Relationsip of intraocular pressure and frequency of spontaneous retinal venous pulsation in primary open-angle glaucoma.
Seo JH et al(Korea)
Ophthalmology 119(11): 2254-2260, 2012
・POAGにおける眼圧IOPと自発的静脈拍動SVPの関連を調査した。
・POAG 229例229眼とコントロールとして、緑内障疑い者 205例205眼とで比較した。
・SVPはSpectralis HRAの動画で評価した。
・POAG患者を未治療時のIOPで3群に分けた。GroupA:IOP≦15、GroupB:IOP>15で≦21、GroupC:IOP>21。
・SVPはCtrlで、POAGよりも頻繁にみられた(86.3%:53.3% p<0.0001)。
・POAG群ではGroupA(40.2%)はGroupB(57.3% p=0.03)やGroupC(63.9% p=0.003))より有意に少なかったが、BとCの間には有意差はなかった。
・POAG群では眼圧(p=0.007)、視野のMD(p<0.0001)、屈折度(p=0.011)が有意にSVPと関連していた。
・SVPはPOAGでは頻度が低く、POAGの中では眼圧の低い場合には頻度が低かった。
・緑内障ことにNTGでは網膜静脈壁が硬化しているためにSVPの頻度が低く、乳頭縁出血が多くなっているのではないかと考えられる。
Effect of Lutein and Zeaxanthin on macular pigment and visual function in patients with early age-related macular degeneration.
Ma L et al(China)
Ophthalmology 119(11): 2290-2297, 2012
・50歳から79歳までの108名の初期AMDでルテインあるいはゼアキサンチンが黄斑色素や視機能を向上させるかどうかを検討した。
・ルテイン10mg/d(n=27)、ルテイン20mg/d(n=27)、ルテイン10mg/d+ゼアキサンチン10mg/d(N=27)、プラセボー(n=27)に分け、48週間内服した。
・黄斑色素濃度MPODと視機能を、開始前、24週、48週後に測定した。
・48週後の黄斑色素濃度は、L20群では0.076±0.022(M±SE)、L+Z群では0.058±0.027、有意に増加していた。ルテイン群では量依存性の増加であった(p<0.001)。
・20mgルテイン群とプラセボー群とでは、48週目の視力改善があり、コントラスト感度では3~6c/dで感度上昇があった。
・MPOPの増加は最高視力のlogMAR値の低下に関連があった(r=-0.31 p<0.01)。
・ルテインやゼアキサンチンの内服は初期のAMDでは黄斑色素濃度を上げ、視機能向上に役立っていると考えた
Choroidal thickenss in both eyes of patients with unilateral idiopathic macular hole.
Zeng J et al(China)
Ophthalmology 119(11): 2828-2333, 2012
・片眼性特発性黄斑円孔50例(円孔A群、円孔他眼B群)、コントロール50例(C群)で脈絡膜厚を測定した。
・黄斑下脈絡膜厚SFCTはA群206.82±67.09、B群228.34±80.71、C群248.88±63.10であり、A群とC群では有意差(p=0.002)があった。
・B群はC群よりも薄かったが、有意差はなかった(p=0.177)。
・黄斑円孔の病態に脈絡膜灌流が関与していることが示唆され、黄斑円孔の他眼も円孔になる可能性があることも示唆された。
Pediatric herpes simplex of the anterior segment
Shaohui Liu et al (Boston, Massachusetts)
Ophthalmology 2012; 119: 2003-2008
・16才以下53名57眼の単純ヘルペス角膜炎(HSK)、単純ヘルペス眼瞼結膜炎(HBC)、又はその両者。発症の平均年齢は5才。平均3.6年経過観察。18眼はHBCのみでそのうち4名は両眼であった。角膜炎症例39眼のうち74%には基礎疾患があった。HSKの30%は誤診されていた。角膜炎の79%には角膜瘢痕があり、26%は視力0.5以下となった。80%は再発した。
・誤った病名は非典型的ウイルス性結膜炎、EKC、フリクテン性角結膜炎、ブ菌性眼瞼角結膜炎、これは周辺角膜炎と角膜血管新生、眼瞼炎を伴うが、両側性である。繰り返す片眼の角結膜炎で角膜血管新生を伴い、角膜知覚が低下する時はHSVを強く疑うべきである。
・大人のHSV感染の特徴は樹枝状角膜炎であるが、小児期では強い眼瞼結膜炎と角膜実質炎が一般的である。乱視も強く残存し、今回2D以上の乱視が1/4以上に残り、弱視にも注意すべきである。
・合併症としては、発熱、肺炎、上気道感染、耳の感染症、心理的ストレス、全身的な免疫力の低下、免疫抑制剤の使用、I型糖尿病、小児リウマチ性血管炎など。HSVによる角膜障害が両側に発症する場合は喘息等の基礎疾患がありうる。これはTh-1細胞機能が低下しているためである。アトピー患者では抗原が、まずTh-2に反応し、この反応がサイトカイン(特にインターロイキン4)をひきおこすためTh-1反応を介する眼HSVに対する有効な免疫反応が起こりにくくなるからと思われる。
・小児期のHSKは誤診、基礎疾患を有すること、再発、視力低下の確率が高い。経口アシクロビルは有効だが、用量は小児の成長に合わせて変更していかなければならない。(YM)
Choroidal Thickness in Both Eyes of Patients with Unilateral Idiopathic Macular Hole
Zeng J et al. (China)
Ophthalmology 119:2328-2333,2012
・特発性黄斑円孔(IMH)眼と、その反対眼と、年齢や性別のマッチした健康な眼の脈絡膜厚を比較検討した。
・(1)IMH 50眼(男性13人、女性37人、平均年齢66.08歳)
Stage2: 6眼、Stage3 : 5眼、Stage4: 39眼
(2)IMHの対眼48眼(2眼は弱視のため除外)
・(3)コントロール50眼(すべて右眼)
・OCTにより、図1に示されるポイントの脈絡膜の厚さ(RPEに対応している高反射する外側ラインから強膜の内側面まで)を測定した。また、黄斑円孔の突端と基礎径が測定された
・平均黄斑下脈絡膜厚(SFCT)(1)206±67.09μm(2)228.34±80.71μm(3)248.88±63.10μm
IMH目の平均の頂端と基礎径はそれぞれ、514.28±210.00μm、918.04±264.76μm
・SFCTは(1)は(3)より際立って薄かった。(P = 0.002)(2)は(3)より薄かったが統計学的有意差はなかった。(P = 0.177)、(1)は(2)よりどのポイントでも薄かったが、特に鼻側3mmのポイントで優位に薄かった。
IMHの突端と基礎径の大きさは脈絡膜厚と関係がなかった。
・脈絡膜の低還流と菲薄化がIMHが出来る前に起こるイベントの一つと考えられる。
この事が正しければ、薄い脈絡膜を持っている反対眼がIMHになりやすいかもしれないので経過観察が必要である。(CH)
The CD4/CD8 Ratio in Vitreous Fluid Is of High Diagnostic Value in Sarcoidosis
Kojima K, Maruyama K, et al.(京都府大)
Ophthalmology 119(11):2386–2392, 2012
・国際診断基準を満たした38例51眼の眼サルコイドーシス患者、非サルコイドーシスの対照群として26例27眼の他の原因のぶどう膜炎患者
・硝子体液を採取し細胞学的検査、PCR、フローサートメトリーを施行。末梢血を採取して同様に解析し比較
・硝子体液中のTリンパ球CD4/CD8比は対照群と比較し眼サルコイドーシス群で有意に高値【Fig.2A】
・眼サルコイドーシス群において、硝子体液のTリンパ球CD4/CD8比(平均40.7、95%CI 3.5-77.9)は末梢血のそれ(平均3.0、95%CI 2.5-3.5)と比べて有意に高値であった【Fig.2C】。非サルコイドーシス群では硝子体液と末梢血でのCD4/CD8比には有意差みられず【Fig.2D】。
・末梢血のTリンパ球CD4/CD8比は、眼サルコイドーシス群(平均3.0、95%CI 2.5-3.5)が非サルコイドーシス群(平均2.0、95%CI 1.5-2.5)より有意に高値であった【Fig.2B】。
・硝子体液中のTリンパ球CD4/CD8比増加(CD4/CD8 >3.5)の感度は100%、特異度は96.3% *気管支肺胞洗浄(BAL)液でのCD4/CD8 増加(>3.5)での感度は53%、特異度は94%
【結論】硝子体に浸潤したリンパ球のCD4/CD8比の増加(>3.5)は、肺サルコイドーシスにおけるBAL液中のCD4/CD8比増加と比較して、眼サルコイドーシスに対し高い診断的価値がある。さらには末梢血Tリンパ球のCD4/CD8比の高値は眼サルコイドーシスの臨床検査所見のひとつに違いない。細胞学的分析を用いた診断的硝子体切除は眼サルコイドーシスの有用な付加診断となりうる。(MK)
Orbital cerebrospinal fluid space in glaucoma: The Beijing intracranial and intraocular pressure (iCOP) Study.
Wang N et al(China)
Ophthalmology 119(10): 2065-2073, 2012
・脳脊髄圧(CSF-P)が低いことは緑内障の病態に関与していると考えられている。
・眼窩内のCSF-Pを測定する代わりに視神経のくも膜下腔の幅(ONSASW)を眼圧の低いNTG(IOP≦21)21名、眼圧の高いPOAG(IOP>21)18例、正常者21例で測定した。
・脂肪抑制T2強調MRI画像で、眼球後方3,9,15mmの部位でONSASWを測定した。
・この全ての場所で、ONSASWは、NTGではPOAGや正常者と優位差がみられた(p<0.001, p<0.001, P=0.003)。
・3箇所の平均値では、ONSASWはNTG:0.61±0.10mmで、正常者:0.72±0.08、POAG:0.75±0.13であり、視神経鞘直径はNTG:3.94±0.42、正常者:4.38±0.22、POAG:4.13±0.48、視神経直径はNTG:2.71±0.29、正常者:2.94±0.20、POAG:2.63±0.31であった。
・NTGでの眼窩視神経くも膜下腔が狭いことから、NTGでは眼窩内のCSF-Pが低いことが示唆された。
Time course of development of posterior vitreous detachments after phacoemulsification surgery.
Hikichi T(札幌市)
Ophthalmology 119(10): 2102-2107, 2012
・合併症のないPEA+foldable IOL挿入手術後のPVDの発生率を術前にPVDのない575眼で3年間調査した。
・PVD累積発生率は1.0%(1W)、3.1%(1M)、5.4%(3M)、7.8%(6M)、11.0%(12M)、15.3%(18M)、18.4%(24M)、23.1%(30M)、30.0%(36M)であった。
・PVDが発生したうちの11/172(6.4%)が網膜裂孔を発症、格子様変性のあった52眼中8眼(15.4%)では、なかった120眼中3眼(2.5%)の約6.2倍で、PVDに伴った網膜裂孔が発生した(P=0.003)。
・白内障手術後にPVDの発症は加速されるので注意が必要。
Asymmetric elongation of foveal tissure after macular hole surgery and its impact on metamorphopsia.
Kim JH et al(Korea)
Ophthalmology 119(10): 2133-2140, 2012
・直径400μm以下の黄斑円孔MHの手術を受けた31例31眼について、傍中心窩の外網状層間の距離の変化を水平と垂直断で、6ヶ月間調査し、非対称性の拡張と視力や変視症スコア(M-score)と比較した。
・水平方向距離は361.6±99.6μm(術直後)、558.8±93.3(2M)、575.4±94.8(6M)であり、水平法光距離は324.2±93.8μm(術直後)、481.2±104.6(2M)、494.6±85.0(6M)であり、いずれも有意に増加しており(p<0.001)、水平方向が有意に長かった(p<0.001)。
・水平断では鼻側が90.3%で長くなっており、垂直断では61.3%で上方に長くなっていた。
・この非対称性の延長は6ヶ月後のM-score地と有意に相関していた(p=0.044)。
Ability and reproducibility of Fourier-Domain optical coheernce tomography to detect retinal nerve fiber layer atrophy in Parkinson’s disease.
Garcia-Martin E et al(Spain)
Ophthalmology 119(10): 2161-2167, 2012
・Parkinson病者(PD)75名と正常者75名とで、網膜厚や網膜神経線維層RNFL厚をCirrusとSpectralisの2種類のOCTで測定した。
・Cirrusでの乳頭周囲RNFL測定、Spectralisでの乳頭周囲RNFL測定、Spectralisでの新しいNsite Axonal Analyticsの3種類の測定を行った所、全てでPDのRNFL萎縮が検出されたが(p=0.025, p=0.042, p<0.001)、Nsite測定がsubclinicalな障害までも検出するのには一番感度が高かった。
Quantitative computed tomographic predictors of compressive optic neuropathy in patients with thyroid orbitopathy
Ezekiel Weis et al (Alberta, Canada)
Ophthalmology 2012; 119: 2174-2178
・甲状腺機能異常による圧縮性視神経症(DON)において眼窩骨の幾何学と眼窩内容積との関係を評価する。
・甲状腺起因性眼窩症99人198眼全員に臨床検査と眼窩部CT、内容積の分析を実施。
・圧縮性視神経症が内直筋の体積(P=0.005)、外直筋の体積(P=0.011)、上方筋群の体積(P=0.04)、全直筋の体積(P=0.015)と関連があった。下直筋の体積(P=0.725)と眼窩容積(P=0.494)、骨の眼窩尖端部の角度(P=0.895)、眼球径、骨内壁の輪部(P=0.414)は関連無かった。内直筋の体積が唯一の独立した徴候と思われた(P=0.005)。
・内直筋の直径(P=0.003)、内直筋と外直筋の直径の組み合わせ(P=0.006)、全直筋の直径(P=0.016)が視神経症と関連があったが、外直筋(P=0.117)、上直筋(P=0.092)、下直筋(P=0.725)の直径は関係無かった。
・DONとは視神経自体の圧縮又は眼窩尖端部の軟組織の体積の増加による血流の圧縮、眼窩後方の圧の増加、又はまれに視神経の伸展が原因である。診断が困難で悪化してから発見されることもまれでない。臨床症状では、外眼筋の動きの極度の悪化、眼瞼下垂、神経周囲脂肪の消滅はDONが強く疑われる。今回、CT上AXIALスキャンで内直筋の体積と直径を測定することがDONの発見に重要であるとわかった。
・これは解剖学的に眼窩尖端部で視神経が眼窩内に入る時に内直筋のみと非常に接近することによると説明される。(YM)
Descemet’s stripping endothelial keratoplasty: Long-term graft survival and risk factors for failure in eyes with preexisting glaucoma
Arundhati Anshu et al (Indiana, USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1982-1987
・DSEK453例のうち、緑内障は無い(C群)、緑内障があり薬物療法を行なっていた(G群)、以前に緑内障手術を受けた(GS群)と分類した。レーザーのみの治療はG群とした。
・移植片の残存率は、1,2,3,4,5年後で、
C群(342例)――99%,99%,97%,97%,96%
G群(65例)――100%,98%,98%,96%,90%
GS群(46例)――96%,91%,84%,69%,48%
GS群のうち、トラベクレクトミーのみ(26例)では5年後59%
GS群のうち、ドレナージを使用した(20例)では5年後25%
・薬物療法のみの緑内障眼は、手術を行なった緑内障眼よりも5年後の移植片残存率は明らかに良好であった。DSEKにおいて緑内障が存在している症例での長期間の移植片残存率は、これまでの緑内障に受けていた治療方法と移植後の拒絶反応の発生に影響されるとわかった。
・チューブシャントによるドレナージ手術を行なった緑内障眼では、チューブの内皮への接触又は血液房水関門の途絶で起こる炎症産物の流入が内皮障害の原因となりうると推測する。(YM)
The Handy Eye Chart: A New Visual Acuity Test for Use in Children
Cromelin CH, Hutchinson AK,et al.(USA-GA)
Ophthalmology 119(10):2009–2013, 2012
・なじみのあるシンボル・文字を使ったハンドジェスチャーをもとにしたシンプルな視力検査“Handy Eye Chart”を考案
・Handy Eye Chart:『thumbs-up』『circle』『palm』『C』の四つのシンボルを使用、ETDRSチャートと同様に(対数線形関係に)配列【Fig.1】
・小児60名(6-16歳)にHandy Eye Chart:とETDRSチャートの両方で視力検査
・視力結果は強い線形関連(r=0.95)を示し、視力結果の差の平均は-0.03(95%信頼区間-0.05~-0.01)であった
・Handy Eye Chartの方が過小評価する傾向
【結論】今回の調査では新しい視力検査表が6-18歳の小児の20/16(logMAR -0.1)から20/200(logMAR 1.0)の視力測定にとって信用のある結果を示すことがわかった(MK)
Longer axial length is protective of diabetic retinopathy and macular edema.
Man RK et al(Australia)
Ophthalmology 119(9): 1754-1759, 2012
・DRあるいはDMEを持っている人の球面等価屈折度SE、眼軸長ALを調べ、網膜症との関連を調べた。
・SEをオートレフで測定し、AL、角膜曲率半径CC、前房深度ACDをIOLMasterで測定した。
・DRはmodified Airlie House分類を用いて2枚の眼底写真で判定し、DMEは眼底写真とOCTで判定した。
・DRの重症度はDRなし(ETDRS level=10-15)、軽症非増殖性NPDR(level=20)、中等度NPDR(level=31-43)、重症NPDR(level=53-60+増殖性DR level=61-80)。DME重症度は軽度、中等度、重症とした。
・630眼中208眼(33.0%)がDRがあった。
・多変量解析では、眼軸が長いほど、軽症NPDRは少なく(OR=0.58 95%CI=0.41-0.83 眼軸長1mm増加との相関はp=0.006)、中等度NPDRも少なく(OR=0.73 95%CI=0.60-0.88, p=0.002)、重症DRも少なかった(OR=0.67 95%CI=0.53-0.85, p=0.001)。
・ただ、DMEに関しては、軽症DMEく(OR=0.75 95%CI=0.56-0.86, p<0.001)、中等度DMEも少なかったが(OR=0.72 95%CI=0.56-0.93, p=0.002)、重症DMEでは関連がなかった。
・SE,ACD,CCとDRとの間に関連は見られなかった
Combined transepithelial phototherapeutic keratectomy and corneal collagen cross-linking for progressive keratoconus.
Kymionis GD et al(Greece)
Ophthalmology 119(9): 1777-1784, 2012
・進行性の円錐角膜の治療としての角膜collagen cross-linking(CXL)を行う際、角膜上皮を剥離する方法として、17例19眼の経上皮治療的角膜上皮切除(t-PTK)を行った群と、18例19眼の回転ブラシを用いて機械的な角膜上皮剥離を行った群の、どちらの成績が良いか検討した。
・両群とも術中、術後の合併症はなかった。
・t-PTK群の非矯正遠方視力UDVAと矯正遠方視力CDVAのlogMARは、12ヶ月後に、それぞれ0.99<小数点0.10>±0.71→0.63<0.23>±0.42(p=0.02)、0.30<0.50>±0.26→0.19<0.65>±0.18(p=0.008)に上昇した。
・一方、ブラシ群ではUDVAもCDVAも12ヶ月後に有意な変化はなかった(p>0.05)。
・角膜乱視度は、t-PTK群では -5.84±3.80D→ -4.31±2.90(p=0.015)に上昇したが、ブラシ群では有意な改善はみられなかった(p>0.05)。
・角膜内皮密度は両群とも有意な変化はなかった(p>0.05)。
Reduction in intraocular pressure after cataract extraction: The ocular hypertension treatment study.
Mansberger SL et al(OR USA)
Ophthalmology 119(9): 1826-1831, 2012
・42例63眼の高眼圧症で白内障手術を行った例と、743例743眼の手術を行わなかったコントロール眼で、契機日split date前後の眼圧変動を調べた。
・対象とした高眼圧症は、40-80歳で、1眼眼圧が24-32、他眼眼圧が21-32mmHgで、眼圧点眼治療や手術を行った症例は除外した。
・眼圧はsplit date前の最低3回測定した平均とし、split date以降の眼圧は術日、6、12ヶ月目を含めた最低3回の平均とした。
・白内障群では術後眼圧は有意に低下(23.9±3.2→19.8±3.2 p<0.001)しており、少なくとも36ヶ月後も低下していた。
・術後の平均眼圧低下量は16.5%で、15.9%の症例で術後30%以上低下、23.8%の症例で術後20%以上低下していた。
・眼圧低下が大きかった症例では術前の眼圧が高かった。
・コントロール群ではsplit date前後の変化はなかった。
Longer Axial Length Is Protective of Diabetic Retinopathy and Macular Edema
Ryan Eyn Kidd Man et al (Victoria ,Australia)
Ophthalmology 2012 ;119 :1754-1759
・18才以上のDM患者に、眼軸、角膜曲率半径、前房深度をIOLマスターで測定。DMRは2象限の眼底写真をもとに分類し、DMEの存在は眼底写真とOCTを用いて判断した。
・367人630眼中306眼遠視、188眼正視、104眼軽度近視、32眼中~重度近視
DMR 軽症24 中等度96 重症88例
DME 軽症57 中等度36 重症55例
DMRは若い、男性、長期DM、HbA1C高値、短い眼軸、黄斑中心の厚みがより厚い者に多くみられた。
・前房深度は眼軸の一部であるが、それとDMRに関連はみられなかったことにより、DMR抑制に働くのは硝子体深度であると思われる。網膜の組織が薄ければ血流が低下し、DMRの危険にさらされづらくなる。網膜毛細血管圧の上昇が、毛細血管壁の進展をきたし、漏出(浮腫)や破たん(出血)といったDMRの原因となりうる。眼球が長くなれば血管が進展し、薄くなる。このため血流が低下し、血管壁への圧が減少し、DMR発症抑制に働くと推測されている。(YM)
Cellular Changes of the Corneal Epithelium and Stroma in Herpes Simplex Keratitis :An In Vivo Confocal Microscopy Study
Pedram Hamrah et al (Harvard Medical School)
Ophthalmology 2012 ;119 :1791-1797
・単純ヘルペス角膜炎の患者を角膜神経支配も含め、生体内共焦点顕微鏡検査にて角膜上皮細胞と角膜細胞の形態学的特徴を分析する。
・31名の単純ヘルペス角膜炎患者の所見の無い片眼も含め、15名の正常眼と比較した。
・重症の感覚欠損の患者では1㎟あたり852個と、HSKでの表層上皮細胞の密度は、対照群の2,435個と比し、明らかに減少した(P=0.008)。上皮細胞の面積は、HSK眼ではその反対側又は対照群の407.4μ㎡と比し、835.3μ㎡と、2.5倍に拡大していた(P=0.003)。落屑し、高反射の角膜上皮細胞が、明らかにHSK眼の角膜上皮にみられたが、対照群にはみられなかった。基底上皮細胞などには両者で差がみられず、表層上皮細胞密度と形態的な特徴が、神経の長さ、数、角膜知覚に強く関連していた。
・感覚神経は角膜上皮の保存に重要な役割をはたす。生体内で神経ペプタイドは角膜細胞の増殖に影響する。一部又は完全な角膜知覚の欠損は角膜上皮の恒常性に障害をもたらし、原因はサブスタンスP、神経成長因子、グルカゴン様ペプタイドなどの神経ペプタイドの欠損である。神経の欠損は角膜上皮細胞の消滅に有害で、細胞分裂の減少をひきおこす。神経欠損後は炎症反応が原因で上皮の恒常性が欠如する結果となる。(YM)
Comparing Outcome Criteria Perfomance in Adult Strabismus Surgery
Sarah R. Hatt et al (Minnesota, USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1930-1936
・成人の斜視手術の第1の目的は、複視を減らしてHRQOL(健康に関する生活の質)を向上することである。その他の目的としては、両眼視の改善、両眼視野の拡大、頭位の改善、見かけ上の問題など。しかしこれまで評価の基準が無かった。
・171例の斜視手術を受けた成人159人(平均50才)に、術前と術後6週で「成人斜視20のQOL質問表」に返答。術前斜視の分類は、複視あり(117)、複視なし(38)、非典型的複視(病歴上複視があるがfusion能力がない、抑制の無い小児期斜視など)(16)。成功度の判定のため、術後の動き、複視、HRQOLの基準を定義し、これら単独と組み合わせで評価した。条件として①動きの基準は、カバーテストで10プリズム以下となること ②複視の基準は、無いか又はprimary distanceと読書時にごくたまに自覚する ③HRQOL基準は95点以上(全くない100、まれ75、ときどき50、しばしば25、いつも0点)。
成功率は「動き」単独で成功(90%)、一部成功(8%)、失敗(2%)
〃 「複視」単独で 〃 (74%)、 〃 (13%)、 〃 (14%)
〃 「HRQOL」単独で 〃 (60%)、 〃 (26%)、 〃 (15%)
基準の組み合わせで最も高かったのは、動きと複視(67%)、低かったのは動き、複視、QOLの組み合わせで(50%)
・成人の斜視手術の結果を評価すると、動き単独での成功率が最も高かったが、動きだけでは術後の評価として不十分である。複視も加えて評価することが臨床的に標準的である。HRQOLを加えると成功率が下がるのは、6週経過しても患者自身に不快や赤みが残ることによるが、斜視の患者自身にうつやネガティブ思考もあると思われた。(YM)
Visual Acuity, Optical Components, and Macular Abnormalities in Patients with a History of Retinopathy of Prematurity
Wei-Chi wu et al
Ophthalmology 2012; 119: 1907-1916
・ROPの病歴を持つ子供に眼球構成要素とSD-OCT検査をし、視力との関係をみる。
・6才から14才の133名を4グループにわける。全患者で後極は正常と思われた。
グループ1 LKかクライオで治療の既往あり
グループ2 何も治療せずにROPが減退した
グループ3 未熟児に生まれても網膜症なし
グループ4 満期で分娩
・ROP治療した患者は他と比し、明らかに角膜曲率が強く、前房が浅く、水晶体が厚く、黄斑部が厚い。しかし、硝子体深度と眼軸は正常であった。SD-OCTで網膜内層の停滞を認めた。周辺に治療したROP患者が視力が悪いことは、明らかに在胎週数に関係していたが、黄斑部の厚さや眼球構造には無関係だった。これらの結果が示すのは、これらの患者でみられる視力不良は、完全に異常な中心窩の発達によるわけではなく、未熟が原因の異常な視神経の機能や、大脳皮質視覚野の不規則性もまた視機能の発達に関与しているかもしれない、ということであった。(YM)