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Ophthalmology

2010
117巻

20ゲージ硝子体手術時の医原性網膜裂孔の形成

Ophthalmology 117巻 (9号) 2010

Risk of iatrogenic peripheral retinal breaks in 20-G pars plana vitrectomy.
Ramkissoon YD et al(UK)
Ophthalmology 117(9): 1825-30, 2010
・20-G、3ポート硝子体手術における医原性網膜裂孔について、Moorfields Eye Hospitalで2005/6/1-2006/6/1に行った645眼について検討。
・術前に裂孔が存在したもの、裂孔原性網膜剥離があったもの、経硝子体術眼、赤道部より後極側に裂孔が発生したものは除外した。
・術中に医原性裂孔98/645(15.2%)で発生。そのうち11例(11/645 1.7%)は術後に裂孔原性網膜剥離を発症した。
・裂孔が発生した疾患は、牽引性網膜剥離22.2%、黄斑円孔18.1%、IOL偏位16.7%、網膜上膜13.9%であった。
・裂孔の発生部位は上方網膜で多く(p<0.01)、41.5%は10時から2時の間にみられた。
・PVDを発生させる必要があった場合には2.9倍多かった(95%CI=1.8-4.7 p<0.001)。
・また、有水晶体眼では2.4倍多かった(95%CI=1.42-3.96 p=0.001)。
・医原性裂孔は考えられていたよりずっと多く、だいたい、裂孔の4割は強膜創口部での牽引で発生していた。

2010
117巻

シリコンIOL混濁と星状硝子体症との関連について

Ophthalmology 117巻 (8号) 2010

Calcification of different designs of silicone intraocular lenses in eyes with asteroid hyalosis.
Stringham J et al(UT USA)
Ophthalmology 117(8): 1486-92, 2010
・各種のシリコンIOLの石灰化と星状硝子体症との関連を検討した。
・IOL後面混濁の白濁化による視力障害のために摘出した16個のシリコンIOLについて、石灰化の為に摘出した111眼の親水性アクリルIOLをコントロールとして検討した。
・16個のシリコンIOLは8つの異なったシリコン材質で、移植後9.21±3.66年後に摘出されていた。
・12眼でYAGレーザーが施行されており、部分的にはIOLの沈着が減少したが、その後に混濁は増加していた。
・16眼中13眼では星状硝子体症があったが、残り3眼ではその記載は見られなかった。
・沈着はIOL後面のみにみられ、成分はカルシウムとリン酸塩であった。
・一方、摘出した親水性アクリルIOLには星状硝子体症の既往はなかった。
・この16例を含め、文献的には22例のシリコンIOL摘出の報告があり、全体の86.4%に星状硝子体症が確認されている。

2010
117巻

線維柱帯切除術の前処置としてのNSAIDとステロイド点眼薬の効果

Ophthalmology 117巻 (7号) 2010

Preoperative nonsteroidal anti-inflammatory drug or steroid and outcomes after trabeculectomy. A randomized controlled trial.
Breusegem C et al(Bergium)
Ophthalmology 117(7): 1324-30, 2010
・線維柱帯切除術の術前に、NSAID点眼あるいはステロイド点眼を使用することの効果を検討した。
・2005.7~2007.10の間に第1回目の手術として線維柱帯手術を行った54例を、NSAID群(0.5% Ketorolac)、ステロイド群(0.1% fluorometholone)、プラセボー群(人工涙液)に分けて検討した。
・手術の1か月前から、1日4回点眼し、術1,2日、1,2,4週、3,6,12,18,24月後に検討した。
・術前の投薬数は2.3±0.9、眼圧は21.0±6.0、術後眼圧は16.5±1.8、平均観察期間は23.6±4.0月。
・1年以内に濾泡再建が必要になったものは、プラセボー群では41%、NSAID群では6%、ステロイド群では5%(p=0.006)。
・1年以内に眼圧下降点眼薬が必要になったものは、プラセボー群では24%、NSAID群では18%、ステロイド群では0%(p=0.054, p=0.038:ステロイド群と他群)。
・ステロイド群では全観察期間で有意に点眼薬が少なかった(p=0.007)。
・術前1か月前からのNSAID点眼やステロイド点眼は術後の濾泡再建の必要性が有意に少なくなっていた。
・また、ステロイド群では他の群と比較して術後の点眼薬が有意に少なくて済んだ

2010
117巻

眼圧日内変動に対する夜間ギャッジアップの効果

Ophthalmology 117巻 (7号) 2010

Effect of sleeping in a head-up position on intraocular pressure in patients with glaucoma.
Buys YM et al(Canada)
Ophthalmology 117(7): 1348-51, 2010
・夜間に30度頭部を上げて寝た時の夜間眼圧の変化を検討した。
・眼圧コントロール良好で、最近、乳頭辺縁出血のみられた17例17眼について夜間眼圧を検討した。
・初回は頭を真直ぐ横にして寝た状態で、2回目は30度頭を上げた状態で寝た状態で、夕方6時から翌朝8時まで眼圧と血圧を2時間おきに測定した。
・18、20、22、8時は座った状態で、0、2、4、6時は寝た状態(flat か30度頭上げ)で測定した。
・覚醒時(18,20,22,8時)は両者間に有意差はなかった。
・0-6時では、平均眼圧は30度頭上げでは真直ぐの場合に比較して平均3.2mmHg低かった(p=0.03 95%CI=0.25-6.1mmHg)。
・17例中16例では眼圧は頭上げの状態で低かった。
・6/17例(35%)では、30度頭上げでは、眼圧は20%以上低かったが、血圧には差はなかった。
・頭上げた状態で寝ると眼圧下降が得られるが、個人差があり、今回のデータでは1/3の人で20%低下が得られた。

2010
117巻

眼瞼麻酔時の痛みに対する振動の効果

Ophthalmology 117巻 (7号) 2010

Vibration-assisted anesthesia in eyelid surgery.
Fayers T et al(Canada)
Ophthalmology 117(7): 1453-7, 2010
・上眼瞼手術の時に前頭部に振動を与えると局所麻酔時の痛みが減るかどうか検討した。
・両眼の内、片眼では振動を与え、他眼では触れているだけで、痛みを0-10のスケールで答えてもらった。
・0:無痛、10:耐えがたい痛み。
・振動を与えた場合は、痛みスコアは3.3で、コントロールでは4.5であった(p=0.0003)。
・73%の人は、振動があった方が痛みがなかったと答えている

2010
117巻

アマンタジンの角膜内皮障害

Ophthalmology 117巻 (6号) 2010

The effect of amantadine on corneal endothelium in subjects with Parkinson’s disease.
Chang KC et al(Korea)
Ophthalmology 117(6): 1214-9, 2010
・アジアインフルエンザやパーキンソン病治療薬として使用されているアマンタジンの角膜内皮障害について検討した。
・パーキンソン病に対してアマンタジンを内服している169例169眼とコントロール群169例について検討。
・アマンタジン群では有意にECD(cells/mm2)が低下 2662.5±29.1(SE) vs 2784.7±25.9(SE) p=0.002。
・Hexagonality(%)が低下 56.9±1.1(SE) vs 61.0±0.9(SE) p=0.004。
・ばらつき率が上昇 35.9±0.6 vs 32.7±0.5 p<0.001。
・内服期間が長いほどECD低下は大きかった(p<0.05)。
・アマンタジンは長期に使用すると用量依存性に角膜内皮障害効果がある。

2010
117巻

網膜中心静脈閉塞症に対するレーザー脈絡膜網膜静脈吻合

Ophthalmology 117巻 (5号) 2010

The central retinal vein bypass study: A trial of laser-induced chorioretinal venous anastomosis for central retinal vein occlusion.
McAllister IL et al(Australia)
Ophthalmology 117(5): 954-65, 2010
・非虚血性網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に対する治療としてのレーザー脈絡膜網膜静脈吻合(L-CRA)の効果について検討。
・非虚血性CRVOで、3ヶ月以上経過観察でき、視力が20/50以下の連続113例につき、L-CRAを58例、通常の治療55例に振り分けた。
・18ヵ月後の視力と、網膜虚血や不利益な症状の発現につき検討。
・治療はArgonレーザーで乳頭から2-5DD以内に50μm、0.1秒露光、3.5-6.0Wで、1発目は静脈縁に行いBruch膜破綻を狙い、2発目は静脈縁上に行い静脈壁破綻を狙った。
・静脈縁が破壊されなかったときはYAGレーザ―で2.0-4.0mJでその静脈縁上を1発照射した。
・吻合ができなかった場合は、2か月後に同様の治療を行い、最高3回まで行った。
・L-CRAを試みた55例の内、42例(76.4%)で吻合ができた。
・吻合形成例では18か月後にはコントロール眼よりETDRS Chartで11.7文字視力改善が得られた(p=0.004)。
・虚血性CRVOへの移行はコントロール眼の20.8%、治療眼の9.6%で起こった(p=0.33)。
・治療眼の内、吻合が形成された群では虚血性CRVOへの移行は4.9%であった(p=0.03)。
・L-CRAの部位に新生血管の発現は、10/55(18.2%)であり、黄斑牽引あるいは遷延性硝子体の為に硝子体手術が必要になった例は5/55(9.1%)であったが、注意深い経過観察と、早期の対応によって副作用は克服できる。

2010
117巻

非接触広角(200度)眼底カメラ

Ophthalmology 117巻 (4号) 2010

Ultra wide-field angiographic characteristics of branch retinal and hemicentral retinal vein occlusion.
Prasad PS et al(CA USA)
Ophthalmology 117(4): 780-4, 2010
・78名80眼のBRVO、hemicentral RVOの周辺部の血管撮影を行った。
・用いた眼底カメラは、Optos C200 MA scanning laser ophthalmoscope (Optos PLC, Dunfermline, UK)で、非接触型で、200度迄の眼底検査ができるものである

2010
117巻

眼内への microplasmin注入の後部硝子体剥離効果

Ophthalmology 117巻 (4号) 2010

A placebo-controlled trial of microplasmin intravitreous injection to facilitate posterior vitreous detachment before vitrectomy.
Benz MS et al(TX USA)
Ophthalmology 117(4): 791-7, 2010
・硝子体手術を予定した患者に対して、術前の硝子体内microplasmin注入の安全性と効果について検討。
・Phase 2, multicenter, double-masked clinical trialである。
・黄斑硝子体牽引あるいは黄斑円孔での手術予定患者125例である。
・placebo(n=30)、Microplasmin (25μg:n=29、75μg:n=33、125μg/100μl:n=32)をPPVを予定した7日前に硝子体内注入し、状態が改善したら手術は中止した。
・注入後7日目の全PVDの比率は、それぞれ、10%, 14%, 21%, 31%であった。
・注入後7日目までにPVDが進展した比率は、7%, 21%, 21%, 28%であり、125μgではplaceboより有意にPVDが進展していた(p=0.04)。
・35日で、PPVが不要になった率は、3%, 10%, 15%, 31%、180日目では 3%, 7%, 15%, 28%であった。
・35日目と180日目でPPVを中止した比率は、125μgとplaceboとの間に、有意差があった(p<0.01, p=0.01)。
・125μg注入で黄斑硝子体牽引、黄斑円孔が手術せずに治癒した比率は、35日目では 3/11例, 7/20例で、180日目では 3/11例, 6/20例であった。
・125μgのMicroplasmin硝子体内注入はPVDを進展させ、硝子体手術を不必要にさせることもできる。

2010
117巻

経結膜25G硝子体手術時の細菌汚染の危険性

Ophthalmology 117巻 (4号) 2010

Bacterial contamination of the vitreous cavity associated with transconjunctival 25-gauge microincision vitrectomy surgery.
Tominaga A et al(大阪大)
Ophthalmology 117(4): 811-7, 2010
・経結膜25G小切開硝子体手術(MIVS)と従来の20G硝子体手術(PPV)とで、硝子体腔の細菌汚染率を検討した。
・81例81眼を2方法にランダムに割り振り、結膜嚢培養を術前の0.5%moxifloxacin点眼をする前と後、硝子体液を手術の開始時と終了時に採取した。
・25G MIVS群40眼、20G PPV群41眼で、それぞれの細菌分離陽性率は 77.5%, 62.3%, 22.5%, 0%と、82.9%, 63.4%, 2.4%, 0%であった。
・両群とも抗生剤点眼後は有意に減少(p<0.001)。
・硝子体液では、開始直後では MIVS群で有意に高かった(p=0.007)。
・多変量解析では、OR=11.27 95%CI=1.31-96.79 p=0.027、となり、MIVS群で細菌汚染が高くなっていた。
・P acnesがその80%を占めており、硝子体液からは最も頻繁に検出された。
・25G trocarシステムでは結膜嚢細菌が硝子体内へ入るが、術中に殆どの場合は消失している。

2010
117巻

眼瞼弛緩症候群と睡眠時無呼吸症候群

Ophthalmology 117巻 (4号) 2010

The associations of floppy eyelid syndrome: a case control study.
Ezra DG et al(UK)
Ophthalmology 117(4): 831-8, 2010
・眼瞼弛緩症候群(FES)と円錐角膜、睡眠時無呼吸症候群(OSAHS)との関連を調べた。
・FESの102例と、コントロールとして年齢、性、BMIをマッチさせた糖尿病網膜症102例を比較した。
・FESと有意に相関していたのは、OSAHS(p=0.0008)、円錐角膜(p<0.0001)、睫毛下垂(p<0.0001)、皮膚弛緩(p=0.02)、 眼角の緩み(p=0.02)、上眼瞼の弛緩(p=0.001)、眼瞼の開き具合(p=0.004)、眼瞼挙筋機能(p=0.005)であった。

2010
117巻

ホルモン補充療法と白内障の発症率

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Hormone replacement therapy in relation to risk of cataract extraction. A prospective study of women.
Lindblad BE et al(Sweden)
Ophthalmology 117(3): 424- 30, 2010
・閉経後の女性において、ホルモン補充療法(HRT)と白内障手術の罹患率との関連を検討した。
・49-83歳の閉経後女性30,861で検討。98か月の間の4,324例の白内障手術で、HRTではHRTを受けていない人より、白内障手術率は14%多かった(RR:rate ratiol=1.14 95%CI=1.07-1.21)。
・現在HRTを受けている人では18%多かった(RR=1.18 95%CI=1.10-1.26)。
・HRT期間と白内障手術率との間には関連があった(p=0.006)。
・現在10年以上HRTを受けている人では、多変量RR=1.20(95%CC=1.06-1.36 p=0.001)。
・アルコールを日に13g(ワイン1杯、ビール1本程度)以上摂取する人では、現在HRTを受けている人は、HRT受けずアルコール摂取しない人に比較し、42%多かった(RR=1.42 95%CI=1.11-1.80)。

2010
117巻

緑内障に対するSimvastatin内服治療

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Simvastatin and disease stabilization in normal tension glaucoma: a cohort study.
Leung DYL t al(Hong Kong)
Ophthalmology 117(3): 471- 6, 2010
・NTGで、Simvastatin内服者では視野進行が止まるかどうかを検討。
・中国人の256例256眼のNTGで検討した。
・年齢、性、未治療下眼圧、視野状態、乳頭の垂直C/D比、中心角膜厚をマッチングさせた、Simvastatin内服群31例と、非内服群225例で比較した。
・Simvastatin(+)群で高コレステロール血漿、高血圧、虚血性心疾患が多かった。
・36か月の経過観察で、121例(47.3%)で平均-0.30dB/年の視野の進行があった。
・Simvastatin(+)例は、視野進行例121例中8例(6.6%)、視野非進行例135例中23例(17.0%)であった(p=0.011)。
・ロジスティック回帰で視野進行のリスクを検討すると、乳頭出血はRR=3.26(95%CI=1.21-8.76 p=0.019)、脳血管障害はRR=2.28(95%CI=1.03-5.06 p=0.043)、10歳年齢アップはRR=1.38(95%CI=1.08-1.76 p=0.009)であったのに対し、Simvastatin内服はRR=0.36(95%CI=0.14-0.91 p=0.030)であり、Simvastatin内服はNTGで視野進行を阻止する因子として有効であることがわかった

2010
117巻

慢性腎疾患と眼圧

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Chronic kidney disease and intraocular pressure. The Singapore Malay Eye Study.
Nongpiur ME et al(Singapore)
Ophthalmology 117(3): 477- 83, 2010
・Singaporeのマレー人の40-79歳の成人3,280名について、慢性腎疾患(CKD)と眼圧との関連を調べた。
・糸球体瀘過量(eGFR)と微量アルビミン尿を測定し、eGFRが60ml/min/1.73m2以下、あるいは微量アルブミン尿(+)、尿アルブミン-クレアチニン比が男で17mg/g以上、女で25mg/g以上をCKDと診断した。
・全体ではCKDは27.92%、緑内障は4.5%で、眼圧は15.41±3.7mmHgであった。
・年齢、性で補正した後の眼圧はCKDでは15.8と、CKD以外の15.3に比較して高かった(p<0.0001)。
・眼圧はeGFRが低い群で高かった(p<0.001)。
・多変量回帰分析では、CKDでは平均眼圧はCKDのない人より0.305mmHg高かったが、CKDと緑内障とは相関がなかった。

2010
117巻

近視眼は糖尿病網膜症になりにくいか?

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Are myopic eyes less likely to have diabetic retinopathy?
Lim LS et al(Singapore)
Ophthalmology 117(3): 524- 30, 2010
・随時血糖が11.1mmol/l以上、糖尿病薬を内服している、あるいは糖尿病と診断された人をDMと定義した。
・球面屈折度(SE)はオートレフケラトと自覚屈折度で決め、眼軸長と前房深度はIOLMasterで測定した。
・3280名の内、DMと診断された629名で解析した。
・多変量解析では、遠視(>0.5D)を1.0とした場合、正視(0.5以内)、軽度近視(-3D以内)、中等度近視(-3D越え)では、網膜症ありは、0.80(95%CI=0.61-1.06)、0.66(0.45-0.95)、0.59(0.32-1.07)で、trendはp=0.009。
・中等度網膜症は、0.69(0.40-1.18)、0.60(0.30-1.19)、0.18(0.03-1.18)で、trendはp=0.015。
・重症網膜症は、0.47(0.23-0.98)、0.44(0.18-1.12)、データなしで、trendはp=0.052であった。
・眼軸長が1mm増加するごとに、網膜症ありは0.86(0.75-0.99 p=0.041)、中等度網膜症は0.80(0.62-1.05 p=0.108)、重症網膜症は0.63(0.40-0.99 p=0.044)となった。
・近視があり、眼軸長の長い人は糖尿病網膜症のリスクは低くなっていた。

2010
117巻

糖尿病でない人の網膜症について

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Retinopathy in persons without diabetes. The Handan Eye Study.
Peng XY et al(China)
Ophthalmology 117(3): 531- 7, 2010
・中国河北省の田園地域で糖尿病のない人の網膜症について検討した。
・30歳以上のハン族の6,830名で調査した。
・空腹時血糖が7.0mmol/l以上、糖尿病薬を内服している、あるいは糖尿病と診断された人をDMと定義。
・DMでない人で網膜症のある人は13.6%(95%CI=12.6-14.6%)あった。
・網膜症のリスクファクターは年齢(OR=1.02 95%CI=1.01-1.03 1歳増加する毎に)、男性(OR=1.27 95%CI=1.08-1.49)、空腹時血糖(OR=1.30 95%CI=1.11-1.53 1mmol/l増加毎に)、収縮時血圧(OR=1.15 95%CI=1.05-1.27 10mmHg増加毎に)、拡張期血圧(OR=1.16 95%CI=1.09-1.22 10mmHg増加毎に)。
・このことは、初期の毛細血管症は血糖や血圧が正常値上限で既に発生していることを示している

2010
117巻

PASCAL光凝固装置の組織所見

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

In vivo retinal morphology after grid laser treatment in diabetic macular edema.
Bolz M et al(Austria)
Ophthalmology 117(3): 538- 44, 2010
・DMEの人の初回光凝固をPASCALでグリッド凝固を行う前と凝固1日目のOCT所見を13名で検討した。
・凝固1日目には網膜外層(RPE層、視細胞層PRL、外顆粒層ONL)のみに形態的な変化が見られた。
・凝固斑は矢状ではなく、ONLを斜めに横切って外境界膜に入り、そこからは矢状(垂直)に方向を変えてPRL、RPEに入っていた。
・また、中心網膜厚の減少、殊にPRLの減少も引き起こしていた。

2010
117巻

喫煙はぶどう膜炎のリスクファクターになるか

Ophthalmology 117巻 (3号) 2010

Cigarette smoking as a risk factor for uveitis.
Lin P et al(CA USA)
Ophthalmology 117(3): 585- 90, 2010
・Proctor Foundationで眼内炎症で経過を見ている2002-2009年の564名について、同時期の患者564名と比較検討した。
・喫煙者の眼内炎症を持っている比率は、喫煙歴のない人の2.2倍(95%CI=1.7-3.0 p<0.001)であった。
・ぶどう膜炎のタイプごとに分けると、前部ぶどう膜炎ではOR=1.7(95%CI=1.2-2.4 p=0.002)、中間部ぶどう膜炎ではOR=3.2(95%CI=1.3-7.9 p=0.014)、後眼部ぶどう膜炎では OR=3.2(95%CI=1.3-7.9 p=0.014)、汎ぶどう膜炎ではOR=3.9(95%CI=2.4-6.1 p<0.001)であった。
・汎ぶどう膜炎でCMEのある人ではOR=8.0(95%CI=3.3-19.5 p<0.001)、CMEのない人ではOR=3.1 (95%CI= 1.8-5.2 p<0.001)であった。
・中間部ぶどう膜炎でCMEのある人ではOR=8.4(95%CI=2.5-28.8 p<0.001)、CMEのない人ではOR=1.5(95%CI=0.6-3.8 p=0.342)であった。
・感染性ぶどう膜炎ではOR=4.5(95%CI=2.3-9.0 p<0.001)、非感染性ぶどう膜炎ではOR=2.1(95%CI=1.6-2.8 p<0.001)。
・このことはぶどう膜炎の喫煙者に喫煙をやめさせる大きな理由になりうる。

2010
117巻

LASIK術後の感染性角膜炎

Ophthalmology 117巻 (2号) 2010

Infectious keratitis in 204,586 LASIK procedures.
Llovet F et al(Spain)
Ophthalmology 117(2): 232-8, 2010
・SpainのLASIK施設Bavieraで2002年9月から2008年5月までに行った107,613例204,586眼のLASIK手術のレコードを調べたところ、感染性角膜炎は63例72眼(0.035%)にみられた。
・感染の発症は術後7日以内に62.5%が発症していた。
・培養をとった54例の内、21例で菌が検出された。
・9例が表皮ブ菌で最も多かった。
・感染直後に、54例でフラップを持ち上げて抗生剤で洗浄した。
・抗生剤点眼だけで加療した18例のうち10例では後にフラップを持ち上げての洗浄が必要となった。
・1例ではフラップ壊死のためにフラップを切除した。
・最終的な最良視力は38例(52.7%)で1.0以上、67例(93.05%)で0.5以上、5例(6.94%)で0.5未満であった。

2010
117巻

緑内障における篩状板圧の再検討

Ophthalmology 117巻 (2号) 2010

Cerebrospinal fluid pressure in glaucoma. A prospective study.
Ren R et al(China)
Ophthalmology 117(2): 259-66, 2010
・開放隅角緑内障の43例(NTG:14例、POAG:29例)と緑内障のない71例で脳脊髄圧(CSF-P)を検討した。
・CSF-Pは正常眼圧緑内障群(9.5±2.2mmHg)では、POAG群(11.7±2.7mmHg)や、コントロール群(12.9±1.9mmHg)よりも有意に低かった(p<0.001)。
・篩状板圧差(IOP-CSF圧)は正常眼圧緑内障群(6.6±3.6mmHg)やPOAG群(12.5±4.1mmHg)では、コントロール群(1.4±1.7mmHg)よりも有意に高かった(p<0.001)。
・緑内障性視野欠損の程度(dB表示)は、CSF-Pの高さと負の相関があり、篩状板圧差と正の相関があった。
・緑内障、非緑内障眼104例全部で、篩状板圧差とdB表示の視野欠損値の相関を見ると、相関係数0.69、p<0.001となった。
・コントロール群ではCSF-Pは収縮期血圧(p=0.04)、眼圧(p<0.001)と有意に相関があったが、篩状板圧差は血圧とは相関がなかった(p=0.97)

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