アイバンク提供眼の眼球保存液におけるMRSA汚染の検討
宮本静華他(順天堂大)
臨眼 71(10): 1549-1555, 2017
・8年間646眼の眼球保存液のMRSA汚染度を調査した。
・391/646検体(60.5%)で細菌が培養され、MRSAは60/646検体(9.3%)から検出された。
・MRSA陽性者の平均年齢は85.1±9.7歳で、陰性者の75.6±16.0歳より有意に高く(p<0.001)、死亡から強角膜片作成までの時間が13.7±4.9と11.7±5.5時間と有意に長く(p<0.007)、角膜内皮密度が2215±471と2460±524と有意に低かった(p<0.001)。(TY)
Conjunctival Bacteria Flora of Glaucoma Patients During Long-Term Administration of Prostaglandin Analog Drops
Shinichiro Ohtani, Kimiya Shimizu et al (Japan)
IOVS 58(10): 3991-3996, 2017
・宮田眼科で2014年2月から9月の間にPG製剤(キサラタンXa:36眼・トラバタンズTz:27眼)を少なくとも一年以上使用している患者63眼から採取(全て右眼)健常ボランティアHt:44眼と比較
・レボフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、セフメノキシム、トブラマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシンに対するMICを測定
・Age:緑内障群:Xa 68.4±14.2 Tz 70.7±12.7 Ht 47.9±7.0*
・治療期間(M): Xa 82.9±29.2(12-251) * Tz 29.2±15.9(12-67)*
・検出率:緑内障眼:90.5%(57/63眼) 健常群:84.1%(37/44眼)
・Xa、Tz、Ht群で比較するとXa群ではMRSEがMSSEより多かった
・Xa群は点眼期間が長いがそれを考慮して検定しても有意にTz群よりもXa群はMRSEの頻度が高い(OR=11.66:CI1.79-76.08, P=0.0102)メチシリン耐性には投与期間は重要ではないことを示唆
・薬剤感受性試験ではTz群とHt群は有意差なし、Xa群は有意に薬剤感受性が低かった
・多剤耐性はXa群:68%,Tz: 23%, Ht: 27%
・Xaに含まれる防腐剤BACに対する耐性が薬剤の交差耐性になったのではないか
・0.02%のBACは細菌のMICより高く、点眼瓶内の感染防止には有効だが、点眼後は涙液により5分後には10分の1以下に希釈され、その後も低くなっていく(MM)
Outcome of Micropulse Laser Transscleral Cyclophotocoagulation on Pediatric Versus Adult Glaucoma Patients
Jun Hui Lee, et al (UCSF, CA)
J Glaucoma 26(10): 3936-939, 2017
・2015/7-2016/12にUCSFで行われた12ヶ月以上フォローできたMP—TSCPC
・Pediatric 9 eyes/9 patients Adult 27 eyes/ 25 patients
・球後または全身麻酔 2000mW 160秒/半周x2(上下)
・既往:Adult 27eyes: 5(Corneal transplant), 7(Tube shunt), 12(Cataract), 2(Filtering surgery)
・Pediatrics 9 eyes: 3(Lensectomy), 3(AGVor Molteno), 1(DSAEK) (S-Wが4例)
・成績:翌日に中程度の炎症 65%
・小児で成績が悪い理由
毛様体の回復が早い
プローブがLimbusより3mmなので小児では異なる可能性
小児緑内障の原疾患の違い
・結論:さらなるスタディが出るまでは小児においては他の方法までの繋ぎか、難治緑内障において注意して用いるべきである(MM)
市岡伊久子 (島根)
あたしい眼科 34(8):1169-1177, 2017
緑内障症例で視神経乳頭近傍に網膜分離症をきたす症例があるが、検査した490人中1%の5例で認めた。
黄斑部に進展した例はなく、緩解、増悪を繰り返した。分離症の範囲はNFLの菲薄部に一致し、1眼でPitを認めた。3人では分離症に対応する視野障害が進行
さらなる眼圧下降により3人で分離症が軽減した。 cpRNFL測定では厚く測定されるので、注意が必要である(MM)
岩田 遙、半田 知也、石川 均、庄司信行(北里大)
眼科臨床紀要 2017;10(5):405-408
・屈折異常以外に眼科的疾患を有さない8-15歳(12.5±4.3歳)の42名42眼
・瞳孔径および自覚的屈折検査を施行
・片眼遮蔽条件:遮蔽板、両眼開放条件:Occulu-pad®(偏光フィルター)およびOCLUA(すりガラスレンズ)
・瞳孔径:片眼遮蔽条件は両眼開放条件と比較して有意に増大
・自覚的屈折値:片眼遮蔽条件は両眼開放条件と比較して有意に近視化
・両眼開放の2条件の間に有意差みられず
【結論】小児において、瞳孔径を考慮した両眼開放視力検査は有効である可能性が示された(MK)
小児眼科領域におけるSPOT VISION SCREENERの使用経験
羅錦榮他(帝京大)
眼臨紀10(6): 476-481, 2017
・2013年に米国小児眼科斜視学会により弱視リスクファクターARFを検出するガイドラインが提唱され、屈折異常、8プリズム以上の恒常性斜視、透光体混濁が危険因子とされた。
・これに沿って開発されたのがSpot Vision Screener(SVS)である。
・1歳未満は0.5%トロピカミド点眼、2歳以上は1%シクロペントレート点眼を使用した。
・使用有無により約2Dの差がみられた。
・成功率はこども園(0-6才)99%、小学校(1-3年生)99%、特別支援学校(小・中・高等部)36%。(TY)
白内障術後の水晶体嚢の収縮によりアクリル眼内レンズに眼球内部高次収差が発症した症例に対するNd-YAGによる前嚢切開
中村 充利(中村眼科・長崎)
臨床眼科 2017;71(4):523-529
・アクリル眼内レンズ(IOL)の挿入眼に生じた高次収差の増大の診断と治療法の報告
・細隙灯顕微鏡で明らかな傾斜や偏位などの位置異常を伴わない白内障術後症例に、波面収差測定で強い眼球高次収差の発生を認めたアクリルIOL挿入8症例8眼
・Nd-YAGによる放射状の前嚢切開術後に、波面収差測定器(KR-1W, TOPCON)で眼球高次収差を比較
【結果】アクリルIOL挿入眼に発生している眼球内部高次収差には、複雑なコマ収差、トリフォイル収差、テトラフォイル収差が認められた
・Nd-YAGによる前嚢切開術後、root mean square (RMS)(4mm)が有意に減少(術前0.673→術後0.374、p=0.019)
【結論】アクリルIOL挿入眼に生じる眼球内部高次収差の増大は、IOL挿入術後合併症のひとつであり、Nd-YAGによる前嚢切開で治療できる可能性がある
*8眼中2眼にYAG後5-6週でRMSの再上昇(術前の80%)→Nd-YAG再施行にて改善、その後NSAIDs点眼とステロイド点眼にて再発なし(MK)
Patterns of glaucoma progression in retinal nerve fiber and macular ganglion cell-inner plexiform layer in spectral-domain optical coherence tomogramphy
Her Jin Kim, Ki Ho Park et al (Korea)
Jpn J Ophthalmol 61(4) :324-333, 2017
初期から中期のPOAG患者114眼の緑内障患者の視神経乳頭写真とRed-free RNFL写真による構造変化と視野検査による機能変化により進行群と非進行群に分け、cpRNFLとGCIPLの進行度を調査したretrospective cohort study
平均観察期間3.16年 進行群のほうがベースライン時の眼圧、点眼数、DHの出現頻度が高かった
構造変化による分別:50/114例で進行群 機能変化による分別:40/114例
進行群ではRNFLは-1.43μm/year, GCIPLは-0.46μm/yearであった
RNFLは平均値、6時と11時、deviation mapでの角度とエリア、GCIPLは耳下側と最小値で進行速度が早かった 黄斑マップでは耳下側と最小値をしっかり見たほうが良い(MM)
Development of visual field defect after first-detected optic disc hemorrhage in preperimetric open-angle glaucoma
HJ Kim. et al (Korea)
Jpn J Ophthalmol 61(4): 307-313, 2017
87例のPPG患者をDHあり群42例(Group1)となし群45例(Group2)に分けて視野障害が発生するまでの期間を調査
Group2では1回のDHと複数回のDHで比較
Group1:73.3カ月、Gropu2:45.4カ月 中央値は37.8カ月であった(MM)
小野喬叫 他 (宮田眼科病院)
眼科手術30 (3): 497-500. 2017
目的:水泡性角膜症に対する全層角膜移植術(PKP)と角膜内皮移植術(DSAEK)の長期成績を検討する。海外の文献だとフックス角膜内皮変性症の症例が多いので、違いが出るかもしれない為。
対象と方法: 1998年4月-2014年4月に水泡性角膜症に対してPKPを行った症例と、 2007年8月-2015年1月にDSAEKを行った症例を対象とした。水抱性角膜症の原疾患、累積透明治癒率、角膜内皮細胞密度、術後合併症について検討した。
PKP群は125例139眼、DSAEK群は86例97眼。
PKP群は白内障術後、緑内障発作によるものが多く、 DSAEK群は閉塞隅角、 フックス角膜内皮変性症によるものが多かった。(表2)
結果:術後5年の累積透明治癒率はPKP群73%、DSAEK群89%でDSAEKのほうが有意に高かった(p = 0.040)。(図1)
術後5年ECDはPKP群が717土368 /mm2. DSAEK群が800土483 /mm2で(p=0.84)。(図2)
角膜内皮細胞密度減少率は、術後5年でPKP群74.0%. DSAEK群71.6%だった。
術後5年間で PKP群では拒絶反応がl2眼(8.6%)、移植片離開が9眼(6.5%)、感染症5眼(3.6%)に発生に認められた。
DSAEK群では拒絶反応が4眼(4.1%)、術後早期の移植片脱落が4限(4.1%)に認められた。術後の感染症は生じず、拒絶反応による移植片不全は認めなかった。
結論:水抱性角膜症に対してPKPよりもDSAEKは術後5年において良好な累積透明治癒率であった。その理由として、移植片不全、拒絶反応の割合がDSAEK群では少なかった事、また感染症を認めなかった事と考えられる。角膜内皮細胞密度はPKPとDSAEKで差がなかった.
海外の文献と比べ、累積透明治癒率は同等もしくはやや不良、角膜内皮細胞密度減少率は高いという結果だった。(CH)
稲村 幹夫(稲村アイクリニック)
あたらしい眼科 2017; 34(2):229-230
・Positive dysphotopisiaの解説
・アクリル製IOLのスクエアエッジで起こる、若年者に多い
・弓状の光の輪のみでなく光源からの放射状の光も見える
・CCCが光学部を完全にカバーしている場合は時間の経過とともに症状が軽減・消失)
・予防:CCCコンプリートカバー、CCCが大きくなってしまった場合はエッジが露出しそうな部分にループの付け根を持ってくる、若年者(筆者の症例はすべて65歳以下)は(瞳孔径が広がりやすいので)光学部の大きなIOLを選択
・対症療法:縮瞳薬の点眼、ブリモニジン点眼で症状改善
・手術療法:①レンズ交換(①スリーピースレンズの嚢外固定、光学部径7mmレンズがベター)、②ピギーバックIOL、③光学部の前方移動(CCCの前方にキャプチャー)(MK)
Twelve-year follow-up of penetrating keratoplasty
Takashi Ono, et al. (宮田眼科)
Jpn J Ophthalmol 61(2):131-136,2017
目的:角膜の疾患別で全層角膜移植後(PKP)の生存率や角膜内皮細胞密度の長期結果や移植片不全の原因を調査した。
対象と方法:1998年〜2015年までにPKPを受けた507眼のうち経過観察できた403眼、平均年齢68.9 ± 13.9歳。
結果:全体の移植片生着率は60.4%だった。疾患別では円錐角膜100%、水疱性角膜症51.7%、角膜白斑70.8%、角膜変性症100%、角膜潰瘍59.2%、再移植31.8%、角膜穿孔0% だった。
初回PKPの12年生存率は65.4%、2回目PKP 43.4% (p < 0.001)
3回目、4回目のPKPは全て8年以内に不全となった。
術前のECDは2722 (2666-2778) cells/mm2だったが、術後10年で659 (440-878) cells/mm2とかなり減少した。
水疱性角膜症、角膜潰瘍、角膜白斑、再移植眼で他疾患より減少率が高かった。
合併症 拒絶反応が61眼に認められた。術後から拒絶反応までの平均期間22.5 ± 29.0ヶ月。その内21眼が移植片不全となった。
外傷28眼、眼圧上昇161眼、感染78眼(細菌14眼、真菌31眼、ヘルペス15眼、その他3眼、原因不明15眼)
透明な移植片より機能不全の移植片でより高い確率で外傷、拒絶反応、感染が起きた。
結論:PKPの予後は原因疾患による。再移植は予後が悪い。外傷、拒絶反応、感染は移植片不全のリスク要因である。(CH)
Evaluation of factors affecting visual acuity after Descemet stripping automated endothelial keratoplasty
Shiro Amano, et al. (井上眼科)
Jpn J Ophthalmol 61(2):137-141,2017
目的:DSAEK後の視力に影響する因子を重回帰分析で評価した。
対象と方法:2010年から2015年にDSAEKを受け、少なくとも6ヶ月以上経過観察できた49人54眼、平均年齢72.5 ± 8.7歳。DSAEKとなった原因疾患は白内障術後8眼、LI後20眼、フックス角膜内皮変性症13眼。角膜内皮炎3眼、PE 6眼。外傷2眼、不明2眼。
ドナー角膜ECD 2723 ± 321 cells/mm2 、ドナー角膜厚148 ± 19.1 μm。
ストリッピングあり 21眼、なし33眼。
結果:視力 術前1.03 ± 0.49 logMAR, 術後1ヶ月0.42 ± 0.26 logMAR, 術後3ヶ月0.29 ± 0.21 logMAR,
術後6ヶ月0.24 ± 0.20 logMAR, 術後12ヶ月0.22 ± 0.20 logMARと、術後3ヶ月で安定した。
ECD 術前2723 ± 321 cells/mm2, 術後1ヶ月2164 ± 357 cells/mm2, 術後3ヶ月1982 ± 556 cells/mm2, 術後6ヶ月1901 ± 569 cells/mm2, 術後12ヶ月1773 ± 592 cells/mm2で、術後1年での損失率は33.9%だった。
重回帰分析の結果、術前視力だけが術後の視力と関連していた。その他、年齢、性別、術前の要因(角膜浮腫の程度、ドナーECD、グラフト厚)、術後眼圧などは関連なかった。
結論:DSAEK前のより良い視力が、術後の良い視力と関連していた。そのため角膜上皮下の線維増殖変化のようなことがおこる前、早めにDSAEKを考慮した方が良い。(CH)
Eyelid cleansing with ointment for obstructive Meibomian gland dysfunction
Minako Kaido, Osama M. A. Ibrahim, Motoko Kawashima, Reiko Ishida, Enrique A. Sato, Kazuo Tsubota(慶応大)
Jpn J Ophthalmol 2017; 61(1):124-130
・オフロキサシン眼軟膏で眼瞼縁をマッサージ
・施行後1Mで86.2%でMGDに伴う症状が改善
・瞼縁の血管拡張、フケ様debris、フルオレセイン染色スコア、涙液破壊時間が有意に改善
【方法】1日1回入浴前、手洗い、オフロキサシン眼軟膏、米粒大を示指、閉瞼した瞼裂間に乗せる、下眼瞼を引き下げ睫毛間をタテヨコにマッサージ、同様に上眼瞼も、30秒間施行、コットンパッドで拭き取り(MK)
Medical Tribune 50(24): 1-1, 2017
Li H et al(中国)
・健康な大学生を対象にPM2.5曝露量の変化とそれが人体に及ぼす影響を検討。空気清浄機(低曝露群)を部屋に設置した群と、空気清浄機能をなくした機械(高曝露群)設置群で、9日使用後に採血を行った。
・試験期間中に被験者が曝露した環境中のPM2.5は低曝露群が平均24.3μg/m3、高曝露群が53.lμg/m3だった。
・高曝露により、糖質コルチコイド(コルチゾル、コルチゾン)、カテコールアミン(エピネフリン、ノルエピネフリン)、メラトニンの血清中濃度が有意に上昇していた。
・高曝露群で血圧、CRH、ACTH、インスリン抵抗性、酸化ストレスおよび炎症のバイオマーカーの濃度が上昇していた。
・PM2.5への高曝露により、副腎皮質における糖質コルチコイドの産生が克進し、それにより心拍出量が増加、視床下部一交感神経-副腎髄質(SMA)系の活性化の結果、血圧上昇や代謝が変化し、心血管疾患リスクにつながる可能性がある(Circulation 136:618-627,2017)(TY)
治療抵抗性の感染性角膜潰瘍に対して角膜コラーゲンクロスリンキング併用が有効と考えられた2例
河野雄亮他(北里大)
日眼 120(12): 831-836, 2016
・角膜コラーゲンクロスリンキング(CXL)は円錐角膜の進行抑制に有効であるが、感染性角膜潰瘍に対しても有効であったので報告する。
・82歳と76歳の2症例で、真菌、細菌に対する治療に抵抗性があったが、CXLを行った2週間後に角膜透見性が改善し、潰瘍縮小と上皮化がみられ、完成は沈静化した。
・CXLは感染性微生物に対する直接的な殺菌作用があり、殊に細菌、真菌に対しては強い効果がある。
・リボフラビン点眼下で紫外線を照射したときに発生するフリーラジカルが効果的である可能性がある。
・もう一つは角膜コラーゲン線維を架橋し、融解に対する抵抗性をあげ、角膜穿孔の危険性を回避する効果がある(TY)
豊川紀子、他(永田眼科)
あたらしい眼科33(11) : 1651-1655. 2016
目的:DSAEKは術中眼圧変動の大きい術式であるため、緑内障進行例にDSAEKを施行し術前後の視力と視野変化を調べ、視機能に対する影響を検討する。
対象と方法: DSAEKを施行された8例8眼。全例、眼内レンズ挿入眼で、濾過手術の既往は6例だった。
全例海外ドナー角膜を使用、グラフト径8mm、全例ストリッピングはしなかった。術中灌流圧は30mmHgとし、空気抜去は行わなかった。
結果:平均年齢73±6歳、男性5例,女性3例、術後平均観察期間は6±4カ月。
8眼中7眼で術翌日に移植片が接着した。2眼で空気の後房迷入を認めた。
接着不良眼1眼で術後2日目に前房内に空気を再注入して接着を得られた。
視力は全例で術前以上の視力が得られた。
眼圧は術前13.1 ± 4.7 mmHg、術後2ヶ月12.8±4.6mmHg、濾過胞に影響はなかった。
視野はGPでは8眼中4眼でV-4と内部イソプター改善、残り4眼で内部イソプターのみ改善した。ハンフリー10-2では8眼中7眼でMD値または中心4点内の感度改善が得られた。
全例の平均MDは術前 -25.4土5.7dB、術後6カ月 -18.8土6.3dBだった。
結論:今回の症例では、残存視機能への悪影響がなかった。DSAEKのドナーグラフトの5年生存率は、フックス角膜内皮変性症では95%であるのに対し濾過胞眼では40-48%と不良であると報告され、さらに、緑内障インプラント眼は25%と不良である。どのような症例までDSAEKの適応を拡大できるかの判断基準を確立することは今後の課題である。(CH)
武井一夫他(つくば市)
眼臨紀 9(7): 563-567, 2016
・ミドリンP、ネオシネジン点眼患者1,577名について点眼後の外眼部炎発症について検討した。発症者は41名(2.6%)で、散瞳回数の多い頻回散瞳群(年2回以上の散瞳)では随時散瞳者よりも有意に発症率が高く(Spearman順位相関係数0.96 p<0.01)、また、50歳以降の年代別発症率は年代ごとに上昇した。皮膚パッチテストを35/41に行い、陽性反応者はネオシネジン6名、ミドリンP5名、塩酸フェニレフリン5名、塩化ベンザルコニウム1名、ミドリンM1名であり、塩酸フェニレフリンがアレルゲンとして最多であった。(図)(TY)
篠田 啓 (帝京大)
あたらしい眼科 33(7):981-998, 2016
クロロキン網膜症はクロロキン(CQ)の長期投与により両眼黄斑が障害される網膜症
1962年の症例報告後使用が制限され、国内ではほとんど使用されずなじみがない
2015年7月 サノフィ(株)がSLE/CLE(皮膚エリテマトーデス)に対する標準的治療薬としてヒドロキシクロロキン硫酸塩(HCQ) プラケニル®錠を発売
今後日本でも広く使用されていくと考えられる
HCQはCQの代謝産物:抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用、抗腫瘍作用などを持ち、CQよりも頻度は少ないが網膜障害の病態は同じ
日本眼科学会のガイドラインが提唱されているので参照
発症機序の詳細は不明:網膜全層にわたる神経細胞の変性、ならびにRPEの萎縮を認める
留意点の詳細は日眼会誌120巻6号に詳細
禁忌:既往も含めてSLE網膜症以外の網膜症・黄斑症のある患者
累積投与量が200gを超えると発症頻度が高まる
少なくとも年1回 視力・眼圧(ステロイド併用による眼圧上昇)・細隙灯顕微鏡検査(網膜症以外の異常/化角膜沈着物・白内障)・眼底検査(アジア人ではより周辺に異常が出現することがある)・自発蛍光(早期のRPE障害を検出可能)、FA(FAFやOCTによって重要性は低下)、OCT(Ellipsoid zoneの欠損)、色覚検査(石原式、P-D-15、SPP2)、HFA(10-2または30-2)、多局所ERGを行うことが重要
リスク患者ではより頻回の検査(累積200g、肝・腎機能障害、視力障害、高齢者)
治療は投与を中止すること。体内からの排出が遅いため投与中止でも進行することがある。AAOのガイドラインでは網膜症は非可逆性でRPE消失以前に検出すべき(MM)
Persistent hypotony after trabeculectomy: incidence and associated factors in the Collaborative Bleb-Related Infection Incidence and Treatment Study
T Higashide et al (Japan)
Jpn J Ophthalmol 60(7/8) :309-318, 2016
レクトミー後の持続性低眼圧の発生率とその要因をCollaborative Bleb-Related Infection Incidence and Treatment Study (CBIITS)のデータから解析
CBIITS:MMC併用レクトミー後の濾過胞関連合併症の解析のため集められた多施設共同研究 2007.3.31までの2年間に登録された経過観察1-5年のデータ
34施設1249例1249眼に行われたあらゆる濾過手術のうち、MMC併用Trabeculectomy(白内障同時手術を含む)1098例1098眼を解析対象とした
持続低眼圧は5mmHg以下が6か月以上持続
不成功の定義:眼圧下降不十分(IOP>21mmHg、ベースラインから2回連続で<20%IOP、追加手術)、光覚喪失、持続低眼圧
LSLやニードリングは追加手術とはカウントせず
1098眼中138眼はデータ不完全、2眼はベースラインで光覚喪失、3眼は不完全な視力データ
955眼を調査対象とした
Limbal-base:550眼(57.6%)、白内障同時手術163眼(17.1%)、5年経過を終えたのは75.0%であった
術後平均眼圧は12mmHgで安定
全体の成功率は622/955眼(65.1%)、
270眼(28.3%)の眼圧下降不足のうち96眼(35.6%)で追加手術、28眼(10.8%)は眼圧21mmHgを超え、146眼(54.1%)は眼圧下降率が20%未満であった
27眼(2.8%)で光覚喪失し、そのうち8眼は純粋に光覚喪失のみで不成功
66眼(6.9%)で持続低眼圧、そのうち52眼では純粋に低眼圧のみで不成功であった
5年生存率は62.0±1.7%で、持続低眼圧を除くと68.0±1.6%であった
眼圧下降が不十分だが低眼圧となった症例が11例あり、うち6例は追加手術後に低眼圧となり、5眼は元の眼圧が8-16mmHgと低く、20%下降が得られなかった
眼圧下降十分な685眼で持続低眼圧となった55眼の1,3,5年での発生率はそれぞれ2.9±0.6%、6.1±0.9%、9.1±1.2%で、平均24か月後に生じた。 そのうち3眼は持続する低眼圧黄斑症を生じた
6/55眼では、フラップの縫合(2眼)、compression suture(1眼)、血清注射(1眼)、結膜被覆(1眼)、強膜穿刺(1眼)の処置を行った
逆に19眼(35%)でその後6mmHg以上の眼圧上昇があった
術後経過観察期間は低眼圧群のほうが有意に長かった
3例で術後46-49か月後に濾過胞感染を生じ、全例持続低眼圧であった
持続低眼圧をきたす要因としては、術前の低眼圧(1mmHg低いとリスクが5%増加)、Limbal-base incision、術後6か月以内にCDを生じたものであった (MM)