山田明子、堀寛爾、松井孝子、亀山尚美、清水朋実(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
臨眼 2023; 77(4) : 491-498
80代男性
強度・病的近視
他院での白内障手術後、術前に裸眼での接近視や拡大鏡(24D)の併用で可能であった読み書きに困難を訴え受診
矯正視力:【術前】左右とも0.01【術後】右0.04左0.03
屈折値(等価球面値):【術前】右−20.00D,左−18.25D【術後】 右−0.75D,左−0.375D
術前のように接近視可能な眼鏡の処方を強く希望
+20Dメガネ⇒作業空間が狭いため書字ができない、読みにくい
+10D以下メガネ⇒見えない文字が多く使いにくい
拡大読書器⇒接近視の希望が強く、選定に難渋
複数回の試行で両眼+11.25Dのハイパワープラスレンズ眼鏡を処方し、近見作業困難が改善
【結論】
強度近視で得られていた最大視認力を、術後に眼鏡によって再現するには限界があることがわかった。術後もロービジョンとなる可能性のある強度・病的近視症例の白内障手術では、術前の最大視認力を考慮した近視を残した術後屈折値の選択が必要なことが示唆された。
*強度近視の白内障手術:
視力改善が望める⇒術後に軽度近視や正視でも満足度↑の可能性
裸眼接近視に慣れている症例⇒軽度・中等度近視の方が満足度上がる(高良ほか,臨眼2003)
視力改善が困難⇒術後-5Dくらいがベター(高良、眼科臨床プラクティス2006)
遠方合わせ⇒術直後は喜ばれるが、やがて近くが見にくいと不満(林、眼科2018)
*白内障術後のロービジョン患者:近見用視覚補助具の処方なし群が処方あり群と比較して低視力・高齢であるとの報告(清水ほか、臨眼2013)(MK)