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その他のジャーナル

2021
75巻

角膜内皮移植後の移植片接着不良に対しROCK阻害薬の有効性が示唆された2例

その他のジャーナル 75巻(10号)2021

増田有寿 他(川崎医大)
臨眼75(10);1378-1384,2021
・目的:角膜内皮移植術(DSAEK)後の移植片接着不良になった症例に対しROCK 阻害薬である0.4%リパスジル点眼剤を2回/日点眼した。その後、外科的追加処置なしで良好な移植片接着となった症例2例の検討。
・症例1: 65歳女性、両眼フックス角膜内皮ジストロフィ+落屑緑内障+白内障。
・左眼白内障手術時、後嚢破損+眼内レンズ縫着術施行。その後、水疱性角膜症(BK)を発症した。角膜内皮細胞密度(ECD)測定不能、左視力0.15(0.2)。
・左眼DSAEK施行、手術3時間後の診察で、空気瞳孔ブロックを認めたため、25G針で空気を抜去した。術後3日目で前房内空気が消失、移植片接着不全を認めたため、リパスジル点眼2回/日を開始した。点眼開始36時間後、移植片は再接着した。ECD 2400 cell/mm2、左視力0.3(0.6)。
・症例2: 75歳男性,右眼落屑緑内障に対し、白内障手術、LOT、LEC、緑内障インプラント挿入、抜去など複数回の手術を施行。その後、右眼ECD減少しBKを発症した。
・ECD 測定不能、左視力指数弁(n.c.)。右眼DSAEK施行、術後数日は経過良好であったが、術後11日目に移植片不全を認めた。前房内に空気再注入や10 % SF6ガス注入を行なったが再接着しなかった。術後1ヶ月目からリパスジル点眼2回/日を開始。点眼開始後1ヶ月で移植片再接着を認めた。ECD 897 cell/mm2、左視力0.04(n.c.)。
・2例ともリパスジル点眼によると考えられる副作用はなかった。
・考察:ROCK阻害薬は、角膜内皮細胞の増殖能だけでなく遊走能を亢進させるという報告がある。リパスジルを投与することにより,遊走能が亢進し移植片の内皮細胞脱落部を被覆し、それによって角膜内皮細胞のバリア機能およびポンプ機能が改善したことにより移植片が再接着したと推察する。自然経過で再接着した可能性も否定はできないが、ROCK阻害薬は角膜内皮移植術後の移植片接着不良に対し有用である可能性がある。(CH)

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