篠田 啓 (帝京大)
あたらしい眼科 33(7):981-998, 2016
クロロキン網膜症はクロロキン(CQ)の長期投与により両眼黄斑が障害される網膜症
1962年の症例報告後使用が制限され、国内ではほとんど使用されずなじみがない
2015年7月 サノフィ(株)がSLE/CLE(皮膚エリテマトーデス)に対する標準的治療薬としてヒドロキシクロロキン硫酸塩(HCQ) プラケニル®錠を発売
今後日本でも広く使用されていくと考えられる
HCQはCQの代謝産物:抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用、抗腫瘍作用などを持ち、CQよりも頻度は少ないが網膜障害の病態は同じ
日本眼科学会のガイドラインが提唱されているので参照
発症機序の詳細は不明:網膜全層にわたる神経細胞の変性、ならびにRPEの萎縮を認める
留意点の詳細は日眼会誌120巻6号に詳細
禁忌:既往も含めてSLE網膜症以外の網膜症・黄斑症のある患者
累積投与量が200gを超えると発症頻度が高まる
少なくとも年1回 視力・眼圧(ステロイド併用による眼圧上昇)・細隙灯顕微鏡検査(網膜症以外の異常/化角膜沈着物・白内障)・眼底検査(アジア人ではより周辺に異常が出現することがある)・自発蛍光(早期のRPE障害を検出可能)、FA(FAFやOCTによって重要性は低下)、OCT(Ellipsoid zoneの欠損)、色覚検査(石原式、P-D-15、SPP2)、HFA(10-2または30-2)、多局所ERGを行うことが重要
リスク患者ではより頻回の検査(累積200g、肝・腎機能障害、視力障害、高齢者)
治療は投与を中止すること。体内からの排出が遅いため投与中止でも進行することがある。AAOのガイドラインでは網膜症は非可逆性でRPE消失以前に検出すべき(MM)