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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2023
49巻

前嚢切開と眼内レンズ偏位の方向との関係

Journal of Cataract & Refractive Surgery 49巻(9号)2023

Relationship between anterior capsule opening and direction of intraocular lens decentration
Mayumi Nagata, et al. (獨協医大)
J Cataract Refract Surg 2023(9); 49:917–920
・目的:連続円形前嚢切開(CCC)が眼内レンズ光学部周囲を完全に覆っている患者と、不完全に覆っている患者の眼内レンズ偏位を比較し、不完全に覆っているCCCが眼内レンズの位置にどのような影響を与えるかを検討した。
・方法:2010年4月から2015年4月までに超音波乳化吸引術と眼内レンズ(Alcon社SN60WF)挿入術を受けた患者57例57眼(平均年齢70.8±6.2歳)を対象とした。患者は、前眼部解析システム(EAS-1000)を用いて、CCCが眼内レンズ光学部周囲を完全に覆っているか(CC群)、不完全に覆っているか(NCC群)に分類された。
・各群の眼内レンズの偏位は、EAS-1000を使用して、術後1週間、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月を比較した。術後3ヵ月におけるNCCの位置と眼内レンズの方向との関係を解析した。
・結果:術後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の時点で、NCC群(25眼)はCC群(32眼)よりも眼内レンズの偏位量が有意に大きかった(P < 0.05)。
・CC群では、眼内レンズは0.15±0.08mm(1週間)、0.16±0.18mm(1ヶ月)、0.17±0.10mm(3ヶ月)、0.16±0.08mm(6ヶ月)偏芯したのに対し、NCC群は0.27±0.21mm(1週間)、0.28±0.21mm(1ヵ月)、0.31±0.29mm(3ヵ月)、0.28±0.17mm(6ヵ月)であった。
・NCC群の眼内レンズ偏位は、1週間後(P = 0.007)、1ヵ月後(P = 0.006)、3ヵ月後(P = 0.03)、6ヵ月後(P = 0.01)。
・眼内レンズの偏位の方向とNCCの位置には相関があり、NCC群の眼内レンズの偏位はNCC領域と反対方向に生じていた。
・結論: プレミアム眼内レンズやトーリック眼内レンズなど、眼内レンズが嚢内で適切にセンタリングされることを必要とする特殊な眼内レンズが開発されている。
・眼内レンズの偏位は前嚢と後嚢の癒着がジッパーのように嚢の周辺部から中心部に向かって徐々に進行し、NCC領域とは反対方向に眼内レンズの偏位が生じたと考えられる。
・眼内レンズの偏位をコントロールするためには、眼内レンズ光学部周囲を完全に覆う前嚢切開が重要である。(CH)

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