Influence of Body Position on Intraocular Pressure After Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty: A Prospective Randomized Trial
Händel, Alexander MD, et al. (Germany)
Cornea 42(3): 320-325, 2023.
・目的:デスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)終了時の前房内タンポナーデによる瞳孔ブロックを回避するために虹彩切開術(LIまたはPI)をする必要がある。
・しかし頻繁に起こるため、術後眼圧が上昇してしまう。
・今回、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)患者へのDMEK後の眼圧に対する患者のポジショニングの影響を分析する。
・対象と方法:FECD 40 人40眼、全例眼内レンズ挿入眼。
・患者には手術前日に5時から7時にLIを行なった。
・DMEK終了時に前房内20% SF6ガスタンポナーデを行なった。
・グループ 1 (n = 20) は現在の基準に従って、手術直後から厳密な仰臥位、 グループ 2 (n = 20) は手術直後から座位(30 度以上のギャッジアップ) の体位とした。
・ 患者は就寝時までこの体位を維持した。
・手術後 1、2、4 時間後に iCare で眼圧を測定した。
・術後 3 日目 (午前 8 時、午後 3 時、午後 7 時、および午後 11 時) まで、終日一定の時間で測定された。
・結果:グループ 1では、平均 IOP は手術1 時間後13.9 mm Hg (±4.2 mm Hg)、2 時間後13.9 mm Hg (±5.4 mm Hg)、4 時間後13.8 mm Hg (±4.3 mm Hg)。
・グループ 2では、平均 眼圧は手術 1 時間後13.6 mm Hg (±4.1 mm Hg)、2 時間後15.3 mm Hg (±4.6 mm Hg)、4 時間後15.2 mm Hg (±4.2 mm Hg) だった。
・グループ 1 の 2 眼 (10.0%) で瞳孔ブロックを発症した(それぞれ 3 時間後と 6 時間後)。
・眼圧は最終的に前房穿刺によって下降した。
・グループ 2 では瞳孔ブロックは起こらなかった (0.0%)。
・最高矯正視力 は、グループ 1 術前 logMAR 0.57 (±logMAR 0.4) から術後1ヶ月 logMAR 0.29 (±logMAR 0.30)、
・グループ 2 術前logMAR 0.48 (±logMAR 0.30) から術後1ヶ月logMAR 0.22 (±logMAR 0.12) と改善した。(グループ 1:P = 0.002、グループ 2:P = 0.006)。
・角膜厚は、グループ 1 術前 659.6 μm (±71.9 μm) から術後1ヶ月564.3 μm (±38.9 μm)、
・グループ 2 術前648.0 μm (±73.4 μm) から術後1ヶ月549.3 μm (±43.7 μm) と有意に減少した(グループ 1:P < 0.001 、グループ 2:P < 0.001)。
・前房内ガス再注入は、グループ 1 では、6 例 8 回、グループ 2 では、7 例 9 回だった。
・その他の合併症は認められなかった。
・結論: 患者の前眼部の解剖学的構造やその他のパラメータによっては、仰臥位でも虹彩切開した場所の閉塞を発症する場合もある。
・ さらに、血液やフィブリン、または不適切な濃度の SF 6 (>20%) によって閉塞する可能性がある。
・DMEK後、手術直後から就寝時まで少なくとも30度以上ギャッジアップしておくと瞳孔ブロックによるIOP上昇を防ぐことができる。
・これは、視神経、虹彩、角膜、または移植片への損傷を防ぐだけでなく、吐き気または頭痛を伴う不快感を回避できる。(CH)