Efficacy and safety of prophylactic intracameral moxifloxacin injection in Japan
Kazuki Matsuura, et al. (鳥取大学)
J Cataract Refract Surg 39(11):1702-1706, 2013
・白内障術後眼内炎発生率とモキシフロキサシン前房内注入後の合併症の報告
・モキシフロキサシン前房内注入前4年と注入後4年のオペを評価
3施設:50~100μg/ml、9施設:100~300μg/ml、7施設:500μg/ml
最も濃い濃度は14124眼に使用された。
モキシフロキサシン前房内注入前15958眼のうち、術後1ヶ月以内に眼内炎が起こったのが8眼(0.05%)
モキシフロキサシン前房内注入後18794眼のうち、術後1ヶ月以内に眼内炎が起こったのが3眼(0.016%)
モキシフロキサシン前房内注入は眼内炎に対する効果が3倍あった。
18000例以上の症例で角膜内皮の損失による合併症は認められなかった。
・眼内炎になった症例は、原因となる細菌は識別されなかった。前房内洗浄とバンコマイシンとセフタシジムの硝子体注射で改善した。
・モキシフロキサシン前房内注入の安全性と有効性を確立することが、点眼や消毒方法も含め、術中・術後感染症防の予防法の変化を導くかもしれない(CH)
Visual outcomes and patient satisfaction in 9366 eys using a refractive segmented multifocal intraocular lens.
Venter JA et al(UK)
J Cataract Refract Surg 39(10): 1477-1484, 2013
・帯状の多焦点IOL(Lentis Mplus IOL)を挿入した4683名9366眼について検討した。
・裸眼遠方と近見視力(UDVA、UNVA)、矯正視力、屈折度、満足度、副作用について、術後1,3,6ヶ月後に調べた。
・95%で術後3ヶ月で両眼での裸眼視力は6/7.5(0.1 logMAR=0.79)以上であった。
・3ヶ月、6ヶ月目の近見両眼裸眼視力はlogMAR 0.155±0.144=0.70、logMAR 0.159±0.143 =0.69であった。
・重篤な不快光視現象dysphotopsiaの為にIOL入れ替えが必要であったのは55眼であり、全般的には患者満足度は高く、97.5%の患者が他の人に薦めたいと感じていた。(TY)
Continuous intracorneal ring implantation for keratoconus using a femtosecod laser.
Jabbarvand M et al(Iran)
J Cataract Refract Surg 39(7): 1081-1087, 2013
・円錐角膜98例について、femtosecond laserを用いた角膜内リング(ICR)移植後の経過について検討した。
・視力低下があり、CL装用が困難で、中心角膜厚が360μm以上の症例98眼(30.7±9.0歳)で、術前、術後1,3,6,12ヶ月経過観察した。
・98例98眼の内訳はGradeⅠが15眼(15.3%)、Ⅱが37眼(37.7%)、Ⅲが24眼(24.5%)、Ⅳが22眼(22.4%)である。
・遠見矯正視力logMARは術前0.85±0.26(小数点0.14)が術後1ヶ月で0.51±0.24(0.31) p<0.001、乱視度が-5.30±1.92が-2.21±1.47 p<0.001と有意に改善したが、その後は変化がなかった(p>0.05)。(TY)
Resolution of negative dysphotopsia after laser anterior capsulotomy.
Cooke DL et al(MI USA)
J Cataract Refract Surg 39(7): 1107-1109, 2013
・鼻側の前嚢が透明であると不快光視現象negative dysphotopsia(ND)が発症し、前嚢混濁が進むと消失することが知られている。
・今回は、前嚢周囲が不透明であるのに不快光視現象が発症し、鼻側前嚢を除去したら消失した例を報告する。
・NDの原因としては、IOLの光学部の鋭縁、IOL素材の高屈折率、嚢の鼻側の透明性などがいわれている。
・NDは耳側の三日月形の影であり、最初は矩形縁のIOLで1990年代に発表された。
・MasketらはこのNDは前嚢切開縁とIOL前表面との接触面で発生する、つまり前嚢切開縁の反射が鼻側周辺網膜に投影されるのではないかと述べた。
・光の散乱を阻止すればNDはなくなるのではないかとも考えられる。
・症例は70歳男性で、IOL移植後に耳側に暗い三日月を自覚。
・鼻側前嚢をYAG切開でかなり軽快し、耳側前嚢をYAG切開したら完治した。
・このことからNDは嚢が混濁すれば消失するものではない事を証明した。(TY)
Corneal endothelial damage after cataract surgery in eyes with pseudoexfoliation syndrome.
Hayashi K et al(福岡)
J Cataract Refract Surg 39(6): 881-887, 2013
・偽落屑症候群(PXF)のある36眼で、白内障手術後の角膜内皮障害、眼内炎症について、年齢を合わせた非偽落屑症候群(non-PXF)36眼と比較検討した。
・術前、術後1,3ヶ月後の角膜内皮細胞密度(ECD)、中心角膜厚(CCT)、フレア値を測定した。
・PXFとnon-PXFのECDは、術前 2608±220:2748±261(p=0.025)、1ヶ月 2352±301:2671±289(p<0.0001)、3ヶ月 2372±323:2653±266(p=0.0001)と、いずれも有意差があった。
・内皮細胞消失率についても、1ヶ月 9.8±9.0:2.8±6.3%(p=0.003)、3ヶ月 9.0±10.4:3.4±5.9%(p=0.0216)と有意差があった。
・中心角膜厚には両群に有意差はなかったが、中心角膜厚増加率は1ヶ月後のみ 2.85±3.86:0.91±2.51%(p=0.0152)と有意差があった。
・フレア値については有意差はみられなかった。
・PXFではPXF物質が角膜内皮細胞内で生産蓄積され、内皮細胞の変性が進行すると考えられるので、手術時に注意が必要である。(TY)
Refractive changes after vitrectomy and phacovitrectomy for macular hole and epiretinal membrane.
Hamoudi H et al(Denmark)
J Cataract Refract Surg 39(6): 942-947, 2013
・黄斑円孔あるいは黄斑前膜に対する硝子体手術あるいは白内障同時手術後の屈折変化をレビューした。
・屈折変化には眼軸長測定、水晶体位置、前房深度、ガス置換、IOL計算式、IOL型など、様々な因子が働いている。
・白内障同時手術、白内障先行あるいは後で行うなど、やり方は様々だが、全体的には近視に偏位していた。
・21論文で、症例数は総数1247例(12例から276例)、屈折度変化は-0.28±0.21D(-0.79~+0.16D)であった。(TY)
Tripan blue injection into the capsular bag during phacoemulsification: Initial postoperative posterior capsule opacification results.
Sharma P et al(India)
J Cataract Refract Surg: 39(5): 699-704, 2013
・0.1%tripan blue(TB)を嚢内に注入すると、術後の後嚢混濁(PCO)の予防になるかどうかを検討した。
・0.2mlのTBを、CCC→hydrodissection→核回転後に後嚢前に注入し、眼底反射が消失するのを確認し、超音波乳化吸引を開始した。
・PCOは0-4までに分類し、占有面積との積としてPCO値を求めた。
・TB群150眼とコントロール群150眼で比較した。
・術後6ヶ月、12ヶ月目の平均PCO値はTB群では、0.10と0.15、Ctrl群では0.21と0.25で、6ヶ月目、12ヶ月目ともに優位差があった(p=0.042とp=0.0227)。
・YAG後嚢切開が必要になったものは、TB群では2/150眼、Ctrl群では6/150眼であった。
・TBは角膜内皮細胞には悪影響はないが、水晶体上皮細胞(LECs)の複製過程の有糸分裂過程に影響するからであろう。
Combined 25-gauge vitrectomy and cataract surgery with toric intraocular lens with idiopathic epiretinal membrane
Y Nakano et. al 香川大
J Cataract Refract Surg. 39(5):686-93, 2013
ERMに対する25G硝子体手術+白内障同時手術
術前0.75D以上の角膜乱視にToric IOL(SN6AT3-5)、non Toric IOL(SN60WF IQ)と比較
術後IOLの平均回転角度 3.67±3.13°
術後6M 矯正視力、術後網膜厚は有意差なし、
裸眼視力で有意差あり(0.57 logMAR vs 0.35 logMAR)(MM)
Trypan blue injection into the capsular bag during phacoemulsification: Initial postoperative posterior capsule opacification result
P Sharma et. al Jaipur, India
J Cataract Refract Surg. 39(5):699-704, 2013
Hydrodissectionの後で0.2mlのTrypan blueを注入、BSS注入のコントロール群と比較
102眼:103眼
マスクされた検者がPCO score=∑(%area x PCO grade) で6,12カ月に比較
術後視力に有意差なし
6M, 12MのスコアはそれぞれTrypan blue 0.10, 0.15 / control 0.21, 0.25
およそ30秒程度カプセルの赤道部にトリパンブルーが作用することでLECsの増殖が抑制されるのかもしれない(MM)
Handshake technique for glued intrascleral haptic fixation of a posterior chamber intraocular lens.
Agarwal A et al(India)
J Cataract Refract Surg 39(3): 317-322, 2013
・IOL強膜内固定時の把持鑷子の安全な使用法を考案した。
・IOLカートリッジから前方hapticが少し出た時点で鑷子で把持し、強膜外へ出す。
・眼外に出たままの後方hapticを右手鑷子で前房内に入れ、角膜サイドポートから挿入した左手鑷子で受け、再度、右手鑷子を強膜創から前房内へ挿入して、左手鑷子との間でhapticの受け渡しを行う。
Early postoperative safety and surgical outcomes after implantation of a suprachoroidal micro-stent for the treatment of open-angle glaucoma concomitant with cataract surgery
H Hoeh, IK Ahmed et. al カナダ、アメリカ
J Cataract Refract Surg. 39(3):431-7, 2013
Transcend MedicalのCypassを使用したMIGS(micro invasive glaucoma surgery)の安全性プロファイル
白内障と同時手術 n=184 91/93
IOP control群 57例(6M) IOP:37%▼ med:>50%▼
IOP control群 41例(6M) med: 71.4%▼
一過性低眼圧:13.8%
一過性眼圧上昇:10.5%
追加手術 9例(5%) 他明らかなadverse event(-)(MM)
Early postoperative safety and surgical outcomes after implantation of a suprachoroidal micro-stent for the treatment of open-angle glaucoma concomitant with cataract surgery
T Ianchulev et al (UCSF)
J Cataract Refract Surg 39(3): 431-437, 2013
白内障と同時手術での成績でのsafety profile (N=184, 91/93)
IOP uncontrol群 57例(6M) IOP: 37%▼ med:>50%▼
IOP control 群 41例(6M) med: 71.4%▼
Transient early hypotony 13.8%
Transient IOP increase 10.5%
追加手術9例(5%), 他あきらかなadverse event(-)(MM)
Residual lens cortex material: potential risk factor for endophthalmitis after phacoemulsification cataract surgery.
Lou B et al(China)
J Cataract Refract Surg 39(2): 250-257, 2013
・超音波乳化吸引後に水晶体皮質が残存していることが細菌増殖による眼内炎発症の危険因子になるかどうかを家兎で実験検討した。
・白内障患者から採取した前房水あるいは水晶体皮質を生食で希釈した液(1:1から1:16)に、10**5CFU (colony-forming unit)/mlの黄色ブ菌と表皮ブ菌を混ぜて24時間培養したところ、いずれの菌も皮質を希釈した培地の方が2桁から3桁増殖数が多かった(p<0.01)。
・家兎で完全に皮質を吸引した40頭と、1/4の皮質を残した40頭に黄色ブ菌を32.0, 56.3, 108.6CFU摂取した72時間後の眼内炎の発症をみると、皮質を完全に吸引した群では、0/10, 3/10, 10/10に発症したのに対し、皮質を残した群では、6/10, 9/10, 10/10に眼内炎を発症していた。
・術中に細菌の混入があったとすると、皮質が残っていた方が眼内炎が発症しやすいと考えられた(TY)
Corneal endothelial cell changes 5 years after laser in situ keratomileusis
Klingler KN et al. (USA)
J Cataract Refract Surg. 38:2125-2130,2012
・フェムトセカンドレーザーによって作られたフラップ眼とマイクロケラトームによって作られたフラップ眼のLASIK5年後の内皮細胞の変化(内皮細胞密度、六角形細胞出現率、CV値)を比較した。
・また、内皮細胞損失とコンタクトレンズの使用、残りの角膜ベッドの厚さと 手術前の屈折異常との関係を評価した。
・内皮細胞データは3年目で35眼(18人)、5年で39眼(20人)が利用可能だった。
・内皮細胞密度、六角形細胞出現率、CV値で相違はなかった。
・LASIK5年後の平均内皮細胞損失率はフェムトセカンドレーザーで-0.8±5.8%、マイクロケラトームで-0.4±5.0%で、有意差はなかった。
・角膜の内皮細胞損失の平均年率はフェムトセカンドレーザーで-0.1±1.2%、マイクロケラトームで-0.1±1.0%であった。
・内皮細胞喪失はコンタクトレンズ装用、角膜ベッドの厚さ、手術前の屈折異常と関連はなかった。
・マイクロケラトームと比較されるとき、フェムトセカンドレーザーレーザーによって角膜に運ばれたエネルギーはLASIKの5年後でも角膜内皮に影響を与えなかった。
・LASIKを受けた眼は、どちらの方法でフラップを作っていても、内皮角膜移植術のために提供者の組織として受け入れられると思われる。(CH)
Toxic anterior segment syndrome after cataract surgery secondary to subconjunctval gentamicin
Litwin AS et al. (USA)
J Cataract Refract Surg 38:2196-2197,2012
・白内障術後の結膜下ゲンタマイシンが眼内に流入した事が中毒性前眼部症候群(TASS)と関係あると思われる2例の報告。
・症例1:62歳女性、アクリルレンズ、ペニシリンアレルギーあり
結膜下ゲンタマイシン20mg/0.5ml注入
術後1週間後から眼痛(+)、角膜浮腫、前房cell(+)、瞳孔散瞳(+)
11ヶ月後 視力20/30、瞳孔径7mm
・症例2:85歳女性、アクリルレンズ、ペニシリンアレルギーあり
術後2週間後から砂が入ったような違和感(+)、角膜浮腫、前房cell(+)、
瞳孔散瞳(+)
5ヶ月後、視力20/30、瞳孔径7mm
・ゲンタマイシンは白内障の手術で広く使われる。眼内炎の治療で前房内にゲンタマイシンを注入してよい結果が得られたという報告もある。
ゲンタマイシンとTASSの間に関連が有るかどうかは証明されていないが、今回と類似のケースを避けるため、注意が必要である。(CH)
Incidence of acute postoperative cystoid macular edema in clinical practice
Packer M et al. (USA)
J Cataract Refract Surg 38:2108-2111,2012
・術後早期(90日以内)の嚢胞様黄斑浮腫(CME)の発生率を調べた。
・2007年3月1日〜2012年3月31日までにオレゴン州にある4件のクリニックで施行されたPEA+IOL 2862件を対象とした。
・術後90日以内に3例(0.1%)がCMEを発症した。1例は後嚢破損の症例、1例は糖尿病あり、1例は不明。
・2例とも、術後1ヶ月で点眼治療を中止したところ、その3週間後にCMEを認めた。そのため、点眼治療を再開し、術後6ヶ月まで続けた。
・術後早期(90日以内)嚢胞様黄斑浮腫(CME)の発生率は0.1%だった。(CH)
Technique to exclude temporal lash incursion in phacoemulsification surgery.
Fox OJK et al(Australia)
J Cataract Refract Surg 38(11): 1885-1887, 2012
・術野に入ってくる睫毛をSteri-Stripで隠す方法を紹介する。
・3MのSteri-Stripを1cm角に切り、織り繊維を眼瞼と並行にして、睫毛を隠した。
Effect of primary posterior continuous curvilinear capsulorrhexis with posterior optic buttonholing on pilocarpine-induced IOL shift.
Leydolt C et al(Austria)
J Cataract Refract Surg 38(11): 1895-1901, 2012
・白内障手術後のピロカルピン使用による毛様体筋の収縮によるIOLの移動について20例40眼で検討した。
・通常の眼内レンズ(HOYA YA60BB)を、1眼は後嚢CCC+Captureで挿入、他眼は通常の嚢内固定とし、術後6カ月以降に、2%ピロカルピン点眼前後、1%サイプレジン点眼前後の前房深度(角膜後面からIOL表面まで)をACMaster(Zeiss)で測定した。
・ピロカルピン点眼後には後嚢CCC眼では78±78μmのIOLの後方移動、コントロール眼では118±117μmの後方移動があったが(いずれも p<0.05)、両群間に差はなかった(p=0.19)。
Timely cataract surgery for improved glaucoma management.
Chang RT et al(consultant)
J Cataract Refract Surg 38(10): 1709-1710, 2012
・Ocular hypertension Treatment Studyは白内障手術で眼圧は最低3年間は眼圧を平均3mmHg下げることが示された。
・現在、視力が良好な緑内障の人には白内障手術を早期に行うことを躊躇する場合が多いが、落屑緑内障や狭隅角緑内障に対しては積極的に白内障手術を行う方法も検討すべきである。
Effect of intraocular lens insertion speed on surgical wound structure.
Ouchi M(府立医大)
J Cataract Refract Surg 38(10): 1771-1776, 2012
・角膜切開で眼内レンズ(Acrysof IQ)をスクリュー式インジェクターで挿入する場合、1秒で1回転で早く挿入したF群と、1秒1/4回転でゆっくり挿入したS群とで創口径の変化、角膜hydrationの必要性、術後乱視、OCTでの角膜創口の変化を80例で検討した。
・創口の大きさはS群で有意に大きく(0.097±0.051:0.0028±0.045、p=0.02)、角膜hydrationはS群は21/40(52.7%)、F群は11/40(27.5%)とS群で有意に多く(p=0.04)、創口のOCT上の変化はS群で有意であったが(p=0.003)、術後乱視には有意差はなかった。
・角膜切開でインジェクターを使用する場合には早く挿入した方が創口構造を変えない事が分かった。