Association of Exercise and Swimming Goggles With Modulation of Cerebro-ocular Hemodynamics and Pressures in a Model of Space flight-Associated Neuro-ocular Syndrome
Jessica M. Scott et al (USA)
JAMA Ophthalmol 137(6): 652-659, 2019
宇宙飛行士の最大70%が宇宙に行くと神経-眼球の変化(SANS)を生じる。頭蓋内圧の上昇、視力低下、視神経乳頭腫脹、眼球の平坦化、脈絡膜の皺、視神経鞘の膨張、cotton wool spotsがフライト中あるいはミッション終了後3ヶ月以上も持続する
通常眼圧15mmHg、頭蓋内圧(ICP)10mmHgのため、LCに後方へ正の圧勾配(TLPG)が生じるが、宇宙ではIOPよりICPの上昇が大きいためTLPGが負になることが原因とされる。
20名の健康な男性 平均36歳、180.2cm、81.5kg、BMI24.7、VO2max 38.2ml/kg/min
15分の仰臥位の後、-15°頭部低位に傾けた姿勢を15分
そのまま3種類のうちの一つのエクササイズを別々の日に実施
30分間(VO2maxの60%)の中等度のサイクルエルゴメーター運動
100%1RMのレッグプレス12回を4セット
4分間80%VO2max、3分休憩4セット
上記は現在宇宙飛行士が長期の宇宙フライトで行う方法に基づいている
呼吸器系や循環器系のパラメータの他に、左眼でIcarePRO眼圧計、右眼でTriggerfish眼圧計にて眼圧測定とcorneoscleral circumferenceを測定
10例は市販のスイミングゴーグルを装着し、眼圧が約3mmHg上昇するようにつける(レンズ部分はカットして眼圧測定が可能にしてある)
結果
<仰臥位→-15°HDT>
心拍数、心拍出量:変化なし
全頭蓋内流入量:変化なし
内頸動脈血流(ICA):4.4%増加 +13ml/min(P=.32)
椎骨動脈血流(VA):4.7%減少 -8ml/min(P=.13)
総流入血流:8.5%減少
総頸動脈血流(CCA):9.0%減少 -76ml/min(P<.001)
椎骨動脈血流(VA):4.7%減少 -8ml/min(P=.13)
中大脳動脈血流速度(MCA):2.5cm/s(P=.01)
静脈系
椎骨静脈血流(VV):20.5% -16ml/min(P=.02)
内頸静脈血流(IJV):変化なし
IOP、内頸静脈圧(IJVP)、外頸静脈圧(EJVP)は増加し、TLPGは約5倍減少した。(Fig1)
<-15°HDTでの運動による変化>
心拍数、心拍出量、VO2、換気能、収縮期血圧、拡張期血圧は上昇
特に高強度のエルゴメーターによる運動で認めた(Table1)
頭蓋内流入量:7.2%増加(P=.04)(Table2)
総流入量:24.7%増加(P<.001)
ICA:9.1%増加 +42ml/min(P=.001)
CCA:30%減少 +227ml/min(P<.001)
VA:変化なし
MCAやコンダクタンス(伝導度):変化なし
VV:+18ml/min(P=.004)
IJV変化なし
運動強度には違いなし
IOP 7.4%(-1.6mmHg)減少、IJVP,EJVPは変化なし、結果TLPGは-3.5mmHg低下(Table1)
<スイミングゴーグル装着>(Table3)
仰臥位とHDTではIOPが約3mmHg上昇→TLPG上昇だが、
運動負荷ではTLPGは変化なし
<Corneoscleral Circumference>(Fig2)
Spine→HDT:増加 10.6mVEq
HDT→HDT+運動:増加 15.4mVEq
宇宙滞在中の骨格筋退縮予防に運動を行うが、それによってTLPGのさらなる低下が生じるが、スイミングゴーグル装着はTLPGの低下を一部緩和すると考えられる。長期宇宙滞在中にIOPを上昇させることの安全性についてさらなる調査が必要。(MM)