Changes in choroidal thickness in healthy participants after induction of sympathetic hyperactivity using the cold pressor test.
Umemoto R et al(福岡大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 261(2): 585-587, 2023
・交感神経の過剰反応は中心性漿液性網脈絡膜症など、多くの網脈絡膜疾患の原因となっている。
・寒冷昇圧試験が健常者の脈絡膜形態に与える影響について検討してみた。
・対象は21.4±3.7才の54名(男22名、女32名)で、矯正視力1.0以上、BMIが20.8±2.4Kg/m2(15.4~29.8)で、全身疾患のないボランティアである。
・屈折度は-2.8±2.8D、眼軸長は24.7±1.2mmである。
・右手を手首まで約1度の冷水に30秒間浸ける寒冷昇圧試験を行った。
・眼圧の変化はなかったが、傍中心窩脈絡膜厚SFCTは試験終了直後から有意に減少し、20分間続き、30分後に元に戻った。
・寒冷昇圧試験の今後の臨床応用が期待される(TY)
Six-month outcomes of switching from aflibercept to faricimab in refractory cases of neovascular age-related macular degeneration.
Kataoka, K., Itagaki, K., Hashiya, N. et al. (杏林大ほか)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2023). https://doi.org/10.1007/s00417-023-06222-x
【目的】
月1回の注射が必要であった難治性nAMDの眼において、アフリベルセプトからファリシマブに変更した場合の6か月間の転帰を評価
【対象と方法】
多施設共同レトロスペクティブ研究
毎月アフリベルセプトを注射していたnAMD眼をファリシマブに切り替え、最大4回まで毎月注射した後、添付文書に従って最低2か月間隔で注射
【結果】
124例130眼
6か月後、
53眼(40.8%)がファリシマブ治療を継続し(第1群)、
77眼(59.2%)がさまざまな理由でファリシマブの投与を中止した(第2群)
ベースライン時の両群間に有意差みられず
第1群では、
中心窩下の網膜厚(CRT)と脈絡膜厚(SFCT)は1か月後に有意に減少したが(P = 0.013と0.008)、
6か月後には統計学的有意性は失われた(P = 0.689と0.052)
最良矯正視力(BCVA)と最大PED高さには有意な変化はみられず
平均治療間隔は、
ベースラインの4.4±0.5週から
6か月後には8.7±1.7週に延長した(P < 0.001)
【結論】
アフリベルセプトからファリシマブに切り替えることで、約40%の眼で治療間隔を月1回から隔月に延長することができ、難治性のnAMD症例にファリシマブが考慮される可能性が示唆された。(MK)
The effect of day-long mask wearing on non-invasive break-up time.
Bilici S et al(Turkey)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 260(10): 3313-3319, 2022
・マスクを1日中かけていると non-invasive tear break-up time(NI-BUT)に影響があるかどうかを検討した。
・Ocular Surface Disease Index(OSDI)の質問票に答え、NI-BUT検査を8:30-9:00と16:30-17:00の時間に行った。
・最初のNI-BUT検査で17秒未満の人はGroup-1、17秒以上の人はGroup-2とした。
・74例74眼の内訳は、女性38名、男性36名、年齢は30.9±8.5歳であり、OSDIの平均値は28.6±17.1であった。
・NI-BUT値はGroup-1では、朝11.4±3.3、夕7.9±3.6秒で有意差があった(p<0.0001)。
・Group-2でも8例(24.2%)では、夕方のNI-BUT値が17秒未満に低下していた。
・NI-BUTの低下と年齢、性、OSDI値とは相関がなかった。
・マスクの長時間着用は蒸発亢進性のドライアイでは適切でないかもしれない。(TY)
Comparison of treatment effects between 4.9% N-acetyl-aspartyl glutamic acid and 0.05% cyclosporine A eye drops in dry eye
Daeun Shin, et al, (Korea)
Graefe.s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2022(10) 260:3285-3291
・目的:ドライアイ患者における 4.9% N-アセチル-アスパルチル グルタミン酸 (NAAGA) 点眼薬と 0.05% シクロスポリン A (CsA) 点眼薬の治療効果の違いを調査する。
・対象と方法:ドライアイと診断された86人86眼。点眼により2つのグループに分けられた。 グループ A は 4.9% NAAGA 点眼薬で治療された患者50 人50 眼、グループ B は 0.05% CsA 点眼薬で治療された患者36 人36 眼。治療開始後1か月および3か月で比較した。
・ドライアイ疾患特異的問診票であるOcular Surface Disease Index (OSDI)、ドライアイおよびマイボーム腺機能不全(MGD)のパラメーター、痛みや不快感の測定はVisual Analog Scale (VAS) スコアを計算することによって評価した。
・治療前の患者の人口統計、OSDI、ドライアイ、および MGD パラメーターに 2 つのグループ間で有意差はなかった。
・結果: OSDI、ドライアイ、および MGD パラメーターは、治療後1か月および3か月で、両方のグループで改善された。しかし、治療後1ヶ月では、グループ Aのドライアイおよび MGD パラメーターは、角膜染色スコアを除いて、グループ Bよりも改善を示した。さらに、治療後3か月では、眼瞼縁異常スコア、角膜染色スコア 、涙液層破壊時間、および OSDI は、グループ B よりもグループ A の方が有意に改善した。治療後 1 か月および 3 か月のグループ A の VAS スコアは、グループ B よりも有意に低かった。
・結論:4.9% NAAGA 点眼薬による治療はドライアイ患者に効果的であり、CsA 点眼薬よりも治療反応が速く、使用中の不快感も少なかった。4.9% NAAGA 点眼薬はステロイド点眼の代わりに従来の CsA との併用治療にも使用可能と思われる。(CH)
・Intravitreal aflibercept for diabetic macular edema in real-world clinical practice in Japan: 24-month outcomes
Masahiko Sugimoto, et al. (三重大学)
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2022(10) 260:3489–3498
・目的:日本での実際の臨床現場における糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対するアフリベルセプト硝子体内注射(IVT-AFL)の安全性と有効性を報告する。
・対象と方法:2014 年 11 月から 2019 年 4 月まで、日本の78施設で新たにIVT-AFL を受ける DME 患者を対象とした。 24 か月の経過観察期間中、有害事象の発生、最良矯正視力 (BCVA)、中心網膜厚、注射頻度を検討した。
・結果:少なくとも 1 回の IVT-AFL 注射を投与された 622 例(平均年齢は64.9歳、62.7%が男性)が対象となった。166 例 (25.7%) は DME の治療歴がなく、471 例(72.9%) は以前に治療を受けていた。経過観察中、有害事象は 42 例 (6.50%) に発生し、副作用は 12 例 (1.86%) に発生した。 副作用があった 12 例中、初回注射の1 か月以内に 7が発生しました。眼に関する副作用 6 人は 2 か月以内発症した。
・注射回数は 6カ月で 2.3 ± 1.4 回、12 か月で2.9 ± 2.1 回、24 か月で3.6 ± 3.0 回、1回のみ投与が186 人の(29.9%) だった。
・6 か月、12 か月、24 か月での治療継続率は、それぞれ 80.7%、66.6%、53.7%。
・BCVAは、ベースライン時0.437 ± 0.362(n = 622)、24か月後は0.321 ± 0.348(n = 177)、BCVA が改善した割合は約 15%、改善または維持されたのは約 90% だった。
・中央網膜厚はベースライン時440.8 ± 134.2μm(平均 ± SD)(n = 444)、24か月後355.5 ± 126.4μm(n = 140)だった。
・結論:患者の約 15% が BCVA を改善し、約 90% が BCVA を改善または維持したことから、IVT-AFL のある程度の有効性が観察されました。 しかし、24 か月時点での治療継続率は約 54% であり、臨床現場での長期の治療継続は困難であることが示唆された。IVT-AFL 注射から 2 か月以内に有害事象が発生したことから、臨床医は IV の最初の数か月の副作用に特に注意を払う必要がある。
・この研究では、臨床試験の患者よりも少ない注射を受けており、臨床診療に改善の余地がある。(CH)
Response to netarsudil in goniotomy-treated eyes and goniotomy-naïve eyes: a pilot study
Haochen Xu, et al. Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 9(260): 3001-3007, 2022 (USA)
・少なくとも3ヶ月以上前<平均14ヶ月(中央12M、IQR5−18)>にKDBを行なったのちに点眼追加した群(26名35眼)と、少なくとも3年以上前に白内障手術を実施されたのちに点眼追加した群(23名35眼)で点眼効果の違いを調査
・Baseline IOP: KDB: 19.1±5.5mmHg, control: 18.2±3.6mmHg
結果
・1ヶ月
・20%以上の眼圧下降:KDB 26(82.9%)/31eyes vs control 15(53.6%)/28eyes (P=0.012)
・IOP下降率:KDB 30.3±16.2%(IQR 21-38%) vs control 19.4±12.4%(IQR 9.2-30.8%)(P=0.007)
・6ヶ月の経過において、KDB群で継続した眼圧下降率を維持した。
・平均眼圧は1、3ヶ月では有意差があったが、6ヶ月後では両群に差はなかった。
・多変量解析では点眼前のKDB、ベースラインIOPが高いことが統計学的に有意な因子であった。KDB術後6カ月での20%以上の眼圧下降または追加眼圧下降治療なしで1剤以上の点眼減量はNetarsudilの反応には関係なかった。
・50%で点眼中止:medication intolerance 64%, higher costs 24%, 追加手術やレーザー11%
・全体の副作用42%(29/70):充血33%, allergy 8.5%,blurred vision10%, burning sensation 8.5%, hemorrhage 4.3% 重複あり
考察
・TMが切開(切除)してあることでnetarsudilが集合管以降(房水静脈、上強膜静脈)に流入しEVPを下げたのではないか。
・KDBの成功・不成功に関わらず、手術後の追加治療として有用な選択肢となりうる。(MM)
Predictability of success and open conjunctival revision rates in the subsequent eye after XEN45 Gel Stent implantation according to lens status
D. Kiessling, et al.
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 8(260): 2639-2647, 2022
・66名132眼の両眼にXEN45を受けた患者を対象として、1眼目の結果によって2眼目の成績の確率をベイズの定理によって求める。
・手術間隔は最大6ヶ月
・手術成功基準
Score A:IOP at follow-up <21mmHg and IOP reduction >20%
Score B:IOP at follow-up <18mmHg and IOP reduction >20%
Score C:IOP at follow-up ≦15mmHg and IOP reduction ≧40%
一回までは結膜切開してのRevision OK
・結果
・単独手術:1眼目成功後の2眼目の成功率は、1眼目不成功後と比べて有意に良かった
・白内障同時手術:有意差なし
・2眼目の手術成功率
Score A:1眼目成功 76.6% 1眼目不成功 57.9%
Score B:1眼目成功 75.0% 1眼目不成功 59.1%
Score C:1眼目成功 66.7% 1眼目不成功 15.7%
・術式別のRevisionのリスク
単独手術/Phakic: 1眼目にRevisionあり60% なし 20%
単独手術/IOL眼: 1眼目にRevisionあり72.7% なし 5%
同時手術: 1眼目にRevisionあり38.4% なし 41.7%
・結論
・手術の目標をScore AやBとするなら、一眼目不成功でも2眼目にXEN45を行うことは考慮に値するが、Score Cを目標とするなら、他の濾過手術を考慮すべきかもしれない。
・単独手術の方が同時手術よりも、2眼目のRevision必要性の予測能は高いかもしれない。(MM)
Combined fovea-sparing internal limiting membrane peeling with internal limiting membrane flap technique for progressive myopic traction maculopathy.
Li JP et al(Taiwan)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 260(2): 489-496, 2022
・近視性牽引性黄斑症MTMに対する、ILM flap(ILMF)付き黄斑回避ILM剥離(FSIP)の効果を調査した。
・対象はFSIPの31眼と、FSIP+ILMFを行った35眼で6か月経過を比較した。
・術後最高視力はFSIPでは20/148→20/87、FSIP+ILMFでは20/121→20/66(いずれもp<0.001)。
・術後黄斑厚MTはFSIPでは739.58→223.81、FSIP+ILMFでは706.43→236.59(いずれもp<0.001)であったが、いずれも、両群間には有意差はなかった。
・術後黄斑円孔の発生はFSIPでは9.7%(3/31)、FSIP+ILMFでは0%(0/35)であり、こちらの方が良さそうである(TY)
Influence of mental stress on intraocular pressure and visual field testing: is there a white coat syndrome in glaucoma?
Keren S et al(Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 260(1): 209-214, 2022
・Mental stress test(Stroop test)による精神的ストレスが眼圧や視野に影響があるかどうかをPOAGの36例72眼(年齢67.0±9.5歳)で検討した。
・スクリーン上に例えば[赤色]で書かれた[Green]の文字を見て、5秒以内に書かれた色を画面に標示された[Red][Blue][Green][Yellow]の中からマウスでクリックするというようなテストである。
・眼圧はテスト前の15.0±3.9から16.0±3.5に上昇(p<0.001)。
・ハンフリー視野のMDが-6.9±5.5dBから-8.0±6.0dBに低下(t-testではp<0.054、Wilcoxon nonparametric testではp=0.008)。
・POAGの重症度とIOP変化、PSDの変化の間には相関がみられた(p=0.02とp<0.01)。
・精神的ストレスは眼圧に影響を及ぼし得ると考えた。(TY)
Association between topical β-blocker use and asthma attacks in glaucoma patients with asthma: a cohort study using a claims database.
Kido A et al(京大): Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 260(1): 271-280, 2022
・JMDCのデータベースを調査し、2011年から2017年に新規に緑内障点眼薬を開始した20歳以上を対照として、β遮断剤使用群17,666例と非使用群12,609例に分けて調査した。
・喘息治療を受けていた人は使用群で580例(3.28%)、非使用群で847例(6.72%)で有意差があった(p<0.001)。
・治療中の人は使用群で94例(0.53%)、非使用群で278例(2.2%)で有意差があった(p<0.001)。
・使用群で喘息発作を発症した危険率は、過去の喘息治療群ではHR=0.73(95%CI=0.46-1.16 p=0.18)、現在の喘息治療群ではHR=1.22(95%CI=0.56-2.70 p=0.62)であったことから、十分なICがあれば、必要な場合にはβ遮断剤を使用しても良いのではないかと考えた(TY)
Intraocular pressure responses to walking with surgical and FFP2/N95 face masks in primary open-angle glaucoma patients
Danica Janicijevic D, Beatríz Redondo B, Raimundo Jiménez R, Javier Lacorzana J, Amador García-Ramos A, Vera J (China)
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2021; 259, 2373–2378
DOI https://doi.org/10.1007/s00417-021-05159-3
【目的】
原発性開放隅角緑内障(POAG)患者において、歩行中にサージカルマスクとFFP2/N95フェイスマスクを着用することが眼圧に及ぼす影響を評価
【対象と方法】
・POAGと診断された13名21眼
・ベースライン時、400m歩行時、5分間の回復後に、サージカルマスク、FFP2/N95マスク、マスクなしを無作為な順序で装着した状態で眼圧を測定(Icare ic200)
・2種類のマスクを装着した場合と、マスクを装着しない場合の運動による眼圧変化を解析
【結果】
・安静時(ベースラインおよび回復時)は、どちらのマスク使用も眼圧値に影響を与えず(平均差0.1-0.6mmHg)
・身体活動時には、FFP2/N95マスクの着用により、サージカルマスクおよび対照条件と比較して、わずかではあるが(平均差は1-2mmHg)統計的に有意な眼圧上昇がみられた(Cohen’sd= 0.63および0.83)。
【結論】
SARS-CoV-2感染のリスクを最小限に抑えるためにマスクを使用する必要があり、POAG患者は安静時にFFP2/N95マスクおよびサージカルマスクを安全に使用することが可能である。しかし、FFP2/N95マスクで歩行中に眼圧上昇が観察されたため、POAG患者は可能であれば、身体活動時はサージカルマスクを優先的に使用すべきである。(MK)
Monocular and binocular visual parameters associated to vision-related quality of life in patients with epiretinal membrane: a prospective cohort
Khanna RK, Pichard T, Pasco J, Dorvault M, Cook AR, Pisella PJ Arsene S (France)
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2021; 259, pages1723–1730
DOI https://doi.org/10.1007/s00417-020-05064-1
【目的】
片眼性の特発性網膜上膜(uiERM)患者における両眼視機能(最高矯正視力(BCVA)・不等像視・立体視)とVR-QoLを調査
【対象と方法】
・uiERMによる症状を持つ46例を前向きに調査
・VR-QoL(NEI VFQ-25)、単眼および両眼BCVA、水平・垂直の変視(M-チャート)、水平・垂直の不等像視(The new aniseikonia test)、立体視(TNOステレオテスト)を計測
・重回帰分析によりVR-QoLに影響する因子を検索
【結果】
・不等像視は40例(80%)に認められた
・46例(100%)で立体視が不良(120秒以上)であった
・VR-QoLと関連する因子として、単眼BCVA、水平変視症、水平の不等像視があげられた
【結論】
uiERMをもつ患者では、しばしば不等像視が認められ、常に立体視が損なわれている。我々は、視機能の評価において、BCVAに加え、変視と不等像視の定量的検査を提唱する。これらのパラメータとVR-QoLに対する硝子体手術の効果を評価するために、さらなる調査が必要である。(MK)
Rapid reduction of macular edema due to retinal vein occlusion with low-dose normobaric hyperoxia.
Arroyo JG et al(MA USA)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 259(8): 2113-2118, 2021
・網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫に対する低濃度酸素治療の効果について検討した。
・酸素濃度40%としたfacemaskを3時間装着した効果をみた。
・5リットル/分で酸素マスクを使用すると酸素濃度は約40%となる。
・中心窩に浮腫がない症例は1ヶ月後に浮腫がでたときに酸素療法を行った。
・45名の症例では、非治療眼12眼と比較して、最高黄斑部網膜厚maximum macular thickness(MMT)は平均7.10%減少し(p<0.001)、中心黄斑厚CMTは平均4.64%(p<0.001)減少した。
・1か月後に治療した群でも有意に減少していた。
・この方法は簡単で安価であり、抗VEGF治療が無効あるいは適応にならない人に対する有効な治療である。(TY)
Intraocular pressure responses to walking with surgical and FFP2/N95 face masks in primary open-angle glaucoma patients.
Janicijevic D et al(China)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 259(8): 2373-2378, 2021
・COVID-19に対して効果的なマスクによる眼圧上昇について検討した。
・13例21眼のPOAGの患者にサージカルマスクあるいはFFP2/N95マスクを装着して400m歩いてもらい、眼圧変化を調べた。
・安静時にはマスク装着は眼圧に全く影響がなかった。
・運動時にはサージカルマスクやCtrlに比較して、FFP2/N95マスクは1-2mmHg程度の軽度だが有意に上昇していた(p<0.05)。
・軽度の運動は眼圧低下作用があるので、緑内障患者には勧められているが、高炭酸症が眼圧を上昇させることが報告されていることから、マスクのタイプや慢性肺疾患があるとか、心疾患があるとかにもよるが、マスクによってガス濃度とか呼吸時の抵抗などによって、眼圧が上昇する可能性は十分にあるだろう。(TY)
Preoperative ocular characteristics predicting the development of intraoperative floppy isis syndrome regardless of alpha-antagonist exposure status.
Safir M et al(Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(5): 1209-1214, 2021
・IFISが発生する構造的なリスク因子について、2019/7-9のカルテを調査した。
・50歳未満、瞳孔径や前房深度に影響を及ぼす症例は除外して、394例394眼を調査。
・平均年齢72.48±8.63歳、女性が58.4%であった。
・18眼(4.6%)がIFISを発症し、そのうち7眼(38.9%)はα遮断剤の服用既往があった。
・IFIS発症例は非発症例よりやや高齢であった(78.1±6.7:72.2±8.6 p=0.005)。
・瞳孔径はIFIS群で有意に小さく(5.73±1.16:6.97±1.03mm p<0.001)、水晶体厚LTは有意に大きかった(4.93±0.42:4.49±0.42mm p=0.001)。
・前房深度は水晶体厚と逆比例し(r=-0.613 p<0.001)、瞳孔径と有意に相関していた(r=0.252 p<0.001)。
・単相関では前房深度はIFIS群で有意に浅かった(2.88±0.49:3.14±0.39mm p=0.008)(TY)
Is the axial length a risk factor for post-LASIK myopic regression?
Gab-Alla AA(Egypt)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(3): 777-786, 2021
・近視に対するLASIK後のmyopic regressionと眼軸長について2016/1~2018/1迄の1219例2316眼の症例について、1年経過観察できたものについて検討した。
・術前の屈折度は-4.3±2.1D(-0.5~-10.0D)、26.4±6.8才(21-50才)、女性が69.5%である。
・Myopic regressionは582/2316眼(25.12%)に発生した。
・内訳は6D以上の高度近視眼で52.6%、3Dまでの中等度近視眼で34%、3D未満の軽度近視眼で13.4%に発生した。
・Myopic regressionの発生した眼の眼軸長は26.6±0.73mm(26.0-27.86)、普遍であった眼では24.38±0.73mm (22.9-25.9)であった(p<0.001)。(TY)
Preoperative central macular thickness as a risk factor for psudophakic macular edema.
Doncel-Fernandez et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(1): 37-43, 2021
・白内障手術前の中心黄斑厚(CMT)と術後の嚢胞様黄斑浮腫CMEや黄斑部の網膜チストとの関連を調査した。
・CMEの発症リスクがなく、術中合併症のない179例で術前、術後1日、1M,3MでCirrus-OCTで黄斑部を調査した。
・術前のCMTは257.75±0.60μmで、1か月後は277.86±45.29、3か月後は267.86±20.17であった。
・10.34%で術後に網膜チストがあった。
・術前のCMTが260.5を越えた症例ではCMEを発症するリスクはbinary logistic modelでは、9.08倍であった。(TY)
Characteristics of dry eye patients with thick tear film lipid layers evaluated by a LipiView II interferometer
Yunjin Lee, et al. (Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2021)(1) 259:1235–1241
・涙液の油層の厚さ(LLT)を測定したドライアイ患者(DED)の特性を調査する。
・LipiView II眼球表面干渉計(TearScience Inc. アメリカノースカロライナ)は、涙液膜の干渉計パターンを分析することにより、ナノメートルの精度で涙液層のLLTを自動測定できる。
・102人のDED患者(女性88人で、男性14人、平均年齢56.4±11.8歳)の合計201眼は、平均LLTに従って3つのグループに分類された。薄いLLT(<60nm、n = 49)、通常のLLT(60〜99 nm、n = 77)、厚いLLT(>100 nm、n = 75)。LLT、meiboscore(マイボーム腺の消失面積)、Schirmer Iテスト、涙液層破壊時間(TBUT)、眼表面染色(OSS)、およびドライアイ疾患特異的質問紙票(OSDI)を評価した(正常: 0-12点、軽症: 13-22点、中等症: 23-32点、重症: 33-100点)。
・OSSとTBUTは、通常のLLTグループよりも厚いLLTグループの方が有意に悪かった(それぞれp = 0.020とp = 0.028)。
OSDIは、薄いLLTグループよりも厚いLLTグループの方が有意に高かった(p = 0.006)。
Schirmer I値は、通常のLLTグループ(11.56±7.20 mm)の方が薄いLLT(10.44±7.20 mm; p = 0.99、)および厚いLLTグループ(10.59±8.64mm; p = 0.99)よりも高かった。
meiboscoreは3つのグループ間で違いはなかった(p = 0.33)。
・年齢、OSS、OSDIは、LLTと正の相関を示した(それぞれr = 0.16、p = 0.023; r = 0.213、p = 0.003;およびr = 0.338、p = 0.001)。角膜びらんのある眼は、ない眼よりも有意に高い平均LLT(p = 0.015)、高いOSDI(p = 0.009)、短いTBUT(p <0.001)、および短いシルマーI値(p = 0.024)を示した。
・以前の研究では、薄い涙液膜脂質層が涙液膜の不安定性と重度のドライアイ症状に関連していることが報告されていたが、今回の調査では厚いLLTのドライアイでは、涙液層の破壊時間が大幅に短く、染色スコアが高く、重度のドライアイ症状があることを示した。角膜びらんのある眼の平均LLTは、ない角膜よりも厚いことが明らかになった。厚い LLTは安定した生理学的状態と見なされるべきではないことを示唆している。(CH)
Intrastrolmal bevacizumab in the management of corneal neovascularization: a retrospetive review.
Gupta AA et al(MN USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 167-173, 2020
・角膜移植の際、リスクの高い角膜深層の新生血管に実質内へbevacizumabを注入した14例14眼の長期成績について検討した。
・実質内へ0.05-0.1mlの2.5mg/0.1mlのbevacizumabを4~8週おきに1~3回注入した後に8例に角膜移植(全層6例あるいは深層表層移植2例)を行った。
・この8例の内、注射後に3例は新生血管は消失し、5例は中等度に緩解した症例である。
・全体の64.2%がヘルペス後のものであり、視軸にかかっていた例は50%で、傍中心が42.8%であった。
・注射後14.2%は完全緩解し、角膜移植は不要となった。
・21.4%では新生血管の変化はなかった。
・注射の副作用は3眼/14眼(21%)で発生した。
・2例は注射後の上皮剥離で自然緩解、1例は実質内出血で5週間で緩解。(TY)
Preoperative aniseikonia is a prognostic factor for postoperative stereopsis in patients with unilateral epiretinal membrane
Okamoto F, Morikawa S, Sugiura Y, Hoshi S, Hiraoka T, Oshika T(筑波大)
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2020; 258, 743–749
DOI https://doi.org/10.1007/s00417-020-04625-8
【目的】
片眼性網膜上膜(ERM)患者における立体視とその他の視覚機能を調査し、立体視に影響を与える視覚関連パラメータを同定
【対象と方法】
・片側の特発性ERMに対して硝子体手術が予定された、連続63名を前向きに調査
・術前と術後6か月に、チトマスステレオテスト(TST)および TNOステレオテスト(TNO)による立体視、最高矯正視力(BCVA)、コントラスト感度、変視の重症度、不等像視の程度を調査
【結果】
・術前は、TSTスコアと変視症以外の視力関連パラメータの間、TNOスコアとすべての視力関連パラメータとの間に有意な相関が認められた
・重回帰分析では、術前のTSTスコアとTNOスコアは不等像視の程度と有意に関連(いずれもP<0.01)
・手術にて、立体視・BCVA・コントラスト感度・変視症は有意に改善したが、不等像視は改善せず
・術後、TSTはBCVAと有意に関連し、TNOはBCVAおよび不等像視と関連を示した
・術後のTSTおよびTNOスコアは、術前の不等像視と有意な相関(それぞれP < 0.005, P < 0.001)
【結論】
片側 ERM 患者の立体視障害は、網膜に起因する不等像視によるものであると考えられた。また、不等像視は手術では改善せず、術前の不等像視は術後立体視の予後因子となりうる.(MK)