眼科JOURNALトップ > その他のジャーナル > 硝子体内注射後に発症する裂孔原性網膜剥離の特徴と手術成績

その他のジャーナル

2021
65巻

硝子体内注射後に発症する裂孔原性網膜剥離の特徴と手術成績

その他のジャーナル 65巻(3号)2021

Characteristics and surgical outcomes of rhegmatogenous retinal detachments that develop after intravitreal injections
Takayuki Saba, et al. (千葉大学)
Japanese Journal of Ophthalmology (2021) 65:492-496
・目的:抗VEGF硝子体内注射後に発生する裂孔原性網膜剥離(RRD)の頻度と特徴を決定する。
・対象と方法:2013 年から 2020 年の間に、加齢黄斑変性症 (AMD)、糖尿病性黄斑浮腫 (DME)、網膜静脈閉塞症 (RVO)、または近視性脈絡膜新生血管 (mCNV) のために硝子体内注射を受けた患者で、最後の注射から90日以内に発症したRRD症例のベースライン時の特性と手術結果を分析した。
・結果:合計 3040 人の患者が 28,190 回の硝子体内注射を受けた。 7例7眼がRRDを発症した(AMD 6例、DME 1例)。発生率は 4027 回に1回 (0.025%) だった。
・最後の注射からRRD 発症までの平均期間は 5.6 ± 3.6 週間。
・網膜裂孔は全て馬蹄形で、上象限5 眼 (71%)、下象限2 眼、全例に後部硝子体剥離を認めた。 RRD 発症前の平均注射回数は 14.1 回。硝子体手術 4 眼、強膜内陥術3 眼で治療された。初回成功率は 86%、最終再付着率は 100% だった。
・RRD発症前の平均 BCVA  0.41 ± 0.26 logMAR、 RRD手術前視力0.78±0.78 logMAR 、RRD術後 3 か月0.62±0.52 logMARに改善した。
・結論:RRD症例のうち、抗 VEGF 療法を開始する前に後部硝子体剥離が認められたのは29%だったが、RRD が発生した時は100% 認められた。
・硝子体内注射後、後部硝子体剥離の発生率が増加することが報告されているので、抗VEGF注射が硝子体剥離を引き起こし、それが網膜裂孔とRRDの発症につながったことを示唆している。
・RRD の発生の他の可能性として、大量の黄斑下出血を伴う一部の AMD 症例での眼内ガス注入、さらにAMD症例は眼軸が比較的長く、6眼のうち 5眼の眼軸長が 24.0 mm を超えていたためと考えられる。
・発症率は非常に低いが、抗VEGF硝子体内注射後にRRDが発生する可能性があるので定期的に検査する必要がある。(CH)

過去のアーカイブ