Efficacy of Topical Ivermectin 1% in the Treatment of Demodex Blepharitis
Young Choi,et al. (Korea)
Cornea: 2022 (41) Issue 4 p 427-434
・目的:ニキビダニ眼瞼炎(まつげダニ眼瞼炎)の治療において、眼瞼の清拭と睫毛に1% イベルメクチンクリーム塗布する治療を組み合わせて有効性を評価する。
・対象と方法:ニキビダニ眼瞼炎と診断された患者 102 例102 眼。
・4つの条件を全て満たした場合ニキビダニ眼瞼炎と診断した。
・1) 眼の不快感を軽減するために 1カ月以上点眼薬で治療したが、症状が持続している。
・2)かゆみや刺激など、眼瞼炎に関連する眼の不快感が存在。
・3) 眼瞼の剥離物、眼瞼の発赤/腫れ、および眼瞼の毛細血管拡張の3つの症状すべてが、両眼で軽度またはそれ以上であった場合。
・4) 各眼瞼から2本の睫毛を抜き取り、合計8本を顕微鏡で観察し、1本の睫毛に4匹以上のニキビダニが観察された場合
・イベルメクチン群 (n = 51) は1% イベルメクチンクリームを週1 回 15 分間まつげに塗布した。15 分後にクレンジングで慎重に拭き取った。塗布したときに、クリームが眼に入らないように指示された。対照群 (n = 51) は塗布しなかった。
・両グループで、tea tree oil を含む眼瞼の洗浄製品を使用して1日 1回清拭を行なった。
・症状アンケート スコア、オックスフォード染色スコア、眼瞼の剥離物、眼瞼の発赤/腫れ、および毛細血管拡張を評価した。
・結果:平均経過観察期間は、イベルメクチン群15.1 ± 9.7 週間 (範囲: 4 ~ 40 週間) 、対照群14.8 ± 8.6 週間。
・症状アンケートと眼瞼の剥離物は両グループとも有意に改善されたが、イベルメクチン群でより大きく改善した。
・オックスフォード着色スコア、眼瞼の発赤/腫れと毛細血管拡張は、イベルメクチングループでだけ有意に改善した。
・1% イベルメクチンクリームによる合併症は認められなかた。
・結論:1%イベルメクチンクリームの塗布と、毎日の眼瞼の清拭を併用することは、ニキビダニ眼瞼炎の自覚症状と客観的徴候を改善するのに、副作用なしでより効果的であることを示した。
・ニキビダニ眼瞼炎の効果的な治療法として処方できると考えられている。(CH)
Intrapapillary hemorrhage with adjacent periparillary subretinal hemorrhageの2例
高橋宏典ら 眼科臨床紀要 15(12), 822-825: 2022 (自治医大)
・1981年 渡辺ら:若年者で中等度あるいは軽度の近視眼で、乳頭から花冠状に広がる網膜前出血、乳頭に接した網膜化出血、硝子体出血を伴う症例を報告
・1989年 廣辻ら:近視性乳頭出血という呼称
・2004年 Kokameら:傾斜乳頭、近視眼、急性の乳頭浮腫などに起因して、乳頭部の出血に加え、乳頭周囲に網膜化出血が見られるIHAPSHという疾患概念を提唱
・2021年 長岡ら:本邦におけるIHAPSHのまとめを報告
・症例1 23歳男性 主訴:右飛蚊症
・s-5.25D:c-1.25DAx180、両眼とも傾斜乳頭、小乳頭(DM/DD=3.4)
・無治療で経過観察して10週後に消退
・症例2 13歳女児 主訴:左飛蚊症
・s-7.5D、傾斜乳頭、小乳頭(DM/DD=3.8)
・無治療で経過観察して、6週後に消退
・傾斜乳頭、小乳頭を呈する症例や、近視の進行過程の小児に見られる乳頭出血の原因としてIHAPSHを認識しておく
・乳頭出血の機序
・近視性乳頭出血の報告では、牽引コーヌス、被服コーヌスを基盤とした脈絡膜由来血管系からの出血、近視性乳頭浮腫に伴う出血、乳頭篩板前部から脈絡膜へ還流する細静脈のうっ滞による出血、近視性乳頭ですでに水平方向に牽引されている表在性網目状毛細血管、放射状乳頭前毛細血管が後部硝子体剥離による硝子体側への牽引で破綻性出血をきたしやすいことなどが推測。
・傾斜乳頭では、乳頭が斜め上方より眼球に入るため、血管が屈曲し循環障害をきたしやすいことが考えられている。
・その他後部硝子体剥離に伴う機序や硝子体乳頭間の牽引、視神経乳頭浮腫が出血の原因となると推測されている
・長岡らのまとめ:2004年以降 9例11眼
・年齢10-78歳、9例中8例が女性
・片眼性が7例、両眼性に2か月、2年の期間をおいて発症した報告あり
・傾斜乳頭や小乳頭といった乳頭形態変化が4例、高齢者を除き近視眼に多く見られている。
・出血消退までの期間は2週から6か月 視力予後はおおむね良好だが、高齢者ではIONやRAOを随伴した報告あり(MM)
Prevalence of Glaucoma and Its Systemic Risk Factors in a General Japanese Population: The Hisayama Study
Kohta Fujiwara et al. Transl Vis Sci Technol,2022 Nov 1;11(11):11.
・2017-2018年に久山町にて40歳以上の3405名(平均年齢64.6歳: 多治見スタディ58.4歳)を対象として、ステレオ眼底カメラとSS-OCTを用いて調査したpopulation-based, cross-sectional study
・結果:ステレオ眼底カメラでは検出できなかったがOCTで検出できた緑内障:22名
・緑内障の有病率は
全体で7.6%(95%CI:6.7-8.6) 比較 多治見スタディ 5%
POAG: 5.8%(5.0-6.6) 3.9%
PACG: 0.7%(0.5-1.1) 0.6%
PEG: 1.1%(0.7-1.4)
続発(PEG以外): 0.1%(0.01-0.2)
緑内障治療がされていたのは69名(26.6%) 7.9%
・リスクファクター
・POAG: 年齢(OR:1.48 /10y)、腎機能低下(eGFR)(OR:1.1 /10 mL/min/1.73 m2減少)、高眼圧(OR:1.06 /1 mmHg)、長眼軸(OR:1.44 /1mm)、薄いCCT(OR:1.09 /10μm)
・PACG: 年齢(OR:1.71 /10y)、女性(OR:3.08)、Diabetes(OR:2.74)
・PEG: 年齢(OR:2.99 /10y)Diabetes(OR:2.15)、薄いCCT(OR:1.14 /10μm)
・結論:多治見スタディの時よりも日本の高齢化が進み、有病率が約8%に増加していると考えられる。(多治見スタディと年齢・性別を調整するとほぼ同じ5%)。全身の因子としてeGFR(推算糸球体濾過量)、糖尿病がPACGとPEGも示唆された。(MM)
低加入度分節眼内レンズと単焦点眼内レンズの術後屈折値比較
江村純子他(東京女子医大)
眼臨紀 15(10): 649-652, 2022
・LENTIS Comfortの11例20眼と、単焦点IOLの8例11眼で、等価球面度数SEの自覚値と他覚値を1ヶ月目と3か月目で比較した。
・3か月目のLENTIS群は自覚値で-0.38±0.42D、他覚値で-0.63±0.49Dであり、有意差があった(p=0.017)。
・単焦点群での3か月目は自覚値で+0.02±0.45、他覚値で-0.11±0.52であり、有意差があったが(p=0.037)、その差はLENTIS群の方が大きい傾向があったが有意差はなかった(p=0.57)。
・LENTIS眼では他覚的なSEを参考にして視力測定をすると近視よりにでる可能性があり、注意が必要。(TY)
Implementation of the Corneal Sweep Test in the Diagnosis of Recurrent Corneal Erosion: A 2-Year Retrospective Study
Madeleine Eun-Ji Kim, et al. (US GA)
Cornea. 2022 Oct; 41(10): 1248–1254.
目的:標準的な診断方法と角膜スイープ テスト (CST) と呼ばれる新しい技術を使用して、再発性角膜びらんの発生率を評価する。
・対象と方法:以前に再発性角膜びらんと診断されたことのある 51 人58 眼。
・CSTは確認できる角膜病変がない患者に対して実施された。
・CSTのためにキム角膜スイーパー(Katena)と呼ばれる専用の器具が開発された。これは、角膜表面全体をさっとなでて接着の悪い上皮の領域を特定するために使用される。点眼麻酔薬をして、フルオレセイン色素で染色した後、キム角膜スイーパーで角膜表面に接線方向に弱い圧力をかる。 正常な角膜では涙液のためスイープ操作がスムーズで、角膜上皮に外傷を与えない。 しかし、接触の弱い上皮部分では、その下にある上皮基底膜から分離して局所的なひだ(潜在的な角膜びらん)を作成する。
・結果: 58 眼中 9眼は細隙灯顕微鏡検査で角膜びらんを確認できた。49眼で CST が必要だった。そのうちの 34眼はCSTでひだの形成(潜在的な角膜びらん)を認めた。
・原因は、白内障手術 (28 眼、48.2%)が最も多く、20眼は白内障手術後にのみ症状を発症し、すべて白内障手術の切開創の真上にびらんを認めた。
・対象として健康な角膜のコントロール40眼にCSTを行った。38眼 (95%)では異常を認めなかったが、2 眼 (5%) で約 1 mm のひだの形成(潜在的な角膜びらん)を認めた。
・結論:CSTは、細隙灯顕微鏡検査では角膜所見がない場合に角膜びらんを診断するのに役立つ新しく効果的な技術である。白内障手術は切開創部分が角膜びらんの原因となる可能性があるため、重要な危険因子だった。CST は 再発性角膜びらんや持続性眼痛症候群の患者に有用であると思われる。(CH)
ONSET-1 Phase 2b Randomized Trial to Evaluate the Safety and Efficacy of OC-01 (VareniclineSolution) Nasal Spray on Signs and Symptoms of Dry Eye Disease
David Wirta, et al, (US NJ)
Cornea 41(10): 1207-1216, October 2022.
・目的:ドライアイ疾患の徴候と症状に対する、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト点鼻スプレーである OC-01 (バレニクリン溶液) の安全性と有効性を評価する。
・対象と方法:医師がドライアイ疾患と診断しており以前に人工涙液を使用していた患者182人(平均年齢65.5歳)を無作為にコントロール、OC-01 0.006 mg、 OC-01 0.03 mg、および OC-01 0.06 mg に割り当て、1日2回噴霧した。
・28日間使用し、シルマー試験スコアの変化、角膜フルオレセイン染色の変化(角膜の 5 カ所(中央、上、下、鼻側、耳頭))と眼の乾燥スコアの変化、(0 は「不快感なし」〜100 は「最大の不快感」)を調査した。
・結果:コントロール (n = 43)、OC-01 0.006 mg (低用量; n = 47)、OC-01 0.03 (中用量; n = 48)、OC-01 0.06 mg (高用量; n = 44)だった。6 人 (3%) の患者が研究を中止した。
・28 日後、0.03 投与群または 0.06 mg投与群では、コントロールと比較してシルマー試験スコアの有意な改善を示した(P < 0.001、P < 0.001)。
・0.03 mg 投与群では、ベースライン時より角膜全体のフルオレセイン染色の変化 (P = 0.020)、鼻側角膜フルオレセイン染色 (P = 0.026)がコントロールと比較して有意に改善した。
・0.06 mg 投与群ではベースラインからの角膜フルオレセイン染色の変化に統計的に有意な差はなかった。
・0.03 mg 投与群は、コントロールと比較して 28 日目までに乾燥スコアが大幅に減少した (P = 0.021)。0.06 mg投与群は、コントロールに対して有意でない減少を示した。
・副作用は、くしゃみ (62%–84%) および咳 (9%–25%)を認めたが、一過性で軽度だった。
・0.006 mg投与群と比較して、0.03 投与群および 0.06 mg投与群では、より強い点鼻部位の刺激が発生した。
・結論:バレニクニンは副交感神経刺激薬で,鼻腔内の三叉神経を活性化させ,自然な涙液の生成を促進し,涙液層の恒常性を回復させる。
・OC-01 点鼻スプレーは、ドライアイ疾患の徴候と症状が大幅に改善され、副作用も少ないので、ドライアイの新しい治療の候補となる可能性がある。(CH)
ガス併用硝子体白内障同時手術に適した眼内レンズ
横田陽匡
あたらしい眼科 39(9): 1193-1199, 2022
・ニデック NS-60YG、HOYA XY1、参天 X-70で、裂孔原性網膜剥離に対する硝子体白内障同時手術の際に前房安定性を調べた。
・NS-60YGは有意にSF6ガス注入に伴うIOLの前方移動を抑制されていた。
・後方圧縮荷重を測定すると、NS-60YGがもっとも圧縮荷重が高く、ガス圧に対する固定性が良好で、前房内安定性が高いことが分かった。
・YP2.2(興和)、XCB00V(J&J)も圧縮荷重が高かった。(TY)
Diabetes Mellitus Type 1 has a Higher Impact on Corneal Endothelial Cell Density and Pachymetry than Diabetes Mellitus Type 2, Independent of Age
Cornea 41(8): 965-973, August 2022.
・目的:1 型糖尿病(T1DM)と2 型糖尿病患者(T2DM)、および非糖尿病患者(対象群)における角膜内皮細胞密度 (CED)と中心角膜厚(CCT)の違いを評価する。
・対象と方法:17の研究がメタ回帰に使用された。T1DM 367人、T2DM 2136人。
・結果:T1DMのCED は 2900 cells/mm2 (2712–3089 cells/mm2)で対象群よりも 193 cells/mm2 少なかった (95% CI: -254 ~ -132; P < 0.00001)。年間平均損失は 16 cells/mm2で、これは対象群と同様だった。細胞の損失は糖尿病の罹患期間と関連していなかった(P = 0.383)
・T1DM と CCT の間には有意な正の関連があった。 22.82 歳の時点で、T1DMではCCT 531 μm (95% CI: 524–537; P < 0.00001) であり、対象群よりも 24 μm 厚かった (95% CI: 15–33; P < 0.00001)。CCT の増加は年間 2 μm 。
・ T2DMのCEDは2386 cells/mm2 (2251–2520 cells/mm2)、対象群よりも 151 個/mm2 少なかった (P < 0.00001)。2 型糖尿病患者の推定 CCT が 554 μm (95% CI: 545–563) だった。T1DMで得られた結果とは異なり、細胞の損失は糖尿病の罹患期間と関連していた( -37 cells/mm2 95% CI: -45 -29; P < 0.00001)。 平均 CCT の増加は年間 2 μm (95% CI: 1.7–2.8; P < 0.00001)でT1DMと同様であった。
・結論:T1DM、T2DM共にCEDの減少とCCTの増加に関連していることを示した。 これらの差は、T2DMと対照群よりも T1DM 患者と対照群で大きかった。
・両方のグループで対照群と同様に加齢による CED の減少を示した。
・DMが角膜内皮の損傷に影響を与えることから、臨床的にさらなる注意が必要である。(CH)
Efficacy and Safety of the Long-Acting Diquafosol Ophthalmic Solution DE-089C in Patients with Dry Eye
Advances in Therapy 2022 Aug;39(8):3654-3667.
Yuichi Hori, et al. (東邦大学)
・目的:ドライアイ患者における 長時間作用型ジクアホソル点眼液(DE-089C)の有効性と安全性を評価する。
・対象と方法:(1) フルオレセイン角膜染色スコア≧1 (2)DEQSアンケートで乾燥スコア≥ 1 (3) シルマー試験 I の結果 ≤ 5 mm/5 分 (4) BUT ≤ 5 秒 全ての条件を満たしているドライアイの患者330 人をDE-089C点眼 またはプラセボ点眼液に無作為に割り当て(DE-089C 群166 人、プラセボ群164 人)、2 週間のウォッシュアウト後、1 日 3 回、4 週間使用した。
・ベースラインから 4 週目までのBUT の変化、シルマーテスト I の結果、フルオレセイン角膜染色スコア、ドライアイQOLアンケート(DEQS )のスコアで評価した。
・結果:DE-089C群での 4 週目のフルオレセイン角膜染色スコアとリサミングリーン染色スコアの改善は、プラセボ群よりも有意に大きかった。 (それぞれP < 0.0001)。
・DEQSアンケートの乾燥スコア、シルマーテストⅠでは有意差はなかった。
・DE-089C群では、試験開始直前まで従来のジクアホソル点眼液(DQS)を使用していた患者の89.4%が、「点眼薬の使用感はDQSよりもDE-089Cの方が優れている、または 2つの点眼液の間で同等である」と回答し、ヒアルロン酸点眼、レバミピド点眼、人工涙液点眼を使用した患者のうち、DE-089Cが「以前の点眼薬よりも優れている、または同等である」と回答した患者の割合は、80.0%、91.7%、69.2%だった。
・DE-089C群で(発生率1%以上)報告された副作用は、軽度の眼刺激感(3.6%)および眼脂(1.8%)だった。
・視力、前眼部検査、眼圧に関しては、両群でベースラインからの臨床的に有意な変化は認められなかった。
・結論: DE-089C の薬剤効果が DQS よりも長いのは、DE-089C の点眼液にポリビニルピロリドンを添加することにより達成されると考えられている。
・ポリビニルピロリドンは、そのポリマー構造に水を保持し、ムチンに親和性があると報告されている。
・ したがって、DE-089C の点眼後、ジクアホソルの薬理作用により患者から分泌された涙液とムチンは、点眼液中のポリビニルピロリドンと結合し、より長く滞留すると考えられる。
・ドライアイは長期の治療が必要な慢性疾患であり、点眼薬の使用感は重要である。この研究では多くの患者は以前使用していたドライアイ点眼より同等またはそれよりも優れていると報告した。
・DE-089C は、ドライアイ患者の治療アドヒアランスの改善に貢献する可能性があり、それがより良い治療効果につながると思われる。(CH)
新しい浸出型加齢黄斑変性の分類と用語
柳靖雄 眼科 64(7): 633-645, 2022
・加齢黄斑変性症の分類総説
Consensus Nomencature for Reporting Neovascutar Age-related Macular Degeneration Data.
Spaide RF, Jaffe GJ, Sarraf D et al. Ophthalmology 127(5): 616-636, 2019
Consensus on Neovascular Age-Rerated Macular Degeneration Nomenclature Study Group.(TY)
子島良平 他(宮田眼科病院)
あたらしい眼科39 (7) : 999-1004. 2022
・目的:細菌性眼瞼炎に対する抗菌薬の投与期間と症状,再発状況を評価し、細菌性眼険炎の治療プロトコールを検討する。
・対象と方法:2019年12月から2021年3月細菌性眼瞼炎と診断され、治療目的で1%アジスロマイシン(1% AZM)点眼液を投与した患者のうち、14日間の点眼期間内に1回以上受診した患者を対象とした。眼瞼炎を前部眼瞼炎(睫毛根部を中心とした部位の炎症)と後部眼瞼炎(マイボーム腺開口部周囲の炎症)に分類し、初診時、点眼7日後、14日後、点眼終了1カ月後の転帰、点眼期間、再発率、症状スコア、治癒に影響を与える因子を検討した。
・結果:対象は46例46眼(男性10 例、女性36例)、平均年齢72.2歳。治癒率は41.3%、治癒・改善率は93.5%、点眼期間は11.3日、点眼終了1カ月後の再発率は6.5%であった。治癒に影響を与える因子は病型で、後部眼瞼炎が前部眼瞼炎よりも治癒しやすかった(オッズ比38.462. 95%信頼区間6.944-200.000, p<0.0001)。
・点眼14日後までの治癒率は、前部眼瞼炎で11.1 % (3/27)、後部眼瞼炎で84.2%(16/19)、治癒・改善率はそれぞれ88.9% (24/27). 100 %(19/19)だった。自覚症状および他覚的所見のスコアはすべての項目で、前部眼瞼炎では点眼14日後以降、後部眼瞼炎では点眼7日後以降で初診時から有意に減少した。
・副作用は6眼で認められ、べたつく2件、霧視、異物感、乾燥感、刺激感がそれぞれ1件。
・結論: 前部眼瞼炎より後部眼瞼炎の治癒率が高かった理由として、主成分であるAZMの抗菌作用や抗炎症作用、マイボーム腺上皮細胞への直接作用などさまざまな機序が関与したと推測される。1% AZM点眼液を使用すると90%以上の症例で14日以内に治癒もしくは改善するため、最長でも14日間で投与を終了することが重要である。(CH)
Electronically Monitored Corticosteroid Eye Drop Adherence after Trabeculectomy Compared to Surgical Success
Elyse J. M. et al. J of Glaucoma 5(4), 379-387: 2022
・90名90眼のレクトミーまたはチューブシャント手術を受けたPOAGまたはPACG患者をプロスペクティブに最長一年追跡調査 術者はA〜E
・ステロイド点眼瓶に点眼監視装置(Kali Drop device)を取り付け、術後の点眼アドヒアランスをリアルタイムで記録した。
・点眼瓶を取り付けるワイヤレス3G対応のプラスチックボトルで、ボトルの倒立状態と同時の圧力を測定し、日付と時刻をサーバーにリアルタイムで送信
・アウトカム:術後最初の5週間の点眼アドヒアランスと術後6週、6か月、1年での目標眼圧(8-21mmHg)達成状況、6M,1年目のブレブ形態
・術後点眼指示:
・術後1W:prednisolone acetate 1% 2時間毎
・(術者の判断で13名は術後の眼圧下降薬の使用および3時間毎のステロイド点眼を2週間目に挿入。)
・その後4回/日で1W、3回/日→2回/日→1回/日→中止(5週 or 6週目)
・最初に48時間以上点眼記録がない場合はディバイスが作動しているかの確認の電話を行った。電話を受けた被験者は8/28名で、その他の患者には点眼状況にかかわらず電話をかけなかった。
・結果
・90%のTLE患者は0.4mg/ml MMCの注射
・6%は患者家族が点眼
・平均2.2回の手術既往
・点眼遵守率(実際の点眼回数÷指示点眼回数)
・全体 89.7±13.7%
・2時間毎の期間:80.9%±15.8%
・3時間毎の期間(13名):68.9%±14.4% この期間は他の期間と比べて遵守率が悪い
・4回→3回→2回→1回の期間:95%、95%、100%、100%
・平均総投与mg 6.48±1.77mg(理論的には7.22±1.87mg、0.90±0.11倍 P<0.0001)
・目標眼圧達成率 90名中
・6W:87%
・90名のうち6Mもしくは1Yで検査できたのは73眼 (COVID-19の影響)
・そのうち80.8%(59/73眼)で目標眼圧達成、 7眼は1剤以上の眼圧下降薬使用
・7眼は追加手術
・5眼TLE後 リークの修正2、低眼圧の修正2、ブレブ不快感1
・ 2眼Tube後(12眼中) 眼圧上昇のため再手術
・高齢者、視野が悪い:点眼遵守率が悪い
・術者A:遵守率が高い 92% vs 84%(B〜E)
・術者Aは3時間ごとの点眼期間(2週目)追加はなかった。
・点眼遵守率の高い目は6M/1Yでの再手術なしで目標眼圧を達成する可能性が高かった。(MM)
TearCare for the Treatment of Meibomian Gland Dysfunction in Adult Patients With Dry Eye Disease: A Masked Randomized Controlled Trial
Preeya K Gupta, et al. (NC USA)
Cornea 2022(4);41:417–426
・目的:マイボーム腺機能障害に関連するドライアイ疾患の治療のため、LipiFlow 治療とTearCare 治療を比較し、安全性と有効性を実証すること。
・対象と方法:135 人の被験者がベースライン時に 1 回の TearCare (TC) 治療 (n = 67) または 1 回の LipiFlow (LF) 治療 (n = 68) を受け、治療後 1 か月間経過観察した。涙液層の崩壊時間(BUT)、マイボーム腺機能、角膜および結膜の染色スコアをベースライン時、2 週間後、1 か月後に評価した。ドライアイの症状はOSDI(Ocular Surface Disease Index)を使用して評価された。
・結果:治療後 1 か月で、両方のグループがBUTとマイボーム腺分泌スコアの有意な改善 (P < 0.0001) を示した。
・ドライアイ症状のスコアも両グループで有意に減少していたが、TC グループより大きな改善を示しました。
・合併症はTC グループ3 人 (表在性点状角膜炎、霰粒腫、および眼瞼炎) 、LF グループの 4 人 (眼瞼炎、異物感2例、重度のドライアイ) で報告された。
・結論:1回のTearCare治療は、マイボーム腺機能不全患者のドライアイの所見と症状を大幅に軽減した。LipiFlow治療と同等の効果を得られた。(CH)
Kane formulaの予測精度の検討
徳田祥太他(宮田眼科)
IOL&RS 36(2): 251-257, 2022
・人工知能(AI)を用いたKane式の予測精度を調査した。
・356眼を対照として検討した結果、屈折誤差はKane式0.05±0.35D、Hill式0.05±0.37、Barrett式 0.08±0.37、Haigis式 -0.02±0.40、SRK/T式 0.02±0.35であった。
・屈折誤差の絶対値は順に、0.26±0.23、0.29±0.23、0.30±0.23、0.30±0.26、0.26±0.23で、Kane式はBarrett式と比べて有意に小さかった(p=0.004)。
・屈折誤差±0.25D以内の割合は、Kane式がHill、Barrett、Haigisより有意に良好であった(p=0.022, p<0.001, p=0.009)。
・今後、生体計測装置への搭載が期待される。(TY)
松岡他(大阪): 日眼 125(12): 1099-1103, 2021
・初診時に原発閉塞隅角症疑い(PACS)あるいは原発閉塞隅角症(PAC)と診断した65歳未満(50.6±6.1歳)の11例22眼で前房深度(ACD)を1549±762日間(601~2660日)検討した。
・ACDは初診時2.035±0.228から1.902±0.174に有意に減少した(p=0.049)。
・平均ACD減少速度は-0.289mm/年であった。
・経過中にPACSからPACに移行したのは7例10眼、緑内障発作を発症した例は1例2眼であった。(TY)
増田有寿 他(川崎医大)
臨眼75(10);1378-1384,2021
・目的:角膜内皮移植術(DSAEK)後の移植片接着不良になった症例に対しROCK 阻害薬である0.4%リパスジル点眼剤を2回/日点眼した。その後、外科的追加処置なしで良好な移植片接着となった症例2例の検討。
・症例1: 65歳女性、両眼フックス角膜内皮ジストロフィ+落屑緑内障+白内障。
・左眼白内障手術時、後嚢破損+眼内レンズ縫着術施行。その後、水疱性角膜症(BK)を発症した。角膜内皮細胞密度(ECD)測定不能、左視力0.15(0.2)。
・左眼DSAEK施行、手術3時間後の診察で、空気瞳孔ブロックを認めたため、25G針で空気を抜去した。術後3日目で前房内空気が消失、移植片接着不全を認めたため、リパスジル点眼2回/日を開始した。点眼開始36時間後、移植片は再接着した。ECD 2400 cell/mm2、左視力0.3(0.6)。
・症例2: 75歳男性,右眼落屑緑内障に対し、白内障手術、LOT、LEC、緑内障インプラント挿入、抜去など複数回の手術を施行。その後、右眼ECD減少しBKを発症した。
・ECD 測定不能、左視力指数弁(n.c.)。右眼DSAEK施行、術後数日は経過良好であったが、術後11日目に移植片不全を認めた。前房内に空気再注入や10 % SF6ガス注入を行なったが再接着しなかった。術後1ヶ月目からリパスジル点眼2回/日を開始。点眼開始後1ヶ月で移植片再接着を認めた。ECD 897 cell/mm2、左視力0.04(n.c.)。
・2例ともリパスジル点眼によると考えられる副作用はなかった。
・考察:ROCK阻害薬は、角膜内皮細胞の増殖能だけでなく遊走能を亢進させるという報告がある。リパスジルを投与することにより,遊走能が亢進し移植片の内皮細胞脱落部を被覆し、それによって角膜内皮細胞のバリア機能およびポンプ機能が改善したことにより移植片が再接着したと推察する。自然経過で再接着した可能性も否定はできないが、ROCK阻害薬は角膜内皮移植術後の移植片接着不良に対し有用である可能性がある。(CH)
Risk factors for failure of resolving optic disc pit maculopathy after primary vitrectomy without laser photocoagulation.
Sano M et al(杏林大)
Jpn J Ophthalmol 65(6): 786-796, 2021
・視神経乳頭ピット(ODP)黄斑症に対して、視神経乳頭縁に光凝固治療を行なわず、硝子体手術だけを行った連続35例のうち、黄斑剥離が消失しなかった症例について、その要因を検討した。
・経過観察期間は平均58ヶ月(12-193ヶ月)である。
・35例中31眼は、約1年の経過観察で黄斑部の剥離が完全消失した。
・残りの4眼は追加治療を行った。
・最初の硝子体手術後に網膜剥離が消失しなかった要因は網膜剥離が視神経乳頭縁と繋がっていた場合(p<0.001)と、術前に頭痛があった場合(p=0.03)であった。
・通常は網膜分離であるが、視神経乳頭縁と網膜剥離が連続した症例では、ODP腔からの液が網膜下腔へ流入している。
・頭痛のあった8例中5例は網膜剥離がODPと連続していた。
・追加治療が必要であった4例の内、3例は視神経乳頭縁への光凝固が有効であった。
・ガス注入も有効である(TY)
三村治、木村亜紀子、岡本真奈、五味文、仲村真一(兵庫医大)
眼科 2021 : 63(5) 465-471
【目的】
・短波長光のカット率の異なる2種の遮光レンズ眼鏡装用で、羞明が改善するか、またカット率の差で羞明の改善率に差がみられるかを検討
【対象および方法】
・羞明を訴える眼瞼痙攣の初診患者20例、A型ボツリヌス毒素(BTX-A)治療中の再診患者12例
初診患者では2種類の遮光レンズをそれぞれ4週間(計8週間)、
再診患者では両者を適宜4週間装用
・装用前後および装用レンズ間の羞明の自覚をvisual analogue scale(VAS)で評価
・2種のレンズは視感透過率がほぼ同じ75%前後であるが、短波長光のカット率に差があるもの(YE:85%,PN:52%)を使用
【結果】
・VASは装用前76.0⇒装用後YEは39.3,PNは48.1、ともに有意に改善
・装用前を100%とした改善率;
初診:YE 45.5±33.4%、PN 34.6±41.8%
再診:YE 53.7±20.9%、PN 40.9±23.3%
全体:YE 48.6±29.2%、PN 37.2±34.9%
どの層でもYEが10%以上良好であったが有意差みられず
・初診群で2例(10%)がYE装用、1例(5%)がPN装用により羞明の著明な減少を認め、その後のBTX-A注射を希望せず
・再診群では全例BTX-A注射の継続を希望
【結論】
眼瞼痙攣患者ではその羞明の軽減に遮光レンズは有効で、特に短波長光のカット率の高いレンズが望ましい。また患者総数の1割以上で遮光レンズのみで満足し、BTX-A治療を回避できる可能性がある。(MK)
Impact of habitual swimming on the success of lacrimal surgery
Mimura M, Sato Y, Fujita Y, Oku H, Sato B, Ikeda T(大阪医大)
Japanese Journal of Ophthalmology 2021;65, 849–854
DOI https://doi.org/10.1007/s10384-021-00865-1
【目的】
水泳に関連する因子が水泳選手の涙道にどのような影響を与えるかを明らかにする
【方法】
・流涙が続く患者574例
・プールの利用状況(頻度、ゴーグルの着用、プールでの活動の種類(水泳と腰まで浸かった歩行など))について質問票で調査
・解剖学的な涙道閉塞を有する20歳以上のスイマー全員が外科的再建術を受けた
・多変量ロジスティック回帰分析により、術後12か月時点の手術成功率に関連する因子を検索
水泳の有無、プール使用頻度、プールの水への結膜接触量(ゴーグル使用の有無、腰より深く水に浸かるか)
【結果】
・解剖学的な涙道閉塞を有する患者のうち、6.4%が習慣的なスイマーであった
・鼻涙管閉塞は、非水泳者と比較してスイマーに多く見られた(89.1%/66.7%、P = 0.025)
・解剖学的な鼻涙管閉塞を有するスイマーの涙道手術の成功率(60.6%)は、非水泳者(83.3%)よりも低かった(P=0.048)
・ROC曲線を用いると、手術の失敗を予測するための頻度の閾値は4日/週
・高頻度スイマー(26.7%)では低頻度スイマー(88.9%)に比べ有意に手術成功率が低かった(P = 0.037)
・プールの水に対する眼表面接触の高低に統計的な差はみられず(71.4%/57.7%、P = 0.56)
【結論】
水泳の習慣がある人は、涙道障害のリスクが高く、涙液手術の成功率を低下させる。(MK)
Efficacy and safety of 0.01% atropine for prevention of childhood myopia in a 2-year randomized placebo-controlled study.
Hieda O et al(京大他)
Jpn J Ophthalmol 65(3): 315-325, 2021
・日本人の小児で0.01%アトロピン点眼薬の効果と安全性を評価した。
・7大学病院において、6歳から12歳の小児に対して2重盲検で行った。
・屈折度は-1.0~-6.0D、乱視は1.5D以下、0.01%アトロピン群85名、プラセボ―群86名の計171名で行った。
・24か月後の屈折変化と眼軸長変化はAt群は-1.26D(95%CI=-1.35~-1.17)と0.63mm(0.59, 0.67)で、Ctrl群では-1.48D(-1.57, -1.39)と0.77mm(0.73, 0.81)であり、両群間の違いは屈折度では0.22D(0.99, 0.35 p<0.001)、眼軸長では-0.14mm(-0.20, -0.88 p<0.001)で有意差があった。(TY)