ONSET-1 Phase 2b Randomized Trial to Evaluate the Safety and Efficacy of OC-01 (VareniclineSolution) Nasal Spray on Signs and Symptoms of Dry Eye Disease
David Wirta, et al, (US NJ)
Cornea 41(10): 1207-1216, October 2022.
・目的:ドライアイ疾患の徴候と症状に対する、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト点鼻スプレーである OC-01 (バレニクリン溶液) の安全性と有効性を評価する。
・対象と方法:医師がドライアイ疾患と診断しており以前に人工涙液を使用していた患者182人(平均年齢65.5歳)を無作為にコントロール、OC-01 0.006 mg、 OC-01 0.03 mg、および OC-01 0.06 mg に割り当て、1日2回噴霧した。
・28日間使用し、シルマー試験スコアの変化、角膜フルオレセイン染色の変化(角膜の 5 カ所(中央、上、下、鼻側、耳頭))と眼の乾燥スコアの変化、(0 は「不快感なし」〜100 は「最大の不快感」)を調査した。
・結果:コントロール (n = 43)、OC-01 0.006 mg (低用量; n = 47)、OC-01 0.03 (中用量; n = 48)、OC-01 0.06 mg (高用量; n = 44)だった。6 人 (3%) の患者が研究を中止した。
・28 日後、0.03 投与群または 0.06 mg投与群では、コントロールと比較してシルマー試験スコアの有意な改善を示した(P < 0.001、P < 0.001)。
・0.03 mg 投与群では、ベースライン時より角膜全体のフルオレセイン染色の変化 (P = 0.020)、鼻側角膜フルオレセイン染色 (P = 0.026)がコントロールと比較して有意に改善した。
・0.06 mg 投与群ではベースラインからの角膜フルオレセイン染色の変化に統計的に有意な差はなかった。
・0.03 mg 投与群は、コントロールと比較して 28 日目までに乾燥スコアが大幅に減少した (P = 0.021)。0.06 mg投与群は、コントロールに対して有意でない減少を示した。
・副作用は、くしゃみ (62%–84%) および咳 (9%–25%)を認めたが、一過性で軽度だった。
・0.006 mg投与群と比較して、0.03 投与群および 0.06 mg投与群では、より強い点鼻部位の刺激が発生した。
・結論:バレニクニンは副交感神経刺激薬で,鼻腔内の三叉神経を活性化させ,自然な涙液の生成を促進し,涙液層の恒常性を回復させる。
・OC-01 点鼻スプレーは、ドライアイ疾患の徴候と症状が大幅に改善され、副作用も少ないので、ドライアイの新しい治療の候補となる可能性がある。(CH)
ガス併用硝子体白内障同時手術に適した眼内レンズ
横田陽匡
あたらしい眼科 39(9): 1193-1199, 2022
・ニデック NS-60YG、HOYA XY1、参天 X-70で、裂孔原性網膜剥離に対する硝子体白内障同時手術の際に前房安定性を調べた。
・NS-60YGは有意にSF6ガス注入に伴うIOLの前方移動を抑制されていた。
・後方圧縮荷重を測定すると、NS-60YGがもっとも圧縮荷重が高く、ガス圧に対する固定性が良好で、前房内安定性が高いことが分かった。
・YP2.2(興和)、XCB00V(J&J)も圧縮荷重が高かった。(TY)
Diabetes Mellitus Type 1 has a Higher Impact on Corneal Endothelial Cell Density and Pachymetry than Diabetes Mellitus Type 2, Independent of Age
Cornea 41(8): 965-973, August 2022.
・目的:1 型糖尿病(T1DM)と2 型糖尿病患者(T2DM)、および非糖尿病患者(対象群)における角膜内皮細胞密度 (CED)と中心角膜厚(CCT)の違いを評価する。
・対象と方法:17の研究がメタ回帰に使用された。T1DM 367人、T2DM 2136人。
・結果:T1DMのCED は 2900 cells/mm2 (2712–3089 cells/mm2)で対象群よりも 193 cells/mm2 少なかった (95% CI: -254 ~ -132; P < 0.00001)。年間平均損失は 16 cells/mm2で、これは対象群と同様だった。細胞の損失は糖尿病の罹患期間と関連していなかった(P = 0.383)
・T1DM と CCT の間には有意な正の関連があった。 22.82 歳の時点で、T1DMではCCT 531 μm (95% CI: 524–537; P < 0.00001) であり、対象群よりも 24 μm 厚かった (95% CI: 15–33; P < 0.00001)。CCT の増加は年間 2 μm 。
・ T2DMのCEDは2386 cells/mm2 (2251–2520 cells/mm2)、対象群よりも 151 個/mm2 少なかった (P < 0.00001)。2 型糖尿病患者の推定 CCT が 554 μm (95% CI: 545–563) だった。T1DMで得られた結果とは異なり、細胞の損失は糖尿病の罹患期間と関連していた( -37 cells/mm2 95% CI: -45 -29; P < 0.00001)。 平均 CCT の増加は年間 2 μm (95% CI: 1.7–2.8; P < 0.00001)でT1DMと同様であった。
・結論:T1DM、T2DM共にCEDの減少とCCTの増加に関連していることを示した。 これらの差は、T2DMと対照群よりも T1DM 患者と対照群で大きかった。
・両方のグループで対照群と同様に加齢による CED の減少を示した。
・DMが角膜内皮の損傷に影響を与えることから、臨床的にさらなる注意が必要である。(CH)
Efficacy and Safety of the Long-Acting Diquafosol Ophthalmic Solution DE-089C in Patients with Dry Eye
Advances in Therapy 2022 Aug;39(8):3654-3667.
Yuichi Hori, et al. (東邦大学)
・目的:ドライアイ患者における 長時間作用型ジクアホソル点眼液(DE-089C)の有効性と安全性を評価する。
・対象と方法:(1) フルオレセイン角膜染色スコア≧1 (2)DEQSアンケートで乾燥スコア≥ 1 (3) シルマー試験 I の結果 ≤ 5 mm/5 分 (4) BUT ≤ 5 秒 全ての条件を満たしているドライアイの患者330 人をDE-089C点眼 またはプラセボ点眼液に無作為に割り当て(DE-089C 群166 人、プラセボ群164 人)、2 週間のウォッシュアウト後、1 日 3 回、4 週間使用した。
・ベースラインから 4 週目までのBUT の変化、シルマーテスト I の結果、フルオレセイン角膜染色スコア、ドライアイQOLアンケート(DEQS )のスコアで評価した。
・結果:DE-089C群での 4 週目のフルオレセイン角膜染色スコアとリサミングリーン染色スコアの改善は、プラセボ群よりも有意に大きかった。 (それぞれP < 0.0001)。
・DEQSアンケートの乾燥スコア、シルマーテストⅠでは有意差はなかった。
・DE-089C群では、試験開始直前まで従来のジクアホソル点眼液(DQS)を使用していた患者の89.4%が、「点眼薬の使用感はDQSよりもDE-089Cの方が優れている、または 2つの点眼液の間で同等である」と回答し、ヒアルロン酸点眼、レバミピド点眼、人工涙液点眼を使用した患者のうち、DE-089Cが「以前の点眼薬よりも優れている、または同等である」と回答した患者の割合は、80.0%、91.7%、69.2%だった。
・DE-089C群で(発生率1%以上)報告された副作用は、軽度の眼刺激感(3.6%)および眼脂(1.8%)だった。
・視力、前眼部検査、眼圧に関しては、両群でベースラインからの臨床的に有意な変化は認められなかった。
・結論: DE-089C の薬剤効果が DQS よりも長いのは、DE-089C の点眼液にポリビニルピロリドンを添加することにより達成されると考えられている。
・ポリビニルピロリドンは、そのポリマー構造に水を保持し、ムチンに親和性があると報告されている。
・ したがって、DE-089C の点眼後、ジクアホソルの薬理作用により患者から分泌された涙液とムチンは、点眼液中のポリビニルピロリドンと結合し、より長く滞留すると考えられる。
・ドライアイは長期の治療が必要な慢性疾患であり、点眼薬の使用感は重要である。この研究では多くの患者は以前使用していたドライアイ点眼より同等またはそれよりも優れていると報告した。
・DE-089C は、ドライアイ患者の治療アドヒアランスの改善に貢献する可能性があり、それがより良い治療効果につながると思われる。(CH)
新しい浸出型加齢黄斑変性の分類と用語
柳靖雄 眼科 64(7): 633-645, 2022
・加齢黄斑変性症の分類総説
Consensus Nomencature for Reporting Neovascutar Age-related Macular Degeneration Data.
Spaide RF, Jaffe GJ, Sarraf D et al. Ophthalmology 127(5): 616-636, 2019
Consensus on Neovascular Age-Rerated Macular Degeneration Nomenclature Study Group.(TY)
子島良平 他(宮田眼科病院)
あたらしい眼科39 (7) : 999-1004. 2022
・目的:細菌性眼瞼炎に対する抗菌薬の投与期間と症状,再発状況を評価し、細菌性眼険炎の治療プロトコールを検討する。
・対象と方法:2019年12月から2021年3月細菌性眼瞼炎と診断され、治療目的で1%アジスロマイシン(1% AZM)点眼液を投与した患者のうち、14日間の点眼期間内に1回以上受診した患者を対象とした。眼瞼炎を前部眼瞼炎(睫毛根部を中心とした部位の炎症)と後部眼瞼炎(マイボーム腺開口部周囲の炎症)に分類し、初診時、点眼7日後、14日後、点眼終了1カ月後の転帰、点眼期間、再発率、症状スコア、治癒に影響を与える因子を検討した。
・結果:対象は46例46眼(男性10 例、女性36例)、平均年齢72.2歳。治癒率は41.3%、治癒・改善率は93.5%、点眼期間は11.3日、点眼終了1カ月後の再発率は6.5%であった。治癒に影響を与える因子は病型で、後部眼瞼炎が前部眼瞼炎よりも治癒しやすかった(オッズ比38.462. 95%信頼区間6.944-200.000, p<0.0001)。
・点眼14日後までの治癒率は、前部眼瞼炎で11.1 % (3/27)、後部眼瞼炎で84.2%(16/19)、治癒・改善率はそれぞれ88.9% (24/27). 100 %(19/19)だった。自覚症状および他覚的所見のスコアはすべての項目で、前部眼瞼炎では点眼14日後以降、後部眼瞼炎では点眼7日後以降で初診時から有意に減少した。
・副作用は6眼で認められ、べたつく2件、霧視、異物感、乾燥感、刺激感がそれぞれ1件。
・結論: 前部眼瞼炎より後部眼瞼炎の治癒率が高かった理由として、主成分であるAZMの抗菌作用や抗炎症作用、マイボーム腺上皮細胞への直接作用などさまざまな機序が関与したと推測される。1% AZM点眼液を使用すると90%以上の症例で14日以内に治癒もしくは改善するため、最長でも14日間で投与を終了することが重要である。(CH)
Electronically Monitored Corticosteroid Eye Drop Adherence after Trabeculectomy Compared to Surgical Success
Elyse J. M. et al. J of Glaucoma 5(4), 379-387: 2022
・90名90眼のレクトミーまたはチューブシャント手術を受けたPOAGまたはPACG患者をプロスペクティブに最長一年追跡調査 術者はA〜E
・ステロイド点眼瓶に点眼監視装置(Kali Drop device)を取り付け、術後の点眼アドヒアランスをリアルタイムで記録した。
・点眼瓶を取り付けるワイヤレス3G対応のプラスチックボトルで、ボトルの倒立状態と同時の圧力を測定し、日付と時刻をサーバーにリアルタイムで送信
・アウトカム:術後最初の5週間の点眼アドヒアランスと術後6週、6か月、1年での目標眼圧(8-21mmHg)達成状況、6M,1年目のブレブ形態
・術後点眼指示:
・術後1W:prednisolone acetate 1% 2時間毎
・(術者の判断で13名は術後の眼圧下降薬の使用および3時間毎のステロイド点眼を2週間目に挿入。)
・その後4回/日で1W、3回/日→2回/日→1回/日→中止(5週 or 6週目)
・最初に48時間以上点眼記録がない場合はディバイスが作動しているかの確認の電話を行った。電話を受けた被験者は8/28名で、その他の患者には点眼状況にかかわらず電話をかけなかった。
・結果
・90%のTLE患者は0.4mg/ml MMCの注射
・6%は患者家族が点眼
・平均2.2回の手術既往
・点眼遵守率(実際の点眼回数÷指示点眼回数)
・全体 89.7±13.7%
・2時間毎の期間:80.9%±15.8%
・3時間毎の期間(13名):68.9%±14.4% この期間は他の期間と比べて遵守率が悪い
・4回→3回→2回→1回の期間:95%、95%、100%、100%
・平均総投与mg 6.48±1.77mg(理論的には7.22±1.87mg、0.90±0.11倍 P<0.0001)
・目標眼圧達成率 90名中
・6W:87%
・90名のうち6Mもしくは1Yで検査できたのは73眼 (COVID-19の影響)
・そのうち80.8%(59/73眼)で目標眼圧達成、 7眼は1剤以上の眼圧下降薬使用
・7眼は追加手術
・5眼TLE後 リークの修正2、低眼圧の修正2、ブレブ不快感1
・ 2眼Tube後(12眼中) 眼圧上昇のため再手術
・高齢者、視野が悪い:点眼遵守率が悪い
・術者A:遵守率が高い 92% vs 84%(B〜E)
・術者Aは3時間ごとの点眼期間(2週目)追加はなかった。
・点眼遵守率の高い目は6M/1Yでの再手術なしで目標眼圧を達成する可能性が高かった。(MM)
TearCare for the Treatment of Meibomian Gland Dysfunction in Adult Patients With Dry Eye Disease: A Masked Randomized Controlled Trial
Preeya K Gupta, et al. (NC USA)
Cornea 2022(4);41:417–426
・目的:マイボーム腺機能障害に関連するドライアイ疾患の治療のため、LipiFlow 治療とTearCare 治療を比較し、安全性と有効性を実証すること。
・対象と方法:135 人の被験者がベースライン時に 1 回の TearCare (TC) 治療 (n = 67) または 1 回の LipiFlow (LF) 治療 (n = 68) を受け、治療後 1 か月間経過観察した。涙液層の崩壊時間(BUT)、マイボーム腺機能、角膜および結膜の染色スコアをベースライン時、2 週間後、1 か月後に評価した。ドライアイの症状はOSDI(Ocular Surface Disease Index)を使用して評価された。
・結果:治療後 1 か月で、両方のグループがBUTとマイボーム腺分泌スコアの有意な改善 (P < 0.0001) を示した。
・ドライアイ症状のスコアも両グループで有意に減少していたが、TC グループより大きな改善を示しました。
・合併症はTC グループ3 人 (表在性点状角膜炎、霰粒腫、および眼瞼炎) 、LF グループの 4 人 (眼瞼炎、異物感2例、重度のドライアイ) で報告された。
・結論:1回のTearCare治療は、マイボーム腺機能不全患者のドライアイの所見と症状を大幅に軽減した。LipiFlow治療と同等の効果を得られた。(CH)
Kane formulaの予測精度の検討
徳田祥太他(宮田眼科)
IOL&RS 36(2): 251-257, 2022
・人工知能(AI)を用いたKane式の予測精度を調査した。
・356眼を対照として検討した結果、屈折誤差はKane式0.05±0.35D、Hill式0.05±0.37、Barrett式 0.08±0.37、Haigis式 -0.02±0.40、SRK/T式 0.02±0.35であった。
・屈折誤差の絶対値は順に、0.26±0.23、0.29±0.23、0.30±0.23、0.30±0.26、0.26±0.23で、Kane式はBarrett式と比べて有意に小さかった(p=0.004)。
・屈折誤差±0.25D以内の割合は、Kane式がHill、Barrett、Haigisより有意に良好であった(p=0.022, p<0.001, p=0.009)。
・今後、生体計測装置への搭載が期待される。(TY)
松岡他(大阪): 日眼 125(12): 1099-1103, 2021
・初診時に原発閉塞隅角症疑い(PACS)あるいは原発閉塞隅角症(PAC)と診断した65歳未満(50.6±6.1歳)の11例22眼で前房深度(ACD)を1549±762日間(601~2660日)検討した。
・ACDは初診時2.035±0.228から1.902±0.174に有意に減少した(p=0.049)。
・平均ACD減少速度は-0.289mm/年であった。
・経過中にPACSからPACに移行したのは7例10眼、緑内障発作を発症した例は1例2眼であった。(TY)
増田有寿 他(川崎医大)
臨眼75(10);1378-1384,2021
・目的:角膜内皮移植術(DSAEK)後の移植片接着不良になった症例に対しROCK 阻害薬である0.4%リパスジル点眼剤を2回/日点眼した。その後、外科的追加処置なしで良好な移植片接着となった症例2例の検討。
・症例1: 65歳女性、両眼フックス角膜内皮ジストロフィ+落屑緑内障+白内障。
・左眼白内障手術時、後嚢破損+眼内レンズ縫着術施行。その後、水疱性角膜症(BK)を発症した。角膜内皮細胞密度(ECD)測定不能、左視力0.15(0.2)。
・左眼DSAEK施行、手術3時間後の診察で、空気瞳孔ブロックを認めたため、25G針で空気を抜去した。術後3日目で前房内空気が消失、移植片接着不全を認めたため、リパスジル点眼2回/日を開始した。点眼開始36時間後、移植片は再接着した。ECD 2400 cell/mm2、左視力0.3(0.6)。
・症例2: 75歳男性,右眼落屑緑内障に対し、白内障手術、LOT、LEC、緑内障インプラント挿入、抜去など複数回の手術を施行。その後、右眼ECD減少しBKを発症した。
・ECD 測定不能、左視力指数弁(n.c.)。右眼DSAEK施行、術後数日は経過良好であったが、術後11日目に移植片不全を認めた。前房内に空気再注入や10 % SF6ガス注入を行なったが再接着しなかった。術後1ヶ月目からリパスジル点眼2回/日を開始。点眼開始後1ヶ月で移植片再接着を認めた。ECD 897 cell/mm2、左視力0.04(n.c.)。
・2例ともリパスジル点眼によると考えられる副作用はなかった。
・考察:ROCK阻害薬は、角膜内皮細胞の増殖能だけでなく遊走能を亢進させるという報告がある。リパスジルを投与することにより,遊走能が亢進し移植片の内皮細胞脱落部を被覆し、それによって角膜内皮細胞のバリア機能およびポンプ機能が改善したことにより移植片が再接着したと推察する。自然経過で再接着した可能性も否定はできないが、ROCK阻害薬は角膜内皮移植術後の移植片接着不良に対し有用である可能性がある。(CH)
Risk factors for failure of resolving optic disc pit maculopathy after primary vitrectomy without laser photocoagulation.
Sano M et al(杏林大)
Jpn J Ophthalmol 65(6): 786-796, 2021
・視神経乳頭ピット(ODP)黄斑症に対して、視神経乳頭縁に光凝固治療を行なわず、硝子体手術だけを行った連続35例のうち、黄斑剥離が消失しなかった症例について、その要因を検討した。
・経過観察期間は平均58ヶ月(12-193ヶ月)である。
・35例中31眼は、約1年の経過観察で黄斑部の剥離が完全消失した。
・残りの4眼は追加治療を行った。
・最初の硝子体手術後に網膜剥離が消失しなかった要因は網膜剥離が視神経乳頭縁と繋がっていた場合(p<0.001)と、術前に頭痛があった場合(p=0.03)であった。
・通常は網膜分離であるが、視神経乳頭縁と網膜剥離が連続した症例では、ODP腔からの液が網膜下腔へ流入している。
・頭痛のあった8例中5例は網膜剥離がODPと連続していた。
・追加治療が必要であった4例の内、3例は視神経乳頭縁への光凝固が有効であった。
・ガス注入も有効である(TY)
三村治、木村亜紀子、岡本真奈、五味文、仲村真一(兵庫医大)
眼科 2021 : 63(5) 465-471
【目的】
・短波長光のカット率の異なる2種の遮光レンズ眼鏡装用で、羞明が改善するか、またカット率の差で羞明の改善率に差がみられるかを検討
【対象および方法】
・羞明を訴える眼瞼痙攣の初診患者20例、A型ボツリヌス毒素(BTX-A)治療中の再診患者12例
初診患者では2種類の遮光レンズをそれぞれ4週間(計8週間)、
再診患者では両者を適宜4週間装用
・装用前後および装用レンズ間の羞明の自覚をvisual analogue scale(VAS)で評価
・2種のレンズは視感透過率がほぼ同じ75%前後であるが、短波長光のカット率に差があるもの(YE:85%,PN:52%)を使用
【結果】
・VASは装用前76.0⇒装用後YEは39.3,PNは48.1、ともに有意に改善
・装用前を100%とした改善率;
初診:YE 45.5±33.4%、PN 34.6±41.8%
再診:YE 53.7±20.9%、PN 40.9±23.3%
全体:YE 48.6±29.2%、PN 37.2±34.9%
どの層でもYEが10%以上良好であったが有意差みられず
・初診群で2例(10%)がYE装用、1例(5%)がPN装用により羞明の著明な減少を認め、その後のBTX-A注射を希望せず
・再診群では全例BTX-A注射の継続を希望
【結論】
眼瞼痙攣患者ではその羞明の軽減に遮光レンズは有効で、特に短波長光のカット率の高いレンズが望ましい。また患者総数の1割以上で遮光レンズのみで満足し、BTX-A治療を回避できる可能性がある。(MK)
Impact of habitual swimming on the success of lacrimal surgery
Mimura M, Sato Y, Fujita Y, Oku H, Sato B, Ikeda T(大阪医大)
Japanese Journal of Ophthalmology 2021;65, 849–854
DOI https://doi.org/10.1007/s10384-021-00865-1
【目的】
水泳に関連する因子が水泳選手の涙道にどのような影響を与えるかを明らかにする
【方法】
・流涙が続く患者574例
・プールの利用状況(頻度、ゴーグルの着用、プールでの活動の種類(水泳と腰まで浸かった歩行など))について質問票で調査
・解剖学的な涙道閉塞を有する20歳以上のスイマー全員が外科的再建術を受けた
・多変量ロジスティック回帰分析により、術後12か月時点の手術成功率に関連する因子を検索
水泳の有無、プール使用頻度、プールの水への結膜接触量(ゴーグル使用の有無、腰より深く水に浸かるか)
【結果】
・解剖学的な涙道閉塞を有する患者のうち、6.4%が習慣的なスイマーであった
・鼻涙管閉塞は、非水泳者と比較してスイマーに多く見られた(89.1%/66.7%、P = 0.025)
・解剖学的な鼻涙管閉塞を有するスイマーの涙道手術の成功率(60.6%)は、非水泳者(83.3%)よりも低かった(P=0.048)
・ROC曲線を用いると、手術の失敗を予測するための頻度の閾値は4日/週
・高頻度スイマー(26.7%)では低頻度スイマー(88.9%)に比べ有意に手術成功率が低かった(P = 0.037)
・プールの水に対する眼表面接触の高低に統計的な差はみられず(71.4%/57.7%、P = 0.56)
【結論】
水泳の習慣がある人は、涙道障害のリスクが高く、涙液手術の成功率を低下させる。(MK)
Efficacy and safety of 0.01% atropine for prevention of childhood myopia in a 2-year randomized placebo-controlled study.
Hieda O et al(京大他)
Jpn J Ophthalmol 65(3): 315-325, 2021
・日本人の小児で0.01%アトロピン点眼薬の効果と安全性を評価した。
・7大学病院において、6歳から12歳の小児に対して2重盲検で行った。
・屈折度は-1.0~-6.0D、乱視は1.5D以下、0.01%アトロピン群85名、プラセボ―群86名の計171名で行った。
・24か月後の屈折変化と眼軸長変化はAt群は-1.26D(95%CI=-1.35~-1.17)と0.63mm(0.59, 0.67)で、Ctrl群では-1.48D(-1.57, -1.39)と0.77mm(0.73, 0.81)であり、両群間の違いは屈折度では0.22D(0.99, 0.35 p<0.001)、眼軸長では-0.14mm(-0.20, -0.88 p<0.001)で有意差があった。(TY)
Efficient measurements for the dynamic range of human lightness perception.
Horiguchi H et al(慈恵医大)
Jpn J Ophthalmol 65(3): 432-438, 2021
・夜盲症や羞明は光受容のdynamic range(DRL)の影響ではないかとの仮説を立て、DRLを推定する測定方法を考案した。「知覚確率曲線」を推定する一方法である。
・55名の羞明患者と46名のCtrl者で単一背景のiPad tablet上の中央に白から黒のグラデーションバーを表示し、灰色がかった白/黒と、完全な白/黒の位置を指さし判定させた。
・白は454cd/m2、黒は0.45cd/m2。iPad tabletの単一背景の明度は3段階(14, 99, 281cd/m2)に設定した。ちなみに、GPの背景光は31.5 asb=10 cd/m2である。
・CtrlのDRLは20dB程度であったが、羞明患者のDRLは平均15dBで、有意差があった。
・背景が最明と最暗でのDRLの中央値の差、index of contextual susceptibility (iCS分節感受性指数)と名付けたが、これは羞明患者で有意に大きかった。
・網膜色素変性症のDRLは全ての明るさでCtrlより小さかったが、緑内障のiCSはCtrlより有意に大きかった(p<0.05)。(TY)
Treat-and-extend therapy with aflibercept for diabetic macular edema: a prospective clinical trial
Takao Hirano, et al. (信州大学)
Jpn J Ophthalmolo. 2021 May;65(3):354-362.
・糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対しての抗VEGF注射の頻度とコストが、重要な問題であると考える。優れた治療効果を維持しながら、抗VEGF注射と受診の回数を最小限に抑えるための治療法を開発する必要がある。
糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対してアフリベルセプト(Eylea)を使用し、最長の治療間隔を16週間に設定したT&E療法の有効性と安全性を調査する。
・最初のIAI (intravitreal aflibercept injection)後の16週間は導入期と見なし、その間は月1回連続5回投与した。最初のIAIの1週間後、ベースライン時のFA所見に従って、局所/グリッド光凝固術が実施した。その後、局所光凝固術は約4週間後に実施した。
・IAI再注射基準は(1)OCTの中心窩領域網膜厚(CST)が最低値から150 µmの増加、(2)OCTで新規または持続性の嚢胞性網膜変、網膜下液、持続的なびまん性浮腫がありCSTが約350µm以上の場合。患者は8週間隔でIAIを受け、再注射基準のいずれも満たさなかった場合、受診間隔は4週間刻みで8週間から16週間(最大)に延長された。
・31人31眼の患者が1年間のアフリベルセプトT&E療法を完了した。平均CSTはベースライン時501.9±109.4 µmから1年後172.0±137.2 µmに減少した(P < 0.001)。
・平均ETDRS BCVAは、ベースラインの60.4±15.4文字から64.6±に文字に改善した。
・治療間隔は、52週目の最終投与と前投与の間隔は38.7%(12/31)で8週間、16.1%(5/31)で12週間、45.2%(14/31)で16週間だった。平均IAI数は7.0±1.1回だった。
・視力の改善は少なかったが、最長の治療間隔を16週間に設定したT&Eアフリベルセプト療法はほとんどの患者で満足のいく結果で、来院と治療の数を減らす可能性がある。(CH)
Characteristics and surgical outcomes of rhegmatogenous retinal detachments that develop after intravitreal injections
Takayuki Saba, et al. (千葉大学)
Japanese Journal of Ophthalmology (2021) 65:492-496
・目的:抗VEGF硝子体内注射後に発生する裂孔原性網膜剥離(RRD)の頻度と特徴を決定する。
・対象と方法:2013 年から 2020 年の間に、加齢黄斑変性症 (AMD)、糖尿病性黄斑浮腫 (DME)、網膜静脈閉塞症 (RVO)、または近視性脈絡膜新生血管 (mCNV) のために硝子体内注射を受けた患者で、最後の注射から90日以内に発症したRRD症例のベースライン時の特性と手術結果を分析した。
・結果:合計 3040 人の患者が 28,190 回の硝子体内注射を受けた。 7例7眼がRRDを発症した(AMD 6例、DME 1例)。発生率は 4027 回に1回 (0.025%) だった。
・最後の注射からRRD 発症までの平均期間は 5.6 ± 3.6 週間。
・網膜裂孔は全て馬蹄形で、上象限5 眼 (71%)、下象限2 眼、全例に後部硝子体剥離を認めた。 RRD 発症前の平均注射回数は 14.1 回。硝子体手術 4 眼、強膜内陥術3 眼で治療された。初回成功率は 86%、最終再付着率は 100% だった。
・RRD発症前の平均 BCVA 0.41 ± 0.26 logMAR、 RRD手術前視力0.78±0.78 logMAR 、RRD術後 3 か月0.62±0.52 logMARに改善した。
・結論:RRD症例のうち、抗 VEGF 療法を開始する前に後部硝子体剥離が認められたのは29%だったが、RRD が発生した時は100% 認められた。
・硝子体内注射後、後部硝子体剥離の発生率が増加することが報告されているので、抗VEGF注射が硝子体剥離を引き起こし、それが網膜裂孔とRRDの発症につながったことを示唆している。
・RRD の発生の他の可能性として、大量の黄斑下出血を伴う一部の AMD 症例での眼内ガス注入、さらにAMD症例は眼軸が比較的長く、6眼のうち 5眼の眼軸長が 24.0 mm を超えていたためと考えられる。
・発症率は非常に低いが、抗VEGF硝子体内注射後にRRDが発生する可能性があるので定期的に検査する必要がある。(CH)
奥 拓明(バプテスト眼科クリニック)
日眼会誌125 : 22-29, 2021(1)
・PKP術後角膜感染症の発症率は0.2-4.9%、DSAEK術後層間感染症の発症率は0.92%と報告されている。層間部位以外のDSAEK術後感染症の検討やDSAEKとPKP術後角膜感染症の比較検討については報告がないため、角膜移植後角膜感染症発症症例について検討した。
・2007年8月から2018年9月までにバプテスト眼科クリニックで角膜移植術を施行し、1年以上の経過観察が可能であった症例を対象とした。 発症率、起炎菌(ヘルペスなどのウイルス感染を除く)、発症時期、発症部位、発症時の局所副腎皮質ステロイド使用状況、予後について比較検討した.
・DSAEK術後639眼(男性287眼,女性352眼,平均年齢7l.7±11.3歳,術後経過観察期間51.4±20.8か月)および PKP術後616眼(男性317眼、女性299眼,平均年齢63.6± 16.7歳、術後経過観察期間57.3±32.3か月)を対象とした。
・DSAEK術後角膜感染症発症率は11眼(1.7%)、PKP術後39眼 (6.3%)であり、 DSAEKのほうがPKPよりも有意に発症率が低かった(p<0.001)。
・DSAEKでは細菌1眼(グラム陽性桿菌),真菌8眼(Candida属4眼、酵母型真菌4眼),不検出2眼であり, PKPでは細菌11眼,真菌18眼(Candida属6眼、酵母型真菌12眼),不検出10眼であった。発症時期はDSAEKでは術後24.9 ± 25,4か月, PKPでは術後36.9 ± 34.8か月。
・発症部位はDSAEKでは上皮のみの4眼,上皮および実質5眼,実質の2眼、 PKPでは上皮のみの6眼,上皮および実質33眼であった。発症時の0.1% フルオロメトロンおよび0.1% ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼使用はDSAEKではそれぞれ4眼、7眼、 PKPでは18眼、 21眼であった。保存的加療による治癒後に2段階以上の視力低下を認めた症例はDSAEKで4眼(40.0%)、 PKPで19眼(51.4%)であった(p =0.39)。
PKP術後感染症の原疾患では格子状角膜ジストロフィが28眼中7眼(25%)と突出していた。これは、術後も上皮が脆弱のためと考えられた。
・DSAEKはPKPと比べ、術後感染症の発症は低かった。真菌感染が多いのは、角膜保存液内に抗真菌薬を含んでいないこと、保存液内で競合する細菌数が減少することにより真菌数が楠加することなどが考えられる。
DSAEK術後感染症は層間感染がよく知られているが、今回の検討では上皮部位での感染が多く、上皮欠損、上皮接着不良、
カルシウム沈着などを背景として感染症が発症する可能性が示唆された。(CH)
Long-Term Outcomes from an Intraoperative Bleb Needling Procedure Augmented with Continuous Infusion
Alexander S. Kim, et al.(USA)
Ophthalmology Glaucoma 4:244-250, 2021
・連続98名106眼に対して、レクトミー術後平均4.3年、平均眼圧20.7mmHgでニードリングを行い、最長5年(平均2.9年)フォローした成績
・手術室でBSS灌流しながらブレブより3mmの部位から25Gを用いて広範囲にブレブができるまでニードリング。同部位から5-FUもしくはMMCを30G鈍針で注入。必要なら結膜縫合。
・レクトミー手術時の目標眼圧の平均14.3mmHg
・追加緑内障手術を要したものは33眼 (30眼TLE,3眼Tube)
・術後1年:Quolified success rate 69.6%、IOP reduction 25.1%
・術後5年:Quolified success rate 52.2%、IOP reduction 44.3% 。Complete success rate 27.5%
・19眼は複数回実施
・不成功の要因は黒人であったが、手術からニードリングまでの期間はリスクファクターではなかった。(MM)