The Association of Female Reproductive Factors with Glaucoma and Related Traits
A Systematic Review
Kian M.M. et al, Ophthalmology glaucoma 5,628-647: 2022
・女性の生殖因子 (初経年齢、出産回数、経口避妊薬 (OC) 使用、閉経時年齢、および閉経後ホルモン (PMH) 使用) と眼圧 (IOP) または開放隅角緑内障 (OAG) との関連をまとめた。
既報
・エストロゲンは緑内障において神経保護的な役割を果たしている可能性があり、エストロゲン欠乏は機械的、血管メカニズム両方を介して緑内障ダメージに寄与すると考えられている。
・房水産生・流出経路に影響・調節、高眼圧の動物モデルでエストロゲン補充によりRGCロスの予防、一酸化窒素活性を上げ血管の緊張を介して視神経の血液還流を増加させる。
結論
・含まれる研究のバイアスリスクは高いものの、
・・OCの使用期間が長いほどOAGのリスクが高くなる可能性あり
・・自然閉経の年齢が若いほど、OAGのリスクが高くなる可能性あり
・・PMHの使用はIOPの低下と関連している可能性あり。とくにエストロゲンのみのタイプのPMHはOAGリスクの低下と関連している可能性あり。(MM)
Effect of Photochromic Contact Lens Wear on Indoor Visual Performance and Patient Satisfaction
Kazutaka Kamiya, et al. (北里大学)
Ophthalmol Ther. 2022 Oct;11(5):1847-1855.
・目的:屋内での調光コンタクトレンズ(CL)装用時の視機能と患者の満足度を評価する。
・対象と方法:41 人82眼の健康な被験者 (平均年齢21.7 ± 0.7 歳) に調光CLと非調光CLをそれぞれ1〜2週間毎日装用させ屋内環境の明所条件 (600 lx)での視力や動体視力(KVA)、実用視力計(AS-28、興和)を使用して時間平均視力(FVA)、視力維持率(VMR)、応答時間を測定した。
・さらにコントラスト感度(CS)、高次収差(HOAs)、見え方の満足度(0;不満から5;満足)を調査した。
・データ分析のために、各被験者の片眼をランダムに測定した。
・結果:調光CL群と非調光CL群で通常視力では有意差を認めなかった。
・調光CL群での30km/hおよび60km/hでの動体視力は非調光CL群と比較して有意に向上していた。
・また、時間平均視力は有意に良好、応答時間も有意に短縮され、見え方の満足度も良好であった。
・視力維持率、コントラスト感度、高次収差には有意差を認めなかった。
・結論:調光CL装用で室内環境でも動体視力、時間平均視力、応答時間は有意に向上することが明らかになった。
・日常生活やインドアスポーツ時での良好な視力獲得に役立つ可能性がある。(CH)
Endophthalmitis rates among Medicare beneficiaries undergoing cataract surgery between 2011 and 2019.
Zafar S et al(MD USA)
Ophthalmology 129(3): 250-257, 2022
・2011-2019に米国の65歳以上のMedicare受給者で、白内障手術を受けた14,396,438眼で90日以内に眼内炎を発症した人を調査した。
・結果、1.36眼/1000眼で発症しており、白内障単独手術では1.30眼/1000眼であったが、この9年間で減少傾向にあった。
・眼内炎発症のリスクは、75歳以上(OR=1.14 95%CI=1.11-1.18)、黒人(OR=1.13 95%CI=1.07-1.20)、アメリカ先住民(OR=1.43 95%CI=1.13-1.73)、緑内障手術既往眼(OR=1.40 95%CI=1.18-1.65)、網膜同時手術(OR=2.60 95%CI=2.15-3.16)であったが、女性では少なかった(OR=0.89 95%CI=0.86-0.92)。(TY)
Efficacy and safety of 8 atropine concentrations for myopia control in children. A entwork meta-analysis.
Ha A et al(Korea): Ophthalmology 129(3): 322-333, 2022
・PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどのデータベースから、最低1年以上アトロピン治療を行った報告を調査した。
・アトロピン濃度は0.01%-1.0%までの8種類で、最高の治療の予測スコアをPスコアとして計算した。
・主要転帰は屈折度(Diopter/年)と眼軸長(mm/年)であり、安全性の指標として、瞳孔径、調節力、遠見と近見視力も求めた。
・アトロピン濃度を3種類1%、0.5%、0.05%で求めると、1%アトロピンでは屈折度はCtrlと比較して0.81 (95%CI=0.58-1.04)、眼軸は-0.35(-0.46~-0.25)、0.5%アトロピンでは屈折度は0.70(0.40-1.0)、眼軸は-0.23(-0.38~-0.07)、0.05%アトロピンでは屈折は0.62(0.17-1.07)、眼軸は-0.25(-0.44~-0.06)であり、0.05%アトロピンが最良であった。
・安全性は視力以外では濃度依存性であった。(TY)
Blood pressure and glaucomatous progression in a large clinical population.
Jammal AA et al(NC USA)
Ophthalmology 129(2): 161-170, 2022
・緑内障による進行性の構造変化に対する平均動脈血圧MAP、収縮期動脈圧SAP、拡張期動脈圧DAPの影響を、3976例7501眼の緑内障あるいは緑内障疑い者について検討した。
・網膜神経線維層RNFL欠損のスピードをSD-OCTで測定した。
・RNFL変化の平均スピードはー0.70μm/年(95%CI=-0.72~-0.67)であった。
・単変量モデルでは、MAP、SAP、DAPはいずれもRNFL欠損スピードと関連はなかったが、観察期間中の平均眼圧で調整すると、10mmHgの平均MAPの低下(-0.06μm/年 p=0.007)、平均DAPの低下(-0.08μm/年 p<0.001)はRNFL厚の減少スピードが早くなっていること有意に相関していたが、平均SAPの低下は関連がなかった(-0.01μm/年 p=0.355)。
・このことから、全身血圧のレベルは緑内障進行に有意に影響していることが分かった(TY)
Interventions for the Management of Computer Vision Syndrome
A Systematic Review and Meta-analysis
Sumeer S. et al,Ophthalmology May ,2022 Online ahead of print.
・コンピューターによる眼精疲労(CVS)への治療介入について有効性と安全性を比較した。
・CVSの確立したリスクファクター
・一日4時間以上のコンピューターの使用、コンピューター画面の反射やグレア、40%未満の湿度、使用中の不適切な姿勢
・その他、瞬目の減少、屈折矯正不良、調節障害などの関与が示唆
・結果
・Ovid Medline, Embase, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and trial registriesから4497名の被険者を含む45のRCTを抽出
・多焦点眼鏡は単焦点眼鏡と比較して眼精疲労の改善は有意差なし(3 RCTs, P=0.38)
・ルーライトカット眼鏡は眼精疲労の改善に効果なし(3 RCTs)
・プラセボと比較してベリー抽出物サプリメントの内服は眼精疲労改善効果なし(7 RCTs, p=0.22)、ドライアイ症状の改善無し(4 RCTs, p=0.65)、CFFや調節力についても効果無し
・45日から3ヶ月間のオメガ3脂肪酸のサプリメントはドライアイ症状に伴う眼精疲労の改善効果あり(2 RCCTs, p<0.00001)(MM)
Effect of corneal cross-linking versus standard care on keratoconus progression in young patients. the KERALINK randomized controlled trial.
Larkin DFP(UK)
Ophthalmology 128(11): 1516-1526, 2021
・若年者の円錐角膜を角膜クロスリンキング(CXL)で進行が止められるかどうかを10歳から16歳の60例で検討した。
・30例にCXLを行ない、28例に通常の眼鏡あるいはCLなどの治療を行ない、18か月後の凸度の強い方のK2値で比較した。
・18か月後のCXL群のK2値は49.7±3.8Dで、Ctrl群のK2値は53.4±5.8Dで、調整後の差は-3.0D (95%CI=-4.9~-1.1D p=0.02)で、CXL群で進行度が少なかった。
・進行した症例はCXL群では2例(7%)、Ctrl群では12例(43%)であった。
・若い円錐角膜患者ではCXLが有効であり、積極的に行なうべきである。(TY)
Intraocular pressure, Glaucoma, and Dietary Caffeine Consumption
A Gene-Diet Interaction Study from the UK Biobank
Jihye Kim et al. (UK) Ophthalmology 128(6):866-876, 2021
・目的:カフェイン摂取習慣と眼圧の関係、および遺伝子的な素因を調べる。
・多くのスタディではカフェイン摂取後1-4時間後に0-4mmHg急性の眼圧上昇を報告されているが、カフェイン摂取習慣については様々である。眼圧は多因子遺伝特性であることが示唆されており、POAGと眼圧の多因子遺伝リスクスコア(PRS)は相関する。
・珈琲もしくは紅茶(緑茶やハーブティなどを含む)、チョコレート摂取状況と、眼圧、IOP PRSとの関係を調査
・全体としてはカフェイン摂取と眼圧下降が弱く相関するが、緑内障とは関係なかった。
カフェインの摂取はIOP PRSによって修飾され、カフェイン摂取量の増加はIOPおよび緑内障有病率両方にポジティブに関連していたが、IOP上昇に対する遺伝的感受性が最も高い人の間でのみ関連していた。(MM)
Five-Year Follow-up of First 11 Patients Undergoing Injection of Cultured Corneal Endothelial Cells for Corneal Endothelial Failure
Kohsaku Numa et al, (京都府立医科大学)
Ophthalmology 2021(4);128:504-514
・ドナー由来の角膜内皮細胞を生体外で培養後、注入液に懸濁させた機能的な培養ヒト角膜内皮細胞(hCEC)を水疱性角膜症患者の前房内に注入する新規再生医療技術を開発した。
・角膜内皮不全状態に対する培養ヒト角膜内皮細胞を使用した新規細胞注射療法の安全性と有効性の報告。
・2013年12月から2014年12月の間にhCEC注射療法を受けた角膜内皮不全の11人11眼。
・すべて偽水晶体で、手術前は全体的な角膜浮腫を示した。以前に緑内障ドレナージ手術を受けた症例はなかった。
・すべての患者は角膜中央部の直径8 mmの内皮細胞とデスメ膜を取り除いた後、シリコンカニューレ針を使用して注射器に吸引された300μlに懸濁された培養hCECが前房内に注入された。患者は、注入された細胞の接着と生着を強化するために、3時間face-down positionをとった。培養角膜の角膜内皮細胞密度(ECD)は1835から2530 cells / mm2だった。
・すべての患者は、術後1週間、4週間、12週間、24週間、および1年、2年、3年、4年、5年後に追跡検査を受けた。ECD、変動係数(CV)、六角形細胞出現率(6A)、中心角膜厚、最高矯正視力(BCVA)、および眼圧(IOP)を測定した。
・手術後5年で、11眼中10眼で正常な角膜内皮機能が回復し、平均中心角膜ECDは1257±467 cells / mm2(601〜2067 cells / mm2)、CVは0.46±0.076から0.37±0.088に、6Aのパーセンテージも47±8.7%から54±6.2%に改善した。
・BCVAは10眼で有意に改善した。平均視力は、手術前の0.87 logMARから手術後0.046 logMARと改善した。
・hCEC注射療法に直接関連する主要な合併症はなかった。
・手術後5年での角膜中心の角膜の厚さは、11眼中10眼で正常範囲内(<630μm)だった。治療された11眼中眼では、術後5年間の追跡期間中にIOP上昇は認めなかった。1眼でステロイド外用薬への反応によりIOPが一時上昇した。
・虹彩に重度のPEXが蓄積したPEX関連内皮不全眼は、おそらく前房の異常な微小環境が原因で不全になった。
・手術後最大5年間の培養hCEC注射療法の安全性と有効性を確認した。
世界中でドナー角膜が毎年不足し続けているので、これらの問題を排除する新しい外科的処置は非常に有益であろう。(CH)
Comparison of Clinical Outcomes with Open Versus Closed Conjunctiva Implantation of the XEN45 Gel StentA Systematic Review and Meta-analysis
Anna Do. et al, Ophthalmology Glaucoma 4,343-349: 2021
・XEN45を結膜切開の有無で比較 ab internoとab externoで比較
手技:
・最初にMMC 0.4mg/ml XEN45挿入前に20-80μgを結膜下注射
・Closed Conjunctive Technique
Ab interno:
ヒアルロン酸で満たした前房内からインサーターを用いて結膜下にリリース
前房内を洗浄
Ab externo:
輪部から7mmの部位からインサーターを挿入
輪部から2mmで方向を変えて前房内に挿入しリリース
・Open Conjunctiva Technique
Ab interno:
鼻上側の結膜をfornix-baseで3-4時間開き強膜を露出
ヒアルロン酸で満たした前房内からインサーターを用いて強膜上にリリース
結膜縫合し、前房内を洗浄
Ab externo:
同様の方法で強膜を露出
輪部から2-3mmから前房内に挿入してリリース
結膜縫合
術後点眼
・4-12週 ステロイド 漸減 (術者によって異なる)
・7-10日 フルオロキノロン抗生剤
不成功の定義:IOP>21mmHg、術後1か月以降の2回連続したフォローでPre IOPから20%未満の眼圧下降、インプラント露出などの合併症での再手術、レクトミーやチューブシャント、毛様体破壊などの緑内障再手術(ニードリングは含まず)、光覚喪失
・Complete success(CS): 眼圧下降薬なしで上記満たさない
・Qualified success(QS):眼圧下降薬ありで上記満たさない
結果
・137名137眼
・Closed conjunctiva 61眼、 Open conjunctiva 76眼、男性55%、POAG 58.4%
・術前眼圧:Closed群 23.0mmHg、Open群 26.4mmHg
・Open群で過去の緑内障手術の割合が高かった(5% vs 20%)
・白内障同時手術は影響なかった
・両群で術後眼圧に差は認めなかったが、術後12か月でOpen群の方が眼圧下降率が高かった(24.8% vs 43.1%)
・CS: 31% vs 53% P=0.01
・QS: 56% vs 71% P=0.06
・不成功までの期間:6.1±4.0M vs 6.3±5.4M
・眼圧と点眼、合併症:図参照
・Open群では術前眼圧が高く、過去に緑内障手術を受けたことのある難治例が多かったにもかかわらず、Closed群よりも成功率が高かったため、結膜を開く方法を推奨する。
・結膜とテノン嚢を開くことでデバイス遠位端の閉塞リスクが少ないこと、テノンを広く開き後部ポケットを作成したことがその要因ではないかと考えられる
・Closed群でステントの露出が見られたのは、遠位端が正しい位置に配置できなかった可能性、虹彩による閉塞が見られたのは、挿入時にOVDを使用するため虹彩が押し下げられ、より虹彩側に挿入された可能性がある。(MM)
Cardiovascular disease predicts structural and functional progression in early glaucoma.
Marshall H et al(Australia)
Ophthalmology 128(1): 58-69, 2021
・1314例2628眼の前視野緑内障と初期緑内障についてSD-OCTでの網膜厚とハンフリー視野HVFで評価して、心血管障害との関連を検討した。
・患者は最初に、障害部位によって次の3組に分けて検討した。
・黄斑部の神経節内網状層障害(mGCIPL)優位、視神経乳頭周囲の網膜神経線維障害(pRNFL)優位、mGCIPLとpRNFLの両者障害の3組に分け、心血管障害群と非障害群に分けて検討した。
・mGCIPL障害が有意な群では高血圧の有病率が高く(OR=2.70 95%CI=1.66-4.41 p<0.001)、降圧剤の使用率が高く(OR=2.03 95%DI=1.20-3.46 p=0.008)、スタチンの使用率が高かった(OR=1.98 95%CI=1.07-3.66 p=0.029)。
・pRNFL障害が有意な群では心血管障害やそのための内服者が多かった。
・OCTとHVFでの経過(5.34±1.29年)をみると、この障害には高血圧が関連しており、OCTではOR=1.79 (95%CI=1.17-2.75 p=0.006)、HVF進行はOR=1.92(95%CI=1.18-3.15 p=0.013)であった。
・収縮期血圧の1SD(約21mmHG)上昇はOCTの進行(OR=1.27 95%DI=1.01-1.63 p=0.041)とHVF進行(OR=1.32 95%CI=1.01-1.73 p=0.043)に関連していた(TY)
Cataract surgery volumes and complications per surgeon and clinical unit. Data from the Swedish National Cataract Register 2007 to 2016.
Zetterberg M et al(Sweden)
Ophthalmology 127(3): 305-314, 2020
・2007ー2016年のSwedenの眼科施設での白内障手術数と合併症数を術者毎あるいは施設毎に調査した。
・白内障手術件数は2007年が71,369眼、2016年が118,534眼で66%増加していた。
・年間500眼以上の術者は15.0%→34.0%に、年間1000眼以上の術者は2.1%→10.9%にそれぞれ増加していた(いずれもp<0.001)。
・術者毎の手術数は、500眼以上の術者によるものは36.9%→68.1%に増加していた。
・年間の破嚢の合併症率は手術数が増えるにつれて減少しており、10-99眼の少術者では2.15±3.17%、100-499眼の中術者では1.32±1.28、500眼以上の多術者では0.59±0.49であった(p=0.016)。
・術前視力は500眼以上の多術者では小数点0.5であったが、499眼以下の少中術者では0.4であった(p<0.001)。
・破嚢の合併症は1.5%→0.8%に低下し、術前視力はlogMARで0.46±0.10(小数点0.35)→ 0.40±0.05(小数点0.40)に上昇していた(p=0.030)。(TY)
Intrastrolmal bevacizumab in the management of corneal neovascularization: a retrospetive review.
Gupta AA et al(MN USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 167-173, 2020
・角膜移植の際、リスクの高い角膜深層の新生血管に実質内へbevacizumabを注入した14例14眼の長期成績について検討した。
・実質内へ0.05-0.1mlの2.5mg/0.1mlのbevacizumabを4~8週おきに1~3回注入した後に8例に角膜移植(全層6例あるいは深層表層移植2例)を行った。
・この8例の内、注射後に3例は新生血管は消失し、5例は中等度に緩解した症例である。
・全体の64.2%がヘルペス後のものであり、視軸にかかっていた例は50%で、傍中心が42.8%であった。
・注射後14.2%は完全緩解し、角膜移植は不要となった。
・21.4%では新生血管の変化はなかった。
・注射の副作用は3眼/14眼(21%)で発生した。
・2例は注射後の上皮剥離で自然緩解、1例は実質内出血で5週間で緩解。
Multimodal imaging for detecting metamorphopsia after successful retinal detachment repair.
Schawkat M et al(Switzerland)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 57-61, 2020
・黄斑剥離のあった網膜剥離の成功した硝子体手術後の変視症について検討した。
・術後3,6週間後の視力、眼底写真、アムスラーチャート、SD-OCT、自発蛍光FAFを検査した。
・連続する49例50眼のうち、12眼(24%)で変視症を訴えており、その主因は網膜剥離治癒後の網膜偏位(p<0.001)と黄斑数壁(p=0.03)であった。
・網膜偏位はFAF検査で陽性の過蛍光としてみられる網膜血管影像から判断した。
Diabetic retinopathy screening using smartphone-based fundus imaging in India.
Wintergerst MWM et al(Germany)
Ophthalmology 127(11): 1529-1538, 2020
・途上国では80%近くのDMRの人が検査を受けずにいる現状がある。
・このため、スマートフォンを応用した4種類の眼底検査法(SBFI)を考案した。
・3種類は直像鏡方式、1種類は倒像鏡方式である。
・倒像鏡方式が画像が一番良く、検査時間も有意に長かった(111sec:68-86sec p<0.0001)。(TY)
Chloramphenicol eye drops: an old dog in a new house.
Andaluz-Scher L et al(NY USA)
Ophthalmology 127(10): 1289-1291, 2020
・Chloramphenicol(CP)は安価で角膜刺激性も少なく、前房移行も良く、角結膜の感染に広域に効果を持った抗生剤点眼である。
・米国ではこの30年ほど殆ど使用されておらず、耐性菌が増えている現在では有効である。
・使われなくなった理由の一つはCPでの3例の再生不良性貧血の報告(1982)である。
・1995までに平均120日の使用による23例の再生不良性貧血の報告(33-82歳)があり、12例が死亡した。
・CPの治験として1)最初の抗生剤の効果がない視力に影響する角結膜炎、2)血液異常の家族歴がない、3)成人、4)ICが書面で取れている、を推奨したい。
・但し、使用時には涙点を圧迫し、14日以内に限る。(TY)
Brolucizumab(Retinal vasculitis and intraocular inflammation after intravitreal injection of Brolucizumab.
Baumal CR et al(MA USA)
Ophthalmology 127(10): 1345-1359, 2020
・AMDに対してBrolucizumab(ベオビュ)6mg/0.05mlの硝子体注入後の網膜血管炎と眼内炎症について、米国の10施設から報告された12例15眼を検討する。
・発症は平均30日後である。
・視力平均は注入前はlogMARで0.426(小数点0.37)→注入後0.981(小数点0.10)→25日後0.833(小数点0.15)。(TY)
Femtosecond Laser-Assisted Cataract Surgery Versus Phacoemulsification Cataract Surgery (FACT)
A Randomized Noninferiority Trial
Alexander C. Day et al. FACT group (UK)
Ophthalmology 127(8):1012-1019, 2020
2015/5月から2017/9月の間で785人を無作為に割付
FLACS 392人、通常の白内障(PCS)393人
術後3か月目の裸眼視力、矯正視力、合併症、屈折誤差を比較
Toric IOL:FLACS群 22例、PCS群 19例
LRI:FLACS群 21眼
術後成績ではすべての項目で両群に有意差はなかったが、PCSでは後嚢破損が2例あった FLACS群は0例であった
PCSはFLACSと同程度良好な結果であった。(MM)
Myopia Prevalence and Ocular Biometry Features in a General Japanese Population:
the Nagahama Study
Ophthalmology in press(preproof)
https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2020.08.023
2013 年から2016 年の9850 人の調査
-0.5D 以下の近視は全体で49.97%、若年層(34 歳~59 歳)では約70%
-6D 以下の近視は全体で7.89%、若年層では約10%
近視は若年に増えているが、高度近視はあまり変わらない(THY)
Ocular anesthesia-related closed claims from ophthalmic mutual insurance company 2008-2018.
Morley M et al(MA USA)
Ophthalmology 127(7): 852-858, 2020
・麻酔に関連した訴訟について2008~2018年の眼科相互保険会社OMICのデータを調査し、保険に加入している眼科医が訴えられたケースを検討した。
・50人の原告が63の申し立てをしていた。
・眼球穿孔(17)、死亡(13)、球後出血(7)、視神経損傷(4)、血管閉塞(2)、疼痛(2)、眼球頭部を動かした事による外傷(2)、痺れ(1)、複視(1)、挿管時の歯欠損(1)の50種である。
・死亡13例の内12例は合併症を持っており、2例は脊椎麻酔であった。
・麻酔種類では球後麻酔(16)、テノン嚢麻酔(16)、顔面伝達麻酔(6)、点眼麻酔(5)、全身麻酔(5)、不明(2)である。
・局所麻酔の5例では、疼痛(2)、眼球を動かしたことによる破嚢(2)、死亡(1)である。
・全身麻酔の5例では、死亡(4)、歯欠損(1)である。球後出血の7例中3例は抗凝固剤を使用していた。
・全例の内、63の申し立てのうち16(25%)は損害賠償金を支払っていた。
・最も額が大きかったのは眼球穿孔の6例で平均$271,000($20,000-$585,000)、
・死亡の5例は平均$73,500($20,000-$160,000)、球後出血4例では$92,500($29,999-$200,000)であった。(TY)