Acute Intraocular Pressure Responses to Reading: The Influence of Body Position
Jesus Vera et al (Spain)
J glaucoma 29(7):572-580, 2020
スマートフォンを用いた読書において、座位と臥位で眼圧変動が異なるか、また性別によって変化があるか比較検討
24-72時間空けた2日間の同時刻(±1時間)に、座位または仰臥位で読書を行い、タスク前、5、15、25分後、タスク終了5分後にアイケア眼圧計でIOP測定。
環境は前述のHaらの論文と同じ角膜面で100lx
スマートフォンを30cmの距離にセットし、母国語(スペイン語)でテキスト文字を読む。
タスク開始前に眠気のスケーリング、終了後に拾うレベルのスケーリングを実施
5、15、25分の眼圧はベースラインやタスク終了5分後よりも増加
女性の方が男性よりもIOPが高い傾向
眼圧変動を抑えたい患者では仰臥位での読書は避けた方が良い。(MM)
Effects of cataract surgery on symptoms and findings of dry eye in subjects with and without preexisting dry eye
Mikiko Shimabukuro, et al. (大阪大学)
Japanese Journal of Ophthalmology (2020)(6) 64:429-436
目的:白内障手術後のドライアイの有病率は8%〜70%で、顕微鏡の使用による光曝露、消毒剤の細胞毒性、角膜知覚の低下などの潜在的な原因因子がある。既存のドライアイがある場合とない場合の白内障手術後のドライアイの症状と所見を比較した。
対象と方法:白内障手術を受けた67眼。ドライアイの治療を受けている症例はなかった。
1週間、1か月、および3ヶ月の時点で、症状スコア、遠見矯正視力(CDVA)、涙液層崩壊時間(BUT)、涙液層ブレークアップパターン(BUP)、および眼表面フルオレセイン染色スコアを評価した。
結果:白内障手術を受けた67眼のうち、既存のドライアイがある症例(グループD)48眼、既存のドライアイなし(グループN)19眼だった。
CDVAは両方のグループで手術後に改善された(P <0.001)。
ドライアイ症状スコアは、グループDでは、自覚症状は手術前よりも術後3回のすべての受診時で有意に低かったが(P <0.001)、グループNでは変化は見られなかった。これは、術後のステロイド点眼薬と非ステロイド性抗炎症点眼薬(NSAID)の使用によりドライアイに伴う異物感と痛みを抑制されたためと考えられる。
BUTはN群では術後1か月で有意に短縮したが、グループDでは術前と比較して術後に有意な変化は見られなかった(P = .006)。
BUP分類は、術前は両群でランダムブレークパターンが多かった。(全体90%、グループD85%、グループN100%)術後、グループNには有意な変化はなかった(P =0.41 )。グループDでは術後1週間から3か月までスポットブレークパターンが大幅に増加した(0眼から6眼; P = 0.01)。
眼表面フルオレセイン染色スコアは、グループN(P = 0.01)の術後1か月で有意に増加したが、グループDでは有意な変化は見られなかった。
結論:70%が白内障手術を受ける前にドライアイを発症していたことがわかった。白内障手術は涙液膜の安定性と眼球表面に影響を与える。一部の患者では、ドライアイが存在していなくても、眼の表面の水濡れ性が一時的に不安定になった。(CH)
福岡佐知子他(多根記念)
IOL&RS 34(3): 467-474, 2020
・DIカートリッジ(HOYA)内腔に福岡氏IOL摘出攝子(はんだや)を通して、攝子を前房内に挿入し、IOL光学部を把持し、カートリッジ内に引き込んで摘出する。
・切開創は3.2mm以上、粘弾物質は常温、カートリッジに粘弾物質を充填、カートリッジ下先端に切り込みを入れる。関連:IOL&RS 34(4):622-627,2020(TY)
Features of neovascularization in pachychoroid neovasculopathy compared with type 1 neovascular age-related macular degeneration on optical coherence tomography angiography.
Arf, S., Sayman Muslubas, I., Hocaoglu, M. et al. (Turkey)
Jpn J Ophthalmol 64(3): 257–264 (2020
【目的】
光干渉断層血管造影(OCTA)を用いて、パキコロイド新生血管症(PNV)と1型血管新生加齢黄斑変性(nAMD)の新生血管膜の特徴を比較
【デザイン】
レトロスペクティブ研究
【対象と方法】
PNVと診断された34の治療未実施眼と、1型nAMDと診断された36の治療未実施眼を評価
新生血管膜(CNV)の形態学的パターンを分類し、AngioVue (Optovue) OCTAのen-face画像を用いて病変の大きさと流路面積を算出
【結果】
年齢(P=0.001)、ベースラインの最良矯正視力(P=0.005)、ベースラインの脈絡膜下層厚(P<0.001)において、群間で有意差がみられた
しかし、膜の形態(P=0.86)、病変の大きさ(P=0.80)、flow area(P=0.96)には統計学的に有意な差は認められなかった
OCTAで検出できたすべてのCNVは、インドシアニングリーン血管造影(ICGA)でも検出できた
しかし,ICGA画像でCNVを確認できた一部(PNVで11.8%,nAMDで16.7%)では、OCTAではCNVを確認できなかった
【結論】
PNVは若い患者や脈絡膜が厚い患者で見られるが、形態学的特徴や血管密度の点では、OCTAで検出された膜はnAMDのそれと変わらない
血管造影は、特に治療を受けていない患者では、(浸出液や出血によるブロックでOCTA信号が散乱する場合があり)未だCNVを同定するためのgold standardである(MK)
鄭暁東、古川雅世、五藤智子、山田寛子、鎌尾知行、白石敦(愛媛大)
あたらしい眼科 2020 : 37(1) 104-108
【目的】
・Humphrey自動視野計に内蔵されているエスターマン両眼開放視野検査によって術後の視野改善を予測できるかどうかを検討
【対象および方法】
・両側,退行性眼瞼下垂の症例44例(男性25例,女性19例、平均年齢76.5±7.8歳)
・全例に挙筋短縮術を施行
・術前の自然開瞼、シミュレーションのためのテーピング開瞼、および術後1カ月の計3回、エスターマン両眼開放視野検査を行い、各時点におけるエスターマンスコアを比較検討
・スコアに影響する因子について検討
【結果】
・全症例で,術中・術後の合併症なし
・MRD1の平均は、術前1.36±1.38mm,術後3.02±1.31mmで有意に改善(p=0.001)
・術前の自然開瞼、テーピング開瞼および術後1カ月のエスターマンスコアは、それぞれ85.3±12.1,90.5±9.8および92.5±8.4で、術前自然開瞼よりテーピング開瞼および術後1カ月では有意に高かった(p=0.032,p=0.001).
・テーピング開瞼と術後1カ月のスコア間には有意差なし(p=0.212)
・術前エスターマンスコアは年齢と有意な負の相関(r=-0.3404,p=0.027)、術前MRD1と有意な正の相関(r=0.4766,p=0.001)を認め、・術後スコアの改善率は術前スコア(r=-0.683,p<0.001)および挙筋機能(r=-0.3899,p=0.023)と有意な負の相関を認めた
【結論】
・エスターマン両眼開放視野検査は,眼瞼下垂術後の視野改善効果を定量的に予測しうる簡便な方法と思われた
【ポイント】
・図4:テーピング開瞼によるシミュレーション;40.9%は術後と一致、47.7%は低評価
→術前テーピング開瞼によるエスターマンスコアの改善を認めた症例には、積極的に手術を勧めることができると考えられる(MK)
Detection of glaucoma and other vision-threatening ocular diseases in the population recruited at specific health checkups in Japan.
Yamada M, Hiratsuka Y Nakano T et al(Jpn): Clin Epidemiol 12: 1381-1388, 2020
・3つの自治体の16眼科施設で、2017/6~12月に、特定健診時に眼科検査を行なって緑内障有病率を調査した。
・対象者は1360名、年齢63.7±8.7歳(40-74歳)である。
・緑内障は168名(12.4%)、前視野緑内障は33名(2.4%)、症状のある白内障は77名(5.7%)、黄斑前膜39名(2.9%)などであった。
・緑内障のうち81.0%がNTG、12.5%がPOAGであり、年齢とともに有病率は高くなり、また、女性よりも男性の有病率が高かった。
・緑内障168名のなかで、既に診断を受けていた人は37名(22.0%)、新規に見つかった人は131名(78.0%)であった。
Incidence of endophthalmitis after intravitreal injection of an anti-VEGF agent with or without topical antibiotics.
Morioka, M., Takamura, Y., Nagai, K. et al. (福井大)
Sci Rep 10, 22122 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-79377-w
抗VEGF薬の硝子体注射(IVI)を受けた患者の記録をレトロスペクティブに分析
多施設共同研究(18施設)
ほとんどの施設でマスク、滅菌手袋、ドレープを使用
147,440眼、眼内炎の発生率は0.007%であった:
抗菌薬不使用で0.005%、
注射前のみ抗菌薬投与で0.009%、
注射後のみ抗菌薬投与で0.012%、
注射前後に抗菌薬投与で0.005%であった
4群間に統計学的有意差なし(カイ二乗検定、p=0.57)。
眼内炎を発症した10眼のうち9眼は局所抗生物質の投与を受けていた
感染眼はすべてプレフィルドシリンジではないアフリベルセプトによるIVIであった
複数回のIVIを受けた4例では、原因菌の検出から使用した抗生物質に対する耐性あり
【結論】この大規模な集団から得られたデータは、抗生物質の投与の有無にかかわらず、抗生物質の予防投与はIVI後の眼内炎の発生率を減少させないことを示唆している。(MK)
依藤 彰記、岡本 真奈、 粕本 愉美、五味 文(兵庫医大)
眼科 2019: 61 (13) 1527-1533
・ブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガンⓇ,以下BT)の主な副作用として結膜充血,アレルギー性結膜炎などがあるが,角膜炎の報告は少ない
・BT使用の経過中に発症した角膜実質炎3例の報告
【症例1】62歳女性。4年前から両眼にBTならびに緑内障治療薬2剤を使用。右眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存し,矯正視力0.8と低下した。抗ヘルペス薬は中止したが再燃はない。
【症例2】79歳女性。6年前から両眼にBTほか2剤を使用。左眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の新生血管を伴う濃厚な弧状角膜混濁を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。視力低下は認めなかった。
【症例3】76歳男性。3年前から両眼にBTとヒアルロン酸点眼液を使用。左眼耳下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血,濾胞を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。
【結論】
・全例BT使用中に出現した角膜炎であること、角膜ヘルペスの既往はないこと、実質深層の新生血管を伴う角膜周辺部病変で,既報の所見*に類似していることから、BTが発症に関与した可能性のある角膜実質炎と診断した
・緑内障治療中の患者に周辺部角膜実質炎をみたら,BT使用歴の確認も必要である
【ポイント】
・本報・既報ともBT使用開始後数年経過してからの発症
・片眼発症、濾胞性結膜炎との関連みられず
・発症機序不明
・ステロイド点眼にて新生血管は消退するも角膜混濁は残存
*Manabe Y, et.al. Eur J Ophthalmol 2019 May 17: doi: 10.1177/1120672119850080(MK)
Outcomes of Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty in Eyes With Pars Plana Versus Anterior Chamber Glaucoma Drainage Devices
Joann J. Kang, (NY, USA)
Cornea 2019(11);38:1364–1369
目的:前房タイプ(AC)または毛様体扁平部(PP)タイプの緑内障ドレナージ装置(GDD)のある症例に角膜内皮移植術(DSEK)を施行し、術後結果を比較する。
対象と方法:2007年1月から2017年12月の間に、GDDの存在下でDSEKを受けた患者83人85眼で、合計122回DSEK を行なった。
ACチューブ37眼、PPチューブ48眼、平均年齢71.1(SD = 13.4)歳
原因疾患はフックス角膜内皮変性症、他の角膜移植後の移植片不全だった。
結果:術前平均視力 AC グループ1.50 LogMAR、 PPグループ1.37 LogMAR(P = 0.36)、術後平均視力 AC グループ0.88 LogMAR、 PPグループ1.20 LogMAR(P = 0.06)と改善した。
ACグループ:視力の改善70.3%、不変10.8%、低下18.9%。 PPグループで視力改善54.2、不変16.7%、悪化29.2%。悪化の原因は、移植片不全、緑内障の進行、および網膜疾患が最も一般的だった。
術前眼圧 AC グループ 13.4mmHg、PPグループ 14.6 mmHg、術後眼圧 AC グループ 14.5mmHg、PPグループ 11.5 mmHg
合併症 移植片解離はAC 35.1% (13/37)、PPグループ 29.2 % (14/48)。
移植片不全の症例はACグループ 18.9%(7/37眼)、PPグループ41.7%(20/48眼)、不全に至るまでの平均期間はACグループ17.1か月(4.6–32.1)およびPPグループ27.9か月(15.1–34.7)だった。
移植片解離または移植片不全に関連する要因(チューブの位置、年齢、性別、同時チューブ修正など)は見つからなかった。
結論:チューブの移植片への近接度が低下するという理論上の利点にもかかわらず、PPチューブの症例での利点はなかった。GDDの場所に関係なく、移植片不全なる確率は高く、今までの文献と一致している。(CH)
Mechanism and Current State of Treatment for Filamentary Keratitis with Dry Eye
青木崇倫 他(京都府立医大)
日眼会誌123:1065-1070,2019(11)
・ドライアイ外来にて経過観察、治療中のドライアイのうち糸状角膜炎を伴う症例の背景および、その治療と経過についてレトロスペクテイブに検討した。
・対象と方法:糸状角膜炎に対して治療開始後少なくとも3か月以上経過観察できた53例53眼(男性7例7眼,女性46例46眼、両眼性の場合は症状の強いほうの眼を採用)。年齢は39-88歳(平均値±標準偏差: 69.8± 10.5歳)で,観察期間3-46か月(平均21.3か月)。
・FK発見時のドライアイ診断は、ドライアイ確定46例(87%)で最も多く(87%)、推定される機序は涙液減少39例(74%)が多かった。推定される機序によらず、発見時にジクアホソルナトリウム点眼液を使用している例が多かった(涙液減少: 39%,摩擦克進: 30%,複合機序: 75%)。涙液減少が主な機序と考えられるFKでは、その改善のため上・下涙点プラグの挿入を要した例が多く(71%)、摩擦克進が主な機序と考えられるFKでは、パミピド懸濁点眼液での改善が最も多かった(63%)。
・糸状角膜炎の機序は,多岐にわたるが,最も一般的な機序として涙液減少型ドライアイがあり、その他、摩擦関連疾患などいくつかの疾患や病態が複合的に関与すると考えられた。また, 戻液減少を機序とする糸状角膜炎には戻点プラグ治療が最も効果的であり、摩擦充進が主たる機序と考えられる糸状角膜炎に対しては、 RMが有効と考えられた。一方、ドライアイに合併する糸状角膜炎の発症に、 DQSが関与している可能性があり、ムチン/水分比の増加、涙液の粘性の増加を促し、結巣として摩擦の増加を招いて角膜糸状物が形成されやすくなると推察される。(CH)
Predictive Genes for the Prognosis of Central Serous Chorioretinopathy
Yoshikatsu Hosoda, Kenji Yamashiro, et al.(京都大)
Ophthalmol Retina. 2019;3(11)985-992
・CSC患者のSRD自然吸収やCNV発生を予測しうる遺伝子を検索
・CSC患者カルテを後ろ向きに調査、SRD消失をOCTで確認
・SRD消失までの期間をKaplan-Meyer法で解析
・CFH I62V、ARMS2 A69S、VIPR2 rs3793217の遺伝子多型とSRD消失期間・CNV発生との関連を評価
・196眼中105眼でフォローアップ期間中にSRD消失
・68眼が治療受け、23眼がSRD消失のため受診中断
・3種の遺伝子多型のうち、CFH I62VのみがSRD自然吸収と関連(P=0.017);genotypeごとにAA(126.6±115.5日)、AG(157.7±243.1日)、GG(242.7±198.0日)→GアレルがSRD遷延と有意に関連(P=0.035)
・14眼でCNV発生、CFH I62VのGアレルとARMS2 A69SのTアレルが有意に関連(P=0.0023、P=0.019)
・・CFH I62VとARMS2 A69Sの遺伝子多型はCSCの進行を予測しうる。CSC患者の遺伝学的状態をしることで早期治療の必要性やCNVの発生を判断する助けになる。(MK)
A Simple 60-Second Swelling Technique for More Consistent Ultrathin DSAEK Graft Preparation
Farbman, Neil H. et al. (CA,USA)
Cornea 2019(10);38:1209-1214
目的:極薄DSAEK(UT-DSAEK)は文献で定義されていないが、最も一般的には約100μm以下の移植片を指す。今までの手法では均一の極薄組織を作れるわけではなく、組織の損失や準備時間を増やし、組織処理にかなりの経済的コストがかかる可能性がある。
今回、単純だが新しい60秒間の膨張技術を使用することにより、移植片の品質を損なうことなく、安定してより薄い移植片を作れる事を実証する。
対象と方法:ML7 Microkeratome Donor Cornea System(Med-Logics Inc、Athens、TX)を使用した標準DSAEK移植片30眼と、角膜上皮の除去後の緩衝塩類溶液(BSS: Balanced Salt Solution)に角膜実質を60秒間浸した後ML7 Microkeratome Donor Cornea Systemでカットした移植片30眼。
結果: 膨張させた組織の平均移植片厚さは83.3μmで、標準移植片96.4μmよりも13.1μm薄かった。 100μm未満の移植片の割合は、標準移植片では63.3%、膨張移植片 では93.3%だった。角膜内皮細胞数は2つのグループ間に有意差はなかった。合併症は認められなかった。
結論:単純な60秒間の膨張技術により、内皮細胞数に大きな影響を与えることなく、安定した薄いDSAEK組織が得られる。(CH)
Interferon Alpha-2b Eye Drops Prevent Recurrence of Pterygium After the Bare Sclera Technique
Mingyang Yin, et al. (China)
Cornea 2019(10);38: 1239–1244
目的:翼状片再発防止のためのIFNα-2b点眼薬の有効性と安全性を調査すること。
対象と方法: 43人51の眼、平均年齢は56±9歳
対照群ではグレード1: 3眼、グレード2: 11眼、およびグレード3: 10眼
治療群ではグレード1: 3眼、グレード2: 13眼、およびグレード3: 11眼
術後、レボフロキサシン点眼と0.1%フルオロメトロン点眼液は両群3か月間、1日4回使用した。さらに治療群ではIFNα-2b点眼薬(100万IU / 5 mL)を3か月間、1日4回使用した。
結果:手術後、どちらの群も1ヶ月以内に再発は認められなかった。
術後3か月、対照群でグレード3の再発3眼、治療群ではグレード3の再発1眼を認めたが、統計的に有意差はなかった(P> 0.05)。
術後6ヵ月、対照群で7眼(グレード3:6眼、1眼グレード2:1眼)の再発、治療群では1症例のままだった。対照群と治療群の再発率はそれぞれ29.2%と3.7%だった(P = 0.019)。
術後12ヵ月、対照群で8眼(グレード3:6眼、グレード2:2眼)、治療群では2眼(グレード3:1眼、グレード2:1眼)で再発が認められた。再発率はそれぞれ33.3%と7.4%だった(P = 0.048)。
結膜の発赤と厚さは3ヶ月以内は両軍間で有意差はなかった。重篤な視力や全身性への副作用はなかった。
結論:IFN alpha-2bの点眼薬は、翼状片術後の再発率を大幅に低下させ、安全であると実証した。(CH)
Longitudinal Analysis of Bruch Membrane Opening Morphometry in Myopic Glaucoma
Mahadev Bhalla et al (Canada)
J Glaucoma 28(10):889-895, 2019
正常近視眼(9名17眼)、緑内障疑い(5名6眼)、安定した緑内障(14名20眼)、進行している緑内障(8名10眼)でBMOの形態変化をベースライン、1.5年以内、6.5年以内の3回で調査
BMOの面積、楕円性は変化ないが、非平面性は緑内障眼で増加、BM基準面からのBMO depthは疑い群以外で増加した
BMO-MRWは視神経乳頭評価として注目され、これまでBMOは変化しないと考えられていたが、正常群でもわずかながら変化している
年齢による眼圧、脳脊髄圧の変化、あるいは脈絡膜が薄くなることでBM基準面が変動した可能性が考えられた(MM)
星状神経節光線療法による視神経乳頭・篩状板領域の血流改善効果
森茂(長崎)
眼臨紀 12(8): 604-608, 2019
・東京医研製スーパーライザー1800mW(波長600-1600nm)を用いて星状神経節光線療法SGLを行った。
・OCTAで篩状板部を検査すると、15分後には篩状板部、殊に下側と耳側の血流量が増加しており、SGLが正常眼圧緑内障などでは有効な治療法になりうることを示している。(TY)
高分子量のヒアルロン酸からなる眼科用手術補助剤の物性評価―2019
渡邊一平他(生化学工業)
YAKUGAKU ZASSHI 139(8): 1121-1128, 2019
・OVDは凝集型製剤と分散型製剤の2つに大別されている。
・天秤に乗せた0.5mgの粘弾性物質を直径0.5mmのピペットチップを装着させたアスピレーターによって吸引除去する際、100mmHg当たりの除去率が30%以上であれば凝集型OVD、30%未満であれば分散型OVDとされている。
・各製品の規格が同一であっても製品間で異なる物性を示している。
・プレート上に約 300μLの試料を滴状に排出し、0.5mm間隙のパラレルプレートにより、ずり速度を変速させ、見かけ粘度を測定した。
・ずり速度が0.1~1/secの場合、各製品の見かけ粘度は顕著に異なったが、高ずり速度10/secでは見かけ粘度はほぼ一定値となった。
・製品間の見掛け粘度の差異はヒアルロン酸の分子量の違いに起因していた。(TY)
Difference in Topographic Pattern of Prelaminar and Neuroretinal Rim Thinning Between Nonarteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy and Glaucoma
Eun Jung Lee, et al (Korea)
Invest Ophthalmol Vis Sci 60(7):2461-67, 2019
NAION(A群)、NTG(B群)、Control(C群)各12眼で視神経乳頭断面24枚のEDIOCTから最も乳頭リムが薄い断面を選び各パラメータを計測
NFLの障害側はA群が上方11眼、B群が下方11眼であったが、他の背景因子に有意差なし
BMO-MRW,BMO-HRW、屈曲点での水平厚、中心部の前篩状板組織はA群で有意に厚かった
乳頭リム厚は屈曲点で最大の差を認めた
HVratio(BMO-HRW/BMO-VRWで定義)はA群1.63、B群0.83、C群1.06であった
前篩状板組織の菲薄化はNAIONとNTGで異なり診断に有用となる可能性(MM)
Nicotinamide Deficiency in Primary Open-Angle Glaucoma
Judith Kouassi Nzoughet, et al(Frace)
Invest Ophthalmol Vis Sci 60(7), 2509-2514:2019
視神経は眼内では無髄のためたくさんのエネルギーを要するが、緑内障でミトコンドリアの機能不全が生じているのかという疑問がある。
マウスの高眼圧緑内障モデルでミトコンドリアの機能不全が示され、網膜での酸化還元反応の補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドレベルの低下と、その前駆体であるニコチンアミドを高容量経口摂取することで、構造的機能的にRGCの減少を防止したとの報告あり。
水溶性のニコチンアミド(ビタミンB3)は欠乏すると下痢、皮膚炎、認知症を来たし死に至るペラグラをきたす。
まず34例のPOAGと30例のコントロールでnontargeted metabolomics studyを実施、その中でニコチンアミドの欠乏を見つけた。
その後second cohortとして20例のPOAGと15例のコントロールでニコチンアミドをターゲットとして調査した。
二つの集団の背景、採血時間帯には有意差無し
ビタミンB3は高脂血症の治療に使われるが、調査集団で該当するものはいなかった
結果
中央値
initial cohort:POAG : control= 0.12(0.06-0.28)μM : 0.18(0.08-0.47)μM (30%, P=0.022)
second cohort:POAG : control= 0.14(0.09-0.25)μM : 0.21(0.09-0.26)μM (33%, P=0.011)
平均値
initial cohort:POAG : control= 0.14μM : 0.19μM
second cohort:POAG : control= 0.14μM : 0.19μM
より大規模なスタディが必要であるが、ニコチンアミドの補充療法は将来の治療方法になる可能性がある(MM)
Risk Factors for Cystoid Macular Edema After Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty
Inoda Satoru, et al. (自治医科大学)
Cornea 2019(7);38:820-824
目的:アジア人でのDMEK後のCMEの発症の危険因子と発症率を調査した。
対象と方法:DMEKを受けた65人77眼、平均年齢72.4歳(範囲、48〜85歳)、53眼はDMEK + 6ヶ月前に白内障手術、24眼はDMEKのみを受けた。すべての患者はアジア人(日本人)。
中心網膜厚、CMEの発生率、術後の最高矯正視力、中心角膜厚、および角膜内皮細胞密度を、手術後1、3、および6ヶ月で評価した。
術後治療は1.5%レボフロキサシン点眼、ベタメタゾン点眼1日4回3か月間投与し、その後漸減した。
結果:77眼中12眼(15.6%)でCMEが発生した。すべてのCMEは1か月以内に発症した。単独DMEKグループのCME発生率は25%(24眼中6眼)、段階DMEKグループの発生率は11.3%(53眼中6眼)だった(P = 0.13)。病因とCMEの発生との間に関連はなかった(P = 0.72)。多変量解析により、DMEK前後の虹彩損傷スコアの差(P <0.001、オッズ比(OR)= 16)、前房内の空気量(P = 0.012、OR = 2.3×10-4)、単独DMEK (P = 0.020、OR = 14、CME (+)6眼(25%)、CME(-) 18眼(75%))、および空気再注入(P = 0.036、OR = 18、CME (+)4眼(31%)、CME(-)9眼(69%))はCMEの発生と有意に関連していた。今回の調査でのCMEの発生率は、以前に白人で報告された発生率よりも高かった(7%〜13.8%)。
BCVAは術前0.81±0.53 logMARから術後6か月で0.080±0.15 logMARに有意に改善した(P <0.001)。術後ECDは6ヵ月で1493±492cells/ mm2だった(6ヵ月でのECD損失率:44.6±17.1%)。
前房内空気再注入を必要とするグラフトの部分的な剥離は、手術後7日以内に13眼で認められたが、すべての眼で再注入した直後に完全に接着した。
結論:DMEK後CME発生率は15.6%で、虹彩損傷はCMEの発生の主要な危険因子だった。手術時は虹彩にできるだけ損傷を与えないようにする必要がある。診断として、DMEK後の6か月間はOCTを頻繁に使用することを勧める。(CH)
杉浦弘幸ほか(国府台病院)
眼臨紀 12(7)532-535, 2019
・15歳女性
【初回受傷】
・友人のジャージにて左眼打撲、頭痛・嘔気・視力低下・眼痛・複視
・視力 右0.6(0.9×-1.75D) 左0.02(0.15×-0.5D)*他覚屈折値 右-11.0D、左-9.0D
対光反射は正常、内斜視、左眼の外転下転障害、左眼に求心性の視野狭窄
CFFは右↓49/↑49、左↓46/↑23
(外傷性視神経症を疑いステロイド内服)
・1w後 右0.6(0.8×-2.5D) 左0.03(0.4p×-11.0D)*他覚屈折値 右-3.0D、左-12.0D
眼球運動正常になるも正面視での内斜視と複視のこる
(輻輳痙攣を疑いステロイド中止、ミドリンP点眼開始)
・1M後 内斜位に改善、複視消失、他覚屈折値は不変
・4M後 右0.8(1.0×-0.5D) 左0.5(1.0p×-1.0D)*他覚屈折値 右-2.25D、左-5.0D
内斜視は完全に消失、正常視野
【二回目の受傷】
・初回受傷から半年後、サッカーボールが右眼に直撃、直後から頭痛・嘔気・右視力低下・眼痛・複視
・視力 右HM(n.c.) 左0.1(0.6×-2.0D)*他覚屈折値 右-5.0D、左-12.0D
対光反射は正常、内斜視、右眼の外転下転障害、眼振
CFFは右↓22/↑15、左↓自覚不能/↑23
(輻輳痙攣を疑いミドリンP点眼開始)
・3w後 右0.6(0.9p×-0.5D) 左0.5(0.4p×-0.75D)*他覚屈折値 右-0.75D、左-1.25D(MK)