Childhood Lensectomy Is Associated with Static and Dynamic Reduction in Schlemm Canal Size
A Biomechanical Hypothesis of Glaucoma after Lensectomy
Moritz C. Dnaiel et al (UK)
Ophthalmology 126(2): 233-241, 2019
4際から16歳の健康な小児(50名)と過去にLensectomyを行ったもの(48名)を対象
24名は片眼のみLensectomyを行い僚眼は健常眼として解析し、健常眼124眼(右59眼、左65眼)とLensectomy眼72眼(右39眼、左33眼)を調査
72眼中34眼は緑内障と診断され、18がんで手術あるいはレーザーを行っている
前眼部OCTを用いてSC,TM, Iridocorneal angle(ICA)を2.5D(40cm)と15D(6.5cm)の調節負荷をかけて調べた
結果
調節負荷をかけると水平SC距離が長くなるが、Lensectomyを行った患者では調節負荷ありなしともに健常眼と比べて短くなっていた
SC Cross-sectional area(CSA)は調節時に増加するが、最大調節負荷時のLensectomy群は減少していた
サブグループ解析で、緑内障となった群と健常群を比較すると、
緑内障群で水平SC距離は-0.081mm、CS CSAは0.395mm2小さかったが、緑内障でないLensectomy群と健常群では差がなかった
IOL眼と無水晶体眼での比較では、水平SC距離、垂直SC距離、SC CSAの調節負荷時は差がなく、安静時では垂直SC距離、SC CSAでIOL眼の方が大きかった
調節負荷時の毛様体厚の変化には有意差はなかった
Lensectomy後、調節負荷によるSCの伸展が減少することが緑内障と繋がると考えられる(MM)
Association between Rates of Visual Field Progression and Intraocular Pressure Measurements Obtained by Different Tonometers
Bianca N. Susanna et al (Duke, USA)
Opthalmology 126(1):49-54, 2019
125名213眼の緑内障患者でゴールドマン眼圧計(GAT)、Ocular Response Analyzer(ORA)、アイケア眼圧計(RBT)それぞれで測定した眼圧値とHFA SITA standard 24-2 のMDの変化との関係を調査
平均観察期間 2.4±0.6年(1.3-3.7年)
観察期間中の平均眼圧:GAT, ORA IOPcc, RBTそれぞれ
14.4±3.3,15.2±4.2, 13.4±4.2mmHg
CCT 536.3±43.1μm CH 9.5±1.8mmHg
どの眼圧計も眼圧が高いほどMDの進行が早い
MD値との関係はGATよりもORA IOPccの方がよい相関があった
OfficeTimeのみであること、GATとことなり、ORAIOPccは3回の平均であること、治療前の眼圧や治療による影響が含まれないというLimitationsがあり(MM)
Long-term shape, curvature, and depth changes of the lamina cribrosa after trabeculectomy.
Kadziauskiene A et al(Lithuania)
Ophthalmology 125(11): 1729-1740, 2018
・112例118眼の線維柱帯切除を行ったPOAGを対象として、篩板の形態(grobal shape index:GSI)、水平(N-T)と垂直(S-I)曲率半径、篩板深度(LCD)を調べた。
・LCのGSIの値は後方凸の-1、対照的な鞍馬型の0、前方凸の+1まで値づけされた。
・平均のLS GSIは術後12ヶ月までの早期は有意(p=0.02)に+に偏位しており、LC曲線も水平、垂直共に有意(p<0.003)にフラット化していた。
・LC深度は術後6ヶ月まで急速に低下し、全経過にわたり有意に浅くなった(p<0.001)が、28例では最低1回、深くなることがあった。
・LC深度がより浅くなった例の方が深くなった例よりも有意に眼圧下降が得られていた(p=0.002)。
・GSIの+偏位は、IOP低下が大きく(p=0.007)、NFLの厚み減少が少なかった(p=0.003)。
・若さとIOP低下は、LCが浅くなること、N-T曲線がフラット化することに相関していた。(TY)
Optic disc pit maculopathy. A two-year national prospective population-based study.
Steel DHW et al(UK)
Ophthalmology 125(11): 1757-1764, 2018
・新規に発生した視神経乳頭ピット黄斑症ODPMについて、英国の毎月の監視システムを利用して調査した。
・年間74例の確実な新規症例があった。
・これは200万人に対して年間1人発生の頻度である。
・このうち、このうち70例を調査し、1年後の経過が追えた症例は68例である。
・男女比は丁度35:35例(50%)で、平均年齢は35歳(3-82才)、Baseline視力は1.2からHMである。
・43例(61%)で網膜下液SRFがあったが、網膜内液のみは27例(39%)であった。
・SRF例は視力が悪かった。
・OCTを1年間追えた53眼では、10例(19%)は悪化、9例(16%)は改善した。
・直後に手術を行ったのは15/70(21%)で、その後の1年以内に更に10例が手術を受けた。
・手術例の19/25(76%)で1年後に解剖学的に成功し、15例(60%)で0.8以上の視力が得られた。
・SRF例では視力に関して手術を受けた優位性は少なかったが、直後に手術を行った場合は経過を見た後の手術よりも有意に視力は改善していた。
・手術例は全例PVDを起こしているが、ILM剥離、視神経乳頭縁のLK、ガスの使用は優位性がみられなかった。(TY)
Five-Year Graft Survival of Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty (EK) versus Descemet Stripping EK and the Effect of Donor Sex Matching
David A. Price, BS et al. (IN USA)
Ophthalmology 2018(10);125:1508-1514
目的: Fuchs角膜内皮変性症(FECD)対してDSEKおよびDMEKを行い、5年移植片生存率、角膜内皮細胞密度(ECD)損失率および拒絶反応率を比較する。また、ドナーとレシピエントの性別が拒絶反応や生存率に影響を与えるかどうかを調べる。
対象と方法:2003年から2012年の間にFECDに対し手術を行った2017例(DSEK 1312例(65%)、DMEK 705例(35%))。
ドナーの性別に関する情報は、1920例(95%)で入手可能であった。
術後、1%プレドニゾロン点眼は、1日4回3〜4ヶ月間、その後1ヶ月に1回ずつ減らし、1日1回無期限に続けた。
DMEKの内、115例 (16%)は術後1ヶ月で0.1%フルオロメトロン点眼に切り替え、106例 (15%)は術後1年でステロイド点眼を中止した。
結果:術後 5年間での拒絶反応率は、DMEK 2.6%、DSEK 7.9%で、DMEKの方がより低かった。(P<0.0001)(図1)。
DSEKと同じステロイド点眼回数で治療したDMEK症例では、5年間での拒絶反応率は2.0%であったのに対し、早期にステロイド減らしたDMEK症例では3.9%(P=0.29)だった。
また、アフリカ系アメリカ人は他の人種よりも拒絶反応率が有意に高かった。(P=0.0006)
DSEKとDMEKの両方で、5年生存率は93%であった(P=0.85)。
DMEK 44例とDSEK 69例で移植片不全になったか、5年以内に再移植を要した。拒絶反応はECD損失を増やしたが(P=0.004)、5年以内の移植片不全の重要なリスク要因ではなかった。(P=0.09)
術後5年のECD損失率は、DSEK 47%、DMEK 48%であった。(P = 0.22)
ドナーとレシピエントの性別の影響は認められなかった。
(拒絶反応率:女性レシピエントP=0.07、男性レシピエントP=0.33;移植片生存率:女性レシピエントP=0.67、男性レシピエントP=0.17)
結論: DMEKはDSEKより拒絶反応率が有意に低いリスクにもかかわらず、5年移植片生存率、および角膜内皮細胞喪失は同等であった。
ドナーとレシピエントの性別の拒絶反応率、移植片生存率への影響は認められなかった。(CH)
Comparison of the rotational stability of two toric intraocular lenses in 1273 consecutive eyes.
Lee BS & Chang DF(CA USA)
Ophthalmology 125(9): 1325-1331, 2018
・Acrysof toric ReSTOR(n=626)とTecnis toric Symfony(n=647)で、角膜輪部の血管でのdigital marking systemを用いて行った手術後の軸ずれを検討した。
・術日の遅くか、翌朝に散瞳検査を行って軸ずれの測定を行った。
・5度以内の軸ずれはAcrysofでは91.9%、Tecnisでは81.8%で有意差があり(p<0.0001)、10度以内ではAcrysof:97.8%、Tecnis:93.2%(p=0.0002)、15度以内はAcrysof:98.6%、Tecnis:96.4%(p=0.02)であった。
・平均軸ずれ度はAcrysofは2.72度(95%CI=2.35-3.08)、Tecnisは3.79度(95%CI=3.36-4.22)で有意差があった(p<0.05)。
・Tecnisでは反時計回りのずれが多かった。
・再手術による軸補正はAcrysof:1.6%、Tecnis:3.1%であったが、有意差はでなかった。
・Tecnis TIOLが回転しやすい理由は不明だが、術中のOVD除去時などでも反時計回りに回りやすく、アクリル素材そのものの問題やハプティクスの幅や角度、デザインも関与している可能性がある。
・光学系とハプティクスとの接合部はTecnisではAcrysofよりもかなり固く、この影響もあるだろう(TY)
Posterior vitreous detachment as observed by wide-angle OCT imaging.
Tsukahara M et al(埼玉医大)
Ophthalmology 125(9) : 1372-1383, 2018
・正常者での合成OCT像を用い、98例144眼の正常者(21~95歳:51.4±22.0歳)で、PVDの発生後の硝子体網膜接着部を広角で検査した。
・PVDを5段階評価した。Stage-0:PVDがない(21歳の2眼)、St-1:傍黄斑部から周辺部のPVD(88眼:38.9±16.2歳)、St-2:傍中心窩から周辺部のPVD(12眼:67.9±8.4歳)、St-3:傍乳頭PVDで硝子体乳頭癒着があるもの(7眼:70.9±11.9歳)、St-4:完全なPVD(35眼:75.1±10.1歳)である。
・PVDはかなり若年で発生すること、眼底疾患のない眼の40%以上で、PVDは硝子体分離症から進展すること、PVDは最初に傍黄斑部から周辺部で発生し、その後、中心窩に及ぶことがわかった(TY)
Suppression of melatonin secretion in totally visually blind people by ocular exposure to white light – Clinical characteristics.
Hull JT et al(MA USA)
Ophthalmology 125(8): 1160-1171, 2018
・多くの完全失明者は日内変動のペースメーカとなる光を見ることができないため、日内変動に同調できないが、小数の完全失明者は光の日内変動に同調し、メラトニンを抑制し、光に対して反応することができる。
・これらの光に対する反応は、メラトニンを含む本質的な光感受性を持つ網膜神経節細胞(ipRGC)、これは、日内変動のペースメーカに投影し、視覚をつかさどる杆体や錐体とは機能的に異なっているが、このipRGCが生き残っているためと考えられる。
・ここでは様々な眼疾患で完全失明した18名(49.8±11.0歳)における光受容について検討した。
・このうち3名は両眼の眼球摘出者のCtrlである。
・メラトニン濃度を7000 lux未満の白色光源下に6.5時間暴露後に測定し、その丁度24時間前に4 luxの薄暗い環境で測定したものと比較した。
・メラトニン濃度は18人中5名(症例#1~5)で明所視では33%以上の抑制がみられた。
・この5名は網膜色素変性2名、未熟児網膜症2名、両眼の網膜剥離1名である。
・18名中13名(症例#6-18)では抑制がみられなかった。
・この13名は未熟児網膜症3名、視神経症2名、不明の網膜症2名、先天緑内障1名、先天風疹症候群1名、麻疹網膜症1名と両眼眼摘者3名である。
・眼球摘出や眼球癆では光反応過程は残っていないが、失明疾患の種類とは無関係に光に反応する過程が残っている場合がある(図2)(TY)
Positional change of optic nerve head vasculature during axial elongation as evidence of lamina cribrosa shifting: Boramae myopia cohort study report 2.
Lee KM et al(Korea)
Ophthalmology 125(8): 1224-1233, 2018
・眼軸長の延長による篩板の変化を網膜中心血管の位置変化で調べた。
・対象は23例46眼の13歳以下小児(9.6±1.7歳 6.7-12.5歳)であり、半年ごとに2年間調査した。
・屈折度は-4.26±2.34D、眼軸長は24.80±1.28mm。
・網膜中心動脈幹と直径5度の円と網膜動脈の交わる点とが作る角度は眼軸長の延長に比例して減少し(p=0.004)、中心動脈幹の鼻側移動と関連していた(p<0.001)。
・眼軸長の延長しても後極部の網膜血管構造は変わらないが、網膜中心血管の位置は鼻側に移動する。
・網膜中心血管は篩板に存在するため、篩板の鼻側移動でもあり、緑内障での近視眼の脆弱性を説明するだろう。(図4)(TY)
Endophthalmitis after intravitreal injection of vascular endothelial growth factor inhibitors.
Xu K et al(NY USA)
Ophthalmology 125(8): 1279-1286, 2018
・2006年から2016年までに抗VEGF注射を受けた258,357眼のうち、眼内炎を発症した40眼(0.016%)を調査した。
・全例、注射後3週間以内に発症しており、発症時に34眼(85%)は疼痛があり、25眼(62.5%)は前房蓄膿があった。
・24眼で菌が検出され、66.7%はコアグラーゼ陰性のぶどう球菌、10.0%が連鎖球菌であった。
・6か月後のlogMARは、連鎖球菌が検出された人では4.0±0.8(小数点0.0001ほぼ光覚)と悪く、ブドウ球菌では0.4±0.3(小数点0.4)で、有意差があった(p<0.0001)。
・眼内液採取と硝子体内抗生剤注入群TAIでは菌検出が48.3%であったが、硝子体手術群PPVでは90.9%と有意に高かった(p=0.03)。
・両群間で6か月後の視力には有意差はなかった。
・85歳未満の群(p=0.04)、眼圧が25mmHG以下の群(p=0.01)では6か月後の視力が20/400以上である可能性が高かった。
・初期治療の方法(TAIかPPVか)、症状の継続期間(2日以内に限る)、疼痛の有無、前房蓄膿の有無、視力状態、菌検出状況などは6か月後の視力に関連がなかった。(TY)
Treatment outcomes in the primary tube versus trabeculectomy study after 1 year of follow-up.
Gedde SJ et al(FL USA)
Ophthalmology 125(5): 650-663, 2018
・Primary Tube Versus Trabeculectomy(PTVT) Studyの結果を報告する。
・緑内障手術を受けたことのない16施設のコントロ-ル不良例242例242眼にPrimary Baerveldt(350mm2)使用した125眼と線維柱帯切除(MMC 0.4mg/ml-2分)の117例の1年後の術後経過を比較した。
・不成功の基準は、眼圧が21mmHg以上、baselineからの眼圧低下が20%未満、眼圧が5mmHg以下、緑内障再手術を施行、視力が光覚である症例とした。
・1年後に不成功例はチュ-ブ群は17.3%、レクトミ-群では7.9% (p=0.01 HR=2.59; 95%CI=1.20-5.60)
・術後眼圧はチュ-ブ群では13.8±4.1、レクトミ-群では12.4±4.4 (p=0.01)
・点眼薬数はチュ-ブ群は2.1±1.4、レクトミ-群は0.9±1.4 (p<0.001)。
・術後合併症はチュ-ブ群は36例(29%)、レクトミ-群は48例(41%) (p=0.06)。
・再手術あるいはSnellenで2ライン以上視力低下を来した重大な合併症はチュ-ブ群は1例(1%)、レクトミ-群は8例(7%) (p=0.03)であった
The primary tube versus trabeculectomy study; Methodology.Ophthalmology 125:774-781,2018参照。(TY)
A Study of the Natural History of Vitreomacular Traction Syndrome by OCT.
Errera MH, Liyanage SE, Petrou P, Keane PA, Moya R, Ezra E, Charteris DG, Wickham L.(UK)
Ophthalmology. 2018 May;125(5):701-707.
・単一施設、OCTにて硝子体黄斑牽引症候群の徴候が6か月以上みられた159例183眼
・経過観察期間 17.4±12.1か月
・平均視力(LogMAR)0.3±0.3
・ERM並存20%
・60%は不変、20%で所見改善(改善までの平均:15か月)
・12%で黄斑円孔に発展、8%は症状悪化のため手術施行
・VMTSが続く間、視力と中心窩網膜厚は不変
・改善した例(多変量解析):初診時視力良好例、網膜厚み薄い例と有意に関連(ERMとの関連なし)
【結論】VMTSは多くの例で持続するが、黄斑円孔や手術介入を要する症状悪化がなければ概して視力は低下しない。20%で自発的に解除され、視機能も向上した。(MK)
Long-Term Endothelial Cell Loss in Patients with Artisan Myopia and Artisan Toric Phakic Intraocular Lenses
Soraya M.R. lonker,et al.( Netherlands)
Ophthalmology 2018(4);125:486-494
・目的:近視と乱視の治療のための2種類の硬質虹彩支持型有水晶体眼内レンズの移植後の角膜内皮細胞密度(ECD)の長期変化を評価する。
・対象と方法:術後5または10年経過観察出来た近視群5年193眼、10年127眼、乱視群5年40眼、10年20眼。
・18歳以上、2年以上屈折値が安定している、前房深度2.8mm以上の症例。
・術前ECDは、21〜25歳が2800 cells/mm2以上、26〜30歳が2650 cells/mm2以上、31〜35歳2400 cells/mm2以上、36〜45歳2200 cells/mm2以上、 45歳以上の患者では2000 cells/mm2以上とした。
・ECD損失率、ECOが約25%減少した割合、ECOが1500細胞/ mm2未満の割合を調べた。
・結果:術後6カ月から10年時までに直線的かつ慢性的なECD低下が見られた。近視群 年間48 cells/mm2、乱視群年間61 cells/mm2減少した。(ともにP<0.001)
・10年間でECDは近視群16.6%、乱視群21.5%減少した。
・25%以上減少したのは近視群7.9%、乱視群6.3%
・1500 cells/mm2以下に減少したのは近視群3.9%、乱視群4.0%
・内皮細胞密度減少または角膜機能不全のため眼内レンズを摘出したのは近視群6.0%、乱視群4.8%だった。
・リスク要因は前房が浅い(P < 0.001)、眼内レンズのエッジと内皮との距離が狭いことだった。(P = 0.013)
・結論:近視またはトーリック虹彩支持型有水晶体眼内レンズ移植後、直線的かつ慢性的なECD損失が認められた。
・より浅い前房深度および眼内レンズのエッジと内皮との距離が狭いことが危険因子であった。(CH)
Normal-tension glaucoma has normal intracranial pressure.
Lindén C et al(Sweden)
Ophthalmology 125(3): 361-368, 2018
・正常眼圧緑内障NTGは脳脊髄圧ICPが低いために篩板前後の圧差が増大することによって発生するとの仮説を検証した。
・13名のNTG(56-83歳、中間値71歳)と11名の健康ボランティア(30-59歳、同47歳)で検討した。
・仰臥位でのICPの比較だけは51名のコントロール群を使用した。
・ICPとIOPを仰臥位、座位、9度頭下げ状態HDTで同時に測定した。
・篩板前後の圧差trans-lamina cribrosa pressure difference(TLCPD)は、MRIでの位置データなどで、ICPとIOPのデータを補正して求めた。
・9度HDTでの眼圧だけはNTGで有意に低かったが(p=0.04)、その他のICP、IOP、TLCPDは、仰臥位、座位、9度HDTで有意差はなかった(p>0.11)。
・視野欠損と、いずれの姿勢でのTLCPD、IOP、ICPとに関連はなかった。
・仰臥位でのICPの値もNTG(n=13)は10.3±2.7、正常CTRL(n=51)では11.3±2.2mmHgで有意差はなかった(p=0.24)。
・NTGでICPが低いという結果はでず、NTGはICPが低いことによるTLCPDが誘因になっているという仮説は今回の結果からは支持できなかった。(TY)
Cellular characterization of OCT and outer retinal bands using specific immunohistochemistry markers and clinical implications.
Cuenca N et al(Spain)
Ophthalmology 125(3): 407-422, 2018
・OCTでの外層の4つの層についてはいろいろ議論がある。
この外層のOCT像について、組織学的ならびに免疫細胞化学的immunocytochemistryに検討した。
・GNB3、CRALBP、Cyt Cなどを利用した(TY)
・網膜外層の4つの層 低反射層
1:External limiting membrane
1-2:Myoid zone
2:Ellipsoid zone
2-3:OS + interdigitation
3:RPE phagosome zone
3-4:RPE melanosome zone
4:RPE mitochondria zone
Accuracy of intraocular lens calculation formulas.
Melles RB, Holladay JT et al(CA&TX USA)
Ophthalmology 125(2): 169-178, 2018
・IOL計算の精度を比較した。
・計算式はBarrett Universal-Ⅱ, Haigis, Hoffer-Q, Holladay-1,Holladay-2, Olsen, SRK/Tである。
・AcrySof SN60WFでの13,301眼とSA60ATでの5,200眼を対象とし、Lenstar900を用いて測定している。
・SN60WFでのSD誤差は、Barrett Universal-Ⅱ(0.404)< Olsen(0.424)< Haigis(0.437)< Holladay-2(0.450)< Holladay-1(0.453)< SRK/T(0.463)< Hoffer-Q(0.473)であり、SA60ATでもほぼ同様であった。
・Barret式が有意によかった(p<0.01)。(TY)
Natural History of Subclinical Neovascularization in Nonexudative Age-Related Macular Degeneration Using Swept-Source OCT Angiography
João R. de Oliveira Dias, Qinqin Zhang, José M.B. Garcia, Fang Zheng, Elie H. Motulsky, Luiz Roisman, Andrew Miller, Chieh-Li Chen, Sophie Kubach, Luis de Sisternes, Mary K. Durbin, William Feuer, Ruikang K. Wang, Giovanni Gregori, Philip J. Rosenfeld(USA-FL)
Opthalmology. 2018;125(2):255-266
【目的】非浸出AMD患者における、サブクリニカルなCNVの有病率・発症率・および自然経過をSS-OCTAで前向きに評価
【対象と方法】
・2014-2017年、片眼に中期AMD(iAMD)*・非浸出AMDに続発した地図状萎縮(GA)、僚眼に浸出AMDのある患者
・SS-OCTAの3×3mmおよび6×6mmを施行
*黄斑中心部にdrusenまたは色素異常あり、地図状萎縮および浸出なし
【結果】
・160眼(iAMD 110眼、GA 50眼)中23眼(14.4%)に初回検査時にCNVあり
・経過観察期寒中さらに6眼にCNV同定
・1年以上フォローアップできた134眼のうち13眼に浸出が出現、うち10眼は初回検査時にCNV同定
・Kaplan-Meiyer法による12か月時点での浸出の発症率は6.8%(初回CNVあり:21.1%、初回CNVなし:3.6%)
・iAMD群とGA群とで浸出の発症率に有意差なし
・CNVが同定された場合、浸出が起こるリスクはCNVなしに比べて15.2倍(95%CI:4.2-55.4倍)
【結論】12か月までの時点で、浸出リスクはサブクリニカルなCNVが同定された群のほうが高い。サブクリニカルなCNVが同定された場合はより頻回な通院や家でのモニタリングを要するが、この時点での硝子体注射は、さらなる前向き試験が行われるまで推奨されない。(MK)
Incidence and Outcomes of Repositioning Surgery to Correct Misalignment of Toric Intraocular Lenses
Tetsuro Oshika,et al. (筑波大学)
Ophthalmology 2018(1);125:31-35 .
・目的:トーリックIOLの大きな軸ずれ(misalignment)を修正する手術の発生率と適切なタイミングを評価する。
・対象と方法:2013年5月から2016年4月までの間、8施設でトーリックIOL挿入をされた6431眼。
・マーキングの方法は術者間で多少異なっていたが、患者を座位にして、手動で水平2点または水平・垂直3点でマーキングした。
・結果:トーリックIOLを挿入した6431眼のうち、42眼(0.653%)が軸ずれ修正手術を受けた。
・平均misalignment 32.9°±15.7°、時計回り11眼(misalignment = 30.7±19.3°、範囲10°から69°)、
反時計回り31眼33.6°±14.5°(misalignment =33.6°±14.5°、範囲13°から74°)、屈折乱視度は2.4±1.1D(範囲 0.5から6.5)
・再手術は白内障手術後平均9.9±7.5日(範囲、0〜30日)で行った。
・平均misalignmentは、32.9°±15.7°から8.8°±9.7まで減少した(P <0.001)。
・屈折乱視度は2.4±1.1D から1.1±0.8Dに有意に減少した(P <0.001)。
・白内障手術から軸ずれ修正手術までの期間と、最終的な軸ずれ角度との間には、有意な相関がみられた(p<0.001)。
・軸ずれ修正手術が白内障手術から6日以内に行われた場合は最終軸ずれ角度が13.1±13.5°と大きかったのに対し、7日以降に行われた場合は6.3±5.9°と差がみられた(p<0.001)。白内障手術から24時間以内に修正手術が行われた2眼では、眼内レンズは再度回転し、2度目の修正手術が必要となった。
・結論:トーリック眼内レンズの軸ずれ修正手術は0.653%の症例で必要であった。軸ずれ修正手術は、白内障手術直後に行うのではなく、1週間以上経ってから行うほうが術後結果は良好である。術後3週間またはそれ以降に、いくつかの修正手術を行ったが、IOLを回転させるのが困難であり、Zinn小帯を損傷する可能性があることに気づいた。
・修正手術を考慮するなら、初回手術から1〜3週間以内に行われるべきである。(CH)
Reports : The Magnitude of Intraocular Pressure Elevation Associated with Eye Rubbing
Daniel C Turner, et al (USA)
Ophthalmology 126(1): 171-172, 2018
4-6歳のアカゲザル3匹5眼を用いて、ワイヤレスのIOP測定装置をインプラントし全身麻酔中に抗生剤眼軟膏を点入。こすって取り除く動作を誘発。ビデオ撮影(こすり方も記録)し、163回のこすり動作の眼圧上昇を記録
結果:指でこするよりも広い面積でこすった方が上昇し、手の甲と手首でこすった場合最大310mmHgの眼圧上昇を認めた
163回の平均では109±26mmHgの上昇が3-4秒継続、ピークは206-310mmHgまで上昇
その後1-4mmHgとわずかにベースラインよりも下がったが約1秒後には元のレベルに戻った(MM)
Disinfection of tonometers. A report by the American Academy of Ophthalmology.
Junk AK et al(FL USA)
Ophthalmology 124(12): 1867-1875, 2017
・PubMedとCochrane Library databaseに載っている64論文のうち10論文を抽出し、再利用可能な眼圧計プリズムの消毒法について調べた。
・10論文の内9論文はプリズムであったが、1論文は金属輪であった。
・感染因子はアデノウイルス8と19、単純ヘルペス1と2、HIV1、HCV、enterovirus70、Creutzfeldt-Jakobである。
・アデノウイルス8は4つの全論文で10倍次亜塩素酸塩で無菌化できたと報告されたが、70%イソプロピルアルコールや3%過酸化水素でのふき取りでは無効なことがある。
・HSVについては次亜塩素酸塩や70%イソプロピルアルコールで取り除けたが、エタノールや70%イソプロピルアルコールでこすってもprionを感染させる細胞塊を完全に除去することはできなかった。
・Prion病が疑われる場合は単回使用にすべきだ。
・次亜塩素酸塩はアデノウイルスやHSVに有効である。
・次亜塩素酸ナトリウム:漂白剤
・次亜塩素酸カルシウム:さらし粉、プール消毒剤(TY)