尾崎弘典他(富山大学)
臨眼 67(4): 481-484, 2013
・近視性網膜分離症20例23眼(63.9±9.0歳)を対象とした。中心窩剥離型9眼にはガス注入併用、中心窩分離型14眼には最初の9眼のみガス注入を行った。
・視力はlogMARで0.88±0.59(小数点0.13)→0.68±0.64(小数点0.21)と有意に改善(p<0.01)。
・黄斑円孔が中心窩分離型2眼と中心窩剥離型1眼で発生したが、ガス注入の有無は術後成績に影響しなかった。
・ガス注入が術後成績に影響しなかったのは、網膜分離の復位にはガス消失後も長期の時間がかかること、ガス注入により網膜下液が中心窩部に圧出され、黄斑円孔の誘因になることなどがあげられる。
・中心窩部のILMは剥離せずに残すことも黄斑円孔回避の為に有効であろう
新田耕治他(福井)
日眼 117(4): 335-343, 2013
・NTG40例40眼に第一選択としてSLTを施行し、3年間経観察した。
・眼圧はSLT前15.8±1.8mmHg、1年後13.2±1.9、2年後13.5±1.9、3年後13.5±1.9で、有意に下降しており、3年後の眼圧下降効果の累積生存率は40.0%であった。
・Outflow pressure改善率(△OP)=(SLT前眼圧-SLT後眼圧)/(SLT前眼圧-10)x100とし、SLT1ヶ月後の△OPが20%以上を著効群、0%以下を無効群と定義すると、著効群は37/40(92.5%)であった。
・点眼開始が10/40(25.0%)、SLT再照射が6/40(15.0%)であった。
・NTGへのSLT第一選択治療は有効な選択肢であると考えた
Peripapillary crescent and related factors in highly myopic healthy eyes.
Takahashi A et al(名大)
Jpn J Ophthalmol 57(2): 233-238, 2013
・検眼鏡的には強膜が透見される境界明瞭な白色領域である傍乳頭三角(peripapillary crescent)では病理的には脈絡膜、ブルッフ膜、RPEが部分的あるいは全欠損している。
・49眼の健康な高度近視眼(-10.1±2.8D)で傍乳頭三角の大きさを1年間経過観察した。
・傍乳頭三角の面積は脈絡膜厚(p<0.001)、眼軸長(p<0.001)、中心窩厚(p<0.01)と相関していたが、Stepwise回帰分析では、最も相関していたのは脈絡膜厚(p<0.01)と鼻側のブドウ腫の高さ(p<0.05)であった。
・傍乳頭三角の1年後の拡大(1.40±1.28→1.50±1.35乳頭面積 p<0.01)と最も相関していたのは、眼軸長の伸び(28.26±1.19→28.34±1.20mm p<0.001)であった(p<0.01)。
Trabecular meshwork depigmentation in Vogt-Koyanagi-Harada disease.
Mizuuchi K et al(北大)
Jpn J Ophthalmol 57(3): 245-251, 2013
・Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)病の一部の人はその経過中に線維柱帯網(TM)の脱色素を期待すことが分かっており、この脱色素が何と関連しているかを53名のVKHの日本人(発症年齢29-73歳、平均46.0歳)で検討した。
・TMと角膜輪部の色素沈着量をスコア化した。
・TMは8象限に分け、個々の0-4の値を8個加算(上限は32)。
・輪部は4象限に分け、個々の0-2の値を4個加算(上限8)。
・夕焼け様眼底や皮膚病変との関連を検討した所、夕焼け眼底になった人(28眼)ではならなかった人(78眼)よりもTMの色素沈着は有意に少なかったが(p=0.022)、輪部の色素沈着では有意差はなかった。
・TMの色素沈着は徐々に減少しており、発症から6ヶ月以内では5.69、7-24ヶ月では4.89、25-48ヶ月では4.13となったが、輪部の色素沈着は、発症から6ヶ月以内では1.31、7-24ヶ月では0.39、25-48ヶ月では0.69で、発症から7-24ヶ月で有意に減少していた(p=0.003)。
Trabecular meshwork depigmentation in Vogt-Koyanagi-Harada disease
K Mizuuchi et. al 北大
Jpn J Ophthalmol. 57(3):245-51, 2013
53例のVKH患者の線維柱帯の色素沈着と他の所見との相関 retrospective study
線維柱帯の色素沈着は眼底所見と相関していた
輪部の色素沈着は相関がみられなかった
発症からの期間別
線維柱帯:6M以内 5.69、7-24M 4.89、25-48M 4.13
輪部: 6M以内 1.31、7-24M 0.39、25-48M 0.69
VKH: T cell-mediated autoimmune reaction against melanocyte-related antigens
眼底所見がとりにくい場合の参考になるのではないか (MM)
松浦、井上他(鳥取大)
あたらしい眼科 30(1): 93-96, 2013
・手術終了時の結膜下注射による術後眼内炎の予防についての検討。
・白内障手術患者26名36眼にモキシフロキサシン(MFLX)の結膜下注射(原液 or 2倍希釈)0.2mlを手術1、3、5、6時間前に結膜下注射し、手術開始時に前房水内の濃度を測定した。
・腸球菌の最小発育阻止濃度(0.5μg/ml)に対し、原液では、3.07(1h), 1.78(3h), 0.53(5h), 0.19μg/ml(6h)、2倍希釈では、0.54(3h), 0.35(5h)であった。
・原液では術後5時間程度、2倍希釈液では3時間程度は有効阻止濃度が保たれる。
・ゲンタマイシンは重要な眼内炎の起炎菌である腸球菌に対して感受性が低いので、幅広い抗菌スペクトルを持ち、重篤な合併症のないMFLXは結膜下注射に適している。(TY)
Intravitreal injection of bevacizumab: changes in intraocular pressure related to ocular axial length.
Cacciamani A et al(Italy)
Jpn J Ophthalmol 57(1): 63-67, 2013
・Bevacizumab 1.25mg/0.05mlの硝子体内注射後の眼圧変動と眼軸長との関連を25名のAMD患者で調べた。
・眼軸長はIOLMasterで測定し、眼圧は注射前、注射後1分、15分にTono-Pen XL眼圧計で測定した。
・眼圧変動は1分後では21.92±6.95mmHg、15分後では6.24±3.77で、平均眼軸長は23.2±1.06mmであり、両者間には有意な負の相関があった。
・1分後はR2=-0.752 p<0.001、15分後はR2=-0.559 p<0.001であった。(TY)
宇津木航平ほか(真生会富山病院アイセンター)
眼科臨床紀要 6(1):45-48, 2013
・遠視眼19例30眼(3-8歳)
【実測屈折値】1%アトロピンを5日点眼後、オートレフラクトメータで測定した屈折値
【推定屈折値】IOLマスターで眼軸長と角膜屈折力を測定、SRK/T式にこれらの値と水晶体屈折値*を代入して計算した眼球の全屈折力【図2】
*小児期の成長に伴う水晶体屈折力のグラフ(図)より。IOLパワーは0.50Dステップであるため、近似値を代入。3歳:22.00D、4-5歳:21.50D、6-8歳:21.00Dとした【図1】
・A定数は118.6-119.5まで0.1ごとに推定値を計算→118.9のとき最も推定値と実測値との差が少なかった【表1】
・30眼の平均;実測値5.08±2.45D、推定値5.09±2.16D(p=0.875)、相関係数=0.97(p<0.001)で強い相関
【結論】水晶体屈折力を年齢による変化に基づき、SRK/T式にて算出した推定値より、調節麻痺下等価球面屈折値を推測することが可能である(MK)
新城光宏ほか(沖縄県立南部医療センター)
臨床眼科 66(13) 1741-1742, 2012
・リスペリドン(リスパダール®、ほかジュネリック多数):第二世代抗精神病薬。脳の中枢に直接作用して、ドパミンD2受容体拮抗作用・セロトニン5-HT2受容体拮抗作用により統合失調症の陽性症状及び陰性症状を改善する作用がある。錐体外路症状が少なく市場占有率が高い。α1拮抗作用はα1a受容体に対する選択性が高い。
・2007年4月~2011年12月に白内障手術を行った患者(母数不明)のうちリスペリドン内服歴のある症例は6例11眼(男性4例7眼、女性2例4眼)、うち3例5眼(男性2例3眼、女性1例2眼にIFISがみられた(全症例の0.3%、リスペリドン内服患者の45%)
・軽度1例、中等度2例
→リスペリドン内服患者は塩酸タムスロシン患者の1/10の人数と推測
・親和性の強弱あるものの、抗精神病薬の多くにα1拮抗作用があり、内服履歴の把握が必要(MK)
緑内障配合剤点眼薬と患者アドヒアランス
山田愛他(日大)
臨眼-66(7): 1035-8, 2012
・多剤併用療法から、配合剤点眼薬に切り替えた高眼圧症あるいは、緑内障35例について、切り替え前後の眼圧の比較検討を行った。
・切り替え前に点眼忘れなし群では、切り替え後の平均眼圧が切り替え前より有意に上昇した(p=0.019)。
・配合剤点眼薬への切り替えは、アドヒアランス不良例を対象とすることが望ましいと考えた。
Macular pigment density changes in Japanese individuals supplemented with lutein or zeaxanthin: quantification via resonance Raman spectrophtometry and auto fluorescence imaging.
Tanito M et al(島根大)
Jpn J Ophthalmol 56(5): 488-496, 2012
・ルテインあるいはゼアキサンチンなどのサプリメントが健康な日本人の黄斑色素濃度(MPOD)に影響を与えるかどうかを検討した。
・22名の健康ボランティアを2群に分け、3ヶ月間毎日、10mgのルテインあるいはゼアキサンチンを内服し、MPODをresonance Raman spectrophotometry(RRS)と自発蛍光像の両者で、内服前、内服1,2,3ヶ月後に測定した。
・両者の測定方法はどの時点でも有意に相関しており、内服前のMPODは年齢、性との相関はなく、屈折度との間には正の相関があった(RRS:p<0.005, AFI:p=0.052)。
・ルテイン内服群では内服2ヶ月後,3ヶ月後では内服前よりも20%以上増加していた。
・RRSでのMPODは、近視度が-4D以内の近視者では、内服1,2,3ヶ月後とも有意に増加していたが、高度近視ではMPODの増加はみられなかった。
・ゼアキサンチン群では屈折度に関係なく、内服による効果はなかった。
坂本理之他(大阪医大)
日眼 116(4): 379-82, 2012
・クモ膜下出血患者63例について検討。
・35例は両眼に出血なし。16例は片眼に硝子体出血か網膜前出血。12例は網膜内出血が見られた。
・クモ膜下出血量が多くなると硝子体出血の発症率は高い傾向にあった。
・網膜内出血の発症にはクモ膜下出血量は無関係であった。
Silicone intraocular lens surface calcification in a patient with asteroid hyalosis.
Matsumura K et al(北里大)
Jpn J Ophthalmol 56(4): 319-23, 2012
・星状硝子体症の患者にAMO社シリコンIOLを挿入し、12年後にIOL後面混濁の為に摘出したIOLを調査した。
・カルシウムリン酸水素二水和物 Calcium hydrogen phosphate dihydrate dipositsの結晶が表面に付着していた。
低侵襲白内障術後1ヶ月における眼瞼下垂の検討
中川喜博他(東海大学)
眼科手術 25(4): 601-603, 2012
・白内障手術は上方の強角膜切開で行い、術前と術後1ヶ月目に角膜反射と上眼瞼縁の距離mm(MRD)、瞼裂高mm(PFH)、上眼瞼挙筋機能mm(LF)を測定した。
・MRDは2.52±1.21→2.20±1.15(p<0.001)、PFHは8.01±1.54→7.08±1.62(p<0.001)であったが、LFには有意差はなかった。
・白内障1ヶ月時点では眼瞼は術前より有意に下垂している事が分かった
Oral fluoroquinolones and the risk of retinal detachment.
Etminan M et al-J
J Amer Med Association 307(13): 1414-1419, 2012
・2000/1~2007/12の間に網膜剥離で手術を受けた4,384例についてフルオロキノロン内服FLXの既往(シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシンなど)について調べた。
・動物実験ではFLXが網膜の変性を引き起こすことが示されており、コラーゲンと結合組織を破壊する作用を持つことから、ヒトにおいても網膜剥離を誘発する可能性が考えられていた。
・使用していた患者は445人で、最も多く処方されていたのはシプロフロキサシンだった(82.7%)。
・続いてレボフロキサシン(7.2%)、ノルフロキサシン(4.9%)、モキシフロキサシン(4.0%)、ガチフロキサシン(1.1%)。
・445人のうち、現在使用者は145人、最近の使用者(1-7日前までの内服者)は12人、過去の使用者(8-365日前までの内服者)は288人。
・RD発生者に占めるFLX現在使用中の人の割合は3.3%(コントロールでは0.6%)で調整発生率ARRは4.5倍(95%CI=3.56-5.70)であった。
・FLXの初回処方から初回の網膜剥離までの日数の平均は4.8日だった。
・最近の使用者では0.3%(コントロール=0.2%)、ARRは1.03(0.89-1.19)、過去の使用者では6.6%(コントロール=6.1%)、ARRは1.03(0.89-1.19)と関連はなかった。
・また、βラクタム抗生剤(ARR=0.74 0.35-1.57)、短時間作用型β刺激薬(ARR=0.95 0.68-1.33)などでも関連はみられなかった。
・経口FLXを使用中の患者では、絶対リスクは低いものの、網膜剥離リスクが有意に上昇していた。(TY)
Factors affecting imaging of spectral-domain optical coherence tomography in gas-filled eyes after macular-hole surgery.
Goto K et al(川崎医大)
Jpn J Ophthalmol 56(3): 236-44, 2012
・斑円孔術後の20%SF6ガス置換した23例25眼で術後OCT検査を行った。術1日目で測定できたのは22眼(88.0%)、2日目では23眼(95.8%)であり、円孔閉鎖が確認できたのは、術1日目で18/22眼(81.8%)、術2日目で22/23眼(95.7%)であった。OCT測定のコツはフォーカスを強い近視側に移動させることである。実際のフォーカス位置は-13.06±1.97D(-9.0~-15.0D)であり、このフォーカス位置と術前の眼軸長とは関連がなかった。この方法は、患者を長期のうつぶせから解除するのに有効であると考えた。
中村洋介他(東京)
日眼 116(2): 108-13, 2012
・33例のDMEに対してベバシズマブ硝子体内投与を行い、投与前、3ヶ月後の蛍光眼底検査での中心窩無血管帯値(FAZ)を測定した。
・投与前後の視力logMAR(0.47±0.24:0.40±0.23 p=0.03)、中心窩厚(481±110:388±127μm p<0.005)、FAZ(0.63±0.30:0.71±0.34 p=0.03)で、いずれも、有意差があった。
・33例中2例にFAZの50%以上の拡大を伴った高度の黄斑虚血を生じたが、視力低下はなかった。
Changes in the tear film and ocular surface after cataract surgery.
Oh T et al(Korea)
Jpn J Ophthalmol 56(2): 113-8, 2012
・白内障手術後の角膜知覚、涙液層機能、眼表面の安定性について検討した。
・30例48眼(62±9.7歳)の角膜切開で行ったPEA手術患者について、シルマーテスト1法(ST1)、角膜知覚測定、BUT測定、耳側眼球結膜でのimpression cytologyを手術前日、術後1日、1ヶ月、3ヶ月で測定した。
・Cochet-Bonnet知覚計を用いた角膜知覚(角膜に直角に押しつけたナイロン糸の長さ:0-60mmで測定)は角膜全体でも術後1日目には有意に低下していた(術前55.7±4.1mm:1日目49.2±5.4 p<0.05)
・角膜切開部に近い耳側角膜では更に顕著で、術前58.6±3.4mmが、術1日目は39.5±14.4と、有意に低下していた(p<0.001)
・ただ、いずれの部位でも、1ヶ月目には回復していた。
・BUTも術後1日目には有意に低下していたが(術前9.2±3.2:1日目6.3±2.7 p=0.01)、術後1ヶ月目には回復していた。
・ST1は術前後で変化はなかった。杯細胞数濃度(GCD:cells/mm2)は術後1日目、1ヶ月目、3ヶ月目でも有意に低下しており(それぞれ、396±79:287±81:321±92:343±65といずれもp<0.001)、このGCDの低下は白内障手術時間と高く相関していた(1日目ではr2=0.65、3ヶ月目ではr2=0.59)。
・1日目の障害の方が3ヶ月目よりも大きかったことから、点眼薬のせいではないと考得られる。
・手術時間は起炎性chemical mediators、顕微鏡の光などによる障害を引き起こすのであろう。
・白内障手術後の眼不快感やドライアイ症状は微細な眼表面の障害が要因になっている可能性がある。
伊藤志織他(北里大)
眼臨紀 4(11): 1054-9, 2011
・正常者29名29眼(年齢23±2歳、男女比6:23)で中心脈絡膜厚CCTの日内変動を測定した。
・7時、11時、17時のCCTの平均値を100%とすると、7時:100.5±2.7%、11時:99.6±2.3%、17時:99.9±3.1%であり、朝は昼に比べて有意に厚かった(p<0.005)。
川上秀明、山本哲也等(岐阜大)
眼臨紀 4(6): 531-6, 2011
・NTG25例50眼をカリジノゲナーゼ群30眼、コントロール群20眼に分け、超音波カラードップラー法にて投与前と6カ月後の網膜中心動脈CRA、眼動脈OA、鼻側耳側短後毛様動脈NPCA/TPCAの収縮期最高血流速度Vmax、拡張期最低血流速度Vmax、抵抗指数RIを測定した。
・カリジノゲナーゼ群では、HP視野のMDで、早期群と中後期群に分けて検討。
・カリジノゲナーゼ群では、投与6ヶ月後にOAのVmax上昇、CRA,OA,NPCAのVmax上昇、CRA,OA,NPCA,TPCAのRIが有意に低下していた。
・視野障害の早期群よりも、中後期群で顕著であったが、コントロール群では有意な変化はなかった。
・カリジノゲナーゼはNTGの眼窩血流動態を改善する可能性が示唆された。