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その他のジャーナル

2024
43巻

デュピルマブ治療を受けたアトピー性皮膚炎患者における眼表面疾患

その他のジャーナル 43巻(2号)2024

Ocular Surface Disease in Patients With Atopic Dermatitis Treated With Dupilumab: A Prospective Case–Control Study
Paola Marolo, et al. (Italy)
Cornea 2024(2);43:221–227
2018年に承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬であるデュピルマブは、炎症を引き起こす物質であるインターロイキン4とインターロイキン13の働きを抑えることで症状を改善する。
しかし、その一方で、デュピルマブによる眼表面疾患(dupilumab-induced ocular surface disease;DIOSD)という副作用が報告されている。
DIOSDは、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、ドライアイ、流涙など、さまざまな眼の症状を引き起こす。
目的:デュピルマブで治療された AD 患者の 6 ヵ月後の DED 有病率の変化を評価すること。
対象と方法: 2021年5月から12月の間にデュピルマブの投与が予定されていた中等症から重症のAD患者と健常者を対象とした。DED有病率、Ocular Surface Disease Index (OSDI)、涙液層破壊時間、涙液浸透圧、染色スコア、シルマー試験の結果をベースライン時、治療1ヵ月後、6ヵ月後に評価した。皮膚のEczema Area and Severity Index(湿疹面積と重症度指標)はベースライン時に評価された。
結果:デュピルマブ治療を受けたAD患者36人と健常対照者36人の72眼を対象とした。
DEDの有病率はデュピルマブ群でベースライン時の16.7%から治療開始6ヵ月後には33.3%に増加した(P = 0.001)のに対し、対照群では横ばいであった(P = 0.110)。6ヵ月後、デュピルマブ群でOSDIと染色スコアは増加し(8.5 ± 9.8 から11.0 ± 13.0へ、P = 0.068、0.1 ± 0.5 から0.3± 0.6へ、P = 0.050)、涙液層破壊時間とSchirmer試験は減少したが(7.8 ± 2.6秒から7.1 ± 2.7秒へ、P<0.001、15.4 ± 9.6mmから13.2 ±7.9mmへ、P = 0.036、)、対照群では変化はなかった。両群とも涙液浸透圧は変化しなかった(デュピルマブ群P = 0.987、対照群P = 0.073)。治療開始6ヵ月後で、結膜炎42%、眼瞼炎36%、角膜炎2.8%が認められた。重篤な副作用ではなく、デュピルマブを中止した患者はいなかった。湿疹面積および重症度指数とDED有病率との関連は示されなかった。
結論:デュピルマブ治療を受けたAD患者では、6ヵ月後にDED有病率が増加した。しかし、重篤な眼の副作用は認められず、治療を中止した患者はいなかった。
デュピルマブがIL-13をブロックすることでゴブレット細胞(粘液を分泌する細胞)が減少し、ムチン分泌低下と粘膜上皮バリア機能不全を引き起こす可能性や、Th2細胞(アレルギー反応に関与する免疫応答)の抑制によりTh1細胞(細胞性免疫に関与する免疫応答)が亢進することが関与している可能性が示唆された。(CH)

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