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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2023
49巻

アトピー性白内障における水晶体の厚さ

Journal of Cataract & Refractive Surgery 49巻(8号)2023

Lens thickness in atopic cataract: case–control study
Masanobu Iida, et al. (東京慈恵医科大学)
J Cataract Refract Surg 2023(8); 49:853–857
・目的:アトピー性白内障の眼が対照群に比べて水晶体が薄いかどうか、またアトピー性皮膚炎が水晶体厚(LT)の変化と関連しているかどうかを調べる。
・対象と方法:アトピー性白内障31眼(26人)、非アトピー性白内障62眼(56人)、白内障を伴わない正常水晶体31眼(30人)を対象とした。
・結果:患者108人(124眼)、女性21人(19.44%)、男性87人(80.55%)平均年齢は43.35±9.25歳。
・前嚢下白内障(ASC)は、非アトピー性白内障62眼中24眼(38.7%)、アトピー性白内障31眼中24眼(77.4%)で認めた。
・平均LTは、アトピー性白内障、非アトピー性白内障、正常水晶体でそれぞれ3.76±0.40mm、3.94±0.49mm、4.11±0.40mmであった。
・アトピー性白内障の水晶体は、非アトピー性白内障の水晶体(P = 0.036)および正常水晶体(P < 0.001)よりも有意に薄かった。
・非アトピー性白内障と正常水晶体の間には有意差はなかった。LTの薄さは年齢と負の相関があり(オッズ比[OR]、0.91;95%CI、0.86-0.96)、ASCと正の相関があった(OR、5.61;95%CI、1.97-15.99)。
・アトピー性皮膚炎は有意な因子ではなかった。
・結論:アトピー性白内障の水晶体は、非アトピー性白内障や正常水晶体よりも有意に薄かった。ASCが水晶体の薄さの有意な因子であることが明らかになったが、アトピー性皮膚炎は有意な因子ではなかった。
・過去の報告で、アトピー性白内障の病態に好酸球顆粒蛋白(MBP)の関与が指摘されている。MBPは好酸球由来の毒性蛋白で強い細胞傷害性を示す。
・MBPはアトピー性白内障の前嚢組織と房水に検出されているが、加齢性白内障には検出されていない。
・そのためMBPは血液から前房に流入し、水晶体上皮細胞を傷害し、水晶体繊維の成長を停止させるか、あるいは水晶体から房水へのタンパク漏出を引き起こし、その結果、水晶体が薄くなると考えられる。(CH)

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