2重光学系IOLでは今の所、大きな調節が報告されているが、レンズ間の混濁の問題が残っている。
・磁石で動かすシステムは調節力も大きく、将来性があるが、繊維性の嚢収縮の問題がある。
・水晶体を弾性物質で充満させる方法は、無調節時に正視をうる方法など、まだ問題が多い。
Hemodynamic evaluation of the posterior ciliary circulation in exfoiation syndrome and exfoliation glaucoma.
Detorakis ET et al(Greece)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 245(4): 516-21, 2007
・落屑症候群(Ex)、落屑緑内障(Ex-gl)では眼動脈(OA)、網膜中心動脈(CRA)の血流が低下していることが知られている。
・長ならびに短後毛様動脈(LPCA,SPCA)でも血流が低下しているかどうかを検討。
・Ex 20例、Ex-gl 16例、POAG 13例、コントロール(Cont) 19例で検討。
・Color Doppler ImagingでLPCA、SPCAのpeak systolic velocity(PSV)、end diastolic velocity(EDV)、resistivity index(RI)を測定した。
・ExやEx-glでは、コントロールやPOAGに比較して、LPCAのEDVは有意に低く、RIは有意に高かった。
・LPCAのEDV(Cont:POAG:Ex:Ex-gl=3.1: 3.1: 2.7: 2.7) (ANOVA p=0.03)。
・LPCAのRI(Cont:POAG:Ex:Ex-gl =0.80: 0.80: 0.82: 0.82) (p=0.03~0.04)。
・また、Ex-glでは、他の群に比較して、SPCAのEDVは有意に低く、RIは有意に高かった。
・SPCAのEDV(Cont:POAG:Ex:Ex-gl =2.3: 2.4: 2.4: 2.1) (p=0.04)
・SPCAのRI(Cont:POAG:Ex:Ex-gl =0.75: 0.75: 0.75: 0.78) (p=0.02~0.03)
・落屑症候群で、LPCAの循環障害があることから、落屑症候群では前眼部に虚血性ストレスのあることがわかった