Evaluation of a new device to treat negative dysphotopsia.
Roop P et al(India)
J Cataract Refract Surg 50(2): 122-127, 2024
・Negative dysphotopsia(ND)の治療と予防のためのNDリングの効果について22名で検討した。
・22名の内、15名はND治療のために使用し、7名はNDのある他眼に予防的にIOL手術中に挿入し、いずれも1年間以上の経過をみた。
・治療群では14/15(93.3%)で術1日目にNDは完全に消失し、1/15では薄い影が持続した。
・予防群7例では1例もNDは発生しなかった。(TY)
Intracameral phenylephrine for surgical mydriasis and intraoperative floppy-iris syndrome: systematic adverse effects and optimal dose.
Chua MJ et al(UK)
J Cataract Refract Surg 50(2): 187-194, 2024
・前房内へのフェニレフリン注入は虹彩拡張筋を緊張させて散瞳を促す
・フェニレフリン点眼は鼻涙管あるいは結膜静脈から全身に吸収され、主に心血管系の重篤な全身副作用があるが、前房内注入後の同様の副作用はほとんど報告がない。
・前房内投与のフェニレフリンは虹彩の静脈経由で体内に取り込まれるが、全房水のturnover rateが限られているため、点眼での投与よりも全身への取り込み量は少ないと考えられる。
・また、点眼薬での投与では前房水に入り、虹彩拡張筋に作用するためには、前房内投与よりも投与量が多くなってしまう
・前房内注入として、通常は1%から2.5%が使用されているが、10%を使用する術者もいる。
・最適な濃度を確認するため、MEDLINE、PubMed、EMBASEに2023年3月までに英文で掲載された論文をチェックした。
・329論文が検出され、その中から適切な16論文を確認した。
・副作用の発現は、前房内投与で4.8%、点眼で6%、あるいは、前房内投与で6%、点眼で11.2%という論文もある
・投与後の血漿内濃度測定では、0.31%の前房内投与では2例/15(14.3%)が検出可能であったが、10%点眼を3回投与群では15例/15(100%)で検出可能であった。
・0.008%のOmidria前房内投与の1087例で、1例の心筋梗塞と1例の脱水例があったが、プラセボー群では1例の呼吸停止と1例の心外膜液貯留が見られた。
・IFISの制御には2.5%以上の濃度は少なくとも不要で、1%から1.25%の方が望ましいと考えた。(TY)
Relationship between anterior capsule opening and direction of intraocular lens decentration
Mayumi Nagata, et al. (獨協医大)
J Cataract Refract Surg 2023(9); 49:917–920
・目的:連続円形前嚢切開(CCC)が眼内レンズ光学部周囲を完全に覆っている患者と、不完全に覆っている患者の眼内レンズ偏位を比較し、不完全に覆っているCCCが眼内レンズの位置にどのような影響を与えるかを検討した。
・方法:2010年4月から2015年4月までに超音波乳化吸引術と眼内レンズ(Alcon社SN60WF)挿入術を受けた患者57例57眼(平均年齢70.8±6.2歳)を対象とした。患者は、前眼部解析システム(EAS-1000)を用いて、CCCが眼内レンズ光学部周囲を完全に覆っているか(CC群)、不完全に覆っているか(NCC群)に分類された。
・各群の眼内レンズの偏位は、EAS-1000を使用して、術後1週間、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月を比較した。術後3ヵ月におけるNCCの位置と眼内レンズの方向との関係を解析した。
・結果:術後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の時点で、NCC群(25眼)はCC群(32眼)よりも眼内レンズの偏位量が有意に大きかった(P < 0.05)。
・CC群では、眼内レンズは0.15±0.08mm(1週間)、0.16±0.18mm(1ヶ月)、0.17±0.10mm(3ヶ月)、0.16±0.08mm(6ヶ月)偏芯したのに対し、NCC群は0.27±0.21mm(1週間)、0.28±0.21mm(1ヵ月)、0.31±0.29mm(3ヵ月)、0.28±0.17mm(6ヵ月)であった。
・NCC群の眼内レンズ偏位は、1週間後(P = 0.007)、1ヵ月後(P = 0.006)、3ヵ月後(P = 0.03)、6ヵ月後(P = 0.01)。
・眼内レンズの偏位の方向とNCCの位置には相関があり、NCC群の眼内レンズの偏位はNCC領域と反対方向に生じていた。
・結論: プレミアム眼内レンズやトーリック眼内レンズなど、眼内レンズが嚢内で適切にセンタリングされることを必要とする特殊な眼内レンズが開発されている。
・眼内レンズの偏位は前嚢と後嚢の癒着がジッパーのように嚢の周辺部から中心部に向かって徐々に進行し、NCC領域とは反対方向に眼内レンズの偏位が生じたと考えられる。
・眼内レンズの偏位をコントロールするためには、眼内レンズ光学部周囲を完全に覆う前嚢切開が重要である。(CH)
Lens thickness in atopic cataract: case–control study
Masanobu Iida, et al. (東京慈恵医科大学)
J Cataract Refract Surg 2023(8); 49:853–857
・目的:アトピー性白内障の眼が対照群に比べて水晶体が薄いかどうか、またアトピー性皮膚炎が水晶体厚(LT)の変化と関連しているかどうかを調べる。
・対象と方法:アトピー性白内障31眼(26人)、非アトピー性白内障62眼(56人)、白内障を伴わない正常水晶体31眼(30人)を対象とした。
・結果:患者108人(124眼)、女性21人(19.44%)、男性87人(80.55%)平均年齢は43.35±9.25歳。
・前嚢下白内障(ASC)は、非アトピー性白内障62眼中24眼(38.7%)、アトピー性白内障31眼中24眼(77.4%)で認めた。
・平均LTは、アトピー性白内障、非アトピー性白内障、正常水晶体でそれぞれ3.76±0.40mm、3.94±0.49mm、4.11±0.40mmであった。
・アトピー性白内障の水晶体は、非アトピー性白内障の水晶体(P = 0.036)および正常水晶体(P < 0.001)よりも有意に薄かった。
・非アトピー性白内障と正常水晶体の間には有意差はなかった。LTの薄さは年齢と負の相関があり(オッズ比[OR]、0.91;95%CI、0.86-0.96)、ASCと正の相関があった(OR、5.61;95%CI、1.97-15.99)。
・アトピー性皮膚炎は有意な因子ではなかった。
・結論:アトピー性白内障の水晶体は、非アトピー性白内障や正常水晶体よりも有意に薄かった。ASCが水晶体の薄さの有意な因子であることが明らかになったが、アトピー性皮膚炎は有意な因子ではなかった。
・過去の報告で、アトピー性白内障の病態に好酸球顆粒蛋白(MBP)の関与が指摘されている。MBPは好酸球由来の毒性蛋白で強い細胞傷害性を示す。
・MBPはアトピー性白内障の前嚢組織と房水に検出されているが、加齢性白内障には検出されていない。
・そのためMBPは血液から前房に流入し、水晶体上皮細胞を傷害し、水晶体繊維の成長を停止させるか、あるいは水晶体から房水へのタンパク漏出を引き起こし、その結果、水晶体が薄くなると考えられる。(CH)
Association of clear vs blue-light filtering intraocular lenses with mental and behavioral disorders and diseases of the nervous system among patients receiving bilateral cataract surgery.
Karesvuo M et al(Finland)
J Cataract Refract Surg 49(7): 679-685, 2023
・両眼に透明(non blue light filtering:non BLF)IOLを挿入した2609例と、BLF IOLを挿入した2377例の患者の計4986例(男1707、女3279)で、精神的障害や神経系疾患の発症について検討した。
・2007/9~2018/12で手術を行ない、2021/12まで経過を追った症例である。
・1眼の手術前あるいは2眼目の手術の前の状態を基準とし、両眼手術後の新規に発症した精神的あるいは行動異常、神経系疾患についてICD-10コードで検討した。
・年齢は初回手術時は73.2±8.6歳、2眼眼の手術時は74.3±8.8歳である。
・単相関log-rankテスト(2群の生存曲線に差があるか検定)では、疾患の発症については有意差はなく、睡眠障害(code G47)だけがBLF IOLで有利だったが(p=0.003)、年齢や性で調整した多相関Cox回帰分析では睡眠障害(code G47)にはBLF IOLがnon-BLF IOLよりも有利という結果はでなかった(睡眠障害 HR=0.756 95%CI=0.534-1.070 p=0.114)。(TY)
Effects of cataract surgery on blinking.
Talens-Estarelles C et al(Spain)
J Cataract Refract Surg 49(2): 177-183, 2023
・自発的な瞬目パターンと動態に対する角膜切開での白内障手術の影響を50名で検討した。
・超音波白内障手術前(V1)、手術1ヶ月後(V2)、3か月後(V3)に瞬目を視線追跡装置で90秒間測定した。
・瞬目比率、完全と不完全瞬目数、不完全瞬目の比率、瞬目パラメータとして大きさや時間、スピードについても検討した。
・瞬目比率はV3ではV1やV2に比較して有意に小さかった(p=0.03, p=0.001)。
・V3ではV1に比較すると、完全瞬目の数は有意に少なく(p=0.02)、不完全瞬目の比率は有意に高かったが(p=0.01)、V2とは有意差がなかった(P>0.05)。
・瞬目パラメータには有意差はみられなかった(p=0.12)。
・白内障手術時に角膜周辺部で放射状の実質内神経を切断すると、切開創から離れた部位でも角膜感度が低下し、術後、最低3か月は持続する。
・角膜感度と瞬目頻度は有意に関連しており、角膜神経支配が障害されると、保護的な瞬目反射が障害され、角膜乾燥のリスクが増す。
・瞬目の障害は、涙液排出にも影響し、涙液クリアランスが下がることにより結膜嚢に起炎物質が蓄積する可能性もある。
・眼表面の状況を検討する場合に、術後の瞬目についても考慮すべきである(TY)
Visual disturbances produced after the implantation of 3 EDOF intraocular lenses vs 1 monofocal intraocular lens.
Guarro M et al(Spain)
J Cataract Refract Surg 48(12): 1354-1359, 2022
・3種の焦点深度拡張型EDOF IOLと単焦点IOL移植後3か月後の見にくさをdoble blindで調査した。
・AcrySof IQ Vivity群(2020開発)、AT Lara 829MO群、TECNIS Symfony ZXR00群と単焦点IOL群(AcrySof IQ SN60WF)をそれぞれ22例について調査した。
・調査項目は光弯曲指数light distortion index(LDI)、最適円の半径(BFC)、自覚症状質問票(QoV)である。
・LDIは1個のLEDで発生するハローで消える点の比率、BFCは各経線上で求められた歪みの位置にあてはめた円の半径、QoVは変視症についての10項目のMcAlinden testであるが、そのうちの関係する項目を選択して行った。
・単眼での調査ではLDIとBFCには各群間で有意差はみられなかった。
・両眼視ではLDIとBFCの両検査で、単焦点群の方がSymfony群(p=0.025 p=0.024)、AT Lara群(p=0.002, p=0.002)よりも良かった。
・Vivity群は両検査とも、Symfony群(p=0.015 p=0.014)、At Lara群(p=0.001 p=0.001)よりも良かった。
・ハローが報告されなかったのはVivity群では81.8%(18例)、単焦点群では90.9%(20例)、AT Lara群では50%(11例)、Symfony群では59%(13例)であった。
・回折型EDOF IOLは、非回折型EDOF IOL(Vivity)や単焦点IOLよりも見にくさが強かった。
・Vivity IOLは、Xwaveテクノロジーを使用しており、光の損失がないため眼疾患者でも使用できる。
・Vivity IOLは、1.5D程度までの加算となるが、日本では未承認(TY)
Immediate sequential bilateral cataract surgery: time for wider adoption.
Srinivasan S(Scotland)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1231-1232, 2022
・WHOは2025年には世界の白内障による失明者は高齢者が増えることにより、4000万人を越えると推定している。
・白内障の両眼同時手術 immediately sequential bilateral cataract surgery(ISBCS)と日をおいて両眼の手術を行なう delayed sequential bilateral cataract suregery(SSBCS)。
・ISBCSは最初に1952年に報告され、Finlandでは1996年からはISBCSは常識的になってきており、2008年にはInternational Society of Bilatara Cataract Surgeons(iSBCS)が設立された。
・COVIDの流行がこのISBCSを後押ししている(TY)
Advantageous effect of pupil dilatation on the quality of optical biometry axial length measurement in individuals with dense cataract.
Bettacj E et al(Israel)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1248-1252, 2022
・白内障が強く、前房深度測定が不安定な場合の散瞳検査の有用性について検討した。
・2076名の内、177名(8.52%)では白内障が強く、散瞳前のSS-OCTでは前房深度測定が不安定であった。
・177名の内79名(44.63%, 72.53±13.27才)は散瞳後にSS-OCT再検査を行い、60/79名(75.95%)では前房深度が十分に測れ、散瞳前検査と比較すると0.03±0.07mm短くなっていた(TY)
Comparison of 3-month visual outcomes of a new multifocal intraocular lens vs a trifocal intraocular lens.
Dick HB et al(Germany)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1270-1276, 2022
・TECNIS Synergy多焦点IOL(ZFR00V)群95例とAcrySof PanOptix3焦点IOLを両眼に移植した群52例とで、3か月後の視機能を比較した。
・視機能としては、両眼の遠見矯正時の近見視力(DCNVA)40cmと、33cmでのDCNVA、低コントラストでの明所視と薄明視での遠見矯正視力(CDVA)、見え方の質問票である。
・ZFR00V群とPanOptix群の両眼視で20/25以上者は、CDVAでは100%:96.2%、40cmでのDCNVAでは88.4%:75.0%、33cmでのDCNVAでは78.9%:51.9%であり、ZFR00V群の方がPanOptix群よりも良い結果が得られた(TY)
Ophthalmologists’ attitudes toward immediate sequential bilateral cataract surgery: Dutch national survey.
Spekreijse LS et al(Netherlands)
J Cataract Refract Surg 48(9): 1044-1049, 2022
・白内障同時手術(Immediate Sequential Bilateral Cataract Surgey:ISBCS)について、現在のオランダの実情と意見を調査した。
・520医師に調査票を送り237医師(45.6%)から回答を得た。
・有効票227例のうち、62眼科医(27.3%)は現在、ISBCSを行なっていた。
・但し、IABCSを行なっていた眼科医の90.3%は月の手術数が1-5例の眼科医である。
・また、108例(47.6%)の眼科医は将来、IABCSは普通の手術になると回答していた。
・ISBCSを行なっていない理由は術後眼内炎とか、術後屈折誤差とか法的な観点からの反対であった。(TY)
IOL power calculations after LASIK or PRK: Barrett True-K biometer-only calculation strategy yields equivalent outcomes as a multiple formula approach.
Ferguson TJ et al(OH USA)
J Cataract Refract Surg 48(7): 784-789, 2022
・以前に近視あるいは遠視の屈折矯正手術をうけた人の眼内レンズ度数計算のBarrett True-Kの精度を調査した。
・96眼の近視矯正手術眼と47例の遠視矯正手術眼について調査した。
・結果は、近視矯正眼ではBarrett True-Kが平均絶対誤差(MAE)が最低(0.36D)であり、その次にHaigis-Lが続いた(0.41D)。
・誤差が±0.25D以内の精度についてもBarrett True-Kが44.8%と最高であり、Haigis-Lは34.4%であった。
・遠視矯正眼でもBarrett True-KのMAEが最低(0.41D)であり、その次にASCRS-meanが続いた(0.46D)。
・誤差が±0.25D以内の精度についてもBarrett True-Kが42.6%と最高であり、ASCRS-meanが続いた(38.3%)。
・測定器具に導入されているBarrett True-Kは使いやすいと考えた。(TY)
Comparison of a preservative-free nonsteroidal anti-inflammatory drug and preservative-free corticosteroid after uneventful cataract surgery: multicenter, randomized, evaluator-blinded clinical trial
Seonjoo Kim, et al. (Korea)
J Cataract Refract Surg. 2022 Jun; 48(6): 710–716.
・目的: 白内障手術後の炎症管理における非ステロイド性点眼薬 (NSAIDs) とステロイド点眼薬の有効性を比較する。
・対象と方法:白内障手術患者 (グレード 3 ~4)125 人250 眼(平均年齢70.10±8.45歳)に対し、手術後に片眼にはブロムフェナクナトリウム0.1%点眼剤(NSAIDs群)を 1 日 2 回、もう片眼にはフルオロメトロン 0.1%点眼剤(ステロイド群)を 1 日 4 回点眼した。術後 1 週間での前房細胞およびフレア、術後4~8 週の前房炎症細胞とフレア、矯正遠見視力、角膜中心厚、結膜充血、ドライアイのパラメーター、網膜中心窩厚、眼と視覚の不快感が評価された。
・結果:1 週目での残留前房炎症は、グループ間で統計的に有意な差はなかった(NSAIDs群;-1.03 ± 1.27 対 ステロイド群;-0.95 ± 1.24、P = .4850)。
・しかし、NSAIDs群はステロイド群よりも早く結膜充血から回復した(0.30 ± 0.52 vs 0.44 ± 0.81、1週目でP = .0144)。
・NSAIDs群の角膜中心厚の増加は、術後 1 週間でステロイド群よりも少なかった (7.87 ± 22.46 対 29.47 ± 46.60 μm、P < .0001)。
・NSAIDs群における網膜中心窩厚の増加は、ステロイド群よりも有意に小さかった(18.11 ± 68.19 vs 22.25 ± 42.37 μm、P = .0002)。
・治療中、ステロイド群よりもNSAIDs群で、術後の眼および視覚の不快感のレベルが低いことがわかった。
・角膜染色、TBUT、遠見矯正視力、および後嚢混濁の発生率に関して、両群間に有意差はなかった。
・疼痛の発生率は、ステロイド群に比べて NSAIDs群で有意に少なかった (26.26% [26 眼] vs 35.35% [35 眼]。P = .0290)。投与期間中の薬物コンプライアンスは、ステロイド群よりも NSAIDs群の方が高かった (96.93 ± 11.23% vs 96.30 ± 11.34%; P < .0001)。
・副作用は、1人の患者の両眼ドライアイの悪化 (0.80%) が認められた。
・CMEはステロイド群で1例 (0.80%)認められた。
・結論:ブロムフェナク 0.1% 点眼剤は、フルオロメトロン 0.1% 点眼剤と同等レベルの抗炎症作用を有するが、白内障手術後の角結膜のさまざまな徴候や症状の改善に優れた効果があり、コンプライアンスも優れている簡単な白内障手術後の炎症治療である。(CH)
Effect of Nd:YAG laser capsulotomy on the risk for retinal detachment after cataract surgery: systematic review and meta-analysis.
Liu H et al(China)
J Cataract Refract Surg 48(2): 238-244, 2022
・Nd:YAGレーザーが偽水晶体眼網膜剥離RDの発症に影響するかどうかを、PubMedとEmbaseデータベースを基に検討した。
・65,117眼の白内障手術後の309例の網膜剥離例についての11論文を解析した。
・このうち、Nd:YAGレーザー施行例は8,232眼である。
・解析では、Nd:YAGレーザー施行例ではRDの発症率は増加。
・Rerative risk(RR)=1.57 95%CI=1.17-2.12 p=0.003。Hazard ratio=1.64 95%CI=1.03-2.62 p=0.04であった。
・地域別の解析では、アジア人では強い関連があり、RR=4.54 95%CI=2.20-9.38 p<0.001であったのに対し、米国人ではp=0.12、欧米人などではp=0.21で、相関がなかった。
・手法の解析では、囊外摘出ではRR=2.97 95%CI=1.83-4.83 p<0.001であったのに対し、PEAではp=0.95と、相関がみられなかった。(TY)
Antibiotic prophylaxis of postoperative endophthalmitis after cataract surgery: results of the 2021 ASCRS member survey.
Chang DF et al(CA USA)
J Cataract Refract Surg 48(1): 3-7, 2022
・2021年2月に5052名のASCRSメンバーにアンケート調査を行ない、1205名の白内障術者から回答を得た。
・米国からが76%である。
・前房内へ予防的抗生剤投与は、2007年は30%、2014年は50%であったが、今回は66%で行なっており、投与経路は、灌流液内への抗生剤投与が5%、前房内注入が95%であった。
・バンコマイシンは米国では2014年は52%であったが、今回は6%に減っていた。
・モキシフロキサシンは2014年は31%であったが、今回は83%であった。
・抗生剤点眼薬の術前投与は85%から73%に減り、術後投与は97%から86%に減っていた。(TY)
Effect of age and cycloplegia on the morphology of the human crystalline lens: swept-source OCT study.
Li Z et al(China)
J Cataract Refract Surg 48(1): 8-15, 2022
・SS-OCTを使用して水晶体の形状に対する年齢あるいは毛様体麻痺剤の効果を18歳から86歳の76名において検討した。
・水晶体前面曲率半径ALRと前房深度ACDは年齢と負の相関があり(p<0.02)、水晶体厚LT、強膜岬面からの水晶体膨隆度LV、水晶体赤道部直径LEDは年齢と正の相関があった(p<0.04)。
・60歳以下の人では毛様体麻痺剤によって、水晶体前面曲率ALRと前房深度ACDは有意に増加し、水晶体膨隆度LVと水晶体厚LTは有意に減少した(いずれもp<0.001)。(TY)
J Cataract Refract Surg 48(1): 177-184, 2022
Culp C et al(UT USA)
Clinical and histopathological findings in the dead bag syndrome.
・Dead Bag Syndromeについて症例を報告する。
・Dead Bag Syndromeとは、Masket Sが名付けた症候群で、術後何年にも渡って嚢が透明でひらひらしており、嚢内にIOLをしっかりと保持できない形でIOLが脱臼いているものをいう。
・10例のDBSのなかで、IOL偏位が見られた8例のIOLを摘出し、そのうち7例では嚢も摘出し光顕で調査した。
・嚢は薄く、分離しているものもあり、2例では水晶体上皮細胞(LECs)は完全に消失していたが、5例ではLECsは嚢の内側に僅かに残っていた。
・摘出したIOLは3-piece silicone IOLとsingle-pieceの疎水性アクリルIOLである。
・IOLの1例では少量の色素沈着がみられたが、他の4例のIOLでは特に変化はなかった。
・原因は2次的なLECsの増殖がなく、線維化もないことによると思われた。
・チン氏帯の嚢への接着も弱かった。(TY)
Selective transepithelial ablation with simultaneous accelerated corneal crosslinking for corneal regularization of keratoconus: STARE-X protocol.
Rechichi M et al(Italy)
J Cataract Refract Surg 47(11): 1403-1410, 2021
・中心あるいは傍中心部の円錐角膜に対して、Selective transepithelial topography-guided photorefractive keratectomy combined with accelerated corneal crosslinking (STARE-X)を行った時の角膜屈折度の変化や角膜収差について検討した。
・角膜実質の平均除去厚は45.4±12.6μで角膜屈折矯正手術を行った後に角膜クロスリンキングを行った。
・円錐角膜の突出部が中心3mm以内にあるGroup1の50眼と、傍中心部にあるGroup2の50眼について、STARE-Xを行った2年後の成績について検討した。
・両群ともUDVA、CDVAは上昇し、角膜形状も有意に改善しており、高次収差も改善していた(いずれも p<0.001)。
・ただ、CDVAの改善はGp1の方がGp2よりも有意に改善していた(p<0.02)。(TY)
New treatment algorithm for keratoconus and cataract: small-aperture IOL insertion with sequential topography-guided photorefractive keratectomy and simultaneous accelerated corneal crosslinking.
Northey LC et al(Australia)
J Cataract Refract Surg 47(11): 1411-1416, 2021
・円錐角膜と白内障のある4眼について、小さな円形窓のあるIOL(IC-8 IOL AcuFocus製)を角膜切開での白内障手術後に挿入し、同時にtopography-photorefractive keratectomy(T-PRK)と角膜クロスリンキングCXLを行った。
・IC-8の中心の円形窓は1.36mmで、円錐角膜、角膜移植後、RK眼や角膜瘢痕などによる角膜不整のある人に対して、ピンホール効果を狙って作製されたものである。(TY)
Corneal hysteresis and beyond: Does it involve the sclera?
Roberts CJ et al(OH USA)
J Cat Refract Surg 47(4): 427-429, 2021
・角膜のヒステリシス(Hysteresis:CH)を測定するOcular Response Analyzer(ORA)は新しい生体力学の手段を提供した。
・良く誤解されるが、CHは剛性とか弾性係数とかとは違うものであるし、変形に対する弾性抵抗を示すものでもない。
・CH値が低いのは円錐角膜などの柔軟な角膜であったり、加齢とか高眼圧の時の硬い角膜であったりする。
・IOPとの逆相関は良く知られており、IOP上昇に伴いCHは低下する
・例えば、高眼圧の硬い眼は散逸エネルギーが少なく、その結果、CHが低くなる
・粘着性と弾性の反応はいずれもCHに影響し、これらの比率が異なっていても、同じCHになりうる。
・例えば、円錐角膜に対するクロスリンキングCXLを行った1年後にもCHは変わらない。
・CXL後には、圧迫する圧は上昇しているが、CHの定義となっている第1、第2の圧の差(P1-P2)は変わらない。
・例えば、LASIK術後に片眼のみectasiaを発症した症例の両眼の測定のピーク値は全く違うが、CH値は同じであることも知られている。
・CH値が低いことは緑内障性の障害が強く、緑内障進行の予測因子であるとの報告が多いが、どうして角膜の生体力学的なパラメータが視神経の障害と関連するのかがまだ不明瞭である。
・角膜の生体力学的な反応が後部眼球の生体力学的な反応を示している可能性があり、最近、角膜の反応に強膜が影響していることが分かってきた。
・例えば、強膜バックルを行った眼では僚眼よりも強膜が硬くなっており、両眼間には眼圧の差はないが、バックル眼ではCH値が有意に低くなっているが報告されている。
・これは、硬い強膜は押されたときの凹形から、通常の凸形への戻りが早いからである。
・硬い強膜は、角膜が凹になった時の液の移動に反応しにくいため、角膜が大きく変形しにくいと考えられるが、これが角膜が硬いために変形しなかったと誤解されている可能性がある。
・反対に、強膜が柔らかいと大きく変形するため、角膜の変形も大きく、角膜が柔らかいと誤解されやすい。
・つまり、強膜の状態が、CHと緑内障性の視神経障害の両者に係っていると考えられる。(TY)