Is kidney function asociated with age-related macular degeneration? Fingings from the Asian Eye Epidemiology Consortium.
Xue CC et al(Singapore)
Ophthalmology 131(6): 692-699, 2024
・慢性腎臓病CKDと加齢黄斑変性症AMDは関連があると考えられている。
・同じリスクファクター、病因や遺伝的多型を持っているからである。
・この関連について、Asian Eye Epidemiology Consortiumのデータベースを使用して、独立した10種の51,253例の研究を調べてみたので報告する。
・AMDはWisconsin ARM Grading System、International ARM Epidemiological Study Group Classification、Beckman Clinical Classificationのいずれかを使用し、CKDはeGFRが60ml/min per 1.73m2以下と定義し、年齢、性、高血圧、DM、BMI、喫煙、コレステロール値で補正した。
・51,253名(54.1±14.5歳)のうち、5079例(9.9%)でCKDがあり、初期AMDの有病率は9.0%、晩期AMDは0.71%であった。
・交絡因子で調整後、CKD者では晩期AMDの確率はOR=1.46 (95%CI=1.11-1.93 p=0.008)、腎機能が低くなると(eGFRが10-unit低下)、晩期AMDの確率はOR=1.12 (95%CI=1.05-1.19 p=0.001)であった。
・しかし、CKDであることやeGFR値は早期AMDとは関連がなかった。
・CKDの患者は眼底検査が大切であると考えられた(TY)
Evaluation of a retinal projection laser eyeware in patients with visual impairment caused by corneal diseases in a randomized trial.
Stöhr M et al(Germany)
Ophthalmology 131(5): 545-556, 2024
・網膜や視神経以降は健全であるのに、角膜障害で視力が悪い人に対する視覚補助具(LVAs)を検討した。
・LVAsは残った視機能を拡大とかコントラスト増強によって最大限に活用しようとするものであるが、中間透光体に依存しているために十分に効果がでていない。
・そこで、我々は眼鏡タイプの新しいレーザー技術で、中間透光体をバイパスする装置(laser eyewear:LEW)を開発した。
・カメラでとらえられた像は低エネルギーレーザーで直接、網膜に投影されるため、患者はフルカラーの画像を見ることができる。
・今回、角膜疾患のために視力が、logMAR=0.7以下(小数点0.2以下)、logMAR=1.7以上(小数点0.02以上)となっている21名(25-69歳)でテストを行った。
・文字読みのスピードテストで、眼鏡では4名のみが文字が読めただけであった
・いずれも2倍拡大での拡大鏡とLEWでは、平均的なスピードは変わらなかったが、拡大鏡よりはLEWの方がより多くの被検者で文字を読むことができた。
・LEWは使用者全員で有用であることがわかった(TY)
Risk of Alzheimer’s disease and related dementias in persons with glaucoma.
Crump C et al(TX USA)
Ophthalmology 131(3): 302-309, 2024
・緑内障は痴呆症に進行しうる脳の神経変性疾患と関連しうる視神経症の異質な群と考えることができるが、現在までそのような検討はなされていないので、今回、緑内障後の痴呆症について大集団症例研究を行った。
・Swedenで、1995-2017に緑内障と診断された324,730名と、年齢・性をマッチさせた3,247,300例の痴呆症でない対照群とで調査した。
・Alzheimer病(AD)、血管性痴呆(VaD)、その他の痴呆症について、社会人口学的因子と併存疾患で調整して検討した。
・1600万人年person-yearの経過観察中、緑内障の32,339名(10%)と対照群の226,896名(7%)が痴呆症と診断された(人年 person-year:観察した人数とその観察年数をかけたもの)
・緑内障者では全ての原因の痴呆症発症の調整HRは1.57(1.54-1.59)、そのうち、AD発症は1.39 (95%CI=1.35-1.43)、VaD発症は1.66(1.61-1.72)であった。
・緑内障の型別では、POAGとNTGでは、AD発症はそれぞれ1.31(1.27-1.36)と1.28(1.20-1.36)、VaD発症は1.61(1.54-1.68)と1.39(1.28-1.50)であった。
・PACGではVaD発症は1.26(1.02-1.56)であったが、AD発症は0.98(0.82-1.28)であった。
・これらの所見には男女差はなかった。
・また、このリスクは70歳以上で緑内障と診断された人で最も高く、60歳未満で診断された人では高くなかった。
・高齢になって緑内障と診断された人は痴呆症について注意してみていく必要がある。(TY)
Early endophthalmitis incidence and risk factors after glaucoma surgery in the Medicare population from 2016 to 2019.
Sabharwal J et al(MD USA)
Ophthalmology 131(2): 179-187, 2024
・Medicareの65歳以上の患者で、2016-2019にかけて、緑内障手術、白内障手術、あるいは、緑内障+白内障同時手術を受けた症例で、42日以内に眼内炎を発症した症例を対象とした。
・緑内障手術を受けた症例は466,928例(うち、白内障同時手術310,823例66.6%)あり、白内障単独手術を受けた8,460,360例を対照として検討した。
・緑内障手術はMIGSが67.8%、線維柱帯切除が14.0%、チューブシャント手術が10.9%、その他が7.3%である。
・全緑内障手術眼のうち、572例(0.123%)で眼内炎が発症していた。
・眼内炎の発症は1000例中、緑内障手術は1.5例(95%CI=1.3-1.7)、同時手術は1.1例(95%CI=1.0-1.2)、白内障単独手術は0.8例(95%CI=0.8-0.8)であった。
・眼内炎診断がついた中間値は緑内障手術では16.5日で、同時手術、白内障単独手術の8日、6日に比して遅かった。
・緑内障手術の中では、MIGSと比較して、眼内炎のリスクが有意に高かったのはチューブシャント手術で、単独手術では調整OR(aOR)=1.8(p=0.002)、同時手術ではaOR=1.8(p=0.047)であった。
・また、同時手術では、年齢 aOD=1.03 (p=0.004)、男性 aOR=1.46 (p=0.001)で、眼内炎のリスクが高かった。(TY)
Fourteen-year outcome of angle-closure prevention with laser iridotomy in the Zhonghan Angle-Closure Prevention Study. Extended follow-up of a randomized controlled trial.
Yuan Y et al(China)
Ophthalmology 130(8): 786-794, 2023
・原発隅角閉塞症疑い(PACS)に対するレーザー周辺虹彩切除(LPI)の効果を14年間観察し、原発閉塞隅角症(PAC)に移行するリスク因子を検討した。
・50歳から70歳の889名の両眼のPACSを対象とし、ランダムに片眼にLPIを行ない、他眼をCtrlとした。
・周辺隅角癒着、眼圧が24mmを越える、あるいは急性隅角閉塞(AAC)が発生した場合をPACと判定した。
・14年間でLPI眼の480眼(390+90)とCtrl眼の462眼(388+74)が脱落したが、LPI眼では409眼(889-480)中33眼(8.1%)、Ctrl眼では427眼(889-462)中105眼(24.6%)がPACに移行し(p<0.01)、PACへ移行する率はCtrl眼と比較するとLPI眼ではHR=0.31(95%CI=0.21-0.46)であった。
・その中で、LPI眼では1眼、Ctrl眼では5眼がAACを発症し、LPI眼では2眼、Ctrl眼では4眼が原発隅角閉塞緑内障(PACG)に移行した。
・14年間観察すると、Ctrl眼と比較してLPI眼では核白内障がより強く、眼圧が高く、隅角が広く、周辺部前房深度がより深かった。
・PACへ移行するリスクが高いものは、Ctrl眼では高眼圧(HR=1.11)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.70)、中心部前房深度が浅い(0.1mm深いとHR=0.88)ことであり、LPI眼では高眼圧(HR=1.14)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.45)、暗室うつ伏せテストでの眼圧上昇が少ない(1mmHg上昇するとHR=0.87)ことであった。(TY)
The efficacy of defocus incorporated Multiple Segments Lenses in slowing myopia progression. Results from diverse clinical circumstances.
Liu J et al(China)
Ophthalmology 130(5): 542-550, 2023
・焦点をぼかす多分割眼鏡(Defocus incorporated multiple segments(DIMS)眼鏡が近視進行を予防できるかを検討した。
・DIMSはHOYAビジョンケア部門と香港理工大学が共同開発したものである。
・DIMSを使用した3639例と、単焦点SV眼鏡を使用した6838例とで比較した。
・主観的な屈折での球面等価量で評価した。
・症例の年齢は6-16歳(11.02±2.53歳)で、基準時の屈折度は0.00~-10.0D(ー2.78±1.74D)。
・1年経過と2年経過を調査した。DIMS群とSV群は、1年後は-0.50±0.43D:-0.77±0.58D(p<0.001)、2年後は-0.88±0.62D:ー1.23±0.76D(p<0.001)で、DIMS群の近視進行が遅かった。
・近視進行が0.25D以下だった例は1年後は40%と19%(p<0.001)、2年後は33%と20%、1.0D以上進行した例は1年後は9%と22%(p<0.001)、1.5D以上の進行例は2年後は12%と29%(p<0.001)であった。(TY)
Associations between Serial Intravitreal Injections and Dry Eye.
Malmin A, Thomseth VM, Førland PT, Khan AZ, Hetland HB, Chen X, Haugen IK, Utheim TP, Forsaa VA. (Norway)
Ophthalmology. 2023;130(5):509-515. doi: 10.1016/j.ophtha.2023.01.009. Epub 2023 Jan 21. PMID: 36693594.
【目的】
nAMDに対して抗VEGF治療を受けた患者において、連続する硝子体内注射(IVI)が眼表面およびマイボーム腺(MG)に及ぼす影響を検討
【対象と方法】
抗VEGF薬による片眼IVI投与を受けているnAMD患者
僚眼を対照とした
涙液検査と眼表面検査は、IVIの最低4週間後に1回ずつ施行
*注射時の麻酔・消毒プロトコルは下記
【主要評価項目】
以下をレトロスペクティブに評価;
上下のMG消失、涙液メニスカスの高さ(TMH)、球結膜充血(BR)スコア、
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセイン涙液崩壊時間(TBUT)、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結果】
54-95(平均77.5)歳の患者90名
治療眼におけるIVIの数は2-132(中央値19.5)回
上眼瞼の平均MG喪失率は、
治療眼で19.1%(SD、11.3)、
対照眼で25.5%(SD、14.6)であった(P = 0.001)
下眼瞼では、MG損失の中央値は、
治療眼で17.4%(四分位範囲[IQR]、9.4-29.9)、
対照眼で24.5%(IQR、14.2-35.2)であった(P < 0.001)
球結膜充血(BR)スコアの平均は、
治療眼では1.32(SD、0.46)であったのに対し、
対照眼では1.44(SD、0.45)であった(P = 0.017)
涙液メニスカスの高さ(TMH)の中央値は、
治療眼で0.36mm(IQR、0.28-0.52)、
対照眼で0.32mm(IQR、0.24-0.49)であった(P = 0.02)
以下は治療眼と対照眼で差はみられず;
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセインTBUT、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結論】
nAMD患者において、術前にPVP-Iを塗布した上で抗VEGF薬による静脈内注射を繰り返すと、非治療群と比較して、MGロスの減少、涙液量の増加、炎症徴候の減少がみられた。
この殺菌方法は、眼表面に有益な効果をもたらす可能性がある。
【注射時の麻酔・消毒プロトコル】
防腐剤非含有の塩酸テトラカイン1%点眼液(Minims, Bausch & Lomb)を1滴点眼
PVP-I 5%点眼液(Betadine; Alcon)を1滴点眼
眼瞼縁、睫毛、眼周囲の皮膚をPVP-I 5%で洗浄
開瞼器の後、IVI投与前に再びPVP-Iを点眼
注射後の生理食塩水による消毒洗浄なし
抗生物質や眼軟膏の使用など、注射後の局所治療もルーチンに行わず(MK)
Corneal Hysteresis for the Diagnosis of Glaucoma and Assessment of Progression Risk
A Report by the American Academy of Ophthalmology
Arthur J. Sit et al, Ophthalmology 130(5),433-442: 2023
・角膜ヒステレシス(CH)に関する423のabstractを調べ、Evidence level 1と2の6文献を採用した。
・結果:CHはPOAG,PACG,PEG,PE syndrome で正常眼より低かった。
・眼圧の高い患者や眼圧下降薬を使用している患者でCHが低いことについては、それら高眼圧、点眼薬がCHに及ぼす影響があり解釈は難しい。
・しかし、未治療のNTG患者は同程度の眼圧の正常眼と比べてCHが低かった。
・さらに、CHが低いことは明らかによくコントロールされた患者を含む、OAGの視野障害(機能)や構造のパラメータ進行のリスクであった。(MM)
Corneal hysteresis for the diagnosis of glaucoma and assessment of progression risk.
Sit AJ et al(MN USA)
Ophthalmology 130(4): 433-442, 2023
・緑内障の診断や緑内障の進行の判断に対する角膜ヒステレシス(CH)の有用性について文献をレビューした。
・2022/7迄にPubMedに掲載された論文423件から13件を厳選して調査した。
・CHは弾性と粘性の両方を反映している。
・弾性は持続力に対する変形の大きさを決定し、粘性は組織の変形や回復の速度を決定する。
・POAG、PACG、PE緑内障、偽落屑症候群ではCHの値は正常者よりも低かった。
・高眼圧者や緑内障点眼薬治療者での低いCHの解釈は複雑である。
・しかし、未治療のNTG者のCHは、同じ眼圧の正常者よりも低い。
・また、POAG者でCHが低い場合、眼圧が十分にコントロールされていても、緑内障の進行リスクは高いだろう。(TY)
Ocular adverse events after coronavirus disease 2019 mRNA vaccination. Matched cohort and self-controlled case series studies using a large database.
Hashimoto Y et al(東大)
Ophthalmology 130(3): 256-264, 2023
・COVID-19のmRNAワクチン接種後の眼副作用について検討した。
・2021/2~2021/9にCOVID19ワクチン(Pfizer-BioNTech製)を初回接種後21日間、2回目接種後84日間について、self-controlled case series(SCCS) studyで、各99,718人について解析検討した。
・イベントは、ぶどう膜炎、強膜炎、網膜静脈閉塞症、視神経炎を取り上げた。
・初回接種後、副作用イベント件数はワクチン接種者:Ctrlでは29件:21件、2回目接種後では79件:28件であった。
・接種者とCtrl者での積算副作用発症件数の差は、人口10万人あたり、初回接種後は2.9件(95%CI=-14.5~19.1)、1.1倍(0.6~2)、2回目接種後は51.3件(16.2~84.3)、1.8倍(1.2~2.9)接種者が多かった。
・2回目接種後は、RVOだけでは29.4件(8.3~48.7)、3.3倍(1.3~16.1)接種者が多かった。
・ただし、SCCS法でこの期間内で発症する率を、それ以降の期間内で発症する率とで比較すると、初回接種後と2回目接種後の期間での発症率は、0.89(0.62~1.28)と0.89(0.71~1.11)であり、ワクチンが眼副作用の発症リスクを増やすとは言えないことが分かった。(TY)
The effect of macular hole duration on surgical outcomes. An individual participant data study of randomized controlled trials.
Murphy DC et al(UK)
Ophthalmology 130(2): 152-163, 2023
・特発性全層黄斑円孔(iFTMH)手術後の視力改善に対する術前迄の症状持続時間について検討した。
・2000~2022年の文献を調査した。
・適合した12文献940眼の結果で、症状の持続の中間値は6か月(4分位値は3-10ヶ月)である。
・初回治療での閉鎖率は81.5%であり、閉鎖可能性と症状の持続時間には相関がみられた。
・ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎に閉鎖率は0.965倍(95%CI=0.935-0.996 p=0.026)であった。
・ILM剥離、ILM片移植、術前の良いBCVA、術後うつ伏せ姿勢、iFTMHが小さいことが、初回閉鎖率に相関していた。
・閉鎖が得られた症例の術後最高視力の中間値はlogMARで0.48(20/60)であったが、ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎にlogMARで0.008悪くなっていた(95%CI=0.005-0.011 p<0.001)。
・手術までの期間は解剖学的にも視機能的にも影響があり、できるだけ早期の手術が望まれる。(TY)
Long-term alcohol consumption and risk of exfoliation glaucoma or glaucoma suspect status among United States Health Professionals.
Hanyuda A et al(慶応大)
Ophthalmology 130(2): 187-197, 2023
・総アルコール摂取量(ビール、ワイン、蒸留酒)と落屑緑内障あるいは落屑緑内障疑者(XFG/SFGS)との関連を調査した。
・Nurse Helth Study(1980-2018)、Health professionals Follow-up Study(1986-2018)、Nurses’ Health Study II(1991-2019)に載った195,408名について2年毎に調査した。
・40歳以上で、食事や眼科所見が確認され、XFG/XFGSではない人を対象とした。
・積年で6,877,823眼の経過観察中に705眼でXFG/XFGSが判明した。
・全アルコール摂取量が多いほど、有意にXFG/XFGSのリスクが増えていた。
・推定多変量調整比較リスク(MVRR)を求めると、1日15g以上のアルコール摂取者では非摂取者の1.55倍(95%CI=1.17-2.07 p=0.02)であった。15gのアルコール量:5%ビール=300cc、15%日本酒=100cc。
・この値は緑内障の家族歴のある人では1.17倍(95%CI=0.56-2.44 p=0.34)であったが、家族歴のない人では1.64倍(95%CI=1.16-2.33 p=0.01)であった。
・XFG/XFGSと診断される前4年間の1日平均15g以上の摂取者は非摂取者の1.65倍(95%CI=1.25-2.18 p=0.002)であった。(TY)
Acanthamoeba Keratitis Risk Factors for Daily Wear Contact Lens Users
A Case-Control Study
Nicole Carnt, et al. Ophthalmology 130(1): 48-55, 2023 (England)
・2011年1月から2013年2月までにSouth-East Englandの提供する救急外来に受診したアカントアメーバ角膜炎(AK)患者(後ろ向き)とその後2014年8月までに受診したAK患者(前向き)を、2014年2月から2015年6月までに受診したCLとは関係ないと思われるCLユーザー患者(前向き)をコントロールとして、使い捨てレンズと再使用可能レンズのリスクファクターを検討するとともに、使い捨てレンズ使用者のリスクファクターを調査
・83名のAK、122名のコントロール
・Daily Disposal (DD): AK 20例 (24%)、Control 66例(54%)
・DDと他のCLの比較
・Daily wear(DW) reusable lens: OR 3.84 (95%CI 1.75-8.43)
・Rigid lens: OR 4.56 (95%CI 1.03-20.19)
・DDレンズユーザーでのリスクファクター
・定期診察が少ない:OR 10.12 (95%CI 5.01-20.46)
・装着したままシャワーを浴びる:OR 3.29 (95%CI 1.17-9.23)
・レンズの再使用:OR 5.41 (95%CI 1.55-18.89)
・装用したまま寝る:OR 3.93 (95%CI 1.15-13.46)
・PAR%(population attributable risk percentage:寄与危険割合): 30-60%はリユーザブルCLからDDに変更することで予防できた可能性がある。(MM)
Does prior endoscopic cyclophotocoagulation (ECP) affect subsequent trabeculectomy outcomes?
Abhijit Anand Mohite, et al. Graefe’s Archive for Clinical and Wxperimental Ophthalmology 7(260): 1975-1982, 2022
・Retrospective case-controlled comparative study
・ECP後にTLEを行なったGroup1
・初回手術としてTLEを行なったGroup2
・ECPもしくはPhaco -ECPを行なった62眼のうち12眼(19.4%)が追加手術を行ない、9眼がGroup1に組み入れられた。(2眼は観察期間が2年以内、1眼はバルベルトインプラントを実施)
・ECPから追加手術までの平均期間:22.7(3.2-76.8) month、 66.7%は6ヶ月以降
・Group2は同時期に実施し、緑内障の病期、人種、年齢、執刀医、眼圧下降薬、過去のレーザー手術についてGroup1にマッチした9眼を対象とした。
・最低2年間術後フォロー 4年以上経過観察したのは 55.6% (5/9) vs 66.7% (6/9)
・ベースライン
・眼圧 23.7±7.7 mmHg vs 26.0±6.7 mmHg (p=0.452)
・点眼 3.4±0.9 vs 2.8±1.4 (p=0.274)
・2年後の結果
・眼圧 10.6±5.2 mmHg vs 12.9±4.0 mmHg (p=0.285)
・点眼 0.1±0.3 vs 0.1±0.4 (p=0.931)
・Complete success (IOP<16mmHg w/o med.) rate 77.8 % vs 88.9 % (p=0.527)
・Qualified success (IOP<16mmHg w/ med.)は両群とも11.1%
・Combined success rate (IOP<16mmHg) 88.9%(8/9) vs 100%(9/9) (p=0.318)
・両群とも内服は無い
・Failure (追加濾過手術、光覚喪失) 11.1% vs 0% (p=0.318)
・Group1 で光覚喪失 Group2では36ヶ月後にBGI実施している
・低眼圧、ニードリング、CME、遷延性のぶどう膜炎、再手術の割合に有意差なし
・結論
・ECP既往があってもレクトミーの手術成績に影響はないが、ECPは初回手術として安全でその後のレクトミーの必要を減らす可能性がある。(MM)
Impact of smoking on visual field progression in a log-term clinical follow-up.
Mahmoudinezhad G et al(CA USA)
Ophthalmology 129(11): 1235-1244, 2022
・最低3年以上の経過があり(中間値12.5年)、5回以上の視野測定のある354名(年齢の中間値64.8才)のPOAGを対象として、喫煙が24-2のMDに影響しているかについて検討した。
・対象者の35%(124/354名)が黒人で、42.1%(149名)が喫煙歴があり、59.8%(168名)が飲酒者である。
・多変量解析では喫煙強度が高いほど、視野障害の進展が早かった(-0.05dB/年/10pack-years、95%CI=-0.08~-0.01/dB/年/10 pack-years p=0.010)。
・視野の進行は少なくとも3か所で-1.0dB/年の感度低下があった場合とした。
・pack-years(たばこの箱年)とは、たばこ消費量の尺度で、1日1箱(20本)、1年間吸い続けた消費量を1単位としている。
・大量喫煙者(20 pack-years以上)では視野の進行は非喫煙者の2.2倍の進行度であった(OR=2.21 95%CI= 1.02~-4.76 p=0.044)。(TY)
Time outdoors in reducing myopia. A school-based cluster randomized trial with objective monitoring of outdoor time and light intensity.
He X et al(China)
Ophthalmology 129(11): 1245-1254, 2022
・上海の24校で、6歳から9歳の-0.5D以下の生徒6295名の右眼を対象として戸外活動が近視進行に与える影響について検討した。
・戸外活動時間は、1群2329名ではCtrl群より+40分、2群1929名では+80分として2年間調査した。
・戸外時間と戸外の光量は腕に付けた器具で測定した。
・2年間の-0.5D以上の近視化はCtrlでは24.9%、1群では20.6%、2群では23.8%に起こったが、Ctrl群で補正すると、1群では16%、2群では11%に発生していた。
・1群では-0.84Dの近視化と0.55mm眼軸長延長、2群では-0.91D、0.57mm、Ctrl群では-1.04D、0.65mmであった。
・戸外活動時間と光量は1群では127±30分/日と3557±970lux/分、2群では127±26分/日と3662±803lux/分、Ctrl群では106±27分/日と2984±806lux/分であり、1群、2群間には差はなかったが、Ctrl群より有意に多かった。
・5000 luxでの120-150分の戸外活動あるいは、蓄積光量が60万-75万luxでは、近視化の発生リスク比(IRR)を15%~24%減らす事ができた。(TY)
Rapid macular thinning is an early indicator of hydroxychloroquine retinal toxicity.
Melles RB et al(CA USA)
Ophthalmology 129(9): 1004-1013, 2022
・黄斑部厚がクロロキン網膜症の早期で客観的な指標になるかどうかを検討した。
・301名のクロロキンの長期服用者を対象として、最低4年間、最低4回のETDRSリング内のOCT検査を行い、通常のOCTやHPの10-2プログラムでのデータと比較した。
・219名のほぼ安定した長期服用者の網膜菲薄化は0.62±0.45μm/年であったが、82名では比較的急速に網膜菲薄化の時期があり、3.75±1.34μm/年であった。
・この中の38名では通常のOCTや10-2プログラムでも異常が認められ、総菲薄化量は25.1±6.2であり、通常の方法では異常がみられなかった患者での15.7±4.0μmとは有意差があった(p<0.01)。
・クロロキンによる網膜菲薄化はある時期に急速に起こる。
・ETDRSリング内の内層、外層の黄斑厚測定は通常の方法での異常がみつかる数年前に検出することができた。(TY)
Habitual Coffee Consumption Increases Risk of Primary Open-Angle Glaucoma
A Mendelian Randomization Study
Xi Li et al. Ophthalmology 129(9):1014-1021, 2022
・カフェイン摂取は糖尿病、いくつかの癌、パーキンソン病、アルツハイマー病と逆相関の報告があるが、眼圧に関してはさまざまな報告がある。
・既報では、コーヒー摂取者の方が眼圧が高く、緑内障のリスクが高くなるという報告が多いが、
・Blue Mountains Eye Study: 健常被険者を対象として習慣的なコーヒー摂取と眼圧には関係性がない
・日本のスタディ:コーヒー摂取者の方が眼圧が低い
・というものもある。
・UK Biobankのスタディでは遺伝的素因が強い場合、コーヒー摂取量が多いほど眼圧上昇、緑内障の頻度が高いと報告されているが、人口レベルでは相関は見られなかった。(昨年11月の勉強会で紹介 Ophthalmology 128(6),2021)・メンデルランダム化を用いて、ヨーロッパ人を対象として、コーヒー摂取と関連する遺伝子を同定 POAGのリスクを評価
・結果
・独立した遺伝子多型とPOAGとの関係
・コーヒー摂取(カップ/日)と関連する遺伝子多型 6 OR 1.241
・コーヒー摂取(多いvs 少ない/なしと関連する遺伝子多型 3 OR 1.155
・UK Biobankのコーヒー摂取量と関連する遺伝子多型 35 OR 1.727
・いずれにおいてもコーヒー摂取とPOAGが関連していた(MM)
Alcohol, Intraocular Pressure, and Open-Angle Glaucoma
A Systematic Review and Meta-analysis
Kelsey V. Stuart et al. Ophthalmology 129(9): 637-452, 2022
・アルコールの眼に対する急性の効果としては、一過性で一見容量依存的な眼圧低下があり、視神経乳頭血流の増加があり、理論的には緑内障に対する保護的な作用がある。しかし慢性的なアルコール摂取は神経変性疾患、新血管障害、内分泌疾患、全身の生化学および生理学的障害と関係し、これらの緑内障に対する長期的あるいは間接的な影響は不明である。・PubMed, Embase, Scopus 3つのデータベースから2人のレビューワーが調査
・34件のスタディ(アウトカム:眼圧 8件、OAG 24件、眼圧とOAG 2件)があり、10のスタディで絶対的な習慣的なeffect sizeは小さいもののアルコール摂取と21mmHg以上の高眼圧との関連を示唆していた。
・173058名の参加者を含む26件のスタディのうち11件がOAGとの関連を調査しており、meta-analysisの基準を満たしていた。
・アルコールと眼圧:わずかな正の関連あるいは全く関連性がなかった。
・アルコールとOAG:それぞれの研究のほとんどで関連性がないとの結果だが、メタアナライシスを行った場合には正の相関が示唆された(1.18;95%CI 1.02-1.36;P=0.03)
・OAGの有病率と発生率において同様の推定が示された。
・ただし各研究の方法論的な不均一、バイアスリスクなどから全体的なエビデンスの確実性は非常に低かった。
・アルコールの直接的なOAGリスクのメカニズムは不明だが、慢性的なアルコール摂取は末梢神経障害を引き起こす可能性があり、フリーラジカルによる酸化ストレス、交感神経系や視床下部-下垂体-副腎系への影響、直接的な毒性や炎症誘発物質が影響している可能性があるので、アルコール消費は緑内障発症に関する潜在的な修正可能な危険因子と考えるべきである。(MM)
Vertical internal limiting membrane stalk after macular hole surgery.
Stopa M et al(Poland)
Ophthalmology 129(7): 751-751, 2022
・62歳黄斑円孔の女性の症例報告。
・ILMフラップ移植を行った黄斑円孔女性で、6か月後には視力は20/80に上昇したが、視野中央部に暗い影が出てきたと訴えた。
・OCTで中心窩から1.19mm長のILMの柄のようなものがみられた。
・ILMの再編成であったが、再手術は行なわれなかった。
参照:臨眼 72(1): 14-23, 2018 Müller cell cone(TY)