増田有寿 他(川崎医大)
臨眼75(10);1378-1384,2021
・目的:角膜内皮移植術(DSAEK)後の移植片接着不良になった症例に対しROCK 阻害薬である0.4%リパスジル点眼剤を2回/日点眼した。その後、外科的追加処置なしで良好な移植片接着となった症例2例の検討。
・症例1: 65歳女性、両眼フックス角膜内皮ジストロフィ+落屑緑内障+白内障。
・左眼白内障手術時、後嚢破損+眼内レンズ縫着術施行。その後、水疱性角膜症(BK)を発症した。角膜内皮細胞密度(ECD)測定不能、左視力0.15(0.2)。
・左眼DSAEK施行、手術3時間後の診察で、空気瞳孔ブロックを認めたため、25G針で空気を抜去した。術後3日目で前房内空気が消失、移植片接着不全を認めたため、リパスジル点眼2回/日を開始した。点眼開始36時間後、移植片は再接着した。ECD 2400 cell/mm2、左視力0.3(0.6)。
・症例2: 75歳男性,右眼落屑緑内障に対し、白内障手術、LOT、LEC、緑内障インプラント挿入、抜去など複数回の手術を施行。その後、右眼ECD減少しBKを発症した。
・ECD 測定不能、左視力指数弁(n.c.)。右眼DSAEK施行、術後数日は経過良好であったが、術後11日目に移植片不全を認めた。前房内に空気再注入や10 % SF6ガス注入を行なったが再接着しなかった。術後1ヶ月目からリパスジル点眼2回/日を開始。点眼開始後1ヶ月で移植片再接着を認めた。ECD 897 cell/mm2、左視力0.04(n.c.)。
・2例ともリパスジル点眼によると考えられる副作用はなかった。
・考察:ROCK阻害薬は、角膜内皮細胞の増殖能だけでなく遊走能を亢進させるという報告がある。リパスジルを投与することにより,遊走能が亢進し移植片の内皮細胞脱落部を被覆し、それによって角膜内皮細胞のバリア機能およびポンプ機能が改善したことにより移植片が再接着したと推察する。自然経過で再接着した可能性も否定はできないが、ROCK阻害薬は角膜内皮移植術後の移植片接着不良に対し有用である可能性がある。(CH)
Risk factors for failure of resolving optic disc pit maculopathy after primary vitrectomy without laser photocoagulation.
Sano M et al(杏林大)
Jpn J Ophthalmol 65(6): 786-796, 2021
・視神経乳頭ピット(ODP)黄斑症に対して、視神経乳頭縁に光凝固治療を行なわず、硝子体手術だけを行った連続35例のうち、黄斑剥離が消失しなかった症例について、その要因を検討した。
・経過観察期間は平均58ヶ月(12-193ヶ月)である。
・35例中31眼は、約1年の経過観察で黄斑部の剥離が完全消失した。
・残りの4眼は追加治療を行った。
・最初の硝子体手術後に網膜剥離が消失しなかった要因は網膜剥離が視神経乳頭縁と繋がっていた場合(p<0.001)と、術前に頭痛があった場合(p=0.03)であった。
・通常は網膜分離であるが、視神経乳頭縁と網膜剥離が連続した症例では、ODP腔からの液が網膜下腔へ流入している。
・頭痛のあった8例中5例は網膜剥離がODPと連続していた。
・追加治療が必要であった4例の内、3例は視神経乳頭縁への光凝固が有効であった。
・ガス注入も有効である(TY)
三村治、木村亜紀子、岡本真奈、五味文、仲村真一(兵庫医大)
眼科 2021 : 63(5) 465-471
【目的】
・短波長光のカット率の異なる2種の遮光レンズ眼鏡装用で、羞明が改善するか、またカット率の差で羞明の改善率に差がみられるかを検討
【対象および方法】
・羞明を訴える眼瞼痙攣の初診患者20例、A型ボツリヌス毒素(BTX-A)治療中の再診患者12例
初診患者では2種類の遮光レンズをそれぞれ4週間(計8週間)、
再診患者では両者を適宜4週間装用
・装用前後および装用レンズ間の羞明の自覚をvisual analogue scale(VAS)で評価
・2種のレンズは視感透過率がほぼ同じ75%前後であるが、短波長光のカット率に差があるもの(YE:85%,PN:52%)を使用
【結果】
・VASは装用前76.0⇒装用後YEは39.3,PNは48.1、ともに有意に改善
・装用前を100%とした改善率;
初診:YE 45.5±33.4%、PN 34.6±41.8%
再診:YE 53.7±20.9%、PN 40.9±23.3%
全体:YE 48.6±29.2%、PN 37.2±34.9%
どの層でもYEが10%以上良好であったが有意差みられず
・初診群で2例(10%)がYE装用、1例(5%)がPN装用により羞明の著明な減少を認め、その後のBTX-A注射を希望せず
・再診群では全例BTX-A注射の継続を希望
【結論】
眼瞼痙攣患者ではその羞明の軽減に遮光レンズは有効で、特に短波長光のカット率の高いレンズが望ましい。また患者総数の1割以上で遮光レンズのみで満足し、BTX-A治療を回避できる可能性がある。(MK)
Impact of habitual swimming on the success of lacrimal surgery
Mimura M, Sato Y, Fujita Y, Oku H, Sato B, Ikeda T(大阪医大)
Japanese Journal of Ophthalmology 2021;65, 849–854
DOI https://doi.org/10.1007/s10384-021-00865-1
【目的】
水泳に関連する因子が水泳選手の涙道にどのような影響を与えるかを明らかにする
【方法】
・流涙が続く患者574例
・プールの利用状況(頻度、ゴーグルの着用、プールでの活動の種類(水泳と腰まで浸かった歩行など))について質問票で調査
・解剖学的な涙道閉塞を有する20歳以上のスイマー全員が外科的再建術を受けた
・多変量ロジスティック回帰分析により、術後12か月時点の手術成功率に関連する因子を検索
水泳の有無、プール使用頻度、プールの水への結膜接触量(ゴーグル使用の有無、腰より深く水に浸かるか)
【結果】
・解剖学的な涙道閉塞を有する患者のうち、6.4%が習慣的なスイマーであった
・鼻涙管閉塞は、非水泳者と比較してスイマーに多く見られた(89.1%/66.7%、P = 0.025)
・解剖学的な鼻涙管閉塞を有するスイマーの涙道手術の成功率(60.6%)は、非水泳者(83.3%)よりも低かった(P=0.048)
・ROC曲線を用いると、手術の失敗を予測するための頻度の閾値は4日/週
・高頻度スイマー(26.7%)では低頻度スイマー(88.9%)に比べ有意に手術成功率が低かった(P = 0.037)
・プールの水に対する眼表面接触の高低に統計的な差はみられず(71.4%/57.7%、P = 0.56)
【結論】
水泳の習慣がある人は、涙道障害のリスクが高く、涙液手術の成功率を低下させる。(MK)
Efficacy and safety of 0.01% atropine for prevention of childhood myopia in a 2-year randomized placebo-controlled study.
Hieda O et al(京大他)
Jpn J Ophthalmol 65(3): 315-325, 2021
・日本人の小児で0.01%アトロピン点眼薬の効果と安全性を評価した。
・7大学病院において、6歳から12歳の小児に対して2重盲検で行った。
・屈折度は-1.0~-6.0D、乱視は1.5D以下、0.01%アトロピン群85名、プラセボ―群86名の計171名で行った。
・24か月後の屈折変化と眼軸長変化はAt群は-1.26D(95%CI=-1.35~-1.17)と0.63mm(0.59, 0.67)で、Ctrl群では-1.48D(-1.57, -1.39)と0.77mm(0.73, 0.81)であり、両群間の違いは屈折度では0.22D(0.99, 0.35 p<0.001)、眼軸長では-0.14mm(-0.20, -0.88 p<0.001)で有意差があった。(TY)
Efficient measurements for the dynamic range of human lightness perception.
Horiguchi H et al(慈恵医大)
Jpn J Ophthalmol 65(3): 432-438, 2021
・夜盲症や羞明は光受容のdynamic range(DRL)の影響ではないかとの仮説を立て、DRLを推定する測定方法を考案した。「知覚確率曲線」を推定する一方法である。
・55名の羞明患者と46名のCtrl者で単一背景のiPad tablet上の中央に白から黒のグラデーションバーを表示し、灰色がかった白/黒と、完全な白/黒の位置を指さし判定させた。
・白は454cd/m2、黒は0.45cd/m2。iPad tabletの単一背景の明度は3段階(14, 99, 281cd/m2)に設定した。ちなみに、GPの背景光は31.5 asb=10 cd/m2である。
・CtrlのDRLは20dB程度であったが、羞明患者のDRLは平均15dBで、有意差があった。
・背景が最明と最暗でのDRLの中央値の差、index of contextual susceptibility (iCS分節感受性指数)と名付けたが、これは羞明患者で有意に大きかった。
・網膜色素変性症のDRLは全ての明るさでCtrlより小さかったが、緑内障のiCSはCtrlより有意に大きかった(p<0.05)。(TY)
Treat-and-extend therapy with aflibercept for diabetic macular edema: a prospective clinical trial
Takao Hirano, et al. (信州大学)
Jpn J Ophthalmolo. 2021 May;65(3):354-362.
・糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対しての抗VEGF注射の頻度とコストが、重要な問題であると考える。優れた治療効果を維持しながら、抗VEGF注射と受診の回数を最小限に抑えるための治療法を開発する必要がある。
糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対してアフリベルセプト(Eylea)を使用し、最長の治療間隔を16週間に設定したT&E療法の有効性と安全性を調査する。
・最初のIAI (intravitreal aflibercept injection)後の16週間は導入期と見なし、その間は月1回連続5回投与した。最初のIAIの1週間後、ベースライン時のFA所見に従って、局所/グリッド光凝固術が実施した。その後、局所光凝固術は約4週間後に実施した。
・IAI再注射基準は(1)OCTの中心窩領域網膜厚(CST)が最低値から150 µmの増加、(2)OCTで新規または持続性の嚢胞性網膜変、網膜下液、持続的なびまん性浮腫がありCSTが約350µm以上の場合。患者は8週間隔でIAIを受け、再注射基準のいずれも満たさなかった場合、受診間隔は4週間刻みで8週間から16週間(最大)に延長された。
・31人31眼の患者が1年間のアフリベルセプトT&E療法を完了した。平均CSTはベースライン時501.9±109.4 µmから1年後172.0±137.2 µmに減少した(P < 0.001)。
・平均ETDRS BCVAは、ベースラインの60.4±15.4文字から64.6±に文字に改善した。
・治療間隔は、52週目の最終投与と前投与の間隔は38.7%(12/31)で8週間、16.1%(5/31)で12週間、45.2%(14/31)で16週間だった。平均IAI数は7.0±1.1回だった。
・視力の改善は少なかったが、最長の治療間隔を16週間に設定したT&Eアフリベルセプト療法はほとんどの患者で満足のいく結果で、来院と治療の数を減らす可能性がある。(CH)
Characteristics and surgical outcomes of rhegmatogenous retinal detachments that develop after intravitreal injections
Takayuki Saba, et al. (千葉大学)
Japanese Journal of Ophthalmology (2021) 65:492-496
・目的:抗VEGF硝子体内注射後に発生する裂孔原性網膜剥離(RRD)の頻度と特徴を決定する。
・対象と方法:2013 年から 2020 年の間に、加齢黄斑変性症 (AMD)、糖尿病性黄斑浮腫 (DME)、網膜静脈閉塞症 (RVO)、または近視性脈絡膜新生血管 (mCNV) のために硝子体内注射を受けた患者で、最後の注射から90日以内に発症したRRD症例のベースライン時の特性と手術結果を分析した。
・結果:合計 3040 人の患者が 28,190 回の硝子体内注射を受けた。 7例7眼がRRDを発症した(AMD 6例、DME 1例)。発生率は 4027 回に1回 (0.025%) だった。
・最後の注射からRRD 発症までの平均期間は 5.6 ± 3.6 週間。
・網膜裂孔は全て馬蹄形で、上象限5 眼 (71%)、下象限2 眼、全例に後部硝子体剥離を認めた。 RRD 発症前の平均注射回数は 14.1 回。硝子体手術 4 眼、強膜内陥術3 眼で治療された。初回成功率は 86%、最終再付着率は 100% だった。
・RRD発症前の平均 BCVA 0.41 ± 0.26 logMAR、 RRD手術前視力0.78±0.78 logMAR 、RRD術後 3 か月0.62±0.52 logMARに改善した。
・結論:RRD症例のうち、抗 VEGF 療法を開始する前に後部硝子体剥離が認められたのは29%だったが、RRD が発生した時は100% 認められた。
・硝子体内注射後、後部硝子体剥離の発生率が増加することが報告されているので、抗VEGF注射が硝子体剥離を引き起こし、それが網膜裂孔とRRDの発症につながったことを示唆している。
・RRD の発生の他の可能性として、大量の黄斑下出血を伴う一部の AMD 症例での眼内ガス注入、さらにAMD症例は眼軸が比較的長く、6眼のうち 5眼の眼軸長が 24.0 mm を超えていたためと考えられる。
・発症率は非常に低いが、抗VEGF硝子体内注射後にRRDが発生する可能性があるので定期的に検査する必要がある。(CH)
奥 拓明(バプテスト眼科クリニック)
日眼会誌125 : 22-29, 2021(1)
・PKP術後角膜感染症の発症率は0.2-4.9%、DSAEK術後層間感染症の発症率は0.92%と報告されている。層間部位以外のDSAEK術後感染症の検討やDSAEKとPKP術後角膜感染症の比較検討については報告がないため、角膜移植後角膜感染症発症症例について検討した。
・2007年8月から2018年9月までにバプテスト眼科クリニックで角膜移植術を施行し、1年以上の経過観察が可能であった症例を対象とした。 発症率、起炎菌(ヘルペスなどのウイルス感染を除く)、発症時期、発症部位、発症時の局所副腎皮質ステロイド使用状況、予後について比較検討した.
・DSAEK術後639眼(男性287眼,女性352眼,平均年齢7l.7±11.3歳,術後経過観察期間51.4±20.8か月)および PKP術後616眼(男性317眼、女性299眼,平均年齢63.6± 16.7歳、術後経過観察期間57.3±32.3か月)を対象とした。
・DSAEK術後角膜感染症発症率は11眼(1.7%)、PKP術後39眼 (6.3%)であり、 DSAEKのほうがPKPよりも有意に発症率が低かった(p<0.001)。
・DSAEKでは細菌1眼(グラム陽性桿菌),真菌8眼(Candida属4眼、酵母型真菌4眼),不検出2眼であり, PKPでは細菌11眼,真菌18眼(Candida属6眼、酵母型真菌12眼),不検出10眼であった。発症時期はDSAEKでは術後24.9 ± 25,4か月, PKPでは術後36.9 ± 34.8か月。
・発症部位はDSAEKでは上皮のみの4眼,上皮および実質5眼,実質の2眼、 PKPでは上皮のみの6眼,上皮および実質33眼であった。発症時の0.1% フルオロメトロンおよび0.1% ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼使用はDSAEKではそれぞれ4眼、7眼、 PKPでは18眼、 21眼であった。保存的加療による治癒後に2段階以上の視力低下を認めた症例はDSAEKで4眼(40.0%)、 PKPで19眼(51.4%)であった(p =0.39)。
PKP術後感染症の原疾患では格子状角膜ジストロフィが28眼中7眼(25%)と突出していた。これは、術後も上皮が脆弱のためと考えられた。
・DSAEKはPKPと比べ、術後感染症の発症は低かった。真菌感染が多いのは、角膜保存液内に抗真菌薬を含んでいないこと、保存液内で競合する細菌数が減少することにより真菌数が楠加することなどが考えられる。
DSAEK術後感染症は層間感染がよく知られているが、今回の検討では上皮部位での感染が多く、上皮欠損、上皮接着不良、
カルシウム沈着などを背景として感染症が発症する可能性が示唆された。(CH)
Long-Term Outcomes from an Intraoperative Bleb Needling Procedure Augmented with Continuous Infusion
Alexander S. Kim, et al.(USA)
Ophthalmology Glaucoma 4:244-250, 2021
・連続98名106眼に対して、レクトミー術後平均4.3年、平均眼圧20.7mmHgでニードリングを行い、最長5年(平均2.9年)フォローした成績
・手術室でBSS灌流しながらブレブより3mmの部位から25Gを用いて広範囲にブレブができるまでニードリング。同部位から5-FUもしくはMMCを30G鈍針で注入。必要なら結膜縫合。
・レクトミー手術時の目標眼圧の平均14.3mmHg
・追加緑内障手術を要したものは33眼 (30眼TLE,3眼Tube)
・術後1年:Quolified success rate 69.6%、IOP reduction 25.1%
・術後5年:Quolified success rate 52.2%、IOP reduction 44.3% 。Complete success rate 27.5%
・19眼は複数回実施
・不成功の要因は黒人であったが、手術からニードリングまでの期間はリスクファクターではなかった。(MM)
1 year randomized comparison of safety and efficacy of trabeculectomy with MMC subtenon injection versus MMC infused sponges.
Stylianos A. Kandarakis et al (Greece, USA)
Ophthalmology Glaucoma, Published online: May 27, 2021
・49名56眼のレクトミー患者を0.02%MMCスポンジ2分(n=29)と0.01%MMC(PF Lidocaine2%で希釈) subtenon injection 0.15ml(15μg)(n=27)の2群に分けて術後視力、眼圧、内皮細胞密度(ECC)を比較したRCT
・術後1年で眼圧、BCVA、合併症、点眼数、ECCに両群間に差はなかったが、ブレブの形態が注射群では広い範囲に低い丈の血管の少ない良好なブレブであったが、長期に良好な成績となるかは今後の検討が必要である。(MM)
Burden of trabeculectomy and glaucoma drainage implantation following laser trabeculoplasty: a two-year follow up study
Rachel H. Lee et al (USA)
Ophthalmology Glaucoma article in press, 2021
・35歳以上のLTPを行った高眼圧症、緑内障疑い、中等度のPOAGと年齢、性別、人種、居住地、緑内障病型をマッチさせたLTPを行っていない対照群で2年後に緑内障手術(レクトミーおよびチューブインプラント)を実施した割合を比較
・LTP実施群 40/2435眼、 LTP非実施群 51/2435眼 有意差なし
African AmericansのOAGでその割合が高かった
・LTPはその後の緑内障手術の必要性を減らすわけではないようだ。(MM)
Subconjunctival Injections of Mitomycin C Are Associated with a Lower Incidence of Hypertensive Phase in Eyes with Ahmed Glaucoma Valve
Claudio I Perez, et al(Chile)
Ophthalmology Glaucoma 4:322-329, 2021
・2018-2019年に実施した、手術時と術後1週、4週でMMC0.1ml(0.25mg/ml)を結膜下に注射した連続症例と
・2015-2017年に実施した、MMCを使用しない連続症例をレトロスペクティブに比較した
・高眼圧期:MMCありvs MMCなし 17.6%(3/17) vs 55.0%(11/20) P=0.04
・6M時点での眼圧: 14.0±0.8mmHg vs 14.7±0.9mmHg P=0.6
・点眼数:1.2±0.2mmHg vs 2.2±0.3mmHg P=0.007
・MMCを併用したAGVでは高眼圧期の発生が低かった(MM)
Effects of Lidocaine on Mitomycin C Cytotoxicity
Abraham Park, et al(USA)
Ophthalmology Glaucoma 4:330-335, 2021
・ヒト結膜線維芽細胞をリン酸バッファー溶液(PBS)、MMC(0.2mg/ml)、MMC0.2mg/mlと1%防腐剤無しのリドカイン、1%防腐剤無しのリドカイン の4つの溶液で培養した。
・2、5、10、30、60分後の結膜細胞生存率をみた。
・PBS 0.680
・MMCのみ 0.642
・MMC+lidocaine 0.612
・lidocaineのみ 0.605
・Lidocaine含有の後2者の有意差なしだが、MMCのみと比べても有意に細胞毒性が高かった。
・LidocaineはMMCと混合しても細胞毒性を阻害しないし、それ自体に細胞毒性を持つようである(MM)
Fovea-sparing internal limiting membrane peeling versus complete internal limiting membrane peeling for myopic traction maculopathy.
Iwasaki M et al(札幌)
Jpn J Ophthalmol 64(1): 13-21, 2020
・21例22眼の近視性の牽引性黄斑症MTMに対して、中心窩を除いたILM剥離FSIPを行った11眼と、完全なILM剥離ILMPを行った11眼の6か月後の結果を比較した。
・FSIP群での最高視力はLogMARで0.61(小数点0.25)から0.34(0.46)に改善(p=0.009)。
・術後の黄斑円孔の発生はFSIP群では0例、ILMP群では3例(27.3%)であった。
・ILMP群での黄斑円孔を発生しなかった群での最高視力はLogMARで0.64(0.30)から0.44(0.40)に改善したが有意差はなかった(p=0.059)。
・術後の最終中心窩厚はFSIP群では557.6→128.8(p=0.003)、ILMP群では547.3→130.3μ(p=0.08)に両者とも有意に改善した。(TY)
日常診療における角膜内皮:落屑症候群と角膜内皮。白内障手術との関連を中心に
林研(福岡)
眼科 62(13): 1419-1428, 2020
・白内障手術により内皮障害を起こしやすい。
・術後の眼圧上昇も来しやすいので、術前にアセタゾラミド2錠内服を行うと、術後1時間から24時間の眼圧上昇が有意に軽減する。
・点眼であれば、ブリンゾラミド点眼が良さそうである。(TY)
Sleep in Myopic and Non-Myopic Children
Lisa A. Ostrin; Scott A. Read; Stephen J. Vincent; Michael J. Collins
Translational Vision Science & Technology August 2020(.9): 22, 2020.
方法:オーストラリアの10歳から15歳の子供91人に#ActiWatchを装着し、睡眠の違いを調べた。
91人の子供(平均年齢13.02±1.37歳)を2群に分けた。
近視群36人(平均主観的球面等価屈折誤差–2.44±1.52 D、範囲–7.56〜–0.63 D)、 非近視群55人(平均主観的球面等価屈折誤差+0.33±0.30 D 、範囲–0.38〜+1.13 D)。
結果:近視の子どもは、曜日や季節によって睡眠時間のばらつきが大きく、睡眠潜時が短かった(P = 0.04)。
結論:近視の子どもは、非近視の子どもより睡眠時間が長く、変動しやすく、潜伏時間が短い傾向があった。
睡眠パターンは、季節、曜日、年齢、屋外での時間、活動によって影響を受けた。(HK)
Sugimoto Koichiro et al (Japan)
J Glaucoma 29(8):e80-e82, 2020
リークしたブレブに対してブレブナイフを用いて虚血性ブレブおよび円蓋部側の結膜を剥離し、10-0ナイロンを用いてブレブの上に非虚血性結膜を被せる
一度でできなくても、複数回行うことで虚血性ブレブを縮小できた。
虚血性ブレブを除去するわけではないので、切除して結膜が足りないということが無い。(MM)
Crossover to Photodynamic Therapy or Micropulse Laser After Failure of Primary
Treatment of Chronic Central Serous Chorioretinopathy: The REPLACE Trial
VOLUME 216, P80-89, AUGUST 01, 2020
https://doi.org/10.1016/j.ajo.2020.04.007
マイクロパルスレーザー・PDT ともに無効例にはスイッチが効きそう?
論文の結論はHSML 無効だったが、効いていないとは言い難い?(オランダ)
ただし、初期治療の有効性は圧倒的にPDT が優位に思われる
ICGA 中期の過蛍光病変に対して
半量PDT
⚫ 3mg/m2(半量)ビスダイン投与後15 分で689nm・83 秒・50J/cm2(通常)
マイクロパルスレーザー(HSML)
⚫ フォベアから500μm 離し、810nm・300-1800mW・125μm・0.2 秒__________500Hz
⚫ 初期治療179 例(PLACE)中42 例が研究(REPLACE)対象
初期治療HSML29%52 例→32 例が本研究でPDT
6-8w で32 例中26 例SRF 消失(81%)
最終受診時30 例中25 例SRF 消失(78%)
初期治療PDT67%120 例→10 例が本研究でHSML
6-8w で9 例中0例SRF 消失
最終受診時9 例中6 例SRF 消失(67%)P>0.05
HSML 無効例に対するPDT は有効だったが、逆は有効性が確認されなかった。(THY)
星野順紀, 松本英孝, 森本雅裕, 向井亮, 中村 介, 秋山英雄(群馬大)
日眼会誌2020:124(8) 628-636
【目的】
・網膜血管腫状増殖(RAP)に対する
アフリベルセプト硝子体内注射(IVA)によるtreat-and-extend(TAE)とラニビズマブ硝子体内注射(IVR)によるTAEの2年成績を比較
【対象と方法】
・IVA(15眼)またはIVR(18眼)によるTAEを2年間継続できた、未治療のRAP 33眼
・視力、中心窩網膜厚(CMT)、中心窩下脈絡膜厚(CCT)、色素上皮萎縮面積、治療回数、合併症を後ろ向きに評価
【結果】
・IVA群は15眼、IVR群は18眼、治療前データに両群間で有意差なし
・視力は、両群とも2年後まで有意な改善がみられたが、改善量に両群間で有意差みられず
・CMTとCCTは、両群とも2年後まで有意な減少がみられたが、減少量に両群間で有意差なし
・色素上皮萎縮面積は、両群とも2年後まで有意な拡大がみられたが、拡大面積に両群間で有意差なし
・2年間の治療回数は両群で同等
・両群とも重篤な眼局所および全身合併症みられず
【結論】
・RAPに対するIVAまたはIVRによるTAEは、視力・滲出性変化の改善に有効であったが、色素上皮萎縮面積は拡大した。
・薬剤間で2年間の治療成績に有意差はなかった。(MK)