Pharmacokinetics of subconjunctival injection of moxifloxacin in humans.
Matsuura K(鳥取)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3): 1019-1020, 2013
・Moxifloxacin(0.2cc 5mg/1cc)を白内障手術前の1,3,5,6時間前に結膜下注射し、手術時に前房水0.1mlを採取して濃度測定を行った。
・結果は1hでは:3.03μg/ml、3h:1.91μg/ml、5h:0.53μg/ml、6h:0.30μg/mlであった。
・腸球菌の90%発育阻止濃度は0.5μg/mlであるので、結膜下注射後、5時間は効果が見込めることが分かった。
・CefroximeやGentamicinは腸球菌に感受性がなく、副作用もあるので、Moxifloxacinの結膜下注射は有効で安全な方法と思われる
Recombinant tissue plasminogen activator, vitrectomy, and gas for recent submacular hemorrhage displacement due to retinal macroaneurysm
Elsbeth J. T. van Zeeburg et al (The Rotterdam Ophthalmic Institute, The Netherlands)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3): 733-740, 2013
・RAM(網膜動脈瘤)は、網膜動脈の局所の拡張であり、高血圧と心疾患を有する高齢者に多くみられる。視力障害は漿液、脂質の血管外漏出か出血が原因であり、出血は硝子体、内境界膜下、網膜内、網膜下におこりうる。RAM患者の視力予後は不良で、半数が0.2以下となるが、最終視力は出血の位置による。網膜下出血はすぐに上層細胞に障害をきたすため網膜下出血のタイプでは視力不良であり、最終的に0.1以下となる。
・ARMD患者の中心窩から網膜下出血を移動させる手段をRAM患者に施行した。RAMによる黄斑出血の患者11名。PVD完成後、PPV(経毛様体扁平部硝子体手術)を施行。rtPA(recombinant tissue plasminogen activator)を満たしたツベルクリンシリンジにつなげた41Gチップ付きの23Gカニューラを使用。41Gチップを網膜に刺入後、助手が0.1ml(20㎍/0.1ml, Actilyse)を網膜下又は血餅に注入し、部分的にRDの空間を作る。刺入部は出血の上方端とする。刺入方向からILMを剥離。このILMpeelは、術後のmacular puckerとPVR予防が目的である。fluid air exchangeで硝子体腔は15%SF6で満たす。術後患者は直立又は側臥位又はうつぶせを維持する。術後に硬性白斑、黄斑浮腫、網膜下液、新しい出血などの活動性がみられたら、RAM上か近傍にアルゴンレーザー光凝固を行なう。
・手術後1ヶ月で出血は11人中10人で移動した。この10名では、1ヶ月後に平均1.2logMAR、最新で1.5logMAR視力が改善した。
・ARMDでは、同手術で完全に出血が移動しても、必ずしも視力は改善しないが、RAM患者では良い機能改善が期待できる。RD、硝子体出血、前房出血等の合併症もありうるが、自然経過で観察するよりも良好な視力を保てる。(YM)
Treatment for diplopia in patients with myasthenia gravis
Kyung-Ah Park et al (Sungkyunkwan University School of Medicine, Seoul Republic of Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3): 895-901, 2013
・MGはアセチルコリン受容体に対する抗体が産生される自己免疫疾患で、この抗体が神経筋接合部のアセチルコリン受容体を攻撃し、結果として疲労性の筋の脆弱につながる。眼症状は75%に合併。眼瞼下垂が最も特徴だが、90%近くに外眼筋の脆弱をみる。これらは投薬か胸腺摘出の全身治療で常に改善するわけではない。
・神経内科にてピリドスチグミンを投与し、改善無ければブレドニゾロン、アザチオプリンも追加投与。
・今回は28名のMG患者(エドロホニウムテスト陽性2/2名、ネゴスチグミンテスト陽性3/4名、連続神経刺激テスト陽性14/26名、抗アセチルコリンレセプター抗体上昇13/28名、テスト陰性の患者7名は臨床症状と薬への反応から診断)に、全身治療後6名(21.4%)は反応良好、複視消退。4名(14.3%)は斜視減少、複視改善。18名(64.3%)は反応不良又は無し。このうち10名(35.7%)には15プリズム以上の斜視を認め、6名に斜視手術を施行した。結果4名は症状無し。1名はわずかな間歇性外斜視。1名は10年後に外斜視再発。
・全身治療に反応の低い大きい斜視角のMG患者には、症状が安定した後の斜視手術が1つの治療法となる。(YM)
Ocular sarcoidosis: when should labial salivary gland biopsy be perfomed?
Claire Bernard et al (Hopital de la Crois-Rousse, Lyon, France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3): 855-860, 2013
・サルコイドーシスの診断には一般にツベルクリン皮内テスト、血中ACE値、血中と尿中カルシウム値、肝酵素、胸部X線又はCT検査、組織生検は採取しやすい結膜や皮膚を勧める。これらが陰性であった場合ガリウムシンチを行なう。放射線で典型的所見を認めたら経気管支肺生検を勧める。確定診断は生検組織の病理診断であるが、これができなくても眼サルコイドーシスとして診断する条件が確立されてきている。LSGBは肺、リンパ節生検よりも検出率は低いが、より簡易な手技である。
・眼サルコイドーシスか原因不明のぶどう膜炎が疑われたためLSGBを行なったぶどう膜炎患者115名中6名(5.2%)にサルコイド肉芽腫を認めた。肉芽腫はACE値が上昇しているか又はCTスキャンで疑いの所見のある患者のLSGBにのみ認められた。その後41人に他の部位の生検を行ない29人(70.7%)に陽性、このうち3名はLSGB陽性のため、生検でサルコイドーシスの確定診断ができたのは32名(27.6%)であった。ゆえに生検でのLSGBの感受性は18.75%(6/32)。他の83名の最終診断は眼内巨細胞リンパ腫、結核、ライム病、多発性硬化症、HLA-B27起因ぶどう膜炎、毛様体扁平部炎症など。うち43名は原因不明。
・ACE値の上昇と(又は)胸部CT所見にサルコイドーシスの疑いのある患者に確定診断のためのLSGBは簡易にして有効な方法と思われた。(YM)
Visual recovery after coneal crosslinking for keratoconus: a 1-year follow-up study
Ivo Guber et al (Cantonal Hospital of Lucerne, Switzerland)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3): 803-807, 2013
角膜クロスリンキング(CXL)手技
消毒後、点眼麻酔下で角膜中心から8㎜の範囲の上皮を剥離する。UV-A波照射より先に0.1%リボフラビン液を2分間隔で30分間浸み込ませる。細隙灯にて前房を診察し、十分なリボフラビンの浸透を確認し、最小角膜厚を測定し、400㎛以上の診療前最小角膜厚を確実にする。角膜表面から5㎝離れた部位より波長370nmのUV-Aを照射。その間リボフラビン液は5分毎に浸み込ませる。術後0.3%オフロキサシン点眼と0.1%デキサメサゾン点眼をし、昼夜コンタクトレンズをする。角膜が完全に回復するまで抗菌剤点眼を続ける。0.1%フルオロメソロン点眼は少なくとも1ヶ月間は1日5回使用し、その後2ヶ月かけて漸減する。
・28人中33眼の軽度から中等度の円錐角膜患者術前と術後3か月、1年を比較した。矯正視力の低下と患者の羞明由来の不満と一致して術後3ヶ月では眼内の光の分散が増加していた。CXL後1年では等価球面の改善により矯正視力が上昇し、眼内の光の分散も正常化した。CXL後の霧視は良く知られる現象で、CXL後最初の数週でアポトーシスが起こり、角膜の前方基質が損傷を受けるが、CXL後6週で周辺輪部から新しい角膜細胞が侵入する。これは最長4ヶ月で完成し、この間の混濁が多くの患者が訴える羞明・見づらさの主因である。境界線は存在しても霧視は通常3から4ヶ月で消退する。CXL後、強い羞明を訴える患者には、術後12ヶ月以内に術前の見え方に戻ると説明しても良い。(YM)
Long-term outcomes of unilateral orbital fat decompression for thyroid eye disease
Minwook Chang (Korea University College of Medicine, South Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3):935-939, 2013
・眼窩減圧手術には2つの方法があり、眼窩部外壁と内壁の2つの減圧に加えて脂肪除去する方法と脂肪減圧のみである。33名の33眼窩のうち13名は脂肪減圧(A群)、20名は骨減圧(B群)
・患者は3ヶ月以上甲状腺機能に異常無く落ち着いた状態で、6ヶ月以上眼球突出の度合いが不変で、脂肪主体の眼球突出タイプであり、喫煙せず、プロスタグランジン内服せず、リウマチ等の他の自己免疫疾患の無い患者とした。術後1週、1,3,6ヶ月、1,2,3年後に眼球突出度をヘルテルにて測定した。
・最大効果に達するまでの期間はB群(7ヶ月)よりA群(2ヶ月)の方が早かった。3年後の平均ヘルテル値はA群18.9±2.4㎜、B群17.2±2.1㎜。A群ではB群よりも逆戻りした。3年後戻った度合いは、A群2.3±1.4㎜、B群0.7±0.9㎜。1年後はA群の方が効果があったが、B群では逆戻りの傾向が無かった。2㎜以上の再突出を再発と定義すると、A群では13人中10人(76.9%)で明らかな再発。しかしB群では2人のみ(10%)。再発患者でも、採血上、T3,free T4,TSH,TSIには変化無かった。ゆえに症状の活動性は無いと思われた。
・両群で術後合併症があり、B群では眼瞼腫脹と結膜浮腫が高頻度でみられたが、治療ですぐ改善した。AB群共に眼球運動制限がみられたが、ステロイドで治癒した。
・再発する仮説は3つ考えられる。
①再び脂肪が増殖する ②空洞となった空間に軟部組織が侵入してくる ③甲状腺疾患自体の再発
・甲状腺眼症の患者における眼球突出軽減のための片側眼窩脂肪減圧術の長期結果は再発の多さから不十分なものかもしれない。この結果をふまえて術式を決定すべきである。(YM)
Glial proliferation after vitrectomy for a macular hole: a spectral domain optical coherence tomography study.
Oh J et al(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(2): 477-484, 2013
・特発性黄斑円孔に対して硝子体手術を行った30症例について、中心窩にはっきりしたグリア増殖があるもの(Group1)とないもの(Group2)に分けて検討した。
・グリア増殖はSD-OCT検査で外境界膜と視細胞層を含んだ組織の反射で判断した。
・観察期間の中間値は11ヶ月で、7例(23%)がG1、23例(77%)がG2に分類された。
・年齢の中間値は、G1は70(67-73)歳、G2は63(57-66)歳で、G1で有意に高かった(p=0.002)。
・logMARは術後3ヶ月で、G1は0.82(0.7-1.0)(小数点視力0.15)、G2は0.4(0.3-0.7)(小数点視力0.40)、最終視力はG1では0.7(0.7-0.82)(小数点0.2)、G2では0.15(0.05-0.30)(小数点0.71)であり、いずれも、G2で有意に良かった(p=0.022, p<0.001)。
・術前の円孔径はG1では1219(860-1300)、G2では590(407-1061)μmで有意差があり(p=0.002)、円孔index(高さ/円孔底径)はG1では0.38(0.35-0.46)、G2では0.63(0.42-0.82)と有意差があった(p=0.012)。
・最終的なIS/OS欠損は、軽度なものはG1=1300(1100-1510):G2=110(50-152)μmでp<0.001、重篤な欠損はG1=207(160-330):G2=70(49-135)μmでp<0.001であった。
・術後のグリア増殖には、円孔径が大きいこと、円孔INDEXが小さいこと、高齢であることが影響し、視力も不良であった。(TY)
Changes of axial length measured by IOL master during 2 years in eyes of adults with pathologic myopia
Natsuko Saka, et al. (東京医科歯科大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(2):495~499, 2013
・より信頼性の高いIOLマスターで多人数での眼軸長の変化を分析した。
・2007~2009年、東京医科歯科大学強度近視クリニックで両眼高度近視の患者185人
(男性63人、女性122人)、平均年齢48.4±12.2歳。
平均眼軸長29.35±1.8mm、平均屈折値 -13.0±1.8D
60眼(32.4%)に後部ぶどう腫があった。
年齢、眼軸長、前房深度、角膜曲率半径、眼圧を分析した。
・2年間の経過観察期間中に146眼(78.9%)眼軸長増加、12眼(6.5%)不変、
27眼(14.6%)短縮した。
全体の平均眼軸長29.35±1.8mm→2年後29.47±1.85mm、平均0.12±0.17 mm増えた。
前房深度、角膜曲率半径に変化は無かった。
後部ぶどう腫の有無、年齢、前房深度、角膜曲率半径は眼軸長の増加と関連は無かった。
・後部ぶどう腫の有無で眼軸長の増加に相違がなかったのは、経過観察期間が短いためと考えられる。
明らかに40代以降でも眼軸は増加したので、高度近視眼はさらに近視が進行する可能性を示唆した。(CH)
The natural history of lamellar macular holes: a spectral domain optical coherence tomography study
Ferdinando Bottoni, et al. (Itary)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(2): 467-475, 2013
・SD-OCTを使って層状黄斑円孔の経過を検討する。
視力変化、層状欠損の進行
ERMタイプによる疾患の進行、網膜の厚さと視力の相互関係
・2008.10.~2011.1.の間経過観察できた34人(男性15人、女性19人)、平均年齢73歳 (54~87歳)、
平均屈折値-0.25 (+2.5~-5.5)、平均経過観察期間18ヶ月(6~24ヶ月)
ベースラインのLMHの大きさ252 µm (230~1010 µm)
ベースラインの視力 63±6文字、中心窩厚 180±29 µm
6ヶ月後 63±5文字 179±27 µm
12ヶ月後 63±6文字 175±30 µm
18ヶ月後 64±6文字 178±29 µm
24ヶ月後 64±6文字 175±21 µm
・LMHの大きさは27眼で不変、7眼で拡大した。
この7眼のうち5眼は中心窩厚の変化はなかった。2眼で外層網膜が薄くなった。
視力の変化は認められなかった。
・OCTで全例ベースライン時にERMを認めた。
厚いERMの視力 60±6文字 中心窩厚 155.5±31 µm
通常ERMの視力 65±5文字 中心窩厚 190.0±21 µm
経過中、視力 やERMの形状に変化はなかった。(表6,7)
・経過中2例が全層黄斑円孔になった。
・層状黄斑円孔は安定した黄斑性条件であるように思われる。(CH)
Confocal scanning laser ophthalmoscope in the retromode imaging modality in exudative age-related macular degeneration.
Pillot E et al(Italy)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 27-34, 2013
・SLO(cSLO)のretromode像が滲出性AMDの所見をどの程度描出できるかを検討した。
・OCTで描出した神経網膜の剥離(NRD)、PED、CME、ERMと、cSLOでの赤外retromode(RM)像、赤外写真(IR)、自発蛍光像(FAF)像を比較した。
・cSLOは4種のレーザー光源をもっており(490nm, 532nm, 660nm, 790nm)、13個の形の異なった絞りを持っている(Nidek製F-10 SLO)。RM像は中央部の変形した絞りがあり、ある一方向の散乱光のみが集められ、他の方向からの反射光をブロックすることなどによって得られる。
・OCT画像とcSLO画像との相関に関しては、Cohen’s Kappa値を用いた。
・K値が0.0-0.39では相関が薄い、0.4-0.59では軽度相関、0.6-0.79では中等度相関、0.8-1.0では高度相関と判断する。NRDに関しては、IRは0.14、FAFは0.01、RMは0.29と相関は薄かった。
・PEDに関しては、RMは0.51と軽度相関、IRとFAFは0.16,0.00と相関は薄かった。
・CMEでは、RMは0.88と高度相関、IRとFAFは0.38,0.26と相関は薄かった。
・ERMではIRは0.59と軽度相関、FAFは0.00と相関は薄く、RMは0.76と高度相関があった。(TY)
Visual and anatomical outcomes of non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy with high-dose systemic corticosteroids.
Robolleda G et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 255-260, 2013
・非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)に対して全身的なステロイド治療の効果、副作用について検討した。
・急性期にステロイド内服80mgから漸減した10例10眼と、治療しなかった27例について調べた。
・診断時、6-8週後、6ヶ月後で調査した。
・治療群と非治療群とで、VA中間値に有意差はなかった。
・視野のMD値、視野のpattern SD(PSD)値、平均RNFL欠損量などにも有意差はなかった。
・副作用をみると、投与群では3例に全身的な副作用がみられた(ステロイド起因性鬱、DMのコントロール不良でinsulin治療を開始、NAION発症後6週目に両側の肺梗塞)。
・その他、2例にステロイド緑内障を発症し、そのうち1例はステロイド中止後も眼圧が下がらなかった。
・2例ではNAION発症後2ヶ月目と3ヶ月目に健眼にNAIONを発症した。
・非治療群では合併症を起こした例はなかった。
・NAIONに対するステロイド治療は、効果がないばかりでなく、副作用を発症するので、すべきではない。(TY)
Treatment of upper eyelid retraction related to thyroid-associated ophthalmopathy usin subconjunctival triamcinolone injections.
Lee SJ et al(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 261-270, 2013
・甲状腺眼症による眼瞼後退に対する結膜下triamcinolone注射の効果を調べた。
・対象は眼瞼後退and/or眼瞼浮腫が発症後、6ヶ月以内とした。
・いずれも、程度は0-3で判定した。
・注射をした55例75眼(G1)と、経過観察だけの40例59眼(G2)で比較した。
・G1では、20mgケナコルトを結膜とミュラー筋との間に3週間の間隔で、1-3回注射した。
・1回か2回目の注射後に眼瞼後退と浮腫が完全に寛解するか、スコアが0/1か1/0になった場合には追加注射はしなかった。
・効果は9週目、24週目に判定した。
・浮腫と眼瞼後退はG2よりもG1で有意に軽快していた。
・開始時には重篤な眼瞼浮腫はG1で67%、G2で34%と有意にG1で多かったが(p<0.01)、この差は9週目、24週目にはなくなっていた。
・眼瞼後退は、9,24週目のいずれにおいても、G1ではG2よりも重篤な例が少なかった。
・9,24週目の改善例はG1では59%,75%であったが、G2では39%,57%であり、いずれも有意にG1で多かった(p=0.03,p=0.04)。
・眼瞼後退が強いものでは(程度2,3)、弱いもの(程度0,1)に比較してG1でも、G2でも不変例が多かった。
・G1では9,24週後のORは45.4(95%CI=5.9-351.1 p<0.01)、11.6(2.3-58.5 p<0.01)。G2では9,24週後のORは10.3(1.8-59.6 p<0.01)、5.9(1.3-25.9 p<0.05)であった。
・最初から重篤な眼瞼後退のあるものは治療に反応しないと考えられた。(TY)
Misleading axial length measurements with the IOLMaster due to a dense posterior vitreous surface membrane and a macular edema in a diabetic patients.
Mayer CF et al(Austria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 387-389, 2013
・IOLMaster(Ver 3.01.0294)で糖尿病黄斑症を持つ人の眼軸長を測定したら、21.25mm(SNR=3.4)、21.96(SNR=3.1)、22.57(SNR=4.2)の3種のデータが得られた。
・一つは濃い後部硝子体剥離部から、もう一つは黄斑浮腫の内境界膜面から、もう一つが網膜色素上皮面であった。
・この様な場合には最も大きな値を選択すべきである。(TY)
Iris color and visual functions.
Nischler C et al(Austria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 195-202, 2013
・虹彩色が眼内散乱(IOSL)、コントラスト感度(CS)、最高視力(BCVA)に影響するかどうかを検討した。
・20歳から80歳の眼手術の既往や白内障などの眼病のない583名で検討した。
・虹彩色によって4群に分けた:light-blue, blue-grey, green-hazel, brownである。
・年齢によらずIOSLは、light-blueでは1.14 log(95%CI=1.11-1.17)と、blue-greyの1.07(1.05-1.09)、green-hazelの1.06(1.04-1.08)、brownの1.06(1.04-1.08)よりも有意に高かった(いずれもp<0.0001)。
・CSもlight-blueでは1.60 log(95%CI=1.58-1.62)と他の群よりも高かったが、有意差のあったのはbrownの1.64(1.63-1.65)だけであった(p=0.013)。
・BCVAではいずれも有意差はなかった。light-blueの虹彩色をもった人ではIOSLが高いので、夜間の運転時等、グレアを感じる可能性が高い。 (TY)
Effect of hemodialysis (HD) on intraocular pressure, ocular surface, and macular change in patients with chronic renal failure
Effect of hemodialysis on the ophthalmologic findings
Jung JW, Chin HS, et al.(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1):153–162, 2013
・慢性腎不全患者30名、血液透析(HD)直前・直後に眼科的検査を施行しその変化および全身変化との関連を検索
・HDによる体液補正により血漿浸透圧が変化。眼圧は2.4±2.1mmHg下降、中心角膜厚は6.9±5.5μm減少。TBUTとShirmer’s テスト値はHD後に有意に減少、角膜上皮障害スコアは増加。SD-OCTによる網膜厚はHD後に減少、中心窩網膜厚は7.4±9.9μm減少。眼表面の変化は視力と検査精度にも影響。
・HDによる全身的な変化(体重・膠質浸透圧など)とこれらの変化とは(網膜厚の変化を除いて)有意な関連がみられた
【結論】すべてのCRF患者でHD後の眼科的所見の変化がみられた。これらの変化は血漿の膠質浸透圧の上昇と関連していた。HD患者に眼科的検査を施行するにはHDを施行しない日かHDの前の方が良い。さらにはこれらの患者の診察結果を正確に比較するには、HDと眼科検査との間隔を考慮すべきである。(MK)
Long-term effect of intravitreal injection of anti- VEGF agent for visual acuity and chorioretinal atrophy progression in myopic choroidal neovascularization
Akio Oishi, et al. (京都大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1):1-7, 2013
・抗VEGF治療を受けたmCNV患者の長期の視力予後を調査した。
そして、同時にCRAの拡大はどのぐらいの頻度で起こるのか、CRAの有無での違いを調査した。
・(1)subfoneal またはjuxtrafovealのCNV、(2)-6D以上の近視または眼軸長26.5mm以上(3)白内障以外の手術を受けていない20人20眼(男性7人、女性15人)平均年齢64.1±9.6歳(47~81歳)
平均眼軸長28.9±1.6mm (26.28~32.63mm)、平均屈折値-11.9±3.7D (-7~-21D)
注射前、FA、OCT、眼底カメラ検査を行った。
経過観察は注射後1、3、6、12、18、24、30、36、48ヶ月
受診毎に視力、診察、OCT検査をした。自覚症状が悪化した時FAを行った。
必要に応じて追加治療を行った。再治療は自覚的/他覚的に視力低下、OCTで滲出性変化、FAでleakが認められた時に行った。
平均眼軸長28.9±1.6mm (26.28~32.63mm)、平均屈折値-11.9±3.7D (-7~-21D)
平均注射回数 2.1±1.9回 (1~7回) ベバシズマブ41回、ラニビズマブ6回
・最初の1年で9眼(40.9%)のCRAが拡大した。2年で14眼(63.6%)、3~4年で16眼(72.7%)
治療後3年は視力改善した。治療前0.76、治療1年後0.52、2年後0.48、3年後0.54、4年後0.59(表5)
4年目以降はほとんど変化がなかった。
視力の改善はCRAの拡大ない人で多かった。より大きなCNVでは視力はあまり改善しなかった。
・抗VEGF治療はmCNVの標準的な治療になっている。この研究では長期の効果を確認した。
抗VEGF治療が4年間の間、満足いく視力改善できた事を示した。
しかし、CRAの治療は不明である。
より治療効果を上げるためにCRAの原因とマネージメントを調査する必要がある。(CH)
Retinal detachment after phakic intraocular lens implantation in severe myopic eyes
Jiang T et al. (China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250:1725-1730,2012
・高度近視眼への有水晶体眼内レンズ移植の後の網膜剝離の発生率と治療を検討。
・2003年〜2009年PIOL移植を受け、少なくとも2年間経過観察できた299人530眼を対象とした。
・網膜剥離になったのは7人8眼(1.5%、男性6人、女性1人)
術後平均23.63±18.12ヶ月(術後2日〜51ヶ月)で発症した。
術前平均屈折値-17.53±3.86D
平均眼軸長32.32±1.49mm、その他の患者の平均眼軸長29.98±2.13mm
眼軸長のみ有意差あり(p<0.05)
・flap tear4眼、atrophic hole2眼、 giant tear2眼
・強膜内陥術2眼、硝子体手術+C3F8 またはシリコンオイルタンポナーデ5眼
強膜内陥術+硝子体手術+シリコンオイルタンポナーデ1眼
・7眼が1回の手術で復位し、1眼が2回の手術で復位した。
・PIOL後の平均視力20/40、RD術後平均視力20/80
・RD発生率は1.5%だった。
PIOL後のRD発生率は近視眼での自然発生率と差はなかった。
PIOLがRDのリスクを増やすとは考えにくい。(CH)
Evaluation of the visual function in obstructive sleep apnea syndrome patients and normal-tension glaucoma by means of the multifocal visual evoked potentials.
Gutierrez-Diaz E et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(11): 1681-1688, 2012
・20名の閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSASで、OSASと視神経機能障害との関連を、正常眼圧緑内障NTGのあるなしで、VERISの多局所VEP(mfVEP)で調べた。
・ハンフリー視野30-2と、トプコンOCTも同時に検査した。
・mfVEPでの振幅異常と潜時延長は非緑内障群では40%と30%に、NTG群では90%と60%にみられた。
・NTG群では視野異常、RNFL厚の異常が全例にみられたが、NTGの極早期の異常を検出しているmfVEPの振幅や潜時異常との間には相関がなかった。
・mfVEPの振幅や潜時と有意に相関していたものは、収縮期血圧(p=0.007 p=0.01) 、睡眠効率(p=0.006 p=0.017)、覚醒指数(p=0.002 p=0.002)、平均動脈SaO2(p<0.001 p=0.013)、最低動脈SaO2(p<0.001 p=0.033)、SaO2<90%時間(p<0.001 p=0.033)、酸化ヘモグロビン不飽和指数(p=0.001 p=0.062)、無呼吸の数(p=0.01 p=0.8)、無呼吸低呼吸指数(p=0.001 p=0.037)であった。
・構造的あるいは心理物理的な臨床所見に現れる前の視神経障害がmfVEPで有意にとらえられることが分かった。
Evaluation of the visual function in obstructive sleep apnea syndrome patients and normal-tension glaucoma by means of the multifocal visual evoked potentials
Gutierrez-Dfaz E et al. (Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250:1681-1688,2012
・正常眼圧緑内障(NTG)の有無にかかわらず睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の視機能を多巣性視覚誘発電位(mfVEP)を使って客観的に評価する。
・最近診断された閉塞性睡眠時無呼吸を持っている20人の患者を評価した。
非緑内障群10人、NTG群10人、コントロール10人、
・mfVEP振幅欠陥は非緑内障群4例40%、NTG群9例90%、mfVEP潜時の延長は非緑内障3例30%、NTG群の6例60%で認められた。
・RNFL平均の厚さはコントロール群と非緑内障群と比べ、NTG群で有意に減少していた。また、ハンフリー視野検査では、非緑内障群では異常は認められなかったが、NTG群は全例で異常を認めた。
・しかし、mfVEP振幅と潜時は、視野とRNFLの厚さと関連はなかった。
これは、mfVEPはこれらの患者で早く段階で視覚の異常を検出することが可能だからと考えられる。
・他の検査で検出されない無症状の視神経の関与がmfVEPを使って認められた。mfVEPはOSAS患者での視神経機能異常の早期発見の有用な診断ツールであるかもしれない。(CH)
Vitrectomy and internal limiting membrane peeling without gas tamponade for myopic foveoschisis
Lim SJ et al. (Korea)
Graefes Arch elin Exp Ophthalmol 250:1573-1577,2012
・近視性中心窩網膜分離に対するガスタンポナーデなしの硝子体手術+ILM peelingの効果を検討した。
・13人15眼、平均年齢60.3±12.5歳、平均視力0.78±0.53logMAR、平均屈折値-11.0±8.2D、平均眼軸長30.8±2.6mm、平均網膜中心厚(CMT)405±143 µm、
平均経過観察期間11、8±3、9ヶ月(7〜18ヶ月)
・術後平均視力0.61±0.75logMARと改善。(15例中改善11例、不変2例、悪化2例)
視力の改善率はガスタンポナーデを行った場合と同等であった。
・術後平均網膜中心厚(CMT)342±90 µm。
・OCTにて中心窩の再付着は術後1〜6ヶ月の間に全例で達成されたことを確認した。
1ヶ月で3眼、3ヶ月で8眼、6ヶ月で15眼。術前のCMTや眼軸とは関係なかった。
・MFの原因と思われる黄斑部の牽引を完全に除去する必要がある。
ガスタンポナーデなしのILMピーリングが中心窩の解剖学的、そして視覚の改善をもたらす。ガスタンポナーデなしのILMピーリングは黄斑円孔のないMFに対する治療の選択肢である。(CH)