稲村 幹夫(稲村アイクリニック)
あたらしい眼科 2017; 34(2):229-230
・Positive dysphotopisiaの解説
・アクリル製IOLのスクエアエッジで起こる、若年者に多い
・弓状の光の輪のみでなく光源からの放射状の光も見える
・CCCが光学部を完全にカバーしている場合は時間の経過とともに症状が軽減・消失)
・予防:CCCコンプリートカバー、CCCが大きくなってしまった場合はエッジが露出しそうな部分にループの付け根を持ってくる、若年者(筆者の症例はすべて65歳以下)は(瞳孔径が広がりやすいので)光学部の大きなIOLを選択
・対症療法:縮瞳薬の点眼、ブリモニジン点眼で症状改善
・手術療法:①レンズ交換(①スリーピースレンズの嚢外固定、光学部径7mmレンズがベター)、②ピギーバックIOL、③光学部の前方移動(CCCの前方にキャプチャー)(MK)
Twelve-year follow-up of penetrating keratoplasty
Takashi Ono, et al. (宮田眼科)
Jpn J Ophthalmol 61(2):131-136,2017
目的:角膜の疾患別で全層角膜移植後(PKP)の生存率や角膜内皮細胞密度の長期結果や移植片不全の原因を調査した。
対象と方法:1998年〜2015年までにPKPを受けた507眼のうち経過観察できた403眼、平均年齢68.9 ± 13.9歳。
結果:全体の移植片生着率は60.4%だった。疾患別では円錐角膜100%、水疱性角膜症51.7%、角膜白斑70.8%、角膜変性症100%、角膜潰瘍59.2%、再移植31.8%、角膜穿孔0% だった。
初回PKPの12年生存率は65.4%、2回目PKP 43.4% (p < 0.001)
3回目、4回目のPKPは全て8年以内に不全となった。
術前のECDは2722 (2666-2778) cells/mm2だったが、術後10年で659 (440-878) cells/mm2とかなり減少した。
水疱性角膜症、角膜潰瘍、角膜白斑、再移植眼で他疾患より減少率が高かった。
合併症 拒絶反応が61眼に認められた。術後から拒絶反応までの平均期間22.5 ± 29.0ヶ月。その内21眼が移植片不全となった。
外傷28眼、眼圧上昇161眼、感染78眼(細菌14眼、真菌31眼、ヘルペス15眼、その他3眼、原因不明15眼)
透明な移植片より機能不全の移植片でより高い確率で外傷、拒絶反応、感染が起きた。
結論:PKPの予後は原因疾患による。再移植は予後が悪い。外傷、拒絶反応、感染は移植片不全のリスク要因である。(CH)
Evaluation of factors affecting visual acuity after Descemet stripping automated endothelial keratoplasty
Shiro Amano, et al. (井上眼科)
Jpn J Ophthalmol 61(2):137-141,2017
目的:DSAEK後の視力に影響する因子を重回帰分析で評価した。
対象と方法:2010年から2015年にDSAEKを受け、少なくとも6ヶ月以上経過観察できた49人54眼、平均年齢72.5 ± 8.7歳。DSAEKとなった原因疾患は白内障術後8眼、LI後20眼、フックス角膜内皮変性症13眼。角膜内皮炎3眼、PE 6眼。外傷2眼、不明2眼。
ドナー角膜ECD 2723 ± 321 cells/mm2 、ドナー角膜厚148 ± 19.1 μm。
ストリッピングあり 21眼、なし33眼。
結果:視力 術前1.03 ± 0.49 logMAR, 術後1ヶ月0.42 ± 0.26 logMAR, 術後3ヶ月0.29 ± 0.21 logMAR,
術後6ヶ月0.24 ± 0.20 logMAR, 術後12ヶ月0.22 ± 0.20 logMARと、術後3ヶ月で安定した。
ECD 術前2723 ± 321 cells/mm2, 術後1ヶ月2164 ± 357 cells/mm2, 術後3ヶ月1982 ± 556 cells/mm2, 術後6ヶ月1901 ± 569 cells/mm2, 術後12ヶ月1773 ± 592 cells/mm2で、術後1年での損失率は33.9%だった。
重回帰分析の結果、術前視力だけが術後の視力と関連していた。その他、年齢、性別、術前の要因(角膜浮腫の程度、ドナーECD、グラフト厚)、術後眼圧などは関連なかった。
結論:DSAEK前のより良い視力が、術後の良い視力と関連していた。そのため角膜上皮下の線維増殖変化のようなことがおこる前、早めにDSAEKを考慮した方が良い。(CH)
Eyelid cleansing with ointment for obstructive Meibomian gland dysfunction
Minako Kaido, Osama M. A. Ibrahim, Motoko Kawashima, Reiko Ishida, Enrique A. Sato, Kazuo Tsubota(慶応大)
Jpn J Ophthalmol 2017; 61(1):124-130
・オフロキサシン眼軟膏で眼瞼縁をマッサージ
・施行後1Mで86.2%でMGDに伴う症状が改善
・瞼縁の血管拡張、フケ様debris、フルオレセイン染色スコア、涙液破壊時間が有意に改善
【方法】1日1回入浴前、手洗い、オフロキサシン眼軟膏、米粒大を示指、閉瞼した瞼裂間に乗せる、下眼瞼を引き下げ睫毛間をタテヨコにマッサージ、同様に上眼瞼も、30秒間施行、コットンパッドで拭き取り(MK)
Medical Tribune 50(24): 1-1, 2017
Li H et al(中国)
・健康な大学生を対象にPM2.5曝露量の変化とそれが人体に及ぼす影響を検討。空気清浄機(低曝露群)を部屋に設置した群と、空気清浄機能をなくした機械(高曝露群)設置群で、9日使用後に採血を行った。
・試験期間中に被験者が曝露した環境中のPM2.5は低曝露群が平均24.3μg/m3、高曝露群が53.lμg/m3だった。
・高曝露により、糖質コルチコイド(コルチゾル、コルチゾン)、カテコールアミン(エピネフリン、ノルエピネフリン)、メラトニンの血清中濃度が有意に上昇していた。
・高曝露群で血圧、CRH、ACTH、インスリン抵抗性、酸化ストレスおよび炎症のバイオマーカーの濃度が上昇していた。
・PM2.5への高曝露により、副腎皮質における糖質コルチコイドの産生が克進し、それにより心拍出量が増加、視床下部一交感神経-副腎髄質(SMA)系の活性化の結果、血圧上昇や代謝が変化し、心血管疾患リスクにつながる可能性がある(Circulation 136:618-627,2017)(TY)
治療抵抗性の感染性角膜潰瘍に対して角膜コラーゲンクロスリンキング併用が有効と考えられた2例
河野雄亮他(北里大)
日眼 120(12): 831-836, 2016
・角膜コラーゲンクロスリンキング(CXL)は円錐角膜の進行抑制に有効であるが、感染性角膜潰瘍に対しても有効であったので報告する。
・82歳と76歳の2症例で、真菌、細菌に対する治療に抵抗性があったが、CXLを行った2週間後に角膜透見性が改善し、潰瘍縮小と上皮化がみられ、完成は沈静化した。
・CXLは感染性微生物に対する直接的な殺菌作用があり、殊に細菌、真菌に対しては強い効果がある。
・リボフラビン点眼下で紫外線を照射したときに発生するフリーラジカルが効果的である可能性がある。
・もう一つは角膜コラーゲン線維を架橋し、融解に対する抵抗性をあげ、角膜穿孔の危険性を回避する効果がある(TY)
豊川紀子、他(永田眼科)
あたらしい眼科33(11) : 1651-1655. 2016
目的:DSAEKは術中眼圧変動の大きい術式であるため、緑内障進行例にDSAEKを施行し術前後の視力と視野変化を調べ、視機能に対する影響を検討する。
対象と方法: DSAEKを施行された8例8眼。全例、眼内レンズ挿入眼で、濾過手術の既往は6例だった。
全例海外ドナー角膜を使用、グラフト径8mm、全例ストリッピングはしなかった。術中灌流圧は30mmHgとし、空気抜去は行わなかった。
結果:平均年齢73±6歳、男性5例,女性3例、術後平均観察期間は6±4カ月。
8眼中7眼で術翌日に移植片が接着した。2眼で空気の後房迷入を認めた。
接着不良眼1眼で術後2日目に前房内に空気を再注入して接着を得られた。
視力は全例で術前以上の視力が得られた。
眼圧は術前13.1 ± 4.7 mmHg、術後2ヶ月12.8±4.6mmHg、濾過胞に影響はなかった。
視野はGPでは8眼中4眼でV-4と内部イソプター改善、残り4眼で内部イソプターのみ改善した。ハンフリー10-2では8眼中7眼でMD値または中心4点内の感度改善が得られた。
全例の平均MDは術前 -25.4土5.7dB、術後6カ月 -18.8土6.3dBだった。
結論:今回の症例では、残存視機能への悪影響がなかった。DSAEKのドナーグラフトの5年生存率は、フックス角膜内皮変性症では95%であるのに対し濾過胞眼では40-48%と不良であると報告され、さらに、緑内障インプラント眼は25%と不良である。どのような症例までDSAEKの適応を拡大できるかの判断基準を確立することは今後の課題である。(CH)
武井一夫他(つくば市)
眼臨紀 9(7): 563-567, 2016
・ミドリンP、ネオシネジン点眼患者1,577名について点眼後の外眼部炎発症について検討した。発症者は41名(2.6%)で、散瞳回数の多い頻回散瞳群(年2回以上の散瞳)では随時散瞳者よりも有意に発症率が高く(Spearman順位相関係数0.96 p<0.01)、また、50歳以降の年代別発症率は年代ごとに上昇した。皮膚パッチテストを35/41に行い、陽性反応者はネオシネジン6名、ミドリンP5名、塩酸フェニレフリン5名、塩化ベンザルコニウム1名、ミドリンM1名であり、塩酸フェニレフリンがアレルゲンとして最多であった。(図)(TY)
篠田 啓 (帝京大)
あたらしい眼科 33(7):981-998, 2016
クロロキン網膜症はクロロキン(CQ)の長期投与により両眼黄斑が障害される網膜症
1962年の症例報告後使用が制限され、国内ではほとんど使用されずなじみがない
2015年7月 サノフィ(株)がSLE/CLE(皮膚エリテマトーデス)に対する標準的治療薬としてヒドロキシクロロキン硫酸塩(HCQ) プラケニル®錠を発売
今後日本でも広く使用されていくと考えられる
HCQはCQの代謝産物:抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用、抗腫瘍作用などを持ち、CQよりも頻度は少ないが網膜障害の病態は同じ
日本眼科学会のガイドラインが提唱されているので参照
発症機序の詳細は不明:網膜全層にわたる神経細胞の変性、ならびにRPEの萎縮を認める
留意点の詳細は日眼会誌120巻6号に詳細
禁忌:既往も含めてSLE網膜症以外の網膜症・黄斑症のある患者
累積投与量が200gを超えると発症頻度が高まる
少なくとも年1回 視力・眼圧(ステロイド併用による眼圧上昇)・細隙灯顕微鏡検査(網膜症以外の異常/化角膜沈着物・白内障)・眼底検査(アジア人ではより周辺に異常が出現することがある)・自発蛍光(早期のRPE障害を検出可能)、FA(FAFやOCTによって重要性は低下)、OCT(Ellipsoid zoneの欠損)、色覚検査(石原式、P-D-15、SPP2)、HFA(10-2または30-2)、多局所ERGを行うことが重要
リスク患者ではより頻回の検査(累積200g、肝・腎機能障害、視力障害、高齢者)
治療は投与を中止すること。体内からの排出が遅いため投与中止でも進行することがある。AAOのガイドラインでは網膜症は非可逆性でRPE消失以前に検出すべき(MM)
Persistent hypotony after trabeculectomy: incidence and associated factors in the Collaborative Bleb-Related Infection Incidence and Treatment Study
T Higashide et al (Japan)
Jpn J Ophthalmol 60(7/8) :309-318, 2016
レクトミー後の持続性低眼圧の発生率とその要因をCollaborative Bleb-Related Infection Incidence and Treatment Study (CBIITS)のデータから解析
CBIITS:MMC併用レクトミー後の濾過胞関連合併症の解析のため集められた多施設共同研究 2007.3.31までの2年間に登録された経過観察1-5年のデータ
34施設1249例1249眼に行われたあらゆる濾過手術のうち、MMC併用Trabeculectomy(白内障同時手術を含む)1098例1098眼を解析対象とした
持続低眼圧は5mmHg以下が6か月以上持続
不成功の定義:眼圧下降不十分(IOP>21mmHg、ベースラインから2回連続で<20%IOP、追加手術)、光覚喪失、持続低眼圧
LSLやニードリングは追加手術とはカウントせず
1098眼中138眼はデータ不完全、2眼はベースラインで光覚喪失、3眼は不完全な視力データ
955眼を調査対象とした
Limbal-base:550眼(57.6%)、白内障同時手術163眼(17.1%)、5年経過を終えたのは75.0%であった
術後平均眼圧は12mmHgで安定
全体の成功率は622/955眼(65.1%)、
270眼(28.3%)の眼圧下降不足のうち96眼(35.6%)で追加手術、28眼(10.8%)は眼圧21mmHgを超え、146眼(54.1%)は眼圧下降率が20%未満であった
27眼(2.8%)で光覚喪失し、そのうち8眼は純粋に光覚喪失のみで不成功
66眼(6.9%)で持続低眼圧、そのうち52眼では純粋に低眼圧のみで不成功であった
5年生存率は62.0±1.7%で、持続低眼圧を除くと68.0±1.6%であった
眼圧下降が不十分だが低眼圧となった症例が11例あり、うち6例は追加手術後に低眼圧となり、5眼は元の眼圧が8-16mmHgと低く、20%下降が得られなかった
眼圧下降十分な685眼で持続低眼圧となった55眼の1,3,5年での発生率はそれぞれ2.9±0.6%、6.1±0.9%、9.1±1.2%で、平均24か月後に生じた。 そのうち3眼は持続する低眼圧黄斑症を生じた
6/55眼では、フラップの縫合(2眼)、compression suture(1眼)、血清注射(1眼)、結膜被覆(1眼)、強膜穿刺(1眼)の処置を行った
逆に19眼(35%)でその後6mmHg以上の眼圧上昇があった
術後経過観察期間は低眼圧群のほうが有意に長かった
3例で術後46-49か月後に濾過胞感染を生じ、全例持続低眼圧であった
持続低眼圧をきたす要因としては、術前の低眼圧(1mmHg低いとリスクが5%増加)、Limbal-base incision、術後6か月以内にCDを生じたものであった (MM)
武井一夫、佐々木美千子、鈴木綾子、大山賢吉、高野なぎさ(つくばセントラル病院)
眼科臨床紀要 2016; 9(7): 563-567
【対象と方法】
・2013.6-12月の期間にミドリンP®およびネオシネジン点眼による散瞳検査を受けた1577名
・点眼後の外眼部炎発症の有無、点眼回数および頻度、年齢性別と発症率との関係を調査
・発症者には皮膚パッチテストによるアレルゲン検索
【結果】
・散瞳剤点眼による外眼部炎発症者は41名(2.6%)、散瞳回数の多い高齢者ほど有意に頻度が増加
・発症者の平均年齢(77.0±7.6歳)は非発症者のそれ(69.6±12.0歳)より有意に高かった(p=0.00002)
・年代ごとの頻回散瞳群の割合と外眼部炎発症率には非常に強い相関(R=0.96, p<0.01)【図1】
・皮膚パッチテスト(35名に施行)陽性:ネオシネジン®6名(17%)、ミドリンP®および塩酸フェニレフリン各5名(14%)、塩化ベンザルコニウムおよびミドリンM®各1名(3%)
【結論】
・①散瞳回数の増加により外眼部炎の発症確率が高まる可能性、②皮膚パッチテストによる確定診断は難しい、ことが示唆された
・外眼部炎の多くは、ミドリンP®、ネオシネジンの成分が多回数点眼によりアレルゲンとして感作されるⅣ型アレルギーの接触皮膚炎?と推察(MK)
武井一夫、佐々木美千子、鈴木綾子、大山賢吉、高野なぎさ(つくばセントラル病院)
眼科臨床紀要 2016; 9(7): 563-567
【対象と方法】
・2013.6-12月の期間にミドリンP®およびネオシネジン点眼による散瞳検査を受けた1577名
・点眼後の外眼部炎発症の有無、点眼回数および頻度、年齢性別と発症率との関係を調査
・発症者には皮膚パッチテストによるアレルゲン検索
【結果】
・散瞳剤点眼による外眼部炎発症者は41名(2.6%)、散瞳回数の多い高齢者ほど有意に頻度が増加
・発症者の平均年齢(77.0±7.6歳)は非発症者のそれ(69.6±12.0歳)より有意に高かった(p=0.00002)
・年代ごとの頻回散瞳群の割合と外眼部炎発症率には非常に強い相関(R=0.96, p<0.01)【図1】
・皮膚パッチテスト(35名に施行)陽性:ネオシネジン®6名(17%)、ミドリンP®および塩酸フェニレフリン各5名(14%)、塩化ベンザルコニウムおよびミドリンM®各1名(3%)
【結論】
・①散瞳回数の増加により外眼部炎の発症確率が高まる可能性、②皮膚パッチテストによる確定診断は難しい、ことが示唆された
・外眼部炎の多くは、ミドリンP®、ネオシネジンの成分が多回数点眼によりアレルゲンとして感作されるⅣ型アレルギーの接触皮膚炎と推察(MK)
稲用絢 他(東京大学)
臨床眼科 70 (6) :911-914,2016
目的:海外アイバンクのプレカット角膜および術直前にカットした国内ドナー角膜を用いたDSAEKの術後短期成績を比較検討した。
対象と方法:2011年1月-2015年7月に東京大学病院でDSAEKを施行された76眼。
海外プレカット角膜を使用した海外群と術直前にカットした国内ドナー角膜を用いた国内群間で視力、角膜内皮細胞密度(ECD)、primary graft failure (PGF)、移植片接着不良、拒絶反応の有無、ドナー年齢を比較検討した。
海外プレカット角膜と国内ドナー角膜どちらを使用するかは患者の希望により決定された。
結果:海外群20例22眼(女性15眠男性7眼) Fuchs角膜ジストロフィ32%、レーザー周辺虹彩切開後27%、白内障術後 9%、角膜内皮炎4%、落屑症候群5%、その他(外傷、原因不明、ICE症候群、急性緑内障発作後)23%。
国内群45例54眼(女性28 眼、男性26眼)、Fuchs角膜ジストロフィ26%、レーザー周辺虹彩切開後25%、白内障術後18%、角膜内皮炎7%、落屑症候群2%、角膜内皮移植片不全9%、その他13%。
国内群のドナ一年齢が高齢であった。
術前平均視力 海外群0.91 国内群1.11
術後視力 海外群 術後1ヶ月0.36、3ヶ月0.27、6ヶ月0.24
国内群 術後1ヶ月0.60、3ヶ月0.42、6ヶ月0.38
ECD 海外群 術前2784 cells/mm2、術後6ヶ月1994 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は31%だった。
国内群 術前2745 cells/mm2、術後6ヶ月1707 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は 37%だった。
視力およびECDの経過は海外群のほうが良好な傾向があるものの,統計学的に有意差があったのは術後1か月の視力のみであった。(p=0.01)
合併症は海外群でPGF 0眼、移植片接着不良1眼(4.6%)、拒絶反応0眼、国内群はPGF 5眼(9.3%)、移植片接着不良5眼(9.3%)、拒絶反応1眼(1.8%)だった。各合併症とも国内群群で発生率が高い傾向にあるが、いずれも統計学的有意差はなかった。
結論:輸送時間がプレカットされた移植片に与える影響は小さいことが推定される。
海外アイバンクでプレカット角膜を購入した場合、ミスカット角膜やプレカット後ECDが大幅に減少した角膜は除外される。また、プレカット精度の差によるグラフトの厚みや切断面の滑らかさが術後早期の角膜透明性回復および術後の高次収差に影響した可能性が推測された。海外プレカット角膜を用いたほうが術後の視力改善は早いが、術後のECDと合併症発生頻度には有意差がなかった。(CH)
津山、広瀬他(名古屋)
臨眼 70(5): 725-728, 2016
・ミノマイシン点滴で心肺停止。
・10万人に2例前後。術前の抗菌薬の全身投与を全例に行うことが良いかどうか検討する必要がある(TY)
Combination therapy with intravitreal tissue plasminogen activator and ranibizumab for subfoveal type 2 choroidal neovascularization.
Kachi I, Yasukawa T, Kato A, Takase N, Morita H, Kubota A, Hirano Y, Uemura A, Ogura Y.(名古屋市大)
Jpn J Ophthalmol. 2016 ;60(3):179-86.
【対象と方法】
・2型CNVを伴う典型AMD20眼;8眼にはranibizumabとtPA(40000)IUとを硝子体注射、12眼はコントロール群としてranibizumab硝子体注射のみ
*ランダム化なし、tPA群は4眼はranibizumab歴あり、4眼は未治療、コントロール群は12眼すべて未治療、投与は両群ともPRN
【結果】
・IVR/tPA群では治療後速やかに網膜下のフィブリン複合体が退縮(コントロール群は反応乏しい)
・矯正視力(ベースライン→6か月後、LogMAR)はIVR/tPA群で0.72→0.51と有意に改善、コントロール群は0.70→0.79と改善みられず
・総投与回数に差はみられず
【結論】
・tPAには2型CNVにより形成された網膜下線維性物質を退縮させる特異的な作用があり、抗VEGFとの相乗作用で視力改善の機会を増やせるかもしれない(MK)
Combination therapy with intravitreal tissue plasminogen activator and ranibizumab for subfoveal type 2 choroidal neovascularization.
Kachi I, Yasukawa T, Kato A, Takase N, Morita H, Kubota A, Hirano Y, Uemura A, Ogura Y.(名古屋市大)
Jpn J Ophthalmol. 2016 ;60(3):179-86.
【対象と方法】
・2型CNVを伴う典型AMD20眼;8眼にはranibizumabとtPA(40000)IUとを硝子体注射、12眼はコントロール群としてranibizumab硝子体注射のみ
*ランダム化なし、tPA群は4眼はranibizumab歴あり、4眼は未治療、コントロール群は12眼すべて未治療、投与は両群ともPRN
【結果】
・IVR/tPA群では治療後速やかに網膜下のフィブリン複合体が退縮(コントロール群は反応乏しい)
・矯正視力(ベースライン→6か月後、LogMAR)はIVR/tPA群で0.72→0.51と有意に改善、コントロール群は0.70→0.79と改善みられず
・総投与回数に差はみられず
【結論】
・tPAには2型CNVにより形成された網膜下線維性物質を退縮させる特異的な作用があり、抗VEGFとの相乗作用で視力改善の機会を増やせるかもしれない(MK)
小椋祐一郎、高橋寛二、飯田知弘、日本網膜硝子体学会硝子体注射ガイドライン委員会
日眼会誌 120(2): 87-90, 2016
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米国ガイドライン |
本邦ガイドライン |
周術期の抗菌薬使用 |
注射前・中・後ともルーチン使用が眼内炎を減らすエビデンス不十分 |
添付文書上は必要だが個別に判断 |
消毒薬 |
ポピドンヨード |
「ヨウ素系消毒薬」 |
マスク着用 |
患者 and/orスタッフ |
術者および介助者 |
ドレープやテガダームなど |
記載なし |
記載なし |
開瞼器 |
記載なし |
滅菌開瞼器 |
*どちらもヨウ素系消毒薬の使用、注射部位や注射針が眼瞼縁や睫毛に触れないよう注意することが重要
【ガイドライン本文より抜粋】
Ⅲ 方法
我が国において推奨される硝子体内注射方法は以下のとおりである。なお、この方法については欧米のガイドラインおよび我が国における研究を参考にした。なお、欧米のガイドラインでは、周術期(術前・術中・術後)における広域抗菌薬の常用については十分なエビデンスは存在しないと報告されている。以下に述べる方法はあくまでも推奨レベルであり、個々の対応については施設または施術者が責任を負うものである。臨床的判断のもと、個々の患者にとって最適と思われる方法を選択すべきである。
硝子体内注射の全般的注意事項
1)物品準備から投与に至るまで無菌操作を遵守する。
2)硝子体内注射に関する十分な経験のある眼科医が投与を行う。
3)各薬剤の添付文書を参考にする。
4)各施設の投与プロトコールに基づいて投与を行う。
硝子体注射前の注意点
1)硝子体内注射薬の薬剤添付文書では、投与3日前から広域抗菌薬を点眼することとされている。患者への抗菌薬の術前点眼の必要性については施設または施術者が個別に判断すべきである。
2)硝子体内注射に使用する薬剤(消毒液、局所麻酔薬、広域抗菌点眼薬および散瞳薬など)への過敏症、緑内障・高眼圧、脳梗塞の既往、妊婦または妊娠の可能性などについて事前に十分な問診を行う。小児に対する安全性は確立されていない。
3)注射当日は、直前のチェックとして、眼症状の変化(見え方の変化、眼または眼周囲に感染あるいは感染の疑いがないか)、全身状態の問診などを行う。
硝子体内注射手順
硝子体内注射のための必要物品を表2(略)に示す。手順は以下のとおりである。
1)治療前点眼:散瞳薬、局所麻酔薬を投与する。
2)術者、介助者はマスクを着用する。
3)術者は手指の消毒を行い、滅菌手袋を着用する。
4)術前の最終チェックとして、投与眼(左右)と投与する薬剤の確認を行う。
5)眼周囲皮膚、眼瞼縁、睫毛にヨウ素系消毒液を塗布する。塗布する順序は、眼瞼縁、睫毛、眼周囲皮膚の順とし、眼瞼縁および睫毛は鼻側から耳側に塗布する。余分な液は滅菌ガーゼで拭い取り、眼周囲の皮膚を乾燥させる。
6)結膜嚢内に希釈したヨウ素系消毒用洗浄液を投与し、しばらく放置する。
7)滅菌開瞼器で開瞼する。開瞼にあたっては、睫毛が術野から十分に除去されるような方法を画策する。
8)注射用シリンジを準備し、過量投与を防ぐため投与量の確認を行う。
9)硝子体内注射には30ゲージ注射針を用いる。滅菌鑷子で結膜組織を把持固定後、角膜輪部から3.5~4.0mm後方において注射針の刺入を行う。なお、注射針の刺入にあたっては、注射針が睫毛に接触しないよう注意し、水晶体、水平筋付着部近傍を避け、硝子体腔中心部に向けて注射針を刺入する。2回目以降の投与では、同一部位に繰り返し注射しないように、注射部位をずらして注射を行う。
10)薬液を硝子体内に緩徐に注入する。
11)注意深く注射針の抜針を行ったあと、薬液および液化硝子体の逆流を防ぐため、数秒間注射部位の結膜を鑷子で把持するか、滅菌綿棒にて圧迫する。
12)滅菌ガーゼで眼帯を行う。
硝子体内注射後の注意
1)抜針直後、患者の眼前において指数弁の有無をチェックする。光覚弁がない場合、視神経乳頭血流を確認して完全な血流途絶がみられれば、直ちに眼圧上昇の管理(前房穿刺など)を適切に行う。
2)硝子体内注射薬の薬剤添付文書では、投与2~3日後まで広域抗菌薬を点眼することとされている。患者への術後点眼の必要性については施設または施術者が個別に判断すべきである。
3)一過性霧視などが現れることがあるため、症状があれば、回復するまで機械類の操作や自動車などの運転に従事しないように指導する。
4)眼痛、眼の不快感、充血の悪化、羞明、飛蚊または見え方の変化など、眼内炎や感染の兆候が現れたら直ちに連絡するように患者指導を行う。また、万一感染症が発症しても早期治療ができるように、注射後1週間程度は上記のような症状に注意するように指導を行う。
5)注射後は、各施設で決められた規定の観察日に眼内炎のチェックを行う。(MK)
杉浦敦(静岡)
IOL&RS 30(1): 59-66, 2016
・落屑症候群の白内障に対して、IOLを水晶体嚢捕捉固定し、ループを毛様溝固定にすることによって将来のチン氏帯断裂に備えた(TY)
角膜内皮移植後の角膜片真菌感染症を認めた3例
冨田他(東京医科歯科大)
日眼 119(11): 819-820, 2015
・術中に採取した角膜輪部、保存液を培養し、9例/1,303例で真菌が検出された。
・DSAEKだけでは、4例/433例で、そのうち、感染を発症したのは2例である。
・移植片や培養液の培養検査は重要である。(TY)
小口 優ほか(大雄会第一病院、中京病院)
眼科臨床紀要 8(9): 661-664, 2015
【背景】従来、線維柱帯切開術(TOM)は手術適応として不向きとされてきた外傷性緑内障に対し、Trabectome®を用いたTOMが有効であった症例を経験したので報告した。
【症例】40歳男性、平成3年19歳時の交通事故後に左眼外傷性緑内障を発症し、平成24年12月、手術目的で当科へ紹介受診した。6時~8時にかけて虹彩離断と9時に虹彩癒着を伴っていた。
・当院初診時眼圧は右眼15mmHg、左眼22mmHg、Humphrey視野計にて左眼上方および下方の弓状暗点を認めており、上方角膜切開より4時30分~8時にかけてTOMを約100°施行した。
・術後眼圧は10~20mmHgの間で経過した。
【結論】TOMは外傷性緑内障に対して眼圧下降を得られることがあるため、結膜を温存できる本術式は二期的な濾過手術にも対応できることから外傷性緑内障に対する手術選択の一つとなりえた。(MK)