Assessment of myopic rebound effect after discontinuation of treatment with 0.01% atropine eye drops in Japanese school‐age children
Osamu Hieda, et al. (京都府立医大)
Jpn J Ophthalmol. 2023 Sep;67(5):602-611.
・目的:近視の進行抑制を目的とした0.01% アトロピン点眼を中止した後に、近視のリバウンドが生じるかどうかを検討した。
・対象と方法:167名の学童を対象に、アトロピンまたはプラセボによる2年間の治療を終了した1ヵ月後および12ヵ月後の等価球面(SE)および眼軸長(AL)の群間変化を比較した。
・結果:治療中止1ヵ月後に149人、中止12ヵ月後に51人の追跡測定が可能であった。
・治療後1ヵ月の時点で、SEおよびALのアトロピン群とプラセボ群の治療前登録からの差は、それぞれ0.18D(95%CI:0.04、0.32;P = 0.01)および-0.10mm(95%CI:-0.17、-0.04;P = 0.003)で、治療中止1ヵ月後もアトロピン群の方がプラセボ群よりも有意に抑制されていた
・2年間の治療終了後からの1ヵ月後のSEとALのアトロピン群とプラセボ群の群間差は、それぞれ-0.06D(95%CI:-0.21、0.08;P = 0.39)と0.02mm(95%CI:-0.05、0.08;P = 0.60)であった。治療後12ヵ月のSEとALの群間差は、それぞれ-0.13D(95%CI:-0.35、0.10、P = 0.26)と-0.02mm(95%CI:-0.12、0.09、P = 0.75)で、変化はなかった。
・結論: 2年間で得られた抑制効果は12ヵ月後も維持されたことから、近視のリバウンドは起こらなかったと考えられる。
・アトロピン点眼薬は脈絡膜を厚くすることが知られている。治療を中止すると、アトロピンで厚くなった脈絡膜厚が減少し始め、その結果、眼軸の伸長し近視のリバウンドを引き起こす可能性がある。アトロピンの濃度が高いほど脈絡膜の変化が大きくなるが、0.01%アトロピン点眼を中止しても近視のリバウンドが起こりにくいのは、アトロピン濃度が低いため脈絡膜への影響が少なく、治療中止後も脈絡膜の厚さが変わらないためかもしれない。(CH)
Long-term effect of using hard contact lenses on corneal endothelial cell density and morphology in ophthalmologically healthy individuals in Japan
Takeshi Ono, et al. (宮田眼科病院)
Scientific Reports 2023(5); 13: 7649.
・目的:健康な日本人を対象に、HCLの長期使用が角膜内皮細胞密度(ECD)と形態に及ぼす影響を解析した。
・対象と方法:4302例8604眼(男性:女性=837:3465)を対象とした。平均年齢35.6±10.0歳、HCLの平均使用期間は14.7±9.1年(1~50年)であった。
・使用したHCLの種類については、ポリメチルメタクリレート(PMMA)レンズ使用は18人中36眼、低Dk(酸素透過性)レンズ(Dk<60)357人中714眼、高Dkレンズ(Dk≧60)410人中820眼。その他の患者(7034眼)は複数の種類のHCLを使用していた。
・結果:ECDの加齢変化の影響を検討するために多変量解析を行ったところ、ECDは年齢と有意に相関したが(P<0.001)、使用期間とは相関しなかった。
・しかし、変動係数(CV)と六角形細胞出現率(6A)は年齢と使用期間の両方に有意に関連していた(P<0.001)。
・男性と高年齢がECD(ともにP<0.001)とCV(それぞれP=0.04と<0.001)に有意に関連していた。
・また、高年齢は6A(P<0.001)にも有意に関連していた。
・単変量解析の結果、CVと6Aは使用期間と相関していた(すべて、P<0.001)。
・HCL使用1年あたりのECDの変化は、低Dk群で-5.42(95%信頼区間、-6.88から-3.96)cells/mm2、高Dk群で-5.05(95%信頼区間、-6.64から-3.45)cells/mm2であった。
・結論:HCLの使用は角膜低酸素症を引き起こし、乳酸の蓄積、CO2濃度の上昇、細胞のpHの変化をもたらす。
・細胞でのこれらの持続的な変化は、形態学的変化、多形性(6Aの減少、CVの増加)をもたらす。
・年齢の影響を考慮した多変量解析では、HCLの使用年数がECDに直接影響しないことが示された。
・角膜内皮細胞の形態も加齢とともに変化するが、これらの変化を考慮した後でも、HCLの長期使用は角膜内皮の6AとCVに関連していた。
・したがって、HCL長期装用者の角膜内皮形態をモニターすることは重要である。(CH)
Alcohol Abuse Is Associated With Alterations in Corneal Endothelial Cell Morphology
Ranit Karmakar, et al. (US MD)
Cornea 42(4): 444-448, April 2023.
・目的:アルコール依存が角膜内皮形態の変化に関連しているかどうかを検討した。
・対象と方法: アイ バンクからの5624眼の角膜内皮密度(ECD)、変動係数 (CV)、六角形細胞出現率(HEX)を測定した。また患者の病歴は医療記録からアルコール依存症またはその後遺症が存在するかどうかを調査した。
・結果:5624 眼のドナーの平均ECDは 2785 (383.0) cell /mm2 だった。
・アルコール依存の指標は、1382 眼(24.5%)のドナーに存在した。
・1113 眼のドナー (19.8%) には喫煙歴、1271眼のドナー (22.6%) には糖尿病、および 585 眼のドナー (10.4%) は眼内レンズ眼であった。
・アルコール依存症の既往があるドナーは既往のないドナーと比較して、ECDは約 60.9 cell /mm2 の減少を示した (95% 信頼区間 (CI)、-83.0 ~ -38.7 cell /mm2、P = 7.6 × 10-8)。
・またCVが 0.0048 (95% CI、0.17–0.79、P = 0.002) 増加し、HEXが 0.93% 減少 (95% CI、-1.3 ~ -0.6、P = 4.5 × 10-7) していた。
・この研究の対象眼では、喫煙歴と白内障手術もそれぞれ内皮細胞数の減少に関与していることが分かり、ECDの減少はそれぞれ 36 (P = 0.003) および 88 cell /mm2 (P = 8.7 × 10-8) だった。
・結論:アルコールからアセトアルデヒドへの変換は、角膜内皮への直接的な細胞毒性をもたらす可能性があると仮定されている。
・また、アルコール依存による栄養失調や代謝変化を検討しなければならない。
・この研究では、ECDの減少に加えて、CV とHEX 値にもアルコールの大量摂取による変化が生じることを示唆している。(CH)
Occurrence of Herpes Viruses in Morphologically Normal Corneas
Eleanor N. Nche, et al. (Israel)
Cornea 42(4): 412-415, April 2023.
・目的:ヘルペスウイルスによる角膜移植不全は再移植の原因の 1 つであり、感染がドナー組織に由来するのか、レシピエントの再活性化された潜伏ウイルスに由来するのかについては議論されている。
・ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) を使用して、移植片の単純ヘルペス ウイルス (HSV) 1 型および 2 型と水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) DNAを検出し、関連を調査する。
・対象と方法:88眼 の強角膜片(平均年齢65 歳 )からのサンプルは、結膜、虹彩、および角膜内皮から採取され、PCR を使用して HSV-1、HSV-2、および VZV DNA についてテストされた。
・移植されたすべての症例を追跡調査した。
・全眼B 型肝炎、C 型肝炎、および HIVの感染を調べた。
・またCOVID-19 パンデミックの間のドナーは、鼻咽頭スワブから COVID-19 の PCR 検査を受けた。陽性のドナーは除外された。
・移植片はDMEK (59.1%)、PKP (38.6%)、 DLKP (2.3%)に使用された。
・結果:HSV-1は5 眼 (5.7%) で検出されたがHSV-2 は検出されなかった。
・VZV 1 眼(1.2%) で検出された。
・移植片陽性のレシピエントの平均年齢は 80 歳 (22 ~ 97 歳)、移植までの平均日数は 6.5 日、平均 ECD 2677.5 cell /mm2 だった。
・全例ヘルペス性眼疾患の既往歴はなかった。
・1人のレシピエントは、移植後12か月で樹状上皮症とHSVに典型的な角膜炎を発症したが、移植片は治療後も透明性を保っていた。
・結論:形態学的に正常なドナー角膜は、特に HSV-1 に対して PCR 陽性である可能性がある。
・ヘルペス陽性角膜移植片のレシピエントは、ヘルペス性眼疾患のリスクにさらされる可能性があるため、長い経過観察が必要である。(CH)
点眼された薬物の後眼部及び全身への移行
新家 眞
日本の眼科 94(4): 466-473, 2023
・強力な血管収縮作用を有するET-1(Endothelin 1)阻害作用をもつニプラジロール(ハイパジール)点眼はこの阻害作用を持たないチモロール点眼と違い、硝子体注射されたET-1による網膜血管収縮を部分的に阻害している。
・PG関連薬でもET-1阻害作用があり、その強さはタプロス点眼>トラバタンズ点眼=ラタノプロスト点眼である。
・作用経路は結膜嚢→テノン下腔・テノン嚢→球後組織→後部強膜→脈絡膜→網膜への経路である。
・炭酸脱水素酵素阻害剤はRPEに作用し、水の硝子体→脈絡膜への移送を増大させるため、エイゾプト点眼は黄斑部浮腫を軽快させている。
・前房から後房への薬物移行をブロックしているIris-lens diaphragmが消失したIOL眼ではエイベリス点眼が高率にCMEを発症するのもこの例である。
・視神経乳頭組織血流量はベトプチック点眼、ニプラジロール点眼、ラタノプロスト点眼、タプロス点眼、トラバタンズ点眼、カルテオロール点眼、ウノプロストン点眼後に有意に増加するが、α1刺激剤であるフェニレフリン点眼では低下する。
・結膜嚢には8μLの涙液があり、点眼1滴40μLのうち30μLは嚢内に留まり、30秒以内に80%(25μL)は鼻涙管を通して鼻腔内へ排出される。
・点眼後の血漿内濃度は全身投与後の数%であるが、全身的副作用に直結する受容体占有率は80~30と血漿内濃度比に対して、比較にならないほど高い。
・薬効を発揮する受容体占有率はアンタゴニストでは80%程度必要であるが、アゴニストでは5-10%程度で反応が生じると考えられている。
山田明子、堀寛爾、松井孝子、亀山尚美、清水朋実(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
臨眼 2023; 77(4) : 491-498
80代男性
強度・病的近視
他院での白内障手術後、術前に裸眼での接近視や拡大鏡(24D)の併用で可能であった読み書きに困難を訴え受診
矯正視力:【術前】左右とも0.01【術後】右0.04左0.03
屈折値(等価球面値):【術前】右−20.00D,左−18.25D【術後】 右−0.75D,左−0.375D
術前のように接近視可能な眼鏡の処方を強く希望
+20Dメガネ⇒作業空間が狭いため書字ができない、読みにくい
+10D以下メガネ⇒見えない文字が多く使いにくい
拡大読書器⇒接近視の希望が強く、選定に難渋
複数回の試行で両眼+11.25Dのハイパワープラスレンズ眼鏡を処方し、近見作業困難が改善
【結論】
強度近視で得られていた最大視認力を、術後に眼鏡によって再現するには限界があることがわかった。術後もロービジョンとなる可能性のある強度・病的近視症例の白内障手術では、術前の最大視認力を考慮した近視を残した術後屈折値の選択が必要なことが示唆された。
*強度近視の白内障手術:
視力改善が望める⇒術後に軽度近視や正視でも満足度↑の可能性
裸眼接近視に慣れている症例⇒軽度・中等度近視の方が満足度上がる(高良ほか,臨眼2003)
視力改善が困難⇒術後-5Dくらいがベター(高良、眼科臨床プラクティス2006)
遠方合わせ⇒術直後は喜ばれるが、やがて近くが見にくいと不満(林、眼科2018)
*白内障術後のロービジョン患者:近見用視覚補助具の処方なし群が処方あり群と比較して低視力・高齢であるとの報告(清水ほか、臨眼2013)(MK)
Influence of Body Position on Intraocular Pressure After Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty: A Prospective Randomized Trial
Händel, Alexander MD, et al. (Germany)
Cornea 42(3): 320-325, 2023.
・目的:デスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)終了時の前房内タンポナーデによる瞳孔ブロックを回避するために虹彩切開術(LIまたはPI)をする必要がある。
・しかし頻繁に起こるため、術後眼圧が上昇してしまう。
・今回、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)患者へのDMEK後の眼圧に対する患者のポジショニングの影響を分析する。
・対象と方法:FECD 40 人40眼、全例眼内レンズ挿入眼。
・患者には手術前日に5時から7時にLIを行なった。
・DMEK終了時に前房内20% SF6ガスタンポナーデを行なった。
・グループ 1 (n = 20) は現在の基準に従って、手術直後から厳密な仰臥位、 グループ 2 (n = 20) は手術直後から座位(30 度以上のギャッジアップ) の体位とした。
・ 患者は就寝時までこの体位を維持した。
・手術後 1、2、4 時間後に iCare で眼圧を測定した。
・術後 3 日目 (午前 8 時、午後 3 時、午後 7 時、および午後 11 時) まで、終日一定の時間で測定された。
・結果:グループ 1では、平均 IOP は手術1 時間後13.9 mm Hg (±4.2 mm Hg)、2 時間後13.9 mm Hg (±5.4 mm Hg)、4 時間後13.8 mm Hg (±4.3 mm Hg)。
・グループ 2では、平均 眼圧は手術 1 時間後13.6 mm Hg (±4.1 mm Hg)、2 時間後15.3 mm Hg (±4.6 mm Hg)、4 時間後15.2 mm Hg (±4.2 mm Hg) だった。
・グループ 1 の 2 眼 (10.0%) で瞳孔ブロックを発症した(それぞれ 3 時間後と 6 時間後)。
・眼圧は最終的に前房穿刺によって下降した。
・グループ 2 では瞳孔ブロックは起こらなかった (0.0%)。
・最高矯正視力 は、グループ 1 術前 logMAR 0.57 (±logMAR 0.4) から術後1ヶ月 logMAR 0.29 (±logMAR 0.30)、
・グループ 2 術前logMAR 0.48 (±logMAR 0.30) から術後1ヶ月logMAR 0.22 (±logMAR 0.12) と改善した。(グループ 1:P = 0.002、グループ 2:P = 0.006)。
・角膜厚は、グループ 1 術前 659.6 μm (±71.9 μm) から術後1ヶ月564.3 μm (±38.9 μm)、
・グループ 2 術前648.0 μm (±73.4 μm) から術後1ヶ月549.3 μm (±43.7 μm) と有意に減少した(グループ 1:P < 0.001 、グループ 2:P < 0.001)。
・前房内ガス再注入は、グループ 1 では、6 例 8 回、グループ 2 では、7 例 9 回だった。
・その他の合併症は認められなかった。
・結論: 患者の前眼部の解剖学的構造やその他のパラメータによっては、仰臥位でも虹彩切開した場所の閉塞を発症する場合もある。
・ さらに、血液やフィブリン、または不適切な濃度の SF 6 (>20%) によって閉塞する可能性がある。
・DMEK後、手術直後から就寝時まで少なくとも30度以上ギャッジアップしておくと瞳孔ブロックによるIOP上昇を防ぐことができる。
・これは、視神経、虹彩、角膜、または移植片への損傷を防ぐだけでなく、吐き気または頭痛を伴う不快感を回避できる。(CH)
強度近視眼における黄斑疾患手術におけるコツ:硝子体手術用ポートを輪部から6.0mm後極側に設置する手法
岩間康哲
眼科手術 36(3):415-418, 2023
・眼軸長27mm以上の眼球では輪部から毛様体扁平部後縁までの距離は6.0mm以上あると報告されている。
・今回、眼軸長31mmを越える長眼軸長眼で、輪部から6.0mmの位置にポートを設置する手技を報告した。
・角膜輪部から3.5mmを6.0mmに移動させることによってカニューレと中心窩までの距離を約1.2mm短縮することができた。
・術中にポート部を直接視認して確認する必要はある(TY)
成長期(3-18歳)における年齢と等価球面度数別(オルソケラトロジーを含む)の屈折要素の経年変化
新田千賀子他(富山県)
眼臨紀 16(2): 130-139, 2023
・7~16歳でOKを開始し、1年経過の1585眼、2年経過の810眼をコントロール眼(3~18歳)と比較した。
・OKの1年経過群では、近視群より眼軸長伸長抑制効果がみられた。
・7-10才で62%、11ー13才で81%、14-18才で92%。
・Ctrl群の3-10才とOK群では、水晶体厚は減少:増加、水晶体前面曲率半径は増加:減少、水晶体屈折力は減少:減少。
・OK群では水晶体厚が増加するほど、水晶体前面曲率半径が減少するほど、眼軸長伸長は小さかった。
・OK群では角膜前面曲率半径は増加し、角膜後面曲率半径は減少し、角膜屈折力は減少した。
・OKでは、眼軸長伸長抑制効果に水晶体の変化も関与している可能性がある。
・OK群の近視の軽減(平均+2.22D)には、角膜屈折力の減少(平均ー1.44D)だけでなく、水晶体屈折力の減少(平均-1.78D)も加わっており、角膜と水晶体が同程度に関与していた。
・OKの眼軸長伸長抑制効果のメカニズムとしては軸外収差理論で、周辺部遠視性デフォーカスが改善され、ALの過進展が抑制されるのであろう(TY)
The Relationship Between Caffeine Intake and Dry Eye Disease
Magno, Morten Schjerven, et al. (Netherlands)
Cornea 42(2):p 186-193, February 2023.
・目的:カフェイン摂取とドライアイ(DED) との関連性を調べる。
・対象と方法:オランダの大規模なLife lines コホートベースライン成人データ から85,302 人が参加した(平均年齢 50.7 歳 (12.4; 18–96) で、50,339 人(59%)が女性)。この内 9% がWomen’s Health Study ドライアイアンケートを使用して DED と判断されていた。 食事中のカフェインは、コーヒー、紅茶、コーラ、エナジードリンクの摂取量から計算された。
・結果: 平均カフェイン摂取量は 285mg/日、主なカフェイン源はコーヒーであり、男性と女性のカフェイン摂取量のそれぞれ 92% と 89% を占めていた。
・人口統計、体格指数、喫煙状況、およびアルコール摂取量を補正した後、カフェイン摂取量が多いほど、DED のリスクが低下した (オッズ比 (OR) 100 mg/日あたり 0.971、95% CI、0.956 –0.986、P < 0.0005)。しかし、さらに併存疾患を補正すると、有意差は認められなかった (OR 0.985、95% CI、0.969–1.001、P = 0.06)。
・カフェイン入りコーヒーは、DED リスクの低下と独立して関連する唯一のカフェイン源だった。 お茶とカフェイン抜きのコーヒーがDEDリスクの増加と関連していた。
・結論:カフェインはアデノシンに拮抗することで中枢神経系を刺激する。アデノシンは神経活動を阻害し、睡眠と覚醒のサイクルを調節している。 アデノシン受容体は眼にも存在し、涙腺の分泌に影響を与える可能性があるが今回の研究では、食事からのカフェイン摂取はDED の危険因子ではなかった。(CH)
充血、視力低下をCOVID-19ワクチン接種による副反応と考え、眼科受診が遅れた閉塞隅角緑内障の1例
武藤哲也 ら ,眼科臨床紀要 16(1), 9-12: 2023
・70歳女性 COVID-19の2回目のワクチン接種 6時間後から左眼の充血と左眼周囲の腫脹を生じた。その後、徐々に左眼の視力低下も自覚したが、ワクチン接種の副反応を考え様子を見ていた。吐き気や悪心などはなし。1週間経過しても不変のため近医眼科を受診し、左眼の緑内障発作が疑われて獨協医大埼玉医療センターへ紹介 前医視力 左光覚弁
・手術を行い眼圧下降したが、ワクチン副反応と自己判断して受診を控えてしまったため、不可逆的な視機能低下をきたした。
・接種後の副反応として下記報告
・Gabkaら:接種後に両眼の網膜に黒いシミ状の変化を生じ、チラチラする暗点を生じた症例報告
・Saracenoら:接種4日後に原田病を発症
・Papasavvasら:6年間沈静化していた原田病が2回目ワクチン接種後に炎症再発
・稲見ら:接種後CRAO
・Pawarら:若年成人に発症した視神経炎、垂直注視麻痺、外転神経麻痺
・これらはワクチン接種後に偶発的に生じただけなのか、接種に起因して発症したかは不明(MM)
東花枝, 眼内レンズセミナー あたらしい眼科 40(1), 65-66: 2023
・緑内障の治療や内眼手術前後の眼圧下降目的などで用いられるアセタゾラミドは、毛様体脈絡膜剥離による急性閉塞隅角緑内障を引き起こすことがある。
・海外からの報告
・毛様体脈絡膜剥離は低眼圧を伴うこともあるが、毛様体の前方回旋により虹彩根部と水晶体嚢が前方に偏位し、続発性の隅角閉塞を引き起こすこともある。内眼手術や原田病、後部強膜炎などが主な要因となるが、アセタゾラミド、ヒドロクロロチアジド、ST合剤などスルホンアミド構造を持つ薬剤もその原因となる。治療は散瞳・調節麻痺点眼、副腎皮質ステロイド投与や硝子体切除術。
・Mancinoら:76歳男性 左眼白内障手術直後にアセタゾラミド投与。翌日に両眼の浅前房、眼圧上昇および広範囲な脈絡膜剥離を伴う閉塞隅角緑内障を発症
・右眼は7年前に白内障手術済のIOL眼 内服中止し副腎皮質ステロイドの大量静注で速やかに改善
・Parthasarathiら:CACG既往がある66歳男性 左眼の白内障手術直後にアセタゾラミド内副投与 左眼及び有水晶体眼である右眼も眼圧上昇 浅前房となり毛様体浮腫を認めた
・著者:57歳男性 右白内障手術直前アセタゾラミド内服投与し、通常の白内障手術を問題なく終了
・術後3時間で頭痛と霧視を自覚 術後9時間で受診時 眼圧 右 70mmHg、左 62mmHg
・瞳孔径 右 6mm,左 3mm 対光反射 両眼でやや減弱 両眼 毛様充血、角膜浮腫と浅前房
・瞳孔ブロックを考え、マンニトール点滴、アセタゾラミド内服、両眼にピロカルピン、眼圧下降薬、ベタメタゾン点眼するも下降せず。
・UBMで前房深度は1.34mm、毛様体上腔の液体貯留及び交際、水晶体嚢の前方移動
・毛様体脈絡膜剥離による急性閉塞隅角緑内障と判断し、アトロピン点眼開始したところ眼圧下降し始め、プレドニゾロン内服を2週間継続し正常眼圧となった。
*点眼でも脈絡膜剥離を生じることがある
– Chaves-Smaniego MJ et at. Case Rep Ophthalmol 2022
・手術歴のない緑内障患者でドルゾラミドとチモロール点眼をしている患者で脈絡膜剥離が生じた
– Donmez O et al. Med Hypothesis Discov Innov Ophthalmol 2016
・白内障手術後片眼にドルゾラミド・チモロール配合剤使用していたら、両眼に脈絡膜剥離が生じた(MM)
Graft rejection episodes after keratoplasty in Japanese eyes
Sci Rep. 2023 Feb 14;13(1):2635.
Haguku Wajima, et al. (金沢大学)
・目的:日本人患者における角膜移植術後の移植片拒絶反応の臨床的特徴と危険因子を調査すること。
・対象と方法:全層角膜移植術(PK) 198例、角膜内皮移植術(DSAEK 277例、nDSAEK 138例、DMEK 117例)、全730例の移植片拒絶の発生率、臨床的特徴、および考えられる危険因子を分析した。
・結果:移植片拒絶反応は 65 例 (8.9%) で発生した。発生率は、PK (33/198、16.7%)、DSAEK (20/277、7.2%)、nDSAEK (11/138、8.0%)、DMEK (1/117、0.9%) で、PKが他より有意に高かった (P = 0.018、DSAEK; P = 0.022、nDSAEK; およびDMEK; P < 0.001)。
・角膜内皮形成術後の拒絶率が低い理由は、(a) 移植組織は前房に挿入され、抗原提示細胞と抗体が存在する表面に露出しない。そのため前房関連免疫偏位の効果があった可能性。
・(b) 宿主組織とドナー組織をつなぐ縫合糸の数が大幅に減少すると、縫合糸に関連した拒絶反応のエピソードが少なくなる。
・ (c) 宿主間質血管と移植組織との間の直接接触がない。
・ (d) ドナー上皮および実質の大部分が存在しないことによる、移植片の免疫原性の低下、と考えられる。
・PK、DSAEK、nDSAEK、および DMEK における拒絶反応診断時の細隙灯顕微鏡検査による徴候は、結膜充血 (それぞれ 27.3%、30.0%、18.2%、0%)、びまん性角膜浮腫 (それぞれ45.5%、45.0%、45.5%、100%)、角質沈着物 (それぞれ、84.8%、95.0%、90.9%、100%)だった。
・PK の 4 例でrejection lineが観察された。
・PK、DSAEK、nDSAEK、DMEK の自覚症状を伴わない拒絶反応は、それぞれ 51.5%、40.0%、63.6%、100% だった。
・結論:PK が最も高い拒絶率を示し、次に nDSAEK と DSAEK が続いた。
・さらに、DMEK は移植片拒絶の発生率が比較的低いことを示し、他のタイプの角膜形成術よりも優位性が確認された。
・レシピエントのデスメ膜の存在は、拒絶エピソードに関しては差はなかった。
・拒絶反応の約半数に無症状の患者が存在することを考慮すると、眼科医は定期的な術後診察やパキメトリーおよび前眼部OCTを使用した角膜厚の変化に注意する必要がある。(CH)
Foundation models for generalist medical artificial intelligence.
Moor, M., Banerjee, O., Abad, Z.S.H. et al. (US-CA)
Nature 616, 259–265 (2023). https://doi.org/10.1038/s41586-023-05881-4
foundation models(基盤モデル)と呼ばれる、最新世代のAIが可能にしたもの
多様なタスクに対応できることが特徴
言語モデルGPT-3が代表例のひとつ、いくつかの例を含む説明から学習するだけで、明示的に訓練したことのない全く新しいタスクを実行することができる
前世代のAIモデルは特定のタスクを1つずつ解決するために設計された
(医療領域でのfoundation model開発は以前から行われてきたが、大規模で多様なデータセットへのアクセスの難しさ、医療領域の複雑さ、開発の遅さなどから、foundation modelへのシフトは困難だった)
従来の医療AIは特定のタスクに限定したもの(例:胸部X線写真の肺炎が陽性または陰性)で包括的な報告書の作成が困難だが、
GMAIは大量の異なるデータを組み合わせて処理し、柔軟に解釈することが可能(MK)
Clinical observation of phacoemulsification under the low perfusion pattern and low negative pressure in patients with low corneal endothelial cell density
Yan Lin, et al. (China)
BMC Ophthalmology volume 23, Article number: 340 (2023)
・目的:角膜内皮細胞密度(ECD)の低い患者において、低灌流低吸引圧パターン下での白内障手術(PEA+IOL)の安全性と効果を検討する。
・対象と方法: ECD(554/mm2~996/mm2)が少なく、白内障Emery nuclear grading systemでグレードIII 12眼、グレードIV 5眼の合計16例(17眼)、男性7人7眼、女性9人10眼、平均年齢68.9±5.25歳。
・手術前後のECD、変動係数(CV)、角膜中心厚(CCT)、視力、眼圧の変動を評価した。
・手術は、ステラリス(Bausch + Lomb, USA)を使用、ソフトシェル法
・バーストモードを選択し、ボトルの高さ95cm、U/S 60%、吸引圧 250~300mmHg、吸引流量 40ml/min、1回のバースト閉塞時間は50msに設定。
・結果:手術前の平均視力(Eチャート)0.16±0.09から手術後0.45±0.16(p<0.001)となり有意に改善した。
・平均眼圧は、術前16.88±6.47mmHg、術後14.41±3.10mmHg(p=0.041)。
・手術前後で、17眼中4眼はECDが測定不能だったが、他の13眼では、術後1ヶ月の平均ECD(644.308±106.24cells/mm2)は術前(709.62±119.19cells/mm2)より有意に低下した(p < 0.001)。
・しかし、術前の平均CV(31.23±4.21)、術後1ヶ月の平均CV(32.62±3.80;F=2.130、p=0.157)には有意差は認められなかった。
・手術1ヵ月後の14眼の平均CCT(562.72±27.82μm)は、手術前(534.79±24.69μm)よりも大きかった。
・術後に角膜浮腫を生じたのは5眼のみであり、浮腫は術後1ヶ月で明らかに消失した。
・結論:低灌流低吸引圧による白内障手術は、白内障と角膜内皮細胞機能不全の患者に対して安全で有効であることを示している。
・白内障手術を受けると角膜内皮細胞は平均4~25%減少すると言われている。
・原因は主に機械的傷害と熱傷害である。
・本研究での低灌流低吸引圧で手術の利点は(1)前房の動揺が少ないため、手術中のサージ現象、浅前房、硝子体脱出の発生率を減少できる。
・(2)粘弾性物質の吸引を緩やかにし、角膜内皮を効果的に保護する。
・(3)水晶体核をゆっくり粉砕し、手術の安全性を高める。
・(4)術中の眼圧上昇を抑え、手術中の高眼圧による角膜内皮の傷害を回避する。(CH)
Efficacy of Topical Ivermectin 1% in the Treatment of Demodex Blepharitis
Young Choi,et al. (Korea)
Cornea: 2022 (41) Issue 4 p 427-434
・目的:ニキビダニ眼瞼炎(まつげダニ眼瞼炎)の治療において、眼瞼の清拭と睫毛に1% イベルメクチンクリーム塗布する治療を組み合わせて有効性を評価する。
・対象と方法:ニキビダニ眼瞼炎と診断された患者 102 例102 眼。
・4つの条件を全て満たした場合ニキビダニ眼瞼炎と診断した。
・1) 眼の不快感を軽減するために 1カ月以上点眼薬で治療したが、症状が持続している。
・2)かゆみや刺激など、眼瞼炎に関連する眼の不快感が存在。
・3) 眼瞼の剥離物、眼瞼の発赤/腫れ、および眼瞼の毛細血管拡張の3つの症状すべてが、両眼で軽度またはそれ以上であった場合。
・4) 各眼瞼から2本の睫毛を抜き取り、合計8本を顕微鏡で観察し、1本の睫毛に4匹以上のニキビダニが観察された場合
・イベルメクチン群 (n = 51) は1% イベルメクチンクリームを週1 回 15 分間まつげに塗布した。15 分後にクレンジングで慎重に拭き取った。塗布したときに、クリームが眼に入らないように指示された。対照群 (n = 51) は塗布しなかった。
・両グループで、tea tree oil を含む眼瞼の洗浄製品を使用して1日 1回清拭を行なった。
・症状アンケート スコア、オックスフォード染色スコア、眼瞼の剥離物、眼瞼の発赤/腫れ、および毛細血管拡張を評価した。
・結果:平均経過観察期間は、イベルメクチン群15.1 ± 9.7 週間 (範囲: 4 ~ 40 週間) 、対照群14.8 ± 8.6 週間。
・症状アンケートと眼瞼の剥離物は両グループとも有意に改善されたが、イベルメクチン群でより大きく改善した。
・オックスフォード着色スコア、眼瞼の発赤/腫れと毛細血管拡張は、イベルメクチングループでだけ有意に改善した。
・1% イベルメクチンクリームによる合併症は認められなかた。
・結論:1%イベルメクチンクリームの塗布と、毎日の眼瞼の清拭を併用することは、ニキビダニ眼瞼炎の自覚症状と客観的徴候を改善するのに、副作用なしでより効果的であることを示した。
・ニキビダニ眼瞼炎の効果的な治療法として処方できると考えられている。(CH)
Intrapapillary hemorrhage with adjacent periparillary subretinal hemorrhageの2例
高橋宏典ら 眼科臨床紀要 15(12), 822-825: 2022 (自治医大)
・1981年 渡辺ら:若年者で中等度あるいは軽度の近視眼で、乳頭から花冠状に広がる網膜前出血、乳頭に接した網膜化出血、硝子体出血を伴う症例を報告
・1989年 廣辻ら:近視性乳頭出血という呼称
・2004年 Kokameら:傾斜乳頭、近視眼、急性の乳頭浮腫などに起因して、乳頭部の出血に加え、乳頭周囲に網膜化出血が見られるIHAPSHという疾患概念を提唱
・2021年 長岡ら:本邦におけるIHAPSHのまとめを報告
・症例1 23歳男性 主訴:右飛蚊症
・s-5.25D:c-1.25DAx180、両眼とも傾斜乳頭、小乳頭(DM/DD=3.4)
・無治療で経過観察して10週後に消退
・症例2 13歳女児 主訴:左飛蚊症
・s-7.5D、傾斜乳頭、小乳頭(DM/DD=3.8)
・無治療で経過観察して、6週後に消退
・傾斜乳頭、小乳頭を呈する症例や、近視の進行過程の小児に見られる乳頭出血の原因としてIHAPSHを認識しておく
・乳頭出血の機序
・近視性乳頭出血の報告では、牽引コーヌス、被服コーヌスを基盤とした脈絡膜由来血管系からの出血、近視性乳頭浮腫に伴う出血、乳頭篩板前部から脈絡膜へ還流する細静脈のうっ滞による出血、近視性乳頭ですでに水平方向に牽引されている表在性網目状毛細血管、放射状乳頭前毛細血管が後部硝子体剥離による硝子体側への牽引で破綻性出血をきたしやすいことなどが推測。
・傾斜乳頭では、乳頭が斜め上方より眼球に入るため、血管が屈曲し循環障害をきたしやすいことが考えられている。
・その他後部硝子体剥離に伴う機序や硝子体乳頭間の牽引、視神経乳頭浮腫が出血の原因となると推測されている
・長岡らのまとめ:2004年以降 9例11眼
・年齢10-78歳、9例中8例が女性
・片眼性が7例、両眼性に2か月、2年の期間をおいて発症した報告あり
・傾斜乳頭や小乳頭といった乳頭形態変化が4例、高齢者を除き近視眼に多く見られている。
・出血消退までの期間は2週から6か月 視力予後はおおむね良好だが、高齢者ではIONやRAOを随伴した報告あり(MM)
Prevalence of Glaucoma and Its Systemic Risk Factors in a General Japanese Population: The Hisayama Study
Kohta Fujiwara et al. Transl Vis Sci Technol,2022 Nov 1;11(11):11.
・2017-2018年に久山町にて40歳以上の3405名(平均年齢64.6歳: 多治見スタディ58.4歳)を対象として、ステレオ眼底カメラとSS-OCTを用いて調査したpopulation-based, cross-sectional study
・結果:ステレオ眼底カメラでは検出できなかったがOCTで検出できた緑内障:22名
・緑内障の有病率は
全体で7.6%(95%CI:6.7-8.6) 比較 多治見スタディ 5%
POAG: 5.8%(5.0-6.6) 3.9%
PACG: 0.7%(0.5-1.1) 0.6%
PEG: 1.1%(0.7-1.4)
続発(PEG以外): 0.1%(0.01-0.2)
緑内障治療がされていたのは69名(26.6%) 7.9%
・リスクファクター
・POAG: 年齢(OR:1.48 /10y)、腎機能低下(eGFR)(OR:1.1 /10 mL/min/1.73 m2減少)、高眼圧(OR:1.06 /1 mmHg)、長眼軸(OR:1.44 /1mm)、薄いCCT(OR:1.09 /10μm)
・PACG: 年齢(OR:1.71 /10y)、女性(OR:3.08)、Diabetes(OR:2.74)
・PEG: 年齢(OR:2.99 /10y)Diabetes(OR:2.15)、薄いCCT(OR:1.14 /10μm)
・結論:多治見スタディの時よりも日本の高齢化が進み、有病率が約8%に増加していると考えられる。(多治見スタディと年齢・性別を調整するとほぼ同じ5%)。全身の因子としてeGFR(推算糸球体濾過量)、糖尿病がPACGとPEGも示唆された。(MM)
低加入度分節眼内レンズと単焦点眼内レンズの術後屈折値比較
江村純子他(東京女子医大)
眼臨紀 15(10): 649-652, 2022
・LENTIS Comfortの11例20眼と、単焦点IOLの8例11眼で、等価球面度数SEの自覚値と他覚値を1ヶ月目と3か月目で比較した。
・3か月目のLENTIS群は自覚値で-0.38±0.42D、他覚値で-0.63±0.49Dであり、有意差があった(p=0.017)。
・単焦点群での3か月目は自覚値で+0.02±0.45、他覚値で-0.11±0.52であり、有意差があったが(p=0.037)、その差はLENTIS群の方が大きい傾向があったが有意差はなかった(p=0.57)。
・LENTIS眼では他覚的なSEを参考にして視力測定をすると近視よりにでる可能性があり、注意が必要。(TY)
Implementation of the Corneal Sweep Test in the Diagnosis of Recurrent Corneal Erosion: A 2-Year Retrospective Study
Madeleine Eun-Ji Kim, et al. (US GA)
Cornea. 2022 Oct; 41(10): 1248–1254.
目的:標準的な診断方法と角膜スイープ テスト (CST) と呼ばれる新しい技術を使用して、再発性角膜びらんの発生率を評価する。
・対象と方法:以前に再発性角膜びらんと診断されたことのある 51 人58 眼。
・CSTは確認できる角膜病変がない患者に対して実施された。
・CSTのためにキム角膜スイーパー(Katena)と呼ばれる専用の器具が開発された。これは、角膜表面全体をさっとなでて接着の悪い上皮の領域を特定するために使用される。点眼麻酔薬をして、フルオレセイン色素で染色した後、キム角膜スイーパーで角膜表面に接線方向に弱い圧力をかる。 正常な角膜では涙液のためスイープ操作がスムーズで、角膜上皮に外傷を与えない。 しかし、接触の弱い上皮部分では、その下にある上皮基底膜から分離して局所的なひだ(潜在的な角膜びらん)を作成する。
・結果: 58 眼中 9眼は細隙灯顕微鏡検査で角膜びらんを確認できた。49眼で CST が必要だった。そのうちの 34眼はCSTでひだの形成(潜在的な角膜びらん)を認めた。
・原因は、白内障手術 (28 眼、48.2%)が最も多く、20眼は白内障手術後にのみ症状を発症し、すべて白内障手術の切開創の真上にびらんを認めた。
・対象として健康な角膜のコントロール40眼にCSTを行った。38眼 (95%)では異常を認めなかったが、2 眼 (5%) で約 1 mm のひだの形成(潜在的な角膜びらん)を認めた。
・結論:CSTは、細隙灯顕微鏡検査では角膜所見がない場合に角膜びらんを診断するのに役立つ新しく効果的な技術である。白内障手術は切開創部分が角膜びらんの原因となる可能性があるため、重要な危険因子だった。CST は 再発性角膜びらんや持続性眼痛症候群の患者に有用であると思われる。(CH)