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その他のジャーナル

2024
17巻

ファリシマブ投与後に非感染性眼内炎と虚血性視神経症を生じた加齢黄斑変性の1例

その他のジャーナル 17巻 (10号) 2024

眼科臨床紀要1710):2024
高橋翔吾 他(富山大)
<症例>75歳女性
既往症:右眼中心性漿液性網脈絡膜症
右眼PCVの診断でファリシマブ硝子体内投与開始。導入期3回目の注射より18日後に右眼中心視野障害と視力低下を自覚した。
網膜静脈炎と視神経乳頭炎の併発を疑う所見を確認した。
トリアムシノロンアセトニド20mgテノン嚢下投与、ベタメタゾン点眼、ブロムフェナクナトリウム点眼を開始し改善した。
<考案>抗VEGF薬投与後に自覚症状が悪化した場合には速やかな診察が必要である。 (AM)

2024
66巻

急性黄斑網膜外層症(AMOR)

その他のジャーナル 66巻 (10号) 2024

COVID-19罹患後にacute macular outer retinopathy (AMOR)を発症した2
眼科 Vol.66 (10) 2024
竹内一彦 他 (日本大学)
・COVID-19罹患後に急性に若年女性に発症する報告がある
・一般的な症状は視力低下、傍中心暗点、光視症
・網膜外層に病変が起こる
・検眼鏡で病巣を検出しにくい
<症例1
28歳女性
主訴:左眼中心視野異常
発熱し近医で COVID-19罹患の診断。その2日後に視野異常を自覚し12日後に眼科受診。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.8(1.0)
左0.7(1.0)
(画像供覧)
(経過)・両眼AMORの診断で0.1%ベタメタゾン点眼4回/日開始漸減し3か月施行した。
・5か月後に近赤外線画像の低反射領域軽快
OCTではIZラインの不整が残存した。
自覚症状は消失した。
<症例2
28歳女性
主訴:左眼視野異常
発熱し近医でCOVID-19罹患の診断4日後に楕円形の残像が見えることに気づき7日後に眼科受診した。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.7(1.0)
左0.9(1.0)
(経過)無治療で経過観察を行った。
初診から74日後、IZラインの不整は残った。自覚症状は残存した。
・ COVID-19罹患後に傍中心暗点を発症した場合AMORを疑う。診断にはマルチカラー画像,近赤外光画像,OCT,OCTAが有用である。(AM)

2024
43巻

角膜内皮移植再手術後の移植不全に対する人工角膜内皮移植術の初期成績

その他のジャーナル 43巻 (9号) 2024

Early Outcomes of an Artificial Endothelial Replacement Membrane Implantation After Failed Repeat Endothelial Keratoplasty
Luigi Fontana, et al. (Italy)
Cornea 2024(9);43:1088–1094
目的:繰り返す角膜内皮移植術(EK)の移植片不全に対する人工角膜内皮(EndoArt、EyeYon Medical社、イスラエル)移植術の成績を報告する。
EndoArtは、厚さ50μm、直径6.5mmのヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの柔軟な材料で構成され、角膜後面の曲率に合わせて成形され、人工的な流体バリアとして機能し、病的な角膜内皮の機能を代替する。デバイスが角膜内皮面に接着すると、角膜実質への水分の浸透が妨げられ、その結果、実質の浮腫が減少し角膜の透明度が改善する。
対象と方法:過去に2回以上EK後に移植片不全となった患者5例。逆シンスキーフック(Moria SA, Nanterre, France)を用いてEKグラフトを角膜後面から剥離し、2.0mmの角膜トンネルから取り出した。その後、EndoArtを角膜表面に置き、端に見える「F」マークに従って、正しい方向を確認した。先端が鈍いスパチュラ(Janach Srl, Como, Italy)を使用し、角膜トンネルを通して前房内にEndoArtを押し込んだ。前房内に挿入されると自然に展開し、角膜中央に配置された。10%C3F8を前房内に注入し、角膜後面に密着させた。10-0のナイロンで角膜に1針縫合、3ヵ月に抜糸した。
結果:4例はEndoArt移植前に2回、1例は3回のEKを受けていた。最後のEKからEndoArt移植までの平均期間は3±1年であった。手術の6ヵ月後、角膜後面に完全に接着し、すべての患者で角膜中心部は透明であった。術前の平均CDVAは1.26 ± 0.25 logMAR、術後最終平均CDVAは0.74 ± 0.44 logMARであった(P = 0.062)。術後、視力は2例で11 line改善、2例で2~5 line改善、1例で3 line低下した。平均CCTは、術前805 ± 135 mmから術後6ヵ月で588 ± 60 mm、全例で顕著なCCT低下がみられた(P = 0.015)。重大な合併症は認められなかったが、5人中4人は、術後2~8週間でEndoArtの解離が生じたため、1回以上の10%C3F8再注入を必要とした。
緑内障点眼剤を使用している患者3例と緑内障手術歴のある患者1例での眼圧上昇は認められなかった。全例でNRS(Numerical Rating Scale)が1.5〜5ポイント減少し、自覚的な痛みが軽減した。
結論:この研究期間中にEndoArtの抜去を必要とした患者は一人もいなかったことから、短期的な安全性は良好であることが示唆された。また、患者の視機能を改善する能力を実証した。(CH)

2024
78巻

梅毒性ぶどう膜炎36症例の臨床的検討

その他のジャーナル 78巻 (9号) 2024

臨眼 789):1073-1081.2024
後藤浩 他(東京医科大)
・本邦では梅毒患者が年々増加している
昨年は約1万5千件の報告
・20~50歳代男性、20歳代女性に多い
・多彩な眼所見を呈する
<眼所見の内訳>
前眼部炎症 67%
硝子体混濁 58%
視神経乳頭発赤 36%
網膜静脈炎88%・網膜動脈炎 73%
黄斑浮腫 19%
斑状網膜病変 17%→非HIV感染例では 梅毒を疑う重要な所見
視神経炎 8%
<症例提示>
①42歳女性
ぶどう膜炎の診断で紹介受診
右眼)硝子体混濁・網膜血管炎
②53歳男性
プレドニゾロン内服無効のため紹介
両眼)網脈絡膜炎
左眼)硝子体混濁・視神経炎
③36歳男性
急性網膜壊死疑いで紹介受診
左眼)硝子体混濁・網膜滲出病変
網膜血管炎
*全症例で血清梅毒反応陽性
FAG施行
<考案>
非定型的な中間部および後眼部ぶどう膜炎症例には積極的に血清梅毒検査を行う (AM)

2024
78巻

梅毒性ぶどう膜炎の臨床像11例の検討

その他のジャーナル 78巻 (7号) 2024

臨眼 787817-822 2024
村瀬裕香 他(東京医科歯科大)
・40代男性に多かった
<炎症の局在分類>
汎ぶどう膜炎 57.9%
後部ぶどう膜炎 31.6%
前部強膜炎 10.5%
↳後眼部炎症の症例が多かった
<眼所見の内訳>
網膜血管炎 73.7%
角膜後面沈着物および硝子体混濁47.4%
視神経乳頭炎 42.1%
・特徴的とされるASPPC(acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis)所見が1 例にみられた
・治療開始が遅れると網膜外層萎縮や黄斑浮腫などにより視力予後不良となる
→血清学的検査の実施による診断と早期治療による後眼部炎症の鎮静化が重要 (AM)

2024
66巻

小児にみられた鈍的外傷後の黄斑円孔網膜剥離の1例

その他のジャーナル 66巻 (6号) 2024

眼科.66(6)2024
松本大蔵 他(自治医科大)
症例報告数が特に少なく、治療法の確立していない小児の外傷性黄斑円孔網膜剥離の報告
<症例>
13歳男児
サッカーボールによる左眼打撲
診断:左眼)外傷性黄斑円孔網膜剝離 網膜振盪症
両眼)高度近視
経過:円孔の自然閉鎖は見られず受傷後3週間で硝子体手術を施行した。
術中にPVDが生じていることが確認された。
術前の左眼視力: 0.03(矯正不能)
術後の左眼視力:(0.2)
<考案>
・過去の報告では約30~50%の症例の円孔が自然閉鎖した。
小さい円孔、円孔周囲に網膜内嚢胞が無い、後部硝子体剥離が無い症例に多かった。
受傷後1~2週で所見の改善が始まった。
・本症例は強度近視のため硝子体が既に液化していたか、受傷時にPVDが発生した可能性がある。
・外傷性黄斑円孔網膜剥離では受傷後1~2週間で所見の改善がなければ硝子体手術も選択肢になる。 (AM)

2024
68巻

アフリベルセプト8mgを新生血管型加齢黄斑変性へ投与した後発症した網膜血管炎

その他のジャーナル 68巻 (5号) 2024

Retinal vasculitis after intravitreal aflibercept 8mg for neovascular age-related macular degeneration
Japanese Journal of Ophthalmology 68(5):531-537, 2024
Hideaki Matsumoto et al
アフリベルセプト8mgの臨床試験で報告のなかった網膜血管炎が発症したことに関する臨床報告
<症例>35眼34人:男23眼23人  女12眼11人
18眼(51.4%)…未治療
17眼(48.6%)…他剤より切り替え
内訳: 7眼 アフリベルセプト2mg
2眼 ブロルシズマブ
8眼 ファリシマブ
ブロルシズマブ関連眼内炎 5眼
ファリシマブ関連眼内炎 1眼
<症例提示>82歳男性 未治療 Type1.2.混合型 網膜血管炎と硝子体炎を発症した
<結果>
・アフリベルセプト8mg投与4週間後の検査で3眼(8.6%)に網膜血管炎を確認した。
・トリアムシノロンアセトニド(30mg/0.75 mL)のテノン嚢下注射で改善がみられた。 (AM)

2024
43巻

デスメ膜剥離角膜内皮移植術後(DSEK)の酢酸プレドニゾロン1%点眼液によるステロイド誘発性の眼圧上昇/緑内障の長期リスク

その他のジャーナル 43巻 (3号) 2024

Long-Term Risk of Steroid-Induced Ocular Hypertension/ Glaucoma With Topical Prednisolone Acetate 1% After Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty
Marianne O. Price, et al. (IN USA)
Cornea 2024(3);43:323–326
目的:緑内障の既往のない患者において、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の長期使用によるステロイド誘発性の眼圧上昇の長期リスクと緑内障治療の必要性を評価する。
対象と方法: DSEKを受け、移植片の拒絶反応を防ぐために酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期使用した緑内障の既往がない患者211人。
術後、酢酸プレドニゾロン1%点眼液を1日4回4ヵ月間点眼するよう指示し、その後1ヵ月ごとに1回ずつ漸減して1日1回点眼とし、眼圧が上昇しない限り無期限に継続した。主な転帰は眼圧上昇(眼圧24mmHg以上またはベースラインより10mmHg上昇と定義)と緑内障治療の開始であった。
眼圧をコントロールするために必要に応じて行われた方法は、緑内障点眼薬の投与開始、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の中止、緑内障濾過手術(トラベクレクトミーまたはチューブシャント手術)。
結果:患者の平均年齢70歳(範囲:34~94歳)、平均経過観察期間7年(範囲、1~17年)。
術後1年、5年、10年の時点でのステロイド誘発眼圧上昇の累積リスクはそれぞれ29%、41%、49%だった。リスクは1日2~4回点眼していた最初の6ヵ月間で最も高く、その後は1日1回点眼が継続されるにつれて低下した。ステロイド誘発性の眼圧上昇は、拒絶反応エピソードを経験した眼でやや早く現れる傾向があった。緑内障治療を必要とするリスクは術後1年、5年、10年の時点でそれぞれ11%、17%、25%。緑内障の治療を受けた35眼のうち、28眼(80%)が点眼加療、7眼(20%)が濾過手術だった。
結論:酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期間使用した、緑内障の既往のないDSEKレシピエントの半数がステロイド誘発性の眼圧上昇を発症し、25%が緑内障治療を必要とした。1日1回点眼になっても、眼圧のモニタリングが必要である。角膜移植が必要な患者に対しては、長期的なステロイドの副作用を軽減するために、可能な限り拒絶反応のリスクの少ない移植方法を用いることが望ましい。(CH)

2024
68巻

アトピー白内障手術中の網膜周辺部の眼底観察と処置方法

その他のジャーナル 68巻 (2号) 2024

Fundus examination using a wide-angle viewing system and intraocular illumination through the corneal incision during cataract surgery: a case series.
Saito S et al(愛知医大)
Jpn J  Ophthalmol 68(2): 112-116, 2024
・広角眼底観察システムと硝子体経由でない眼内照明を用いた新しい眼底観察方法を報告する。
・アトピー性皮膚炎に関連した白内障手術を行った連続13例(平均年齢26.8歳、9例が男性)で行った。
・超音波乳化吸引後に前後房を粘弾物質で満たし、27G眼内照明プローブを角膜切開創から前房に挿入し、広角眼底観察システム下で強膜圧迫しながら眼底周辺部を観察した。
・それで網膜裂孔や剥離が見つかったら処置を行い、最後に眼内レンズを挿入した。
・13眼中5眼(38%)で網膜裂孔がみつかり、そのうち2例(15%)は網膜剥離も発症していた。
・3眼は冷凍凝固処置を行い、網膜剥離を発症していた2例では強膜バックルを行った。
・手術時間は処置をしなかった症例では平均22分、冷凍凝固例では28分、バックル例では80分であり、合併症はなかった。(TY)

2024
37巻

ブピバカイン(マーカイン)による外眼筋障害

その他のジャーナル 37巻 (2号) 2024

三村治(兵庫医大)
眼科手術 37(2): 175-180, 2024
・局所麻酔薬は全て多少とも外眼筋毒性を有しており、なかでもブピバカインは最も筋毒性が強い。
・筋内に注射すると低濃度でも外眼筋の肥厚・拘縮をきたし、長期あるいは恒久的な眼球運動障害や機械的斜視を起こす可能性がある。
・ボツリヌス毒素を注射した筋の拮抗筋に対して、斜視の非観血的治療として行うこともある。
・ブピバカインは眼科手術の局所麻酔薬として使用すべきではない。(TY)

2024
43巻

デュピルマブ治療を受けたアトピー性皮膚炎患者における眼表面疾患

その他のジャーナル 43巻 (2号) 2024

Ocular Surface Disease in Patients With Atopic Dermatitis Treated With Dupilumab: A Prospective Case–Control Study
Paola Marolo, et al. (Italy)
Cornea 2024(2);43:221–227
2018年に承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬であるデュピルマブは、炎症を引き起こす物質であるインターロイキン4とインターロイキン13の働きを抑えることで症状を改善する。
しかし、その一方で、デュピルマブによる眼表面疾患(dupilumab-induced ocular surface disease;DIOSD)という副作用が報告されている。
DIOSDは、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、ドライアイ、流涙など、さまざまな眼の症状を引き起こす。
目的:デュピルマブで治療された AD 患者の 6 ヵ月後の DED 有病率の変化を評価すること。
対象と方法: 2021年5月から12月の間にデュピルマブの投与が予定されていた中等症から重症のAD患者と健常者を対象とした。DED有病率、Ocular Surface Disease Index (OSDI)、涙液層破壊時間、涙液浸透圧、染色スコア、シルマー試験の結果をベースライン時、治療1ヵ月後、6ヵ月後に評価した。皮膚のEczema Area and Severity Index(湿疹面積と重症度指標)はベースライン時に評価された。
結果:デュピルマブ治療を受けたAD患者36人と健常対照者36人の72眼を対象とした。
DEDの有病率はデュピルマブ群でベースライン時の16.7%から治療開始6ヵ月後には33.3%に増加した(P = 0.001)のに対し、対照群では横ばいであった(P = 0.110)。6ヵ月後、デュピルマブ群でOSDIと染色スコアは増加し(8.5 ± 9.8 から11.0 ± 13.0へ、P = 0.068、0.1 ± 0.5 から0.3± 0.6へ、P = 0.050)、涙液層破壊時間とSchirmer試験は減少したが(7.8 ± 2.6秒から7.1 ± 2.7秒へ、P<0.001、15.4 ± 9.6mmから13.2 ±7.9mmへ、P = 0.036、)、対照群では変化はなかった。両群とも涙液浸透圧は変化しなかった(デュピルマブ群P = 0.987、対照群P = 0.073)。治療開始6ヵ月後で、結膜炎42%、眼瞼炎36%、角膜炎2.8%が認められた。重篤な副作用ではなく、デュピルマブを中止した患者はいなかった。湿疹面積および重症度指数とDED有病率との関連は示されなかった。
結論:デュピルマブ治療を受けたAD患者では、6ヵ月後にDED有病率が増加した。しかし、重篤な眼の副作用は認められず、治療を中止した患者はいなかった。
デュピルマブがIL-13をブロックすることでゴブレット細胞(粘液を分泌する細胞)が減少し、ムチン分泌低下と粘膜上皮バリア機能不全を引き起こす可能性や、Th2細胞(アレルギー反応に関与する免疫応答)の抑制によりTh1細胞(細胞性免疫に関与する免疫応答)が亢進することが関与している可能性が示唆された。(CH)

2024
17巻

中心性漿液性脈絡網膜症における剥離消失直後の一過性視力低下と視細胞外節伸長

その他のジャーナル 17巻 (1号) 2024

眼臨紀 17(1):20-25, 2024
蔵並藍他(東京女子医大)
・中心性漿液性脈絡網膜症CSCに対して、網膜光凝固治療後の漿液性網膜剥離SRD消失直後の視力低下と網膜視細胞外節PROSの伸長との関連を88例91眼(平均52.2歳)について検討した。
・LP後のSRD消失直後に視力が0.1以上低下した低下群12例12眼(13.2%)、不変群49例51眼(56.0%)、0.1以上改善した改善群27例28眼(30.8%)に分けて、LP後のPROS長を評価した。
・LP前視力は改善群で低下群、不変群より有意に不良であったが(p<0.05)、各群とも、LP前よりは有意に改善した(p<0.05)。
・LP時のPROS長は、低下群で11.7±4.0μで、不変群8.14±2.5、改善群8.04±2.2μより有意に延長していた(p<0.01とp=0.01)。
・PROS伸長があるCSCに対してLPを行うと、SRD消失直後に一過性視力低下おきたす可能性がある。
・SRDが遷延化すると、RPEによるPROSの代謝が阻害され、PROSが伸長すると考えられる。(TY)

2024
68巻

新型コロナウイルス感染症関連の結膜炎の臨床的特徴

その他のジャーナル 68巻 (1号) 2024

Tajima A, Sassa Y, Ishio D, et al. Clinical features of 26 cases of COVID-19-associated conjunctivitis. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 57-63.
・佐賀県の好生館病院で2020年3月から2021年3月までの期間に新型コロナウイルス感染症で入院した患者282名の結膜炎の発症状況とその背景要因を調べた。
・282名中26名(9.8%)に結膜炎の発症があった。症状としては結膜充血のみがほとんどで、眼瞼腫脹を来した者が2名、眼痛、眼掻痒感、眼脂が各1名だった。
・26名中新型コロナウイルス感染症発症時に結膜充血のあった者は4名だったが、実際にこれが単独の初発症状だったかどうかは本文からは読み取れなかった。また、新型コロナウイルス感染症発症から結膜炎所見出現までの期間は平均3日間(1~5日)だった。
・結膜炎の発症と新型コロナウイルス感染症の重症度とは関連性がなかったが、結膜炎のない患者と結膜炎のある患者を比較すると、平均年齢は51.00歳に対しては35.00歳、男性の割合は51.6%に対して77.8%、喫煙者20.3%に対して44.4%で、若年、男性、喫煙の3つが結膜炎発症の要因として有意であった。(KH)

2024
41巻

ブリモニジン点眼使用で生じた角膜実質混濁

その他のジャーナル 41巻 (1号) 2024

依藤彰記、細谷友雅、岡本真奈他. ブリモニジン点眼液使用経過中に発症した角膜実質炎の3例. 眼科2019; 61: 1527-1533.
篠崎友治、溝上志朗、細川寛子他. ブリモニジン関連角膜実質混濁の臨床経過~自験3症例からの考察. あたらしい眼科2024; 41: 82-88.
・世界で初の報告は”Maruyama Y, et al. Cornea 2017; 36: 1567-1569” である。
・海外での報告例はほとんどなく、2024年4月現在、Purgert RJ, et al. Can J Ophthalmol 2020; 55: e172-173. があるのみ。なぜ日本ばかりが多いのかは不明。海外の方がブリモニジンの濃度が濃く(一般に0.2%、わが国は0.1%)、添加物にも差異はない。
・臨床的特徴としては、①長期間のブリモニジン使用歴、②角膜周辺部に生じる、③実質深層への血管侵入を伴って角膜浸潤をきたすが上皮欠損は伴わない、④経過が長くなると脂肪変性をきたす、⑤発症前または発症時に顕著な充血がある、⑥ステロイド薬で浸潤は消退するが沈着や瘢痕による混濁は残る。
・機序としては、ブリモニジンの組織移行性が高く、角膜実質に移行して何らかの免疫反応(III型アレルギー反応?)をきたしているのではないかと考えられる。(KH)

2024
68巻

ポリビニルアルコールヨウ素(PVA iodine: サンヨード)点眼液の抗ウイルス効果/感染性結膜炎の原因となるヒトアデノウイルスは?

その他のジャーナル 68巻 (1号) 2024

Tsukahara-Kawamura T, Hanaoka N, Uchio E. Evaluation of anti-adenoviral effects of the polyvinyl alchol iodine ophthalmic solution. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 64-69.
・ヒトアデノウイルスは眼、呼吸器、消化管、尿路等への感染が知られており、これらの原因として報告されている16型(HAdV-1, -2, -3, -4, -5, -6, -7, -8, -11, -37, -53, -54, -56, -64, -81, -85)に対するPVA iodine(サンヨード)の抗ウイルス効果を検討した。
・in vitroでの検討で16型すべてにおいて殺ウイルス効果(virucidal effect)が確認された。
・ちなみに、ヒトアデノウイルス(HAdV)はアデノウイルス科マストアデノウイルス属(mastadenovirus)に属する。エンベロープを持たない2本鎖DNAウイルスで、現時点で7種(A~G)の亜属に、さらに血清型によって現在は100を超える型が報告されている。
・EKCの原因となるのはHAdV-D (-8, -37, -53,-54, -56, -64, かつては-19aも)およびHAdV-E (-4)が知られている。
・咽頭結膜熱(PCF)の原因としてはHAdV-B (-3, -7)が挙げられている。(KH)

2024
68巻

虚血性ブレブからの遅発性漏出に対するテノン嚢移植

その他のジャーナル 68巻 (1号) 2024

A novel bleb revision technique: lining with tenon’s patch graft for treatment of large, ischemic, leaking blebs with severe conjunctival scarring after trabeculectomy.
Akagi T, et al
Jpn J Ophthalmol. 68(1):32-36. 2024

目的:線維柱帯切除術後に結膜の可動化が困難で、重度の瘢痕を伴う大きな虚血性ブレブからの遅発性漏出に対して、テノン嚢移植を用いた新しいブレブライニング法を報告する。
方法:症例シリーズをレトロスペクティブに調査し、対象は大きな虚血性ブレブからの遅発性漏出が見られた6例。
具体的な方法は、小さなテノン嚢組織を切開部位から切除し、ブレブの漏出領域までの通路を作成するためにブレブナイフまたはマイクロはさみを使用し、インドシアニングリーンで染色したテノン嚢組織を虚血性ブレブの結膜の下に挿入し、漏出部位を横切って結膜経圧迫縫合を施し、テノン嚢移植の位置を固定した。
結果:すべての症例において術後すぐにブレブ漏出が完全に封鎖され、4例では術後6~17か月の追跡期間中にその状態が維持された。
2例においては、術後7か月または9.5か月で異なる漏出点から再発したが、テノンパッチライニングの繰り返し修正により正常に封鎖された。
最終的な診察時の眼圧は、緑内障薬や追加の緑内障手術なしで5~13 mmHg(中央値10 mmHg)した。
結論:テノンパッチライニング法は、大きな虚血性ブレブと結膜可動化が困難なブレブ漏出に対して有望な治療法である。(KK)

2023
42巻

デスメ膜角膜内皮移植におけるCOVID-19 mRNAワクチン接種後の移植片拒絶反応の発生率

その他のジャーナル 42巻 (10号) 2023

Incidence of Graft Rejection in Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty After COVID-19 mRNA Vaccination
Ami Igarashi, et al. (日本大学)
Cornea 2023(10) ; 42:1286–1292
・目的:mRNA ワクチンであるCOVID-19 ワクチン接種後のデスメ膜角膜内皮移植術 (DMEK) の拒絶率を調査する。
・DMEKは低侵襲手術であり、拒絶反応率も低い。しかし、COVID-19の世界的流行後に拒絶反応の症例が報告されている。
・このワクチンには予防効果があるにもかかわらず、心筋炎、ギラン・バレー症候群、自己免疫性筋炎などの全身性の副作用の報告がある。
・このような炎症の影響がCOVID-19ワクチン接種と角膜移植後の拒絶反応に関する免疫耐性に関与している可能性があるという仮説を立てた。
・対象と方法:2006年1月から2020年12月までにDMEKを受けたアジア人患者210例のうち基準を満たした198例(非接種124例、接種74例)を対象とした。
・ワクチン接種群は、2021年にCOVID-19ワクチンを1回以上接種した患者とした。
・角膜移植片拒絶反応は、角膜浮腫、前房炎症、拒絶線、角膜血管新生、周辺虹彩前癒着、角膜浮腫の有無に関わらず新たな内皮沈殿物が生じたものと定義した。
・結果:拒絶反応は198例中6例(非接種群1例、接種群5例)認められ、移植片不全に至った症例は5例(接種群5例6.7%)で、全例再移植を要した。
・パンデミック期以前の過去の報告によると、DMEK後の移植片拒絶反応のリスクは1%と低く、拒絶反応後の再移植の必要性はさらに低かった。
・結論:これまでの報告では、mRNA ベースのワクチンが体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を活性化することが示されている 。
・mRNA ベースのワクチンは角膜内皮細胞とウイルス抗原の間の交差反応を誘発する。
・その結果、インターフェロン ガンマなどのサイトカインのレベルが上昇し、免疫抑制性の眼内微小環境に影響を与える可能性がある。
・COVID-19 mRNAワクチン接種がDMEKにおける角膜移植片拒絶反応率を上昇させる可能性を示唆している。
・ワクチン接種を受ける前に、患者にこのような影響の可能性について説明し、典型的な症状について警告しておく必要がある。(CH)

2023
18巻

鼻ほじるとコロナ4倍、メガネかけるとコロナ半分

その他のジャーナル 18巻 (8号) 2023

Why not to pick your nose: Association between nose picking and SARS-CoV-2 incidence, a cohort study in hospital health care workers.
Lavell AHA, Tijdink J, Buis DTP, Smulders YM, Bomers MK, Sikkens JJ (Nigeria)
PLoS ONE 2023; 18(8): e0288352. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0288352
【目的】
病院の医療従事者(HCW)はSARS-CoV-2に感染するリスクが高い
特定の行動的・身体的特徴とSARS-CoV-2感染の発生率との関連を評価
【対象と方法】
オランダの2つの大学病院で404人のHCWを対象
パンデミックの第1期にSARS-CoV-2特異的抗体を前向きに測定
行動的特徴(鼻をほじること、爪をかむこと)と身体的特徴(眼鏡をかけること、ひげを生やすこと)に関するレトロスペクティブ調査
【結果】
219人のHCWが調査に回答(回答率52%)
2020年3月から2020年10月までの追跡期間中に、34/219人(15.5%)がSARS-CoV-2血清陽性
HCWの大多数(185/219、84.5%)が、少なくとも1回は偶発的に鼻をほじると回答し、頻度は月1回、週1回、毎日とさまざま
SARS-CoV-2発症率は、鼻をほじるHCWでは、鼻をほじらないHCWと比較して高かった
(32/185人:17.3% vs. 2/34人:5.9%、OR 3.80、95%CI 1.05~24.52)
爪かみ、眼鏡の着用、ひげの有無とSARS-CoV-2感染との関連は認められなかった
*眼鏡の着用はOR0.49(95%CI 0.23-1.06)とmarginal significance
【結論】
HCWの鼻ほじりは、SARS-CoV-2感染のリスク上昇と関連している。医療施設は、教育や感染予防ガイドラインにおける鼻ほじりの推奨の実施など、より多くの認識を持つことを推奨する。(MK)

2023
94巻

霊長類のメラノプシン神経細胞による環境光の符号化

その他のジャーナル 94巻 (7号) 2023

堀口浩史(慈恵医大)
日本の眼科 94(7): 860-861, 2023
・Liu A et al. Encoding of environmental illumination by primate melanopsin neurons. Science 379:376-381,2023の紹介。
・マカクサルのipRGCの個々は対数で2.7±0.83の輝度範囲で反応するが、ipRGCの集団としては対数で5.2の輝度範囲をカバーしている。
・錐体細胞の神経順応と同じような性質を持っている。(TY)

2023
6巻

POAGに対するプリザーフロの術後3年成績

その他のジャーナル 6巻 (5号) 2023

Ab Externo SIBS Microshunt with Mitomycin C for Open-Angle Glaucoma
Three-Year Results as a Primary Surgical Intervention. Retrospective, interventional case series
James J. Armstrong, Iqbal Ike K. Ahmed. et al, Ophthalmology Glaucoma6(5),480-492: 2023
・2015年7月から2017年11月に一人の術者が、濾過手術や上脈絡膜シャント手術、網膜手術や角膜移植手術、CPCを受けていないPOAGにPreserflo単独手術を実施し少なくとも1ヶ月以上経過観察した症例135名252眼。
・3年間のフォローアップ率は75.5%
・42%女性、55%白人、58%ベースライン眼圧21mmH以上, 術前IOP20.0mmHg, 点眼数4
・Primary outcome:3年後のComplete successの割合
・術後1ヶ月以内の点眼や眼圧異常、フォロー中のニードリングは不成功とはカウントせず。
・Surgical revison, 再手術、光覚喪失はその時点で不成功
・Complete success: 2回連続で17mmHgを超えない、臨床的低眼圧(ベースラインから2段階以上の視力低下をきたす6mmHg未満の眼圧)、術前眼圧から20%以上の眼圧、眼圧下降薬なし
・Qualified success: 眼圧下降薬あり
・Surgical revision: 結膜を開いて瘢痕組織除去(MMC併用)
・Secondary outcome:点眼有無、20%眼圧下降の有無による14mmHgまたは21mmHgを閾値とした眼圧、不成功のリスク因子、平均眼圧・点眼数、術後介入、合併症、再手術
・結果:Complete success: 55.6%
・Qualified success: 74.8%
・点眼再開まで平均16.9ヶ月、59.4%は術後3年で点眼フリーであった
・不成功のリスク因子:<0.4%mg/mlのMMC使用(HR 2.42)、ベースラインIOP 21mmHg未満(HR1.79),
・合併症: 脈絡膜剥離7%, 前房出血 5%, 浅前房 5%
・Needling: 15.1% 術前眼圧が21mmHgより大きい場合より頻度が高い(HR3.21)
・Surgical revision: 7%, 再手術: 2.6% MMC濃度が0.4mg/ml未満ではより高頻度(OR 4.9)
・術後3年の平均眼圧12.4mmHg(IQR 10-15.5) 点眼数 0(IQR 0-2)
・点眼フリー:59.4%
・カットオフ 6mmHg-14/17/21mmHでの CS: 62.5%/71.7%/73.0%、QC: 77.6%/81.6%/84.2%
・MMC濃度
0.4mg/ml未満 術後3年の眼圧中央値14mmHg(11-16) 点眼数1(0-2)
0.4mg/ml以上 術後3年の中央値12mmHg(10-14),点眼数 0(0-1)
・結論:MMC濃度を0.4mg/ml以上で使用すると、CS,QSの割合が高く、合併症が少なく、術後点眼、手術介入、通院回数も少ない(MM)

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