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JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology)

2021
139巻

小児用スタンド式アルコール消毒器具の必要性

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 139巻 (3号) 2021

Hand sanitizer-induced ocular injury: A COVID-19 hazard in children.
Yagzes S et al(India)
JAMA Ophthalmol 139(3): 362-364, 2021
・COVID-19対応で手指に使用するアルコール消毒で角膜を障害された2例の小児を報告する。
・症例1は4歳の女児で、店先にあったスタンド式のアルコール消毒器具を使用しようとして角膜外傷を発症したが、2週間で完治。
・症例2は5歳の男児で、角結膜障害を発症したが、5日で完治した。
・アルコールは角膜辺縁部の幹細胞に対する毒性が強く,角膜上皮細胞に対して細胞毒性がある。
・小児用の消毒装置も設置することが必要である。(TY)

2021
39巻

COVID-19での自宅待機後の学童の近視進行

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 39巻 (3号) 2021

Progression of Myopia in School-Aged Children After COVID-19 Home Confinement
Jiaxing Wang, et al (China)
JAMA Ophthalmol. 39(3): 293-300, 2021
・COVID-19で自宅隔離となった学童期の屈折変化と近視の分布を調査する。
・2015-2020年にかけて行われている、10の小学校の6-13歳123535名にスポットヴィジョンスクリーナーで調査
・通常9月に実施する検査であるが、2020年は1月から5月前学校が閉鎖されていたため、6月に実施した。
・6-8歳では2019年までと比べて-0.3Dの進行を認め、2015-2019年までの最も高い近視の割合と比較しても2020年の近視割合は高かった。(6歳21.5% vs 5.7%、7歳26.2% vs 16.2%、8歳37.2% vs 27.7%)
・9-13歳では過去のデータと比べて屈折、近視の割合の変化はわずかであった。
・無散瞳での評価、過去のオルソケラトロジーの利用歴の欠如、他の眼科バイオメトリーデータの欠如などの制限はあるが、より若年児童では高学年の児童よりも環境の変化を受けやすく、近視進行の重要な時期であるかもしれない。(MM

2021
139巻

悪性中枢神経腫瘍治療時の色素性黄斑症について

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 139巻 (2号) 2021

Risk factors and disease course for blood-brain barrier disruption-associated maculopathy.
Simonett JM et al(Portland)
JAMA Ophthalmol 139(2): 143-149, 2021
・悪性中枢神経腫瘍(CNS腫瘍)に対する血液脳関門破壊(BBBD)治療と関連している色素性黄斑症について2006/2~2019/12の283症例のうち、眼科検査を行った68例について検討した。
・年齢は46.0±17.9才で25例(38.5%)が女性。硝子体混濁の強かった3例を除いた65例のうち32例(49.2%)に色素性黄斑症が発症していた。
・発症はBBBD治療の回数と相関していたが、年齢、腫瘍や治療薬の種類には関連がなかった。
・BBBD治療の終了後も地図状萎縮が拡大した症例は3例5眼にみられ、脈絡膜新生血管は1眼で発症していた。
・黄斑症の発症は容量依存性のものであると考えられた。(TY)

2021
139巻

白内障手術中の切開関連デスメ膜剥離のリアルタイムイメージング

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 139巻 (2号) 2021

Real-Time Imaging of Incision-Related Descemet Membrane Detachment During Cataract Surgery
Ye Dai, et al. (China)
JAMA Ophthalmol. 2021;139(2): 150-155.
・水晶体超音波乳化吸引術の各ステップで切開関連のデスメ膜剥離(DMD)の発生をリアルタイムで検出し、関連する要因を分析した。
・2.2 mm角膜切開で白内障手術を行い、各ステップでDMDの発生をリアルタイムで手術顕微鏡に接続したiOCTシステム(Zeiss Rescan 700; Carl Zeiss Meditec)を使用し、5ラインのスキャンモード(0.75 mm間隔、6mm幅)でリアルタイムの術中スキャン結果を検討した。
・白内障手術を受けた133人133眼(平均[SD]年齢、72.3 [8.1]歳)の中で、DMDは125眼(94.0%)で発生した。前嚢切開(2 [1.6% ])、hydrodissection(7 [5.6%])、U/S(69 [55.2%])、I/A(44 [35.2%])、およびIOL挿入(3 [2.4%])。 DMDの範囲は、手術中に増加した。
・DMDの範囲大きさには、超音波時間(β= 0.34; 95%CI、0.17-0.50; P <.001)、超音波出力(β= 87.8; 95%CI、19.1-156.4; P =0.01)が関連していた。
・DMDは94.0%で認められ、主にU/S中に発生し手術中に増加した。手術器具の摩擦が関連し、その重症度は超音波出力の高さと時間の長さに関連していることを示唆している。(CH)

2021
139巻

うつ伏せ換気と眼窩隔壁症候群

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 139巻 (1号) 2021

Eye protection for patients with COVID-19 undergoing prolonged prone-position ventilation.
Sun L et al(NY USA)
JAMA Ophthalmol 139(1): 109-112, 2021
・重症のコロナウイルス病(COVID-19)で最高の換気設定を行なっても効果のない患者には1日最低16時間のうつ伏せでの吸気管理を行なうことがある。
・このうつ伏せは、適切な処置が行なわれていなければ眼窩隔壁症候群を引き起こす可能性がある。
・ここでは2例のOrbital compartment症候群での視神経乳頭浮腫、網膜出血などについて述べる。
・2020/4-5月で、COVID-19のために16例がICUに入っており、そのうち4名がうつ伏せ換気が必要となり、そのうち2名で発症していた。
・視神経乳頭浮腫、網膜出血、眼圧上昇である。
・この症候群を防ぐには眼球の廻りにクッションを置いたり、頭位を心臓より高く保つことが重要である(TY)

2020
138巻

COVID-19の眼所見

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (5号) 2020

Characteristics of ocular findings of patients with Coronavisus disease 2019 (COVID-19) in Hubei Province, China.
Wu P et al(China)
JAMA Ophthalmol 138(5): 575-578, 2020
・湖北省の中心病院で、2020/2/9から2/15の間に治療したCOVID-19患者の眼所見について報告する。
・このsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2(SRRS-CoV-2)の逆転写酵素PCR (RT-PCR)結果についても報告する。
・COVID-19と確定された38名(男性25名 65.8±16.6歳)のうち、微咽頭からRT-CCRでCOVID-19の陽性所見者は28名(73.7%)で、そのうち2名(5.2%)では結膜ならびに微咽頭からSARS-CoV-2の陽性所見がでた。
・12/38名(31.6%)で結膜充血、浮腫、流涙、眼脂増加などの結膜炎所見があった。
・単相関では眼所見のある患者は白血球(10900:5730 p<0.01)や好中球値(9510:4260 p=0.01)が高く、蛋白質PCT、C反応性蛋白CRP(8.55:3.61 p=0.04)、乳酸脱水素酵素値LDH(381.7:234.7 p=0.03)が、眼所見のない患者より高かった。
・眼所見のあった12名中11名(91.7%)では鼻咽頭からRT-PCRでSARS-CoV-2の陽性所見があり、このうち2/12名(16.7%)では鼻咽頭と結膜の両方からRT-PCRでSARS-CoV-2の陽性所見があった。
・涙液にSARS-CoV-2陽性所見のでる有病率は低いが,眼から感染した可能性もある。(TY)

2020
138巻

IOLとメラトニン分泌との関連について

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (4号) 2020

Effects of cataract surgery on melatonin secretion in adults 60 years and older. A randomized clinical trial.
Nishi T et al(奈良医大)
JAMA Ophthalmol 138(4): 405-411, 2020
・白内障手術により光が多く網膜に吸収され、メラトニン分泌が増加すると考えられている。
・メラトニン分泌は抑鬱、糖尿病、認知障害、乳癌などと関連することが分かっており、今回、白内障手術との関連について検討した。
・2014年から2017年にかけて169例(75.7±6.7歳)で臨床研究を行い、2018年から2019年にかけて結果を解析した。
・60歳以上でGrade2以上の核白内障のある患者を対象とした。
・G1は透明IOL移植、G2は黄色IOL移植、G3はメラトニン検査後に透明IOL移植、G4はメラトニン検査後に黄色IOL移植群とし、G3とG4をCtrl群とした。
・尿中のメラトニン分泌をG1とG2では術後3か月後に、Ctrl群であるG3とG4では術前に測定した。
・尿中メラトニン分泌はG1,G2ではCtrl群よりも有意に高かった(p=0.007)。
・透明IOL移植群での尿中メラトニン分泌量はG1ではG3よりも有意に高かった(p=0.008)が、黄色IOL移植群ではG2はG4と比較して高かったが有意差はなかった(p=0.33)。
・透明IOLのG1と黄色IOLのG2との間には有意差はなかった(p=0.48)。
・白内障手術はメラトニン分泌を増加させるが、透明IOLと黄色IOLとの間の関連は不明確であった。
・参照:Chellappa SL et al.: Association of intraocular cataract lens replacement with circadian rhythms, congnitive function, and sleep in older adults. JAMA 137: 878, 2019(TY)

2020
138巻

同性愛者の角膜提供について

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (11号) 2020

Association of federal regulations in the United States and Canada with potential corneal donation by men who have sex with men.
Puente MA et al(LA USA)
JAMA Ophthalmol 138(11): 1143-1149, 2020
・米国連邦の方針として、過去5年間(カナダでは1年間)に同性愛関係のあった男性(MSM)の角膜提供を禁止している。
・角膜提供についてのこの潜在的な重要性について評価した。
・米国とカナダにある全65のアイバンクに電話で問い合わせ、このMSM制限の為に2018年(全使用角膜は138,621眼)に不適格とみなされた提供角膜数を調べた。
・その他、2019/5~2020/2に公表されたデータも含めた。
・54/65(83%)のアイバンクから回答が得られた。
・30のアイバンクはMSMの記録を保存しておらず、24のアイバンクでは2018年に360例720眼の角膜を不適格としていた。
・この24のアイバンクでは2018年の米国ならびにカナダにおける全提供角膜の46.2%を提供していたため、2018年には1558眼(全提供角膜の1.1%)の提供角膜が不適格となっていたと推測される。
・他のデータも含めると、2018年には3217眼(全提供角膜の2.3%)の提供角膜が不適格となっていたと考えられる。
・HIVの検査は数日で判明し、角膜が不足していることからもこのMSM制限は再評価されるべきであろう(TY)

2020
138巻

オキシメタゾリン点眼と眼瞼下垂症の視野との関連性

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (10号) 2020

Association of Oxymetazoline Hydrochloride, 0.1%, Solution Administration With Visual Field in Acquired Ptosis: 
A Pooled Analysis of 2 Randomized Clinical Trials. 
Slonim CB, Foster S, Jaros M, et al.
JAMA Ophthalmol. Published online October 01, 2020. doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.3812
【目的】
・後天性眼瞼下垂症におけるオキシメタゾリン塩酸塩点眼液の有効性と安全性を検討
【対象と方法】
・無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同第 3 相臨床試験、
・後天性眼瞼下垂症と上方視野欠損を有する 9 歳以上の参加者を対象
・オキシメタゾリン0.1%、または溶媒を2:1で無作為割り付け
・1日1回、42日間、自己投与
・視野変化はLeicester Peripheral Field Test(LPFT)にて、1日目(注射後6時間)と14日目(注射後2時間)の点数で評価
・MRD-1は同じ時間帯に測定
【結果】
・304人の参加者が登録、平均年齢63.8±13.8歳、女性222人(73%)
・オキシメタゾリン点眼群の97.5%(198/203人)、溶媒点眼群の97.0%(98/101人)が試験終了
・オキシメタゾリン点眼は、LPFTにおける平均点数の有意な増加と関連
1日目:5. 9 [6.4] vs 1.8 [4.1];平均差、4.07 [95% CI、2.74-5.39];P<0.001
14日目:7.1 [5.9] vs 2.4 [5.5];平均差、4.74 [95% CI、3.43-6.04];P<0.001
・オキシメタゾリン点眼はまた、ベースラインからのMRD1の有意な増加とも関連
1日目:0.96[0.89]mm vs. 0.50[0.81]mm;平均差、0.47mm [95%CI、0.27-0.67];P < 0.001
14日目:1.16[0.87]mm vs 0.50[0.80]mm;平均差、0.67mm [95%CI、0.46-0.88];P < 0.001
・有害事象は、
0.1%オキシメタゾリン点眼群の31.0%(63/203例)、
溶媒投与群の35.6%(36/101例)で発生【Tab2】
【結論】
・オキシメタゾリン0.1%は、第3相試験において、1日目と14日目において良好な忍容性を示し、後天性眼瞼下垂症の治療に有望であることを示した
・これらの臨床的関連性を6週間以上にわたって解明するためにはさらなる研究を要する。(MK)

2020
138巻

眼科検査器機表面からのコロナウイルス成分の検出

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (8号) 2020

Detection of Cornonavirus Disease 2019 Viral Material on Environmental Surfaces of an Ophthalmology Examination Room
Hasan Aytogan, et al(Turkey)
JAMA Ophthalmol.  Online ahead of print Aug 3,2020
COVID-19無症候の患者が外来診療を受けた際、検査・診察機器からウイルスが検出されることがありうるか調査。
29名の患者が眼科受診、7名はトリアージでCOVID-19の検査を受けるため診察室には入らず。22名の患者と9名の同伴者(小児と要介助の患者)、1名の医師が診察室に入った。
診察室の大きさ、LxWxH=6mx3mx2.5m
平均診察時間は9(5-13)分であった。
診察菓子日前の8:30と診察終了後の17:00の二回、スリットランプ、ブレスシールド、検眼器(Zone1),眼圧計(Zone2), デスク(Zone3、4)、ドアハンドル(Zone5)からスワブを用いちて検査
結果、各7検体のうち、診察終了後の7サンプル中、患者周囲1mのスリットランプシールドと検眼器があるZone1からの検体2サンプルでRT-PCRでウイルス成分が検出された。
ただし、感染性があるのかはわからない
PCR検査の限界、陽性率が30-60%と低いため、陰性であっても必ずしもウイルスがいないということにはならない(MM)

2020
138巻

近視性黄斑症:久山町スタディ

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (8号) 2020

Five-Year Incidence of Myopic Maculopathy in a General Japanese Population
The Hisayama Study
JAMA Ophthalmol. 138(8):887-893, 2020
5 年間の住民調査で近視性黄斑症の累積発症率は1%
年齢上昇によりリスク増加(40 歳代1として70 歳以上は5.34)
眼軸長25mm 未満0.4%、27mm 以上12%
Laquer cracks、近視性CNV、Fuchs スポットは未評価(THY)

2020
138巻

カフェイン・βブロッカーと硝子体手術パフォーマンスとの関係

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (8号) 2020

Association of Weight-Adjusted Caffeine and β-Blocker Use With Ophthalmology Fellow Performance During Simulated Vitreoretinal Microsurgery. 
Roizenblatt M, Dias Gomes Barrios Marin V, Grupenmacher AT, et al.(Brazil)
JAMA Ophthalmol. 2020;138(8):819–825. doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.1971
【目的】
・カフェインおよびβ遮断薬(プロプラノロール)の摂取量の体重調整カットオフを確立し、初心者の網膜硝子体の手術成績との相互作用を決定
【対象と方法】
・手術経験が2年未満の網膜硝子体外科医15名
・ドライラボ施設で2日間、毎日5回のシミュレーション
1日目、プラセボ、低用量カフェイン(2.5mg/kg)、高用量カフェイン(5.0mg/kg)、および高用量プロプラノロール(0.6mg/kg)に順次曝露した後、パフォーマンスを評価
2日目、プラセボ、低用量プロプラノロール(0.2mg/kg)、高用量プロプラノロール(0.6mg/kg)、および高用量カフェイン(5.0mg/kg)に順次暴露した後、パフォーマンスを評価
・Eyesi手術シミュレータを使用して、手術スコア(範囲:0 [最悪]~700 [最高])、タスク完了時間、眼内軌跡、および振戦率(範囲:0 [最悪]~100 [最高])を評価
【結果】
・網膜硝子体外科医15名中、9名(60%)が男性、平均年齢29.6±1.4歳、平均BMI 23.15±2.9であった
・低用量プロプラノロールと比較して、低用量カフェインは、総手術スコアの悪化(557.0 vs 617.0;差、-53.0;95%CI、-99.3~-6.7;P = 0.009)、振戦率スコアの低下(55.0 vs 75.0;差、-12.0;95%CI、-21.2~-2.8;P = 0.009)、眼内軌跡の長さ(2298.6対2080.7mm;差、179.3mm;95%CI、1.2~357.3mm;P=0.048)、タスク完了時間の増加(14.9分対12.7分;差、2.3分;95%CI、0.8~3.8分;P=0.048)と有意に関連していた
・カフェイン摂取後にプロプラノロールを服用した場合、パフォーマンスの改善と関連していたが、手術成績は低用量プロプラノロール単独の場合と比較して劣ったままであった
総手術スコア(570.0 vs 617.0;差、-51.0。 0;95%CI、-77.6~-24.4;P = 0.01)、振戦率スコア(50.0 vs 75.0;差、-16.0;95%CI、-31.8~-0.2;P = 0.03)、眼内軌跡の長さ(2265.9mm vs 2080.7mm;差、166.8mm;95%CI、64.1~269.6mm;P = 0.03)
【結論】
・初心者の網膜硝子体外科医のパフォーマンスは、低用量カフェイン単独投与後には悪化したが、低用量プロプラノロール単独投与後には改善したことを示唆している。
・プロプラノロール単独投与後の成績は、プロプラノロールとカフェインの併用投与後よりも良好であった。
これらの結果は、初心者の網膜硝子体外科医にとって、マイクロ手術のパフォーマンスを向上させるために役立つかもしれない。(MK)

2020
138巻

大きな全層MH術後うつ伏せについての検討

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (7号) 2020

Facedown Positioning Following Surgery for Large Full-Thickness Macular Hole A Multicenter Randomized Clinical Trial
Saruban Pasu, et al (England)
JAMA Ophthalmol 138(7): 725-730, 2020
イギリスで9つのサイトで行われた無作為ランダム化試験
少なくとも400μmのMHに対するVit+ILM off+C3F8(14%)注入
3か月毎フォローアップ 12か月未満の経過観察
ランダムに1日8時間下向きまたは前向きに5日間
主要評価項目:術後3か月のOCTで評価
副次評価項目:視力、ポジショニングの経験、生活の質
185名(平均69(64-73)歳)
閉鎖率:前向き群:77/90(85.6%)  下向き群:84/88(95.5%)  (P=0.08)
術後視力(logMAR)改善度合い:前向き群:0.34±0.69  下向き群:0.57±0.42  (P=0.01)
ポジショニングの容易さ(0-10):前向き群 9(7-10)、下向き群:6(4-8) (P<0.01)
NEI-VFQ-25スコア:前向き群 87(73-93)、下向き群:89(76-94) (P=0.41)
うつ伏せは円孔閉鎖という点ではあおむけ禁止の前向き群と有意差はないが、視力の改善という点では優れているようである(MM)

2020
138巻

COVID-19の状況下で緑内障外来受診予約を延期すべきかどうかの指標

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (7号) 2020

Application of the Sight Outcomes Research Collaborative Ophthalmology Data Repository of Training Patients With Glaucoma and Clinic Appointments During Pandemics Such as COVID-19
Nikhil K. Bommakanti, et al; SOURCE Consortium (USA)
JAMA Ophthalmol Online ahead of print. July 17, 2020
新型コロナウイルス感染症の罹患・蔓延を防ぐため外出自粛を含めたソーシャルディスタンスが推奨され、AAOは急を要する患者以外は外来診療を行わないように勧告したが、どの患者が急を要し、受診した方がメリットがあるのか、予約を延期した方がいいのか判断する必要が生じた。緑内障は不可逆性の疾患で適切に治療しなければ視野障害の進行リスクがあるが、多くの患者は高齢で基礎疾患もありCOVID-19による罹患率・死亡率も高い。外来受診は他の患者への感染、クリニックの医師やスタッフの感染リスクを増加させ、PPEの消費にもつながる。
そのため、実装が簡単で、多くの患者に対して判断でき、急速に変化していく状況の変化に対応できる柔軟性を持つスケール化できるアルゴリズムを考案した
2020.3.16-2020.4.16までにSight Outcomes Research Collaborative(SOURSE) Ophthalmology Electronic Health Record Data Repositoryに登録されている大学の緑内障外来予約が予定されている患者を対象。
緑内障の重症度と進行のリスクスコアと、COVID-19の罹患リスクスコアを計算するリスク層別化ツールを開発し、各患者の合計スコアを決定した。
<COVID-19>(COCID-19 morbidity risk score(CS)) プラスでスコア
電子カルテからCOVID-19の罹患率、死亡率が高いのは高齢者、妊婦、慢性内科疾患を持つもので、65-79歳と比較し、80歳以上は統計学的に重みづけ。妊婦及び最近出産した女性で母乳育児をしていた可能性がある人も高リスクとした。内科合併症はCharlson Comorbidity Index(CCI)を用いて定量化した。
<緑内障>(Glaucoma severity and progression risk score(GS)) マイナスでスコア
重症度が高いか、進行のハイリスクを持つために頻繁な経過観察が必要な患者を抽出するため、臨床的特徴を決定。
過去3か月以内の観血的緑内障手術、1年間に高眼圧(>30mmHg)もしくは低眼圧(<6mmHg)、高度な視野障害やLast Eye(片眼0.5以上、反対眼0.25以下)の患者、HFAでMDが-12dB以下
合計スコア(Total core(TS)) GSとCSの合計 プラスであれば予約延期の方向、マイナスであれば予定通り受診の方向
閾値を0,25,50に分けてどの程度の患者が予約延期となるか決定
<検証>
緑内障部門で3/16-5/5まで電子カルテをチェックして3つのカテゴリーに分類
Tier 1(urgent) 既存の予約を維持する必要がある患者、または制限が部分解除後3週間以内に予約
Tier 2(semiurgent) 予約は延期、キャンセルされたが、3か月以内に予約
Tier 3(延期またはキャンセル) 制限解除後3か月以上して予約をするもの
TSが臨床医のTier割り振りとどの程度一致しているか評価
結果
ミシガン大学Kellogg Eye Centerで治療を受けていた1034名の患者が対象 平均(SD)年齢66.7(14.6)歳、女性575名(55.6%)、733名(71%)が白人、160名(15.5%)が黒人、90名(8.8%)がアジア環太平洋地域の人種。
緑内障の重症度及び進行スコア(GS)の平均(SD)は4.0(14.4)ポイント(-50から20ポイント
COVID-19の罹患リスクスコア(CS) 27.2(16.1)ポイント(0から55ポイント)
トータルスコア31.2(21.4)ポイント(-50から75ポイント)
パンデミック中での閾値を0,25,50とすると、970名(93.8%)、668名(64.6%)、275名(26.6%)が延期及び再スケジュールに該当。パンデミックからの回復期での優先順位決定にも役立った
外来受診を控えることで生じる緑内障の進行リスクと、COVID-19暴露による罹患リスクを検討するツールとして役に立つ
<検証>
3/16-5/8までの緑内障予約患者3030人の電子カルテから、TSが0以上のうち80.2%がTier 2 or 3の制限解除後3か月以降でも安全にフォローできると判断。
TSが25以上の82.5%、50以上の86.1%がTier 2 or 3と判断
TSが0未満は72名おり、55名(76.4%)が予定通りの予約もしくは制限解除後3週間以内の予約が必要なTier1と判断された。
<ディスカッション>
このツールは感染状況の急速な変化に応じ速やかに対応、修正、拡張ができるようになっている。制限が解除後、ソーシャルディスタンスの維持、クリニックでの待ち時間の最小化、優先順位の高い患者を安全にケアできるようにする臨床効率の向上などに役に立つ。
TSだけ絵はなく、トリアージにはGS,CSも同様に有用であった
全面的に信頼するのではなく、移動距離など別の要素も考慮が必要
緑内障以外の眼科疾患の場合は、TSよりもCSに基づいた方が良いし、たのアルゴリズムを検討した方が良いかもしれない(MM)

2020
138巻

全色盲の遺伝子治療

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (6号) 2020

Safety and vision outcomes of subretinal gene therapy targeting cone photoreceptors in achromatopsia. A nonrandomized controlled trial.
Fischer MD et al(Germany)
JAMA Ophthalmol 138(6): 643-651, 2020
・CNGA3遺伝子が関連する全色盲の遺伝子治療について報告する。
・CNGA3(AAV8.CNGA3)をコードしたadeno-associated virus(AAV)を使用した。
・CNGA3を持った9名を対象にして、単一センターで網膜下に遺伝子治療vectorを注入し、安全性と効果を調査した。
・年齢は39.6±11.9歳(24-59歳)で、2015/11から2016/9に治療を開始し、12ヶ月の経過観察を行った。
・眼科的、全身的な副作用をチェックし、空間時間的分解能、色、輝度、コントラスト感度などをチェックした。
・9名全員で軽度の機能改善がみられた。(TY)

2020
324巻

小児近視に対する高加入度数コンタクトレンズの近視進行抑制効果

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 324巻 (6号) 2020

Effect of High Add Power, Medium Add Power, or Single-Vision Contact Lenses on Myopia Progression in ChildrenThe BLINK Randomized Clinical Trial

Walline JJ, Walker MK et al

JAMA 324(6):571-580., 2020

目的;高加入度(+2.50D)ソフト多焦点コンタクトレンズは、中加入度(+1.50D)または単焦点コンタクトレンズよりも、子供の近視の進行を遅らせることができるか検証した。

 

方法;-0.75 Dから-5.00Dの近視で、乱視が1.00 D未満の7〜11歳の合計294人のアメリカ人児童を対象とした。 高加入度(+2.5D)群(n = 98)、中加入度(+1.5D)群(n = 98)、単焦点群(n = 98)のいずれかに無作為に割り当て、3年後の近視の変化を比較した。麻痺下等価球面屈折度数を10回の自動屈折測定値の平均値で比較した。

結果: 3年間の近視の進行は、高加入度群では-0.60 D、中加入度群では-0.89 D、単焦点群では-1.05Dであった。

平均眼軸長伸展は、高加入度数群が0.42mm、中加入度数群が0.58mm、単焦点群は0.66mmであった。

結論:近視に対する高加入度多焦点コンタクトレンズによる治療は、中加入度多焦点および単焦点コンタクトレンズ装用と比較して、3年間で近視の進行率を大幅に低下させた。(HK)

2020
138巻

手術時の手洗い Waterless法のコストと効果

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (4号) 2020

Association Between Elimination Water From Surgical Hand Antisepsis at a Large Ophthalmic Surgical Hospital and Cost
Matthew J. Javitt et al (USA)
JAMA Ophthalmol 138(4): 382-386, 2020
・手術前に石けんを使用し水で洗い流す従来型の手洗い方法と、アルコールベースのWaterless法のコストと節約できる時間を比較
・WHOの推奨するモデルでそれぞれ比較
・従来法(5ないし6分):1回あたり2分間液体消毒薬で洗い、片腕1分合計2分間水を流す(15.9L)
・1回の手術あたり平均3回手洗いをするため、47.7Lの水を使用
・ディスペンサーを用いた手洗いとクロルヘキシジン含有ブラシを用いた手洗い
・それに伴う液体消毒薬、ブラシ、クロルヘキシジン含有ブラシ、ネイルピック等のコストも検討
・Waterless法(40-70秒):通常の液体石けんで手洗いした後に、アルコールベース消毒薬をすり込む 
・1回の刷り込みあたり6ml使用。液体石けんは14ml使用がメーカー推奨
・スタッフ一人あたりの年間コスト
・従来法 
・ディスペンサー 9190ドル((消毒薬0.330$+水0.071$+ブラシとネイルピック)/回)
・消毒含有ブラシ6470ドル((ブラシのコスト0.43$+水0.071$)/回)
・Waterless法 4650ドル(消毒薬 0.36ドル/回)
・USでの1分あたりの人件費 $37-62
・ウォーターレス法のほうが、従来の手洗い方法よりも年間コスト、消費時間が少なかった。
・環境保護の観点からもWaterless法が優れている。(MM)

2020
138巻

黄斑部を含むRDのVitでうつ伏せが良いか、裂孔部位をサポートする姿勢が良いか

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (4号) 2020

Effect of Face-Down Positioning vs Support-the-Break Positioning After Macula-Involving Retinal Detachment Repair
The PostRD Randomized Clinical Trial
Edward J. Casswell, et al(UK)
JAMA Ophthalmol Online ahead of print, Apr 16 2020
2016/5/16-2018/5/1まで多施設の3次紹介病院で黄斑部の剥離を含むRDに対して14日以内にVit+gasタンポナーデを行った18歳以上の患者 239名(60.8±9.8歳)
シングルマスク無作為前向き試験
再剥離になったものは除外
ランダムに1:1にうつ伏せ(FD)と裂孔部位をサポートする体制(SB)を24時間とらせた。
コンプライアンスはモニターしていない
眼底自発傾向にて2,6か月の変位を比較
変位の程度:黄斑部周囲のずれのある象限、平均ずれ幅(垂直距離)、
客観的な歪みスコア、生活の質を評価

<結果>
Primary Outcome
術後6Mでの網膜のずれ:FD群 42/100(42%) SB群58/103(56%) P=0.04 OR=1.77
Secondary Outcome
8W(2M)での変位の程度はFD群でより少なかった OR=1.94
2M: FD群 0.5度 SB群0.8度 6M:  FD群 0.3度 SB群0.9度
矯正視力、ゆがみの程度、QOLは2,6Mで同程度であった。
偏位の振幅がゆがみの程度と6ヶ月後の矯正視力低下に関連していた P<0.001
網膜の皺はFD群5.3%、SB群13.5%でFD群で少なかった P=0.03 OR=2.8
自覚的な両眼複視 FD群1.5% SB群7.6% P=0.03 OR=5.3
25mmHg以上の眼圧上昇はFD群で多かった 30.5% vs 17.6% P=0.02 OR=0.5
網膜剥離術後はうつ伏せが良い結果であった。(MM)

2020
138巻

女性の視覚障害と認知症発症リスク

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻 (4号) 2020

Association of Visual Impairment With Risk of Incident Dementia in a Women’s Health Initiative Population
Elaine M. Tran et al (USA)
JAMA Ophthalmol Online ahead of print, Apr 16 2020
Women’s Health Initiative (WHI)に付属するスタディとして、認知症と視機能障害の関係を調査
WHIの視力検査(2000-2002年)と記憶検査(1996-1998)に登録されている66-84歳の女性
1061人(平均(SD)73.8(3.7)歳) 
206人(19.4%)自己申告で視覚障害あり、183名(17.2%)客観的な視覚障害(20/40以下)
42名(4%) 認知症の疑い、 28名(2.6%) 認知症までは進んでいないMCI(認知機能低下)
検査後のフォローアップは3.8(1.8)[0-7]年
結果
ベースラインで客観的な視機能障害がある人の方が認知症発症の可能性が高かった。
認知症のリスク因子は、ベースラインの視力が20/100以下(HR 5.66)、20/80以下(HR5.2)、20/40(HR2.14)であった。MCIについても同様で、20/100以下でリスクが最大であった(HR6.43)
自己申告の視覚障害とは関係が無かった。聴覚障害が視覚障害と重なると認知症リスクは高かった。
メカニズムの特定は困難だが仮説として、認知機能と視覚機能の低下は中枢神経系の変性であるという考え、視覚刺激の低下が神経刺激の低下をもたらすという考え、視覚機能の低下は活動を行う際に認知機能に過剰な負荷をかけて悪化させるという考えがあるが、その関係性は双方向多元的なものである。
この研究で、視覚障害が認知機能障害の発症に先行していることから、中枢神経系の変性の初期症状として視力低下をきたしている、視機能低下が認知負荷の増加を通じて機能低下に寄与していると考えられる。
視力改善が可能な介入(白内障手術など)は認知機能障害の軌道修正に役立つかもしれない。(MM)

2019
137巻

ダークチョコレートと視機能との関連についての再調査

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 137巻 (12号) 2019

Effects of flavanol-rich dark chocolate on visual function and retinal perfusion measured with optical coherence tomography angiography. A randomized clinical trial.
Siedlecki J et al(Germany)
JAMA Ophthalmol 137(12): 1373-1379, 2019
・血管拡張作用のあるダークチョコレートに含まれるflavanolは視機能に良い影響があるとされているが、この点についてOCTAを用いて調査した。
・400mgのflavanolを含んだ20gのダークチョコレート、あるいは7.5gのミルクチョコレートを摂取した2時間後に視機能とOCTAでの黄斑部の血管密度を指標とした網膜灌流を検査した。
・視機能は自覚的な検査で、ETDRS視力、Pelli-Robson chart、Mars chart contrast sensitivityである。
・22名を被験者(27.3±11.1歳)とした。チョコ摂取前後のOCTAの血管密度は表叢では48.0%:47.5%で、ダークチョコの効果は-0.59(95%CI=-2.68~1.50 p=0.56)、深叢では54.1%:54.0%で、効果は-1.14(95%CI=-4.0~1.73 p=0.42)であり、自覚的な視機能でも効果はなかった。
・Rabin JC et al.JAMA Ophthalmol 136(6):678,2018参照
ーーーーーlogMARでの視力測定とlogCS最小コントラスト認知はブラックチョコレート群で良かった(TY)

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