豊川紀子、他(永田眼科)
あたらしい眼科33(11) : 1651-1655. 2016
目的:DSAEKは術中眼圧変動の大きい術式であるため、緑内障進行例にDSAEKを施行し術前後の視力と視野変化を調べ、視機能に対する影響を検討する。
対象と方法: DSAEKを施行された8例8眼。全例、眼内レンズ挿入眼で、濾過手術の既往は6例だった。
全例海外ドナー角膜を使用、グラフト径8mm、全例ストリッピングはしなかった。術中灌流圧は30mmHgとし、空気抜去は行わなかった。
結果:平均年齢73±6歳、男性5例,女性3例、術後平均観察期間は6±4カ月。
8眼中7眼で術翌日に移植片が接着した。2眼で空気の後房迷入を認めた。
接着不良眼1眼で術後2日目に前房内に空気を再注入して接着を得られた。
視力は全例で術前以上の視力が得られた。
眼圧は術前13.1 ± 4.7 mmHg、術後2ヶ月12.8±4.6mmHg、濾過胞に影響はなかった。
視野はGPでは8眼中4眼でV-4と内部イソプター改善、残り4眼で内部イソプターのみ改善した。ハンフリー10-2では8眼中7眼でMD値または中心4点内の感度改善が得られた。
全例の平均MDは術前 -25.4土5.7dB、術後6カ月 -18.8土6.3dBだった。
結論:今回の症例では、残存視機能への悪影響がなかった。DSAEKのドナーグラフトの5年生存率は、フックス角膜内皮変性症では95%であるのに対し濾過胞眼では40-48%と不良であると報告され、さらに、緑内障インプラント眼は25%と不良である。どのような症例までDSAEKの適応を拡大できるかの判断基準を確立することは今後の課題である。(CH)