Effect of topical steroid instillation on central corneal thickness in eyes with bullous keratopathy
Takashi Ono, et al. (宮田眼科病院)
Japanese Journal of Ophthalmology (2019)(3)63:229-233.
目的:水疱性角膜症(BK)の眼の中心角膜厚(CCT)に対するステロイド点眼の効果を調べた。
対象と方法:2011年6月から2014年1月までの間に1日4回0.1%ベタメタゾン点眼薬で治療を受けたBKの角膜移植を希望しない患者(ベタメタゾン群)18人18眼、同期間に5%塩化ナトリウム(高張食塩水群)点眼剤で治療した年齢および性別が一致した患者18人18眼を対照群とした。
治療前にCCT、IOP、および角膜内皮細胞密度に有意な差はなかった。しかし、視力は高張食塩水群よりもベタメタゾン群の方が有意に優れていた(p = 0.02)。
ベタメタゾン群の7人7眼の患者は、副作用を訴えていなかったが、点眼剤の使用が彼らの要求により中止されたため除外された。対象群では18眼を調べた。ベタメタゾン群では、治療前、治療後2週間、1ヶ月、3ヶ月目の症例数はそれぞれ18眼、17眼、16眼、9眼であった。
結果:ベタメタゾン群でのCCTの変化は2週間後-28.8±29.3μm、1ヶ月後-39.5±40.4μm、 3ヶ月後-61.7±54.1 μm。高張食塩水群では2週間後+7.8±30.1μm、1ヶ月後+3.1±44.5μm、3ヶ月後で+8.6±67.1μm。
治療後2週間(p = 0.002)、1ヶ月(p = 0.02)、および3ヶ月(p = 0.001)において有意差を認めた。(図1)
視力は、ベタメタゾン群で2週間後0.74±0.68 logMAR、1ヶ月後0.67±0.68 logMAR、3ヶ月後0.61±0.70 logMAR、高張食塩水群で2週間後1.40±0.95 logMAR、1ヶ月後1.40±0.93 logMAR、3ヶ月後1.36±0.99 logMARであった。治療後2週間と1ヶ月で両群間に有意差を認めたが、治療後3ヶ月では有意差はなかった(それぞれp = 0.03、0.01、および0.06)。(図2)
眼圧は、ベタメタゾン群で2週間後14.2±5.7 mmHg、1ヶ月後15.3±6.0 mmHg、3ヶ月後15.0±2.6 mmHg、高張食塩水群で2週間後12.7±4.8 mmHg、1ヶ月後12.1±4.0 mmHg、3ヶ月後13.6±6.0mmHgであった。両群間に有意差はなかった。(それぞれp=0.12、およびp=0.07)。(図3)
感染性角膜炎および25 mmHgを超えるIOP上昇は観察されなかった。どの時点でも痛みを訴える症例はなかった。
結論:ステロイド点眼投与がBKを有する眼のCCTを減少させることができる可能性のあるメカニズムとして、第一に角膜内皮細胞のNa-K-ATPase活性およびポンプ機能を増加させる事が知られている。Na-K-ATPaseは、1つのATP分子を使って2 K +を取り込み、3 Na +を放出する溶質ポンプとして角膜内皮細胞の膜に存在する。この作用を通じて、角膜内皮細胞は細胞外にNa +を放出すると考えられている。 Na-K-ATPaseは角膜内皮機能の指標として利用されている。
第二のメカニズムはステロイドの抗炎症作用に関係している。IL-6、TNF-γ、およびTNF-αを抑制することができるステロイドは、前眼房内の炎症を軽減し、角膜内皮細胞の損傷から保護することができる。
BKを有する眼のCCTは、高張食塩水よりもベタメタゾンにより大幅に減少した。感染性角膜炎および10P上昇などの合併症は観察されなかった。これらの結果は、ステロイド点眼は、患者が角膜移植を受けるまで期間を延ばすことができることを示唆している。(CH)