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その他のジャーナル

2023
340巻

角膜内皮細胞密度の低い患者における低灌流・低吸引圧下での超音波乳化吸引術の臨床観察

その他のジャーナル 340巻(-号)2023

Clinical observation of phacoemulsification under the low perfusion pattern and low negative pressure in patients with low corneal endothelial cell density
Yan Lin, et al. (China)
BMC Ophthalmology volume 23, Article number: 340 (2023)
・目的:角膜内皮細胞密度(ECD)の低い患者において、低灌流低吸引圧パターン下での白内障手術(PEA+IOL)の安全性と効果を検討する。
・対象と方法: ECD(554/mm2~996/mm2)が少なく、白内障Emery nuclear grading systemでグレードIII 12眼、グレードIV 5眼の合計16例(17眼)、男性7人7眼、女性9人10眼、平均年齢68.9±5.25歳。
・手術前後のECD、変動係数(CV)、角膜中心厚(CCT)、視力、眼圧の変動を評価した。
・手術は、ステラリス(Bausch + Lomb, USA)を使用、ソフトシェル法
・バーストモードを選択し、ボトルの高さ95cm、U/S 60%、吸引圧 250~300mmHg、吸引流量 40ml/min、1回のバースト閉塞時間は50msに設定。
・結果:手術前の平均視力(Eチャート)0.16±0.09から手術後0.45±0.16(p<0.001)となり有意に改善した。
・平均眼圧は、術前16.88±6.47mmHg、術後14.41±3.10mmHg(p=0.041)。
・手術前後で、17眼中4眼はECDが測定不能だったが、他の13眼では、術後1ヶ月の平均ECD(644.308±106.24cells/mm2)は術前(709.62±119.19cells/mm2)より有意に低下した(p < 0.001)。
・しかし、術前の平均CV(31.23±4.21)、術後1ヶ月の平均CV(32.62±3.80;F=2.130、p=0.157)には有意差は認められなかった。
・手術1ヵ月後の14眼の平均CCT(562.72±27.82μm)は、手術前(534.79±24.69μm)よりも大きかった。
・術後に角膜浮腫を生じたのは5眼のみであり、浮腫は術後1ヶ月で明らかに消失した。
・結論:低灌流低吸引圧による白内障手術は、白内障と角膜内皮細胞機能不全の患者に対して安全で有効であることを示している。
・白内障手術を受けると角膜内皮細胞は平均4~25%減少すると言われている。
・原因は主に機械的傷害と熱傷害である。
・本研究での低灌流低吸引圧で手術の利点は(1)前房の動揺が少ないため、手術中のサージ現象、浅前房、硝子体脱出の発生率を減少できる。
・(2)粘弾性物質の吸引を緩やかにし、角膜内皮を効果的に保護する。
・(3)水晶体核をゆっくり粉砕し、手術の安全性を高める。
・(4)術中の眼圧上昇を抑え、手術中の高眼圧による角膜内皮の傷害を回避する。(CH)

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