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Ophthalmology

2013
120巻

肝移植後による補体Hの産生の変更とAMDとの関係

Ophthalmology 120巻(8号)2013

Age-related Macular Degeneration and Modification of Systemic Complement Factor H Production Through Liver Transplantation
Khandhadia S, Lotery AJ, et al. (UK)
Ophthalmology 120 (8):1612-1618, 2013
・肝移植で肝のCFH Y402H genotypeが変化することによる補体H産生の変更が、AMD発症に影響するかを調査
・5年以上前に肝移植を受けた55歳以上の西ヨーロッパ住民223名
・AMDの状態は標準的なgrading systemで評価。レシピエントのCFH Y402H genotypeはレシピエントの血液より採取したDNAより解析。ドナーのCFH Y402 genotypeはレシピエントのCFH Y402Hタンパクのアロタイプより推察。全身の補体の活動性は血漿よりenzyme-linked immunosorbent assayで測定。
・年齢・性別・喫煙状態・BMIで補正すると、肝移植患者においてAMDはドナーのCFH Y402H genotypeではなく(P=0.626)レシピエントのCFH Y402H genotypeと関連していた(P=0.036, OR 1.6, 95%CI;1.0-2.4)。【Tab.3】
・レシピエント血漿のCFH Y402Hタンパクのアロタイプはドナー組織のCFH Y402Hタンパクのアロタイプと100%一致していた(n=49)。
・血漿の補体の基質および活性化因子はAMDの有無で同程度だった【Fig.2】
・過去の報告(Rotterdam Study)と比較すると、肝移植患者はAMD(注;早期ARM含む)の有病率(64.6% vs.37.1%; OR3.09, P<0.001)およびCFH Y402H変異の率(41.9% vs. 36.2%; OR3.09, P<0.001)ともに高頻度であった。【Tab.1】
【結論】 肝における補体Hの産生の変更はAMDの存在と関連しない。さらに、AMDは肝移植患者における全身の補体の活動性と関連しない。これらの知見から、AMDの発病には眼内の部分的な補体の活動性がより重要な影響を及ぼしていることが示唆される。肝移植患者でAMDの有病率が高くなったのはCFH Y402H変異の率が上昇したためかもしれない。
*遺伝子治療により異常なCFHを直接または全身の遺伝子治療により正常なCFHに置き換えてもAMDの治療としては成功しないかもしれない(MK)

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