眼科JOURNALトップ > JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) > 急性の感染性結膜炎の病原を調べてみた

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology)

2023
141巻

急性の感染性結膜炎の病原を調べてみた

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 141巻(12号)2023

Tsui E, Sella R, Tham V, et al. Pathogen surveillance for acute infectious conjunctivitis. JAMA Ophthalmol 2023; 141: 1140-1144.
・米国内およびイスラエル(Honolulu, Hawaii; Los Angeles, San Francisco, San Diego, California; Petah-Tikva, Israel)の5施設共同の横断的研究。
・2021年3月~2023年3月の期間、5施設を訪れて急性感染性結膜炎と推察された患者を対象とし、微生物学的な原因を探りその地域差を検討する目的で、罹患眼の下眼瞼円蓋部を擦過して得られた検体をRNA deep sequencing(次世代シークエンサーを用いてDNA/cDNAを高重複度で塩基配列解析を行う方法)で検討した。
・52名の患者(平均年齢48歳、女性が31名:60%)が対象で、うち両眼の結膜炎が31例、検査前すでに抗菌剤点眼治療が行われていた者が17例。
・膿性の眼脂を伴っていた者が32例あったが、うち4例で細菌が検出されたが、28例においてはウイルス性と判断された。
・ウイルスではHAdV species D (HAdV-D) がカリフォルニア州からの13例に検出されたが、ハワイ州ではHAdV-Dはなく、3例にコロナウイルスが検出されている。イスラエルではHAdV-DではなくHAdV-Bが検出されていた。また、その他のウイルスとして全域でヘルペス属(HSV type-1, HZV, EB virusなど) が検出されている。細菌感染は4例、真菌感染が2例、原因不明は13例だった。
・急性結膜炎の原因微生物として、細菌は52症例中4例と稀であった。検出菌としては、Haemophilus influenzae, Fusobacterium nucleatum, Streptococcus aureusが原因として挙げられた。細菌性結膜炎の特徴と言われている膿性の眼脂を見た症例の大半はHAdV、ヘルペス属のウイルスであった。(検体のえられた時点ですでに他院で抗菌剤点眼が使われていた症例も多かった事情にもよる)。
・今回用いられたRNA deep sequencingは急性結膜炎の原因解明に有用であり、ウイルスや微生物など原因に対応した治療が行われるようになれば、抗菌剤点眼の処方が減らせるなど、医療のコスト減につながるが、RNA deep sequencingの導入自体がコスト面で高くつくというジレンマがある。(KH)

過去のアーカイブ