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その他のジャーナル

2023
67巻

学童期における0.01%アトロピン点眼中止後の近視リバウンドの評価

その他のジャーナル 67巻(5号)2023

Assessment of myopic rebound effect after discontinuation of treatment with 0.01% atropine eye drops in Japanese school‐age children
Osamu Hieda, et al. (京都府立医大)
Jpn J Ophthalmol. 2023 Sep;67(5):602-611.
・目的:近視の進行抑制を目的とした0.01% アトロピン点眼を中止した後に、近視のリバウンドが生じるかどうかを検討した。
・対象と方法:167名の学童を対象に、アトロピンまたはプラセボによる2年間の治療を終了した1ヵ月後および12ヵ月後の等価球面(SE)および眼軸長(AL)の群間変化を比較した。
・結果:治療中止1ヵ月後に149人、中止12ヵ月後に51人の追跡測定が可能であった。
・治療後1ヵ月の時点で、SEおよびALのアトロピン群とプラセボ群の治療前登録からの差は、それぞれ0.18D(95%CI:0.04、0.32;P = 0.01)および-0.10mm(95%CI:-0.17、-0.04;P = 0.003)で、治療中止1ヵ月後もアトロピン群の方がプラセボ群よりも有意に抑制されていた
・2年間の治療終了後からの1ヵ月後のSEとALのアトロピン群とプラセボ群の群間差は、それぞれ-0.06D(95%CI:-0.21、0.08;P = 0.39)と0.02mm(95%CI:-0.05、0.08;P = 0.60)であった。治療後12ヵ月のSEとALの群間差は、それぞれ-0.13D(95%CI:-0.35、0.10、P = 0.26)と-0.02mm(95%CI:-0.12、0.09、P = 0.75)で、変化はなかった。
・結論: 2年間で得られた抑制効果は12ヵ月後も維持されたことから、近視のリバウンドは起こらなかったと考えられる。
・アトロピン点眼薬は脈絡膜を厚くすることが知られている。治療を中止すると、アトロピンで厚くなった脈絡膜厚が減少し始め、その結果、眼軸の伸長し近視のリバウンドを引き起こす可能性がある。アトロピンの濃度が高いほど脈絡膜の変化が大きくなるが、0.01%アトロピン点眼を中止しても近視のリバウンドが起こりにくいのは、アトロピン濃度が低いため脈絡膜への影響が少なく、治療中止後も脈絡膜の厚さが変わらないためかもしれない。(CH)

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