COVID-19 vaccine-associated uveitis in patients with a history of uveitis.
Kim J et al(Korea)
JAMA Ophthalmol 142(6): 522-528, 2024
・ブドウ膜炎の既往がある人で、COVID-19ワクチン後にブドウ膜炎が再発する可能性について検討した。
・2015/1~2021/2に韓国でブドウ膜炎と診断された患者のretrospectiveなコホート研究である。
・COVID-19ワクチンを打たなかった人と、SARS-CoV-2感染になった人を除外し、少なくとも1回のワクチン(Pfizer-BioNTech、Moderna、AstraZeneca、Janssen)を受けたブドウ膜炎の既往がある患者を、2021/2から2022/12に解析した。
・異なったワクチン接種後のブドウ膜炎の発症率などを調査した。
・ブドウ膜炎は発症時期(30日以内の早期か否か)とタイプ(前眼部か非前眼部)で分類した。
・543,737名のブドウ膜患者の内、ワクチン接種を受けた473,934名(58.9±17.4歳、51.3%が女性)を解析した。
・ワクチン後のブドウ膜炎の再発は、3か月以内が8.6%、6か月以内が12.5%、1年以内が16.8%で、前眼部ブドウ膜炎が多かった。
・ワクチン接種後の早期のブドウ膜炎発症はPfizer-BioNTechではHR=1.68(95%CI=1.52-1.86)、ModernaでHR=1.51(1.21-1.89)、AstraZenecaではHR=1.60(1.43-1.79)、JanssenではHR=2.07(1.40-3.07)であった。
・最初と2回目のワクチン接種後のブドウ膜炎発症が特に多かった(HR=1.64 95%CI=1.55-1.73)。
・ブドウ膜炎の既往者についてはワクチン接種後の再発について注意する必要がある(TY)
Four-year progression of myopic maculopathy in children and adolescents with high myopia.
Jiang F et al(China)
JAMA Ophthalmol 142(3): 180-186, 2024
・18歳以下の高度近視眼は近視性黄斑症が悪化するリスクが高いので、この要因について検討した。
・7歳から17歳の-6.0D以下の高度近視、274例548眼(うち、女子138例 50.4%)を4年間経過観察した。
・近視性黄斑症は国際眼底写真分類と評価方式を採用した。
・4年間の経過観察で近視性黄斑症の進展は67/548(12.2%)でみられ、16眼では新規のモザイク眼底が発症した。
・12眼のびまん性萎縮、2眼の斑状萎縮、9眼のlacquer crack、49眼のびまん性萎縮の拡大がみられた。
・近視性黄斑症の進展に関連していたのは、最高視力の低下(OR=6.68 95%CI=1.15-38.99 p=0.04)、眼軸長が長いこと(OR=1.73 95%CI=1.34-2.24 p<0.01)、眼軸長延長が早いこと(OR=302.8 95%CI=29-3206 p<0.001)、パッチ様萎縮(OR=3.82 95%CI=1.66-8.80 p=0.002)であった。(TY)
JAMA Ophthalmol 141(12):1110-1116, 2023
Wai KM et al(CA USA)
Risk of stroke, myocardial infarction, and death after retinal artery occlusion.
・網膜動脈閉塞症RAOを発症した患者の脳梗塞、心筋梗塞MI、死亡についての短期ならびに長期比率を、2003/1/1から2023/4/14までの1億1100万名の患者データの中から抽出して調査した。
・RAO群と白内障群(コントロール群)は年齢、性、人種、併存する高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などについてマッチさせて調査した。
・RAOあるいは白内障と診断される2年以内に脳梗塞、MIを発症した症例は除外した。
・脳梗塞、MI、死亡の比率は、RAO発症の2週間、30日、1年、5年、10年で調査した。
・RAOの発症年齢は66±15.2歳で、34,874名を1年以上調査した。
・5期間の死亡率はRAO群は0.14%:0.06%、0.29%:0.14%、3.51%:白内障群は1.99%、22.74%:17.82%、57.86%:55.38%であった。
・5期間の脳梗塞率はRAO群は1.72%:0.08%、2.48%:0.18%、5.89%:白内障群は1.13%、10.85%:4.86%、14.59%:9.18%であった。
・5期間のMIの発症率はRAO群は0.16%:0.06%、0.27%:0.10%、1.66%::白内障群は0.97%、6.06%、:5.00%、10.55%:9.43%であった。
・RAOを発症すると短期でも長期でも死亡、脳梗塞、心筋梗塞の発症率が上がるため、長期的な総合的な評価が必要であることがわかった
Wai KM et al(CA USA). Risk of stroke, myocardial infarction, deep vein thrombosis, pulmonary embolism, and death after retinal artery occlusion. Amer J Ophthalmol 257(1):129-136, 2024(TY)
Tsui E, Sella R, Tham V, et al. Pathogen surveillance for acute infectious conjunctivitis. JAMA Ophthalmol 2023; 141: 1140-1144.
・米国内およびイスラエル(Honolulu, Hawaii; Los Angeles, San Francisco, San Diego, California; Petah-Tikva, Israel)の5施設共同の横断的研究。
・2021年3月~2023年3月の期間、5施設を訪れて急性感染性結膜炎と推察された患者を対象とし、微生物学的な原因を探りその地域差を検討する目的で、罹患眼の下眼瞼円蓋部を擦過して得られた検体をRNA deep sequencing(次世代シークエンサーを用いてDNA/cDNAを高重複度で塩基配列解析を行う方法)で検討した。
・52名の患者(平均年齢48歳、女性が31名:60%)が対象で、うち両眼の結膜炎が31例、検査前すでに抗菌剤点眼治療が行われていた者が17例。
・膿性の眼脂を伴っていた者が32例あったが、うち4例で細菌が検出されたが、28例においてはウイルス性と判断された。
・ウイルスではHAdV species D (HAdV-D) がカリフォルニア州からの13例に検出されたが、ハワイ州ではHAdV-Dはなく、3例にコロナウイルスが検出されている。イスラエルではHAdV-DではなくHAdV-Bが検出されていた。また、その他のウイルスとして全域でヘルペス属(HSV type-1, HZV, EB virusなど) が検出されている。細菌感染は4例、真菌感染が2例、原因不明は13例だった。
・急性結膜炎の原因微生物として、細菌は52症例中4例と稀であった。検出菌としては、Haemophilus influenzae, Fusobacterium nucleatum, Streptococcus aureusが原因として挙げられた。細菌性結膜炎の特徴と言われている膿性の眼脂を見た症例の大半はHAdV、ヘルペス属のウイルスであった。(検体のえられた時点ですでに他院で抗菌剤点眼が使われていた症例も多かった事情にもよる)。
・今回用いられたRNA deep sequencingは急性結膜炎の原因解明に有用であり、ウイルスや微生物など原因に対応した治療が行われるようになれば、抗菌剤点眼の処方が減らせるなど、医療のコスト減につながるが、RNA deep sequencingの導入自体がコスト面で高くつくというジレンマがある。(KH)
Safir M, Hecht I, Heller D, et al. Psychiatric comorbidities associated with keratoconus. JAMA Ophthalmol 2023; 141: 1145-1150.
・円錐角膜発症の要因として、眼をこすることによる角膜表面への機械的刺激があり、そのために角膜が変形してしまうという説がある。その背景としてアトピー性皮膚炎の他にも精神疾患の可能性があるのではないかと仮説を立てて、調査を行った。
・横断的研究で、対象は2011年1月から2021年12月までイスラエルで軍隊に所属した思春期ないし若年成人(16~18歳)の者940,763名。患者背景と通常の健康チェック、fitness-for-service (FFS)分類での評価のデータと円錐角膜の有無および重症度との関連を検討した。(FFS: 「品質管理適正評価」という日本語訳が出ていた!)
・円錐角膜発症者は1553名、人口10万人対では165.1人/10万人で、既報の50~230とほぼ一致。
・調査では、男性、ADHDが円錐角膜の発症と有意に関連していた。
・ADHDの重症度と円錐角膜の重症度との関連は見られなかった。したがって、ADHD特有の行動が円錐角膜の原因となるのか、円錐角膜による視力低下がADHDの発症要因となるのかという疑問については、おそらくADHDは円錐角膜発症の要因ではあっても、重症化の原因にはならず、円錐角膜が原因でADHD特有の行動を引き起こすわけではない。(KH)
JAMA Ophthalmol 141(11):1075-1078, 2023
Bjerager J et al(Denmark)
Outbreak of bilateral endophthalmitis after immediate sequential bilateral cataract surgery.
・2022/12にデンマークの地域密着型の眼科診療所で発生した両眼同時白内障手術(ISBCS:immediate sequential bilateral cataract surgery)後の両眼同時術後眼内炎(BSPOE:bilateral simultaneous postoperative endophthalmitis)の多発例について報告する。
・71歳女性、84歳男性、79歳女性で、同一日に手術を受け、ISBCSの4-8日後にBSPOEを発症した。
・6眼のうち5眼は硝子体手術を行い、このうち4眼で同じ表皮ブ菌の菌株がみつかった。
・1眼は眼球癆のために眼球摘出を行ったが、それ以外の最悪の視力は20/63であり、そのほかは、20/25(2例3眼)、20/20(1眼)であった。
・粘弾物質の汚染は除外された。
・ガイドラインに則ったしっかりした注意さえおこなえば、やはり、ISBCSのメリットは大きいと考えている。(TY)
Biometric risk factors for angle closure progression after laser peripheral iridotomy.
Bao YK et al(CA USA)
JAMA Ophthalmol 141(6): 516-524, 2023
・レーザー周辺虹彩切開(LPI)は原発閉塞隅角疾患(PACD)に対する最も一般的な治療である。
・LPI後のPACや急性隅角閉塞(AAC)を予防する形態要因について、50歳から70歳以上のPACSのある中国人で、ランダムに選択した1眼のみLPIを受けた者を対象として検討した。
・隅角検査と前眼部OCT検査をLPIの2週間後に行った。
・PACへの進展あるいはAAC発作が発生したものを[進行]と判定した。
・仮説として考えられる要因を持つ集団と持たない集団を追跡するコホート研究Aでは、LPI治療を受けたものと受けていないものの混合の878例878眼(58.9±5.0才、女性82.7%)を対象とし、コホート研究Bでは、LPI治療を受けた片眼のみを対象とした869例869眼(58.9±5.0才、女性82.5%)である。
・イベントが発生するまでの期間を分析する生存時間分析である単変量と多変量のCox回帰分析を行い、進行のriskファクタを評価した。
・コホートAでは878眼中44眼に進行がみられた。
・多変量回帰では、年齢や隅角の開放度で補正すると、LPI治療は進行に関与していなかった(HR=0.67 95%CI=0.34-1.33 p=0.25)。
・コホート研究Bでは869眼中19眼に進行がみられた。
・多変量回帰では、TISA(trabecular iris space area) at 500μmが0.01mm2小さいとHR=1.33 (95%CI=1.12-1.56 p=0.001)、隅角開放の合計スコア(0-4 x4象限)が1スコア小さいとHR=1.25 (95%CI=1.03-1.52 p=0.02)で進行がみられた。
・前眼部OCTでTISA at 500が0.05mm2以下であるとHR=9.41 95%CI=3.39-26.08 p<0.001)で、隅角の合計スコアが6以下であるとHR=2.80 95%CI=1.13-6.93 p=0.04で、進行リスクが高くなっていた。
・LPI治療を行なった後に、隅角鏡、前眼部OCT検査を行なうことは重要である。(TY)
Evaluaton and follow-up of myopia prevalence among school-aged children subsequent to the COVID-19 home confinement in Feicheng, China.
Wang J et al(China)
JAMA Ophthalmol 141(4): 333-340, 2023
・2020年1月から5月にかけて、COVID19による小児達の家庭内幽閉があり、その時期に近視進行がみられた6歳から8歳の小児の近視進行は、1年後には止まったかどうかを検討した。
・測定はSpot Vision Photoscreenerを使用した。
・対象は325,443名の小児で51.4%が男児である。
・2020年の幽閉時に比較して2021年の屈折度は有意に+化した。
・6歳児は+0.42D、7歳児は+0.41D、8歳児は+0.33Dとなり、近視児の割合は2019年と2021年で同定度となった。
・6歳児は5.7%:7.9%、7歳児は13.6%:13.9%、8歳児は26.29.5%であって、家庭内幽閉による近視化は一過性のものであった。(TY)
An outbreak of fungal endophthalmitis after cataract surgery in South Korea.
Kim SW et al(Korea)
JAMA Ophthalmol 141(3): 226-233, 2023
・韓国における汚染された粘弾物質による2020/9-2021/6にかけての全国的な白内障術後の真菌性眼内炎について報告する。粘弾物質:Unial(Unimed Pharmaceutical Inc)。
・256例281眼(65.4±10.8歳)が真菌性眼内炎と診断された。
・白内障手術から真菌性眼内炎と診断されるまでの期間は、24.7±17.3日であった。
・症状は、硝子体混濁が75.4%、眼内レンズへの浸潤が50.9%、毛様体浸潤が19.6%。
・260眼で培養が行われ、103眼(39.65)で真菌が検出され、Fusariumが89眼(86.4%)であった。
・経過を追った228眼での視力はlogMARで0.78±0.74(小数点視力20/120)から6ヶ月後に0.36±0.49(小数点視力 20/45)に改善した。
・術後眼内炎軽快後に、術後眼内炎の所見が全く消失した症例は214眼(93.9%)であった。(TY)
Association of Blood Pressure With Rates of Macular Ganglion Cell Complex Thinning in Patients With Glaucoma
Vahid Mohammadzadeh et al. JAMA Ophthalmol 141(3):251-257, 2023
・緑内障の進行と血流低下についての報告は少ないが、眼灌流圧(OPP)は緑内障のリスク因子である。しかし、ベースライン血圧とその後の機能と構造の変化についての報告は少ない。
・この報告では眼圧を含む臨床的な因子を調整した上で血圧と黄斑部の変化の関連性を調査した。
・*OPP=2/3[DBP+1/3(SBP-DBP)]-IOP
・UCLAで実施されているAdvanced Glaucoma Progression Study(AGPS)で2012年6月から2018年6月までのデータを対象
・Inclusion Criteria: 1)OAG or ACG, 2)中心24-2の視野で10°以内に2点以上pattern deviation plotでP<0.05 もしくはMD<-6dB
・Exclusion Criteria: ベースラインの年齢が39歳未満、80歳より上、BCVA<20/50, 屈折S:8D C3Dを超えるもの、OCTに影響するような網膜・神経疾患、白内障を除く他の疾患
6ヶ月ごとにOCTを含む検査
・片眼のみ採用し両眼が基準を満たすときはMDが悪い方を採用した
・Bayesian hierarchical modelを用いて解析を行った
・111眼中105眼で解析を実施、demographic and clinical Characteristic of baseline(Table1)
・経過観察中: Trabeculectomy(TLE) 12眼(11.4%), Cat+TLE 2(1.9%), TLE revision 6(5.7%), AGV 1(1.0%), iStent 1(1.0%)を行なった。
・拡張期血圧(DBP)とIOPの関係がGCCの菲薄化に有意な関連性があった。
・GCCの菲薄化は、DBPが高い場合、IOPが低い場合、あるいはその両方の場合は、DBPが低くIOPが高い場合と比べてゆっくりであった。
・DBP>80mmHg or IOP <10mmHg:GCCは -0.4μm/y よりよかった
・DBP 60mmHg, IOP 20mmHg: -0.8μm/y, DBP 80mmHg, IOP 15mmHg: -0.4μm/y
・女性、降圧剤の使用歴、高眼圧、CCTが厚い、眼軸が短い、12cycles/degreeのCSが高い、10-2のMDが高い(良い)ことがGCCの菲薄化に関連
・拡張期血圧が下がりすぎないようにすることは緑内障進行においては重要なことと考えられる。(MM)
Incidence and progression of chorioretinal folds during long-duration spaceflight.
Ferguson CR et al(TX USA)
JAMA Ophthalmol 141(2): 168-175, 2023
・6か月から12ヶ月の間、国際宇宙ステーションに滞在した乗組員について、神経眼症候群のひとつとしての脈絡膜網膜趨壁について検討した。
・視神経乳頭浮腫の指標としての視神経乳頭周囲の網膜厚も同時に検討した。
・36名の乗組員の年齢は46±6才で、女性が7名(19%)。
・脈絡膜網膜趨壁は12/72眼(17%、6名の乗組員)にみられた。
・視神経乳頭浮腫の所見のあった症例では、10/42眼(24%)に脈絡膜雛壁があり、4/42眼(10%)に網膜内層の趨壁、2/42眼(5%)に傍乳頭の趨壁がみられた。
・網膜趨壁のみられた眼や傍乳頭趨壁がみられた眼は全眼、脈絡膜趨壁が見られた。
・脈絡膜雛壁症例の内、黄斑部の脈絡膜雛壁は7/12眼(4/6名の乗組員)でみられ、宇宙滞在中に進行し、6眼では中心窩に掛かっていた。
・傍乳頭脈絡膜雛壁は視神経乳頭の主に上方、鼻側、下方にみられ、宇宙滞在中に広がり、重症化した。
・脈絡膜雛壁は特発性頭蓋内高血圧によるものとは異なっている。
・体重減少中に進展していることなども考慮し、宇宙滞在中の神経眼症候群の防衛策が立てられる可能性もある(TY)
Identification of factors associated with the development of optic disc edema during spaceflight.
Pardon LP et al(TX USA)
JAMA Ophthalmol 140(12): 1193-1200, 2022
・長期間の宇宙滞在をした乗組員のほぼ70%で視神経乳頭浮腫を発症することが分かってきており、宇宙滞在関連の神経眼症候群の特徴となっている。
・この所見には個人差があるが、その理由はまだ不明である。
・この視神経乳頭浮腫は月とか火星とか、宇宙滞在時間が長くなってくると不可逆性の視機能障害を引き起こす可能性のある重大な問題である。
・この点につき2021/8~2022/6までの31名(46.9±6.0才:25名(80.6%)が男性)で解析した。
・宇宙滞在中、視神経乳頭周囲の網膜厚は392.0±5.8から430.2±9.2μm(p<0.001)に増加し、陥凹容積は減少し(p=0.002)、陥凹は浅くなり(p=0.03)、陥凹幅は狭くなったが(p=0.03)、個人差が大きかった。
・視神経乳頭周囲の網膜厚とその他のものとの関連は見つからなかった。
・視神経の小乳頭が視神経乳頭浮腫に関連していたが、理由は分からなかった(TY)
Changes in optic nerve head and retinal morphology during spaceflight and acute fluid shift reversal.
Pardon LP et al(TX USA)
JAMA Ophthalmol 140(8): 763-770, 2022
・無重力状態で頭の方に体液が移動する事を予防する下半身陰圧治療対策は無重力に付随した神経眼科の症候を緩和できるか検討した。
・短時間の飛行中の25mmHg下半身陰圧治療の効果についても検討した。
・視神経乳頭と黄斑部のOCTを、飛行前、飛行中、地上に戻ってから180日までの間、測定した。
・各BMO点からONHを中心として、4mmのBMの基準点に引いた直線までの最短距離をBMO hightとし、BMO基準線から200μ前方の水平線との交点を乳頭カップ縁として、その囲まれた部位をカップ容積とした。
・飛行中は、通常の状態と10分から20分の下半身減圧中に行った。
・飛行士の年齢は45±6歳、飛行期間は11名(79%)の男性飛行士は214±72日。
・150日目の眼所見では、視神経の最小リム幅が増加:33.8μm(95%CI=27.9-39.7μm p<0.001)、陥凹容積が減少:0.038mm3(95%CI=0.030-0.046mm3 p<0.001)、ブルッフ膜開口部が後方移動:-9.0μm(95%CI=-15.7~-2.2μm p=0.009)、視神経乳頭周囲の網膜厚は増加し、黄斑厚は減少した。
・短時間の下半身減圧治療はこれらの変化に影響していなかった。(TY)
Efficacy of Marine ω-3 Fatty Acid Supplementation vs Placebo in Reducing Incidence of Dry Eye Disease in Healthy US Adults: A Randomized Clinical Trial
William G. Christen, et al. (MA USA)
JAMA Ophthalmol. 2022;140(7):707-714.
・目的: 海洋性ω-3 脂肪酸の長期にわたる毎日の摂取が DED の発症を予防するかどうかを評価すること。
・対象と方法:23,523 人の米国成人 (男性は 50 歳以上、女性は 55 歳以上) で、研究登録以前に DED と診断さたことがなく、強いドライアイ症状を経験していなかった。
・海洋性ω-3 脂肪酸(fish oil、EPA、DHA)1 日1 g摂取(治療グループ)またはプラセボを摂取した(プラセボグループ)グループに分けた。
・第一エンドポイントは、医療記録によって確認され、臨床的に診断された DED。第二エンドポイントは、臨床的に確認されたDED+強いDED 症状とした。
・結果:追跡期間5.3 (3.8-6.1) 年の間に、23,523 人中 472 人 (2.0%) が診療記録でDED の診断を受けたと確認された。
・第一エンドポイントでは、治療グループ11,757人のうち232人[2.0%]、プラセボグループ11,766人のうち240人[2.0%]がDED の診断を受けた。両グループ間に有意差はなかった。(hazard ratio, 0.97; 95% CI, 0.81-1.16).
・同様に、第二エンドポイントでもグループ間に差はなかった(治療グループ1044人 [8.9%]、プラセボグループ1074人[9.1%]; hazard ratio, 0.97; 95% CI, 0.89-1.06).
・結論:1 日あたり 1 g の海洋性ω-3 脂肪酸を長期的に補給しても、DEDの発生率は減らなかった。(CH)
Association of Diabetes Medication With Open-Angle Glaucoma,
Age-Related Macular Degeneration, and Cataract in the Rotterdam Study
Joëlle E. Vergroesen, et al.
JAMA 140(7), 674-681: 2022
・1990年4月23日から2014年6月25日までのロッテルダムスタディに基づいた3つの独立したコホートを前向き調査し、OAG,AMD,Cataractの発生率とベースライン血糖値、糖尿病薬、眼科検査データを収集した。
・メトホルミン:ビグアナイド系糖尿病薬
・アデノシンリン酸活性化キナーゼ(AMPK)を活性化させる
・ラパマイシン複合体およびNFκBの下流を阻害 NFκBは神経変性疾患において重要な役割を果たすことが知られている 薬価:後発品 9.8円
・結果:Rotterdam Study全体14926名のうち、11260名(平均年齢65.1歳、女性6610名(58.7%))が眼科とベースライン血糖、使用薬物の経過が少なくとも1年追えた。98%はヨーロッパ人種。
・2型糖尿病(T2D):2406名(28.4%)
1388名(57.7%)にメトホルミン処方
501名(20.8%)に他の血糖降下薬
517名(21.5%)は生活習慣の改善指導のみ
・OAG(視野異常の出現で診断): 324/7394名(4.4%)
・AMD: 1935/10993名(17.6%)
・Cataract: 4203/11260名(37.3%)
・未治療のT2DがOAG,AMD,Cataractとの相関が最も強かった。それぞれOR 1.50/1.35/1.63
メトホルミンで治療されていたT2DはOAGのリスクが低かった(OR 0.18)
・他の糖尿病薬(インスリン、SU剤)はAMDのリスクが低かった(combined OR 0.32)
・OAGの累積の生涯リスクはメトホルミン使用群で1.5%、T2Dがない群(7.2%)より低かった
・AMDの累積障害リスクは治療群で低かった(17.0% vs 33.1%)
・結論:糖尿病は白内障と関係するが糖尿病治療薬は関係がなかった
・メトホルミンはOAGのリスクを下げ、インスリンやSU剤はAMDのリスクを下げると考えられる(MM)
Serious adverse events of oral and topical carbonic anhydrase inhibitors.
Propovic MM et al(Canada): JAMA Ophthalmol 140(3): 235-242, 2022
・内服と点眼の炭酸脱水素酵素阻害剤の安全性を検討した。
・1995/1から2020/1までの25年間にカナダのOntarioで、65歳以上の128,942例を対象(年齢75±6.6才、女性が55.8%、DMが19.4%)として、炭酸脱水素酵素阻害剤の使用開始後120日以内のものを調査した。
・症例は眼科医が診察していなくても、緑内障の病名がついていないものも対象となっている。
・内服はアセタゾラミドとmethazoramideであり、点眼はドルゾラミド、ブリンゾラミドとこの合剤
・Stevens-Johnson症候群、Toxic epidermal necrolysis、再生不良性貧血を対象とすると、内服では2.9例/1000例、点眼では2.08例/1000例に発生していた(TY)
Efficacy of a Web App–Based Music Intervention During Cataract Surgery
A Randomized Clinical Trial
Gilles Guerrier, MD, PhD; Hendy Abdoul, MD, PhD; Lea Jilet, MsC; et al(France)
JAMA Ophthalmol. 2021;139(9):1007-1013. doi:10.1001/jamaophthalmol.2021.2767
【目的】
白内障手術中の不安と高血圧イベントに対するウェブアプリを用いた音楽介入の効果を検証
【対象と方法】
・白内障手術予定310名を前向き無作為に割り付け、309名が解析
・平均(SD)年齢68.9(10.8)歳、女性176名(57%)
・手術前の20分間、音楽群(ウェブアプリの音楽をヘッドフォンで聴く)または対照群(音楽を流さないノイズキャンセリングヘッドフォン)のいずれかに無作為に割り当て
・U-sequenceテクニックを用いた不安軽減専用の音楽を患者がアプリから選択
https://www.music.care/en/index.html
【結果】
・高血圧の発生率:
音楽群(21人[13.6%])が対照群(82人[52.9%])より有意に低く、
2群間の差は39.3%(95%CI, 21.4-48.9%; P < .001)であった
・不安の視覚的尺度の平均(SD):
音楽群(1.4[2.0])で対照群(3.1[2.4])より有意に低く、
その差は1.5(95%CI、1.0~2.1;P = 0.005)であった
・手術中に必要な鎮静剤注射の平均(SD)回数:
音楽群 vs 対照群でそれぞれ 0.04(0.24) vs 0.54(0.74)、
その差は0.50(95% CI,0.43-0.57;P<0.001)
【結論】
白内障手術の前にウェブアプリでの音楽介入を行うことは、患者の不安レベルや血圧上昇の頻度を下げ、鎮静剤の必要性を減らすことができる可能性が示唆された。(MK)
Changes in the optic nerve head and choroid over 1 year of spaceflight.
Macias BR et al(TX USA)
JAMA Ophthalmol 139(6): 663-667, 2021
・1年間のSpaceflightを行った2名の乗組員を6か月の乗務を行った11名と比較して検討した。
・1名の乗組員では軽度の視神経乳頭浮腫、もう1名の乗組員では進行性の脈絡膜雛壁と視神経乳頭浮腫が1年後もみられた。
・6か月以上の乗務については眼の健康について、もう少し検討が必要である(TY)
Postoperative Photoreceptor Integrity Following Pneumatic Retinopexy vs Pars Plana Vitrectomy for Retinal Detachment Repair: A Post Hoc Optical Coherence Tomography Analysis From the Pneumatic Retinopexy Versus Vitrectomy for the Management of Primary Rhegmatogenous Retinal Detachment Outcomes Randomized Trial .
Muni RH, Felfeli T, Sadda SR, et al. (England)
JAMA Ophthalmol. 2021;139(6):620–627. doi:10.1001/jamaophthalmol.2021.0803
【目的】
気体網膜復位術(PnR)と硝子体手術(PPV)の術後12か月における視細胞の健常さをSD-OCTで比較
【対象と方法】
St Michael’s Hospitalで2012年8月~2017年5月に実施されたPneumatic Retinopexy Versus Vitrectomy for the Management of Primary Rhegmatogenous Retinal Detachment Outcomes Randomized Trial(PIVOT)のpost hoc解析
網膜剥離患者をPnRまたはPPVへ無作為に振り分け、黄斑の状態により層別化
ellipsoid zone(EZ)と外境界膜(ELM)の不連続性を有する患者の割合を、外部のマスクされた画像読影センターでマスクされた2人のグレーダーが独立して評価
【結果】
計150人が12か月のフォローアップを完了
うち計145人(PPV 72人、PnR 73人)が12か月後にSD-OCTを受けた
中心3mmスキャン解析では、PPV群とPnR群ではそれぞれ、
24%(17/72眼)対7%(5/73眼)にEZの不連続性が認められ(OR 4.204 ; p=0.005)、
20%(14/71眼)対6%(4/73眼)にELMの不連続性が認められた(OR 4.237;p=0.01)
中心6mmスキャンの解析でも、EZおよびELMの不連続性はPPV群で有意に大きかった
EZ断裂;32% [23/72眼] vs 11% [8/73眼]; OR, 3. 814;P = 0.002
ELM断裂;32%[23/71眼] vs 18%[13/73眼];OR、2.211; P = 0.04
【結論】
EZおよびELMの不連続は、網膜剥離の復位術後12か月の時点において、PnRに比べてPPVでより頻度が高かった。この結果は、EZとELMの不連続性が少ないことが、以前に報告されたPnRによる優れた機能的転帰の解剖学的根拠となっている可能性を示唆しているが、因果関係を証明するものではない。(MK)
Assessment of Cumulative Incidence and Severity of Primary Open-Angle Glaucoma Among Participants in the Ocular Hypertension Treatment Study After 20 Years of Follow-up
Michael A. Kass, et al(UK)
JAMA Ophthalmology, 139(5):558-566, 2021
・OHTS Study: 視野と視神経の正常、少なくとも1眼が24mmHg以上32mmHg以下。他眼が21mmHg以上32mmHg以下、40-80歳(ベースラインの平均年齢55歳)
・OHTS1 1994.2.28-2002.6.2
・1994.2月から1996年10月まで22のクリニックで1636名を点眼治療群と経過観察群に分けて、5年後のPOAG発症リスクを比較
・経過観察群 9.5%→ 治療群 4.4%
・年齢・眼圧、角膜厚、垂直C/D比、PSDがPOAG発症のリスク
・OHTS2 2002.6.3-2008.12.30
・OHTS1での治療の遅れが有害であったか確認するため、両群に治療を行う
・結果 治療開始によってPOAG発症率は抑えられ、治療の遅れによる影響は見いだせなかった
・2009年からは両群の治療プロトコルの規定はなくなった。点眼継続・中断は医師の裁量
・OHTS3 2016.1.7-2019.4.15 <今回の報告>
・対象者の20年後もしくは死亡前2年以内のPOAGの発症頻度の調査
・1636名のうち 515名は死亡(31.5%)
・OHTS Phase3で評価できたのは971名(718名は生存)
・483名(29.5%)にPOAGを少なくとも1眼に発症、199名(12.2%)に視神経変化(視野異常なし)、284名(17.4%)に視野異常(視神経の変化無し)
・観察人年で調整した累積発症率は全体で45.6%、OHTS1での治療群41.9%、観察群49.3%であった
・20年の視野障害を伴うPOAGは25.2%であった。
・20年目のリスク別の累積発症率:Low 31.7%、Medium 47.6%, High 59.8%
・1636名のうち11名が経過観察中にPEを認め、うち5名がPEGとなった
・89名にLIが行われているが、3名がACG,3名がcombined-mechanism glaucomaで残りの83名は狭隅角の診断、1例がPigmentary glaucomaとなった。
・視力0.5未満になったものは11.0%(片眼8.6%、両眼2.3%)、0.1未満 1.2%
・視野が-22dB以下になったものは3.2%(片眼2.5%、両眼0.7%)
・OHTS2以降72.0%は眼圧下降薬の治療を受けていた
・18.1%で緑内障手術を受けている(LTP:9.6%、LI:5.4%、TLE:3.4%、Cat+TLE:3.4%、Tube:1.0%)(MM)