Intravitreal triamcinolone injections in non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy.
Radoi C et al(France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(2): 339-345, 2014
・非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION)では今まで、視力改善に対する有効な治療は報告されていない。
・36例のNA-AIONに対し、21例に4mg/0.1mlのIVTAを行い、無治療の15例と比較した。
・6か月後の視力は治療群で優位に高かった(p=0.0036)。
・1ライン以上改善は15例(71%):2例(13%)、3ライン以上改善は6例(29%):1例(7%)。
・発症15日以内に注射した13例では、1ライン以上は12例(92%)、3ライン以上は5例(38.5%)、15日以降に行った8例では、1ライン以上は3例(37.5%)であった。
・治療群では治療開始までの期間が短いほどより視力がよかった(p<0.0083 r=-0.56)。
・6か月後の視野についても治療群で優位によかった(p<0.0028)。(TY)
Intraocular pressure reduction after initial failure of selective laser trabeculoplasty (SLT)
Marcelo Ayala (Sweden)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 252(2): 315-320, 2014
目的:初回SLT加療で眼圧降下が得られなかった症例に線維柱帯(TM)の同じ部位と異なる部位にSLTを2回目に施行した眼圧につき考察する。
方法:繰り返すSLT治療による眼圧下降を調べる。
患者は全員がPOAG又はPE緑内障。全例初回SLTはTM下方半周180度にSLTを施行されている(SLT1)。
2回目のSLTは1回目と同じ治療されたTM領域か、未治療の上方TM領域のどちらかに施行(SLT2)。眼圧は術前とSLT2加療後、2時間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に測定。
結果:各群40名。術前両群間で年齢、性別、PEの有無、SLT1と2の間の時間、SLT1以前の眼圧、SLT2以前の眼圧において差は無かった。結果として、SLT2加療後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月での2群間に眼圧の差は無かった。
結論:SLTを2回施行する場合に2度目を同じ区域でも異なる区域に施行しても眼圧に差は無い。
ALTを繰り返す事は眼圧上昇。癒着等のため制限されるがSLTはALTよりもエネルギーが少なく組織損傷が少ないゆえに追加可能である。今回は波長が約532nmのYAGレザーを用いて、スポットサイズは約400㎛、TMの180度に上に約50発を施行した。エネルギーは0.9mJで開始し、気泡形成まで増減調節した。術後アプラクロニジンを一度のみ点眼し、スラロイドは使用していない。全患者に1度目は下方180以上にSLTを施行。SLT1後1,3,6,9,12,18,24ヶ月後の眼圧測定で術前の20%以上の下降が無い症例に再施行。前回と同じ下方又は新たに上方に施行するかは無作為に決定。術後2時間、1,3,6ヶ月後に眼圧を3回測定平均した。同時に炎症が出ていないかも確認した。SLT1の後1ヶ月で24から18㎜Hgであった眼圧は平均6㎜Hg下降し、SLT2の後1ヶ月でも同様に23から18㎜Hgであった眼圧は平均5㎜Hg下降し、これは区域に無関係であった。(YM)
Intravitreal triamcinolone injections in non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy
Corina Radoi et al. (France)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 252(2): 339-345, 2014
目的:非動脈炎性の前部虚血性視神経症(NA-AION)により視力低下と視神経乳頭腫脹をきたした36名のうち21名に4mgIVTAを行ない、無治療の15名と比較した。6ヶ月後に視力(VA)、網膜神経線維層厚、視野を評価した。
結果:治療群では無治療群よりも視力は良好(P=0.0035)。視野も同様(P<0.0028)。
結論:この後ろ向き研究により、NA-AIONの早期にIVTA治療を受けた患者は、6ヶ月後に視力と視野は改善した。
NA-AIONは、中高年に著しい視力低下をきたす急性の視神経の虚血病変であり、危険因子としてはHT,DM,高脂血症、動脈硬化、睡眠時無呼吸、視神経の解剖学的要因などがある。視神経の虚血は急性浮腫の数ヶ月後には視神経乳頭の軸索欠損から萎縮をきたす。
炎症を改善して虚血の連鎖を減らすためにはステロイドによる加療が最も有効と考えられる。ステロイド全身大量投与は全身合併症のある患者には危険な副作用があり、今回IVTAを検討した。(YM)
Intraocular pressure reduction after initial failure of selective laser trabeculoplasty (SLT)
Marcelo Ayala (Sweden)
Grafes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(2): 315-320, 2014
下方半周SLT(SLT1)後の眼圧再上昇に対して、同一部位あるいは上方半周のSLT(SLT2)の効果の比較
POAGあるいはPE患者、 SLT1後1ヶ月以降で20%以上の眼圧下降が得られた患者
最長24ヶ月のフォローアップ 20%の眼圧下降が得られなくなったらSLT2
フォローアップ SLT1: before, 2h, 1, 3, 6, 9, 12, 18 and 24 months
SLT2: before, 2h, 1, 3 and 6 months
結果:各群40例患者背景に有意差なし
PE患者62.5% 北欧に多い
SLT1後の眼圧下降:-6mmHg (24→18)
SLT2一ヶ月後 IOP: 同一部位群 -5 mmHg(22→17) 別部位群 -5mmHg(23→18)
2時間後,1,3,6ヶ月後の眼圧下降に有意差なし 術後炎症も有意差なし
術後6ヶ月までの短期では再治療部位の違いで効果に差はない
SLT後のTMの修復は6-18ヶ月で起きると報告され、この調査でも6ヶ月以降は点眼を変更したり、再度SLTを行ったりしたため、6ヶ月までの成績となっている(MM)
The effect of intravitreal bevacizumab injection as the initial treatment for Coats’ disease
Xiao-Xue Zheng et al. (China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalrnol 252(1): 35-42, 2014
・子供と成人のコーツ病に対する最初の治療としてのbevacizumab硝子体注射の効果を評価する。
2010.4月〜2012.5月の間、少なくとも6ヶ月以上経過観察できた子供14例、成人5例。
子供:14例(男児13例、女児1例、平均年齢6.9 歳)
シールズ分類 stage2 1例、stage3a 9例、stage3b 4例
網膜剝離 13例、毛細血管拡張14例、網膜前線維増殖2例
平均注射回数2.9回
全例で網膜下液と滲出物の減少と毛細血管拡張の回復が認められた。視力はベースライン時と比べ、注射後6、 12、24週後に改善した。(表2)
レーザー追加5例、cryo追加3例、TA硝子体注射追加1例、手術追加1例
bevacizumab硝子体内注射後1例のみ網膜前線維増殖が増えた。
成人:5例(男性4例、女性1例、平均年齢33.6 歳)
シールズ分類 stage3a 2例、stage3b 3例
網膜剝離 5例、毛細血管拡張5例、網膜下線維増殖2例
平均注射回数2.0回
全例で網膜下液と滲出物の減少と毛細血管拡張の回復が認められた。視力変化はなかった。(表2)
レーザー追加3例、cryo追加0例、TA硝子体注射追加1例、手術追加0例
・コーツ病のスタンダードな治療に追加して行われるbevacizumab硝子体注射が網膜下線維増殖や潜在的に牽引性網膜剥離に発展する可能性があるとする報告もある。
・今回の研究の場合、網膜線維増殖はコーツ病の自然経過かもしれないし、bevacizumabのためかは不明。
しかし、bevacizumab硝子体注射は比較的安全と推測する。
bevacizumab硝子体注射は従来の治療の前の付属治療として有効であり、視力維持、改善する可能性を持っている。
Coats disease classification
stage 1, telangiectasia only
stage 2, telangiectasia and exudation (2A, extrafoveal exudation; 2B, foveal exudation)
stage 3, exudative retinal detachment (3A, subtotal; 3B, total)
stage 4, total detachment and secondary glaucoma
stage 5, advanced end-stage disease(CH)
Spectral domain optical coherence tomography analysis in deprivational amblyopia: a pilot study with unilateral pediatric cataract patients.
Kim YW et al(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(12): 2811-1819, 2013
・14名の視性刺激遮断弱視の小児と年齢をマッチさせた14名の正常小児(7.45±2.57歳)でCirrus OCT検査を行い、Macular、RNFL、黄斑部神経節細胞内網状層厚GCIPLを測定した。
・平均的なRNFL厚は弱視眼では99.64±10.11μmで、非弱視の他眼97.28±12.34や正常眼95.38±9.74よりも厚かったが、有意差は出なかった。
・ただ、鼻側のRNFL厚は弱視眼で75.84±19.22、他眼63.42±14.05(p=0.037)、正常眼62.38±9.65(p=0.043)より厚かった。
・中心黄斑厚、黄斑部GCIPL厚は有意差がみられなかった。(TY)
Long term effects of lutein, zeaxanthin and omega-3-LCPUFAs supplementation on optical density of macular pigment in AMD patients: the LUTEGA study.
Dawczynski J et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(12): 2711-2723, 2013
・172名の非滲出性AMD患者を3群に分けてサプリメントを12ヶ月投与した(完了時には145名)。
・D1(1日1回DHA:100mg, EPA:30mg)、D2(D1を1日2回)、プラセボー(P)。
・黄斑色素濃度(MPOD)は480nm光で測定した。
・MPODの変化量は平均濃度では、P群(-0.004±0.011 減少)、D1群(0.016±0.015 p<0.001)、D2群(0.025±0.022 p<0.001)で、D1群とD2群の間にも p=0.049で有意差があった。
・容積量では、P群(-0.031±0.082 減少)、D1群(0.265±0.151 p<0.001)、D2群(0.315±0.130 p<0.001)で、D1群とD2群との間には有意差がなかった(p=0.213)。
・視力は、P群(0.129<小数点0.74>→0.127<0.75> p=0.681)、D1群(0.134<0.73>→0.104<0.79> p=0.001)、D2群(0.104<0.79>→0.064<0.86> p<0.001)であった。(TY)
Light-dark changes in iris thickness and anterior chamber angle width in eyes with occludable angles.
Hirose F et al(神戸市)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(10): 2395-2402, 2013
・AS-OCTを用いて虹彩厚(IT)と隅角幅の明暗変化を検討した。
・対象はPACS:51、PAC:32、PACG:27、POAG:43の日本人153例153眼である。
・測定したのは瞳孔径、IT、500μm部の隅角幅AOD500と隅角面積TISA500を、明所、暗所で上下鼻耳の4方向で測定した。
・明暗差(明-暗)では、PACS-PAC-PACG:POAGは、IT差は-0.063_-0.063_-0.054:-0.078mm、AOD500差は0.060_0.071_0.048:0.093mm、TISA500差は0.024_0.028_0.020:0.035mm2で、いずれもp<0.005であった。
・この結果から暗所での虹彩根部の膨大が隅角閉塞機転に影響している事が分かった(TY)
Posterior vitreous detachment following intravitreal drug injection.
Geck U et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(7): 1691-1695, 2013
・硝子体注入後に後部硝子体剥離が発生するかどうかについて検討した。
・最初からPDVのできている眼は除外した61例61眼(72±10.3歳:36-95歳)の内訳は、滲出性AMD:47眼、RVO後のCME:8眼、他の原因によるCME:6眼である。
・注射した薬剤は、bevacizumab(1.25mg)B群:25眼、ranibizumab(0.5mg)R群:27眼、triamcinolone(4mg)T群:6眼、bevacizumab+triamcinolone(B+T群):3眼であり、注射後、最低4-6週間、経過観察した。
・平均11.1週の経過観察中に15/61眼でPVDが発生した(R群6例、B群7例、T群2例)。最初の注射後に3眼、2回目の注射後に3眼、3回目で7眼であり、PVD発生は70歳前後で比較すると70歳以上で多かった(p=0.008)。
・このことは、注射の効果にはPVDが発生した効果も影響していることを考慮すべきことを示唆している。(TY)
Intraoperative floppy iris syndrome (IFIS) in patients receiving tamsulosin or doxazosin – a UK-based comparison of incidence and complication rates.
Haridas A et al(UK)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(6): 1541-1545, 2013
・tamsulosinあるいはdoxazosin内服者でのIFISの頻度と合併症を調査した。
・2年間で2028例2785眼の白内障があり、52例(1.9%)がtamsulosin内服、109例(3.9%)がdoxazosin内服をしていた。
(安間眼科での調査:男性5,650眼中745眼(13.2%)がα1遮断剤内服、
745眼中、主にtamsulosin内服者は431眼(58%)であった:日本人は多いのか?)
・Doxazosin群では17/106眼(16%)が少なくとも1種のIFISの特徴があり、6眼(6%)では追加処置が必要で、2眼(1.9%)で術中合併症が発生した。
・Tamsulosin群では25/52眼(48%)でIFISの1種以上の特徴があり、18眼(35%)で追加処置が必要で、7眼(13.5%)で術中合併症があり、いずれも、doxazosin群、コントロール群よりも有意に多かった。(TY)
Retinal and optic nerve evaluation by optical coheernce tomography in adults with obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome (OSAHS).
Casas P et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(6): 1625-1634, 2013
・視神経乳頭周囲のRNFL厚、視神経乳頭(ONH)形状パラメータ、黄斑厚、黄斑容積を50名96眼(50.9±12.4歳)の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAHS)で調べ、年齢マッチさせた正常者33例64眼と比較した。
・全員、矯正視力は20/20以上、屈折度は±3D以内、眼圧21mmHg未満である。
・OSAHSでは鼻側乳頭周囲のRNFL厚が74.7±15.8μmで、Ctrlの81.1±16.6と比較し、有意に薄かった(p=0.047)が、OSAHSの病態の重症度には相関がなかった。
・垂直のRIM面積(VIRA)はOSAHS:Ctrl=0.67±0.41:0.55±0.29mm3(p=0.043)、水平方向のRIM幅(HIRW)は 1.87±0.31:1.80±0.25mm2(p=0.039)、視神経面積は 2.74±0.62mm2:2.48±0.42(p=0.002)で、いずれも有意にOSAHSで大きかった。
・殊に視神経面積では重症なOSAHSでは2.8±0.7mm2で、より大きいことが分かった。
・耳側の黄斑厚(1-3mm)の黄斑厚は軽中等度のOSAHSでは重度のものより有意に厚かった(270±12μm:260±19 p=0.021)。
・OSAHS患者で陽圧酸素治療を行うと脳容積が4%減少したとの報告もあり、虚血による細胞体、核の炎症性の浮腫は、VEGF、酸化窒素などを放出し、黄斑厚の増大を来たすが、いずれ、萎縮、神経死になっていくのではないかと推論した。
・乳頭周囲のRNFL厚や視神経乳頭面積などはOSAHSの早期診断になる可能性もあるだろう(TY)
Gas tanponade for myopic foveoschisis with foveal detachment.
Wu TY et al(Taiwan)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(5): 1319-1324, 2013
・近視性黄斑分離症があり、中心窩網膜剥離を伴った-7D以上の近視眼10例10眼に硝子体手術は行わず、C3F8ガス0.2-0.4mlを注入し、5日から7日間のうつ伏せ姿勢を行った効果を6ヶ月間経過観察した。
・術前の最高視力はlogMARで0.52(0.30)~2.0(0.01)であった。
・1ヶ月後には中心窩剥離は4眼で完全に消失、4眼は部分的に改善した。
・この部分的に改善した例の内、2眼は繰り返し治療で解剖学的に成功した。
・残りの2眼の内、1眼は15ヶ月後に剥離は消失し、もう1眼は剥離は継続したが剥離高さが減少した。
・硝子体手術は1眼で行われ、分離症、網膜剥離は消失した。
・最高視力は7眼で改善し、残り3眼も視力低下はなかった。
Panretinal photocoagulation with simultaneous cryoretinopexy or intravitreal bevacizumab for neovascular glaucoma.
Tatsumi T et al(帝京大、千葉大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(5): 1355-1360, 2013
・96名102眼の増殖糖尿病網膜症、中心静脈閉塞症あるいは眼虚血症候群後の新生血管緑内障に対し、汎網膜光凝固(PRP)と硝子体内bevacizumab注入(IVB)、網膜冷凍凝固を同時におこなったCR-IVB群と、PRPとIVBだけを行ったIVB単独群との効果の違いを検討した。
・年齢は59.6±11.5歳で、34-84歳である。
・冷凍凝固は双眼倒像鏡で確認しながら2.5mmプローブで最網膜周辺部を1列に20-30発凝固し、IVBは冷凍凝固後に1.25mg/0.05mlを注入、汎網膜光凝固は82眼はIVB前に、20眼はIVB後7日以内に行った。
・最低12ヶ月間の経過観察。
・49例54眼の開放隅角NVGは、30眼をCR-IVB、24眼をIBV単独群とし、48例48眼の隅角閉塞NVGは22眼をCR-IVB、26眼をIVB単独群とした。
・失敗は連続2回眼圧が21mmHgを越えるか、追加手術が必要になった場合とした。
・開放隅角NVGではCR-IVB群の80.0%が成功、IVB単独群の41.7%が成功(p=0.0096)。
・閉塞隅角NVGでは、CR-IVB群の22.7%が成功、IVB単独群は0%が成功であった(p=0.030)。
・この事から、網膜冷凍凝固はPRPの効果を最低1年間は増強する効果があることが分かった。
The effect of acetazolamide on different ocular vascular beds
Michael Haustein et al (University of Dresden, Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophtalmol 251(5): 1389-1398, 2013
・AZ(アセタゾラミド)は炭酸脱水素酵素阻害剤であり、眼科では眼圧を下げる目的に用いられるが、脳内と眼内では血管拡張作用も有する。
・32名の健康ボランティア(16名男性、16名女性)。平均23.9才。1,000㎎AZ静注前後で2時間にわたり20分毎に眼内微少循環を測定。血管径はRVA(Retinal Vessel Analyzer)、乳頭血流はLDF(Laser Doppler Flowmeter)、傍乳頭網膜血流はHRF(Heidelberg Retinal Flowmeter)で測定。
・動静脈血管径は明らかに各々4~5%増加した。乳頭血流は40%増加した。脈絡膜循環は不変。しかしながら傍乳頭網膜血流は120分で約19%低下した。明らかな血流の減少は傍乳頭領域のみであった。心拍、血圧は変化無く、眼血流変化は全身には影響しない。(YM)
Unilateral lateral rectus advancement with medial rectus recession vs bilateral medial rectus recession for consecutive esotropia
Shin Hae Park et al (Seoul St. Mary’s Hospital, Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(5): 1399-1403, 2013
・間歇性外斜視に対して両眼外直筋後転後に、30~35プリズム内斜視に進行した29名の患者。
A&R群(14名)――主たる斜視眼に4.5㎜(30プリズム)又は5.0㎜(35プリズム)内直筋後転と外直筋前転
BMR群(15名)――両眼内直筋後転。4.5㎜(30プリズム)又は5.0㎜(35プリズム)
術後眼位5プリズム内斜位から10プリズム外斜位以内を成功とした。
・術後12ヶ月でA&R群の12名(85.7%)、BMR群の11名(73.3%)で成功。両群に有意差なし(P=0.411)
・斜視眼に、前回手術で後転した外直筋の前転と内直筋の後転を行なった場合、両眼内直筋後転と同じ成功率を得られる。将来的な再手術のために他眼内直筋を温存することもできて有意義であると思われる。(YM)
Panretinal photocoagulation with simultaneous cryoretinopexy or intravitreal bevacizumab for neovascular glaucoma
Tomoaki Tatsumi et al. 帝京大、千葉大、徳島大
Graefes Arc Clin Ecp Ophthalmol 251(5): 1355-1360, 2013
NVG患者をCR-IVB治療とIVB単独治療
クライオ(CR)を周辺部網膜の虚血を減らすために併用(毛様体冷凍凝固目的ではない)
Open angle (PAS≦50%) 30(27):24(22), Angle closure (PAS>50%) 22(22):26(26)
1年後の成績をretrospectiveに調べた
Open angle:
Kaplan-Meier survival curve: CR-IVB 80.0%(24/30), IVB 41.7%(10/24) (12M)
追加処置でPRP, repeated IVB, repeated CR-IVB (CR-IVB群のみ), topical medicationを含む
Angle closure:
Kaplan- Meier survival curve: CR-IVB 22.7%(5/22), IVB 0%(0/26) (12M)
追加処置でPRP, topical medicationを含む
NVGに対してはIVB単独よりもCR併用の方が有効であった
Cyclodistructive effectが多少あったかもしれない(MM)
Pars plana vitrectomy for disturbing primary vitreous floaters: clinical outcome and patient satisfaction
K. F. de Nie et al. オランダ
Graefes Arch Cli Exp Ophthalmol 251(5): 1373-1382, 2013
85例110眼のVitreous floaterに対する硝子体手術の成績・患者満足度
5人の術者、20G/23G、トリアムシノロン使用、
Mini Quad indirect wide-field contact lens system (VOLK)を使用
インデント、周辺裂孔の検索は必ずしも行っていない。
除外:ぶどう膜炎などの続発性の混濁、中心視力障害(glaucoma, RD, AMD, DMR, corneal opacityなど)、白内障や黄斑手術の同時手術症例
満足度:modified NEI VFQ-25 questionnaireを用いて、術前と術後の満足度を評価
平均術後経過期間:26.4M (4-136M)
<結果>
106例(96.4%)が混濁が消失、4例は依然いくらか残存している
Snellen BCVA:0.83±0.22→0.91±0.22 (p=.002)
合併症:Retinal break: 11 eyes(10%) 7例は術中の裂孔。対処したが術後7日目に剥離
PVD: 作成 41eyes (37.3%), 試みるも不可 6eyes(5.5%), 既存 63eyes(57.3%)
トリアムシノロンは45.5%で使用
PVDを作成したうちの4例(9.8%)でRDを生じた
術中にPVDを作成していないうちの8/69例(11.6%)でRD 有意差なし
術後観察中12例でRD、そのうち2例で再剥離
RD発生までの期間 19.5M(1-67)
5/12例は術後3カ月以内
3カ月以降に剥離を生じた7例中3例は術前5-12Mに白内障手術を実施
7例中、PVD不可3例、作成1例、既存3例
12例の視力:0.85(0.5-1.2)→0.76(0.3-1.2) 50%で視力低下
20G:23G: 9例(15.8%):3例(5.7%) P=.127 症例数が足りないためと思われる
術前有水晶体74例(67.3%)、mild opacity 24eyesのうち18眼(75%)で白内障手術
Clearの50眼中19眼(38%)で白内障手術 平均16.2M後(2-117M)
術翌日の低眼圧:20G 2例(3.5%)、23G 12例(22.6%) P=.003 全例術後1週で正常化
術後25例(22.7%)で25mmHg以上の眼圧上昇:8眼はそのまま正常化
それ以外は点眼、内服、点滴のいずれかが必要だった
1例では眼圧上昇のためTrabeculectomy→revision→Baerveldt implant
1例で中心暗点
CME 6例(5.5%) 2例は治療抵抗性(1例はBaerveldtの患者と同一、1例はRDを生じた患者)
1例でERMでVitrectomy
眼内炎の発生はなし
<満足度>
91例(85.0%)が満足・非常に満足
6例はneutral(ERM,MH, irritation, residual floaters)
10例(9.3%)は不満・非常に不満 術後合併症(RD 4うち2例で視力低下、1例で難治CMEと緑内障、CME1例、中心暗点、残存floaters 2)
術後BCVAと満足度が強い相関
小さな文字の読書:中等度以上の不満 71%→15% 84%がほぼ問題なし
パソコン:中等度以上の不満 63%→9% 84%がほぼ問題なし
夜間の運転: 84.7%が術前不満→9% 85.5%がほぼ問題なし
93例(86.9%)は友人にも勧める
RDの発生は念頭に置いて術前・術中の周辺部網膜のチェック、疑わしければレーザー
白内障がある程度あれば同時手術も
より小さなクロージャーバルブ付のトロカールなら良いかも(MM)
Pain score of patients undergoing single spot, short pulse laser versus conentioal laser for diabetic retinopathy.
Mirshahi A et al(Iran)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(4): 1103-1107, 2013
・33例66眼の糖尿病網膜症患者で、20msecの短時間照射と、100msecの通常照射の汎網膜光凝固を片眼づつ行い、どちらが疼痛が少ないか調査した。
・スポットサイズはいずれも200μmで、中等度凝固斑がでる強度で行った。
・疼痛はvisual analog scale(VAS)で評価し、効果は1W,1,2,4,6Mで評価した。
・症例は16名の女性と17名の男性で行い、年齢は58.9±7.8歳であった。
・強度は通常照射では273±107mW、短時間照射では721±406mWであり(p=0.001)、凝固数は通常照射では1218±441発、短時間照射では2125±503発(p=0.001)、痛みスコアは通常照射では7.5±1.14、短時間照射では1.75±0.87であった。
・中心網膜厚の1W,1M,4M後の変化は、通常照射の方が短時間照射よりも、29.2μm(p=0.008)、40.0(p=0.001)、40.2(p=0.007)増加していた。
・短時間照射の方が疼痛の点からも術後浮腫の点からも有益であった
Purified triamcinolone acetonide as antifibrotic agent in glaucoma filtering surgery.
Hogewind BFT et al(Netherlands)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(4): 1213-1218, 2013
・初回手術での64眼(18歳以上で、POAGかPACG)の緑内障濾過手術時のMMC使用(39眼 68±15.5歳、3分間暴露60ml洗浄)とtriamcinolone acetonide(TAC)のテノン嚢下注入(25眼 67.3±13.4歳)の効果を術中ならびに術後5年間調査した。
・TACは40㎎ケナコルトAを採取した1mlシリンジを最低15分間立て、上澄0.8mlを除去したのちリンゲル液で1.0mlとし、再度5分間立て、上澄0.8mlを除去した。
・この操作を3回繰り返し、残った0.2mlを採取した。
・この中にはほぼ20mgのTACが含まれているが、この0.05ml(約5mg)のTACを濾過胞周囲のテノン内注入した。
・5年後に眼圧18以上であった症例は、MMC群では3例(7.7%)、TAC群では0例であった(p=0.08)。
・再手術が必要であった症例はMMC群では3眼(7.7%、線維柱帯切除:1例、Baereldt implant:1例、毛様体光凝固:1例)であったが、TAC群では2眼(8.0%、Baerveldt implant:1例、毛様体光凝固:1例)であり、有意差はなかった。
Anterior chamber paracentesis and pH values in patients with acute primary angle closure.
Lu DW et al(Taiwan)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(4): 1229-1234, 2013
・急性緑内障発作眼で前房穿刺を行った22眼と行わなかった21眼で、前房穿刺の安全性、効果と、穿刺群では前房水のpH値を調べた。
・非穿刺群は20%マニトール点滴、250mgアセタゾラミド1日4回内服、0.5%チモプトール1日2回点眼、1%ベータメサゾン1日4回点眼、2%ピロカルピン1日3回点眼治療を行った。
・治療前と治療後15分、24時間後の眼圧、視力を測定した。
・前房穿刺群の眼圧は58.6±12.9mmHg→23.3±9.6→21.6±12.0、非穿刺群では56.9±9.8→55.4±10.3→19.3±10.8であった。
・視力改善も穿刺群で早かったが、1例で前房出血があった。
・前房水のpH値は6.99±0.35で、急性眼圧上昇の期間が長いほど(r=-0.46 p=0.03)、眼圧が高いほど(r=-0.65 p<0.01)低かった。