武井一夫、佐々木美千子、鈴木綾子、大山賢吉、高野なぎさ(つくばセントラル病院)
眼科臨床紀要 2016; 9(7): 563-567
【対象と方法】
・2013.6-12月の期間にミドリンP®およびネオシネジン点眼による散瞳検査を受けた1577名
・点眼後の外眼部炎発症の有無、点眼回数および頻度、年齢性別と発症率との関係を調査
・発症者には皮膚パッチテストによるアレルゲン検索
【結果】
・散瞳剤点眼による外眼部炎発症者は41名(2.6%)、散瞳回数の多い高齢者ほど有意に頻度が増加
・発症者の平均年齢(77.0±7.6歳)は非発症者のそれ(69.6±12.0歳)より有意に高かった(p=0.00002)
・年代ごとの頻回散瞳群の割合と外眼部炎発症率には非常に強い相関(R=0.96, p<0.01)【図1】
・皮膚パッチテスト(35名に施行)陽性:ネオシネジン®6名(17%)、ミドリンP®および塩酸フェニレフリン各5名(14%)、塩化ベンザルコニウムおよびミドリンM®各1名(3%)
【結論】
・①散瞳回数の増加により外眼部炎の発症確率が高まる可能性、②皮膚パッチテストによる確定診断は難しい、ことが示唆された
・外眼部炎の多くは、ミドリンP®、ネオシネジンの成分が多回数点眼によりアレルゲンとして感作されるⅣ型アレルギーの接触皮膚炎?と推察(MK)
武井一夫、佐々木美千子、鈴木綾子、大山賢吉、高野なぎさ(つくばセントラル病院)
眼科臨床紀要 2016; 9(7): 563-567
【対象と方法】
・2013.6-12月の期間にミドリンP®およびネオシネジン点眼による散瞳検査を受けた1577名
・点眼後の外眼部炎発症の有無、点眼回数および頻度、年齢性別と発症率との関係を調査
・発症者には皮膚パッチテストによるアレルゲン検索
【結果】
・散瞳剤点眼による外眼部炎発症者は41名(2.6%)、散瞳回数の多い高齢者ほど有意に頻度が増加
・発症者の平均年齢(77.0±7.6歳)は非発症者のそれ(69.6±12.0歳)より有意に高かった(p=0.00002)
・年代ごとの頻回散瞳群の割合と外眼部炎発症率には非常に強い相関(R=0.96, p<0.01)【図1】
・皮膚パッチテスト(35名に施行)陽性:ネオシネジン®6名(17%)、ミドリンP®および塩酸フェニレフリン各5名(14%)、塩化ベンザルコニウムおよびミドリンM®各1名(3%)
【結論】
・①散瞳回数の増加により外眼部炎の発症確率が高まる可能性、②皮膚パッチテストによる確定診断は難しい、ことが示唆された
・外眼部炎の多くは、ミドリンP®、ネオシネジンの成分が多回数点眼によりアレルゲンとして感作されるⅣ型アレルギーの接触皮膚炎と推察(MK)
稲用絢 他(東京大学)
臨床眼科 70 (6) :911-914,2016
目的:海外アイバンクのプレカット角膜および術直前にカットした国内ドナー角膜を用いたDSAEKの術後短期成績を比較検討した。
対象と方法:2011年1月-2015年7月に東京大学病院でDSAEKを施行された76眼。
海外プレカット角膜を使用した海外群と術直前にカットした国内ドナー角膜を用いた国内群間で視力、角膜内皮細胞密度(ECD)、primary graft failure (PGF)、移植片接着不良、拒絶反応の有無、ドナー年齢を比較検討した。
海外プレカット角膜と国内ドナー角膜どちらを使用するかは患者の希望により決定された。
結果:海外群20例22眼(女性15眠男性7眼) Fuchs角膜ジストロフィ32%、レーザー周辺虹彩切開後27%、白内障術後 9%、角膜内皮炎4%、落屑症候群5%、その他(外傷、原因不明、ICE症候群、急性緑内障発作後)23%。
国内群45例54眼(女性28 眼、男性26眼)、Fuchs角膜ジストロフィ26%、レーザー周辺虹彩切開後25%、白内障術後18%、角膜内皮炎7%、落屑症候群2%、角膜内皮移植片不全9%、その他13%。
国内群のドナ一年齢が高齢であった。
術前平均視力 海外群0.91 国内群1.11
術後視力 海外群 術後1ヶ月0.36、3ヶ月0.27、6ヶ月0.24
国内群 術後1ヶ月0.60、3ヶ月0.42、6ヶ月0.38
ECD 海外群 術前2784 cells/mm2、術後6ヶ月1994 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は31%だった。
国内群 術前2745 cells/mm2、術後6ヶ月1707 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は 37%だった。
視力およびECDの経過は海外群のほうが良好な傾向があるものの,統計学的に有意差があったのは術後1か月の視力のみであった。(p=0.01)
合併症は海外群でPGF 0眼、移植片接着不良1眼(4.6%)、拒絶反応0眼、国内群はPGF 5眼(9.3%)、移植片接着不良5眼(9.3%)、拒絶反応1眼(1.8%)だった。各合併症とも国内群群で発生率が高い傾向にあるが、いずれも統計学的有意差はなかった。
結論:輸送時間がプレカットされた移植片に与える影響は小さいことが推定される。
海外アイバンクでプレカット角膜を購入した場合、ミスカット角膜やプレカット後ECDが大幅に減少した角膜は除外される。また、プレカット精度の差によるグラフトの厚みや切断面の滑らかさが術後早期の角膜透明性回復および術後の高次収差に影響した可能性が推測された。海外プレカット角膜を用いたほうが術後の視力改善は早いが、術後のECDと合併症発生頻度には有意差がなかった。(CH)
津山、広瀬他(名古屋)
臨眼 70(5): 725-728, 2016
・ミノマイシン点滴で心肺停止。
・10万人に2例前後。術前の抗菌薬の全身投与を全例に行うことが良いかどうか検討する必要がある(TY)
Combination therapy with intravitreal tissue plasminogen activator and ranibizumab for subfoveal type 2 choroidal neovascularization.
Kachi I, Yasukawa T, Kato A, Takase N, Morita H, Kubota A, Hirano Y, Uemura A, Ogura Y.(名古屋市大)
Jpn J Ophthalmol. 2016 ;60(3):179-86.
【対象と方法】
・2型CNVを伴う典型AMD20眼;8眼にはranibizumabとtPA(40000)IUとを硝子体注射、12眼はコントロール群としてranibizumab硝子体注射のみ
*ランダム化なし、tPA群は4眼はranibizumab歴あり、4眼は未治療、コントロール群は12眼すべて未治療、投与は両群ともPRN
【結果】
・IVR/tPA群では治療後速やかに網膜下のフィブリン複合体が退縮(コントロール群は反応乏しい)
・矯正視力(ベースライン→6か月後、LogMAR)はIVR/tPA群で0.72→0.51と有意に改善、コントロール群は0.70→0.79と改善みられず
・総投与回数に差はみられず
【結論】
・tPAには2型CNVにより形成された網膜下線維性物質を退縮させる特異的な作用があり、抗VEGFとの相乗作用で視力改善の機会を増やせるかもしれない(MK)
Combination therapy with intravitreal tissue plasminogen activator and ranibizumab for subfoveal type 2 choroidal neovascularization.
Kachi I, Yasukawa T, Kato A, Takase N, Morita H, Kubota A, Hirano Y, Uemura A, Ogura Y.(名古屋市大)
Jpn J Ophthalmol. 2016 ;60(3):179-86.
【対象と方法】
・2型CNVを伴う典型AMD20眼;8眼にはranibizumabとtPA(40000)IUとを硝子体注射、12眼はコントロール群としてranibizumab硝子体注射のみ
*ランダム化なし、tPA群は4眼はranibizumab歴あり、4眼は未治療、コントロール群は12眼すべて未治療、投与は両群ともPRN
【結果】
・IVR/tPA群では治療後速やかに網膜下のフィブリン複合体が退縮(コントロール群は反応乏しい)
・矯正視力(ベースライン→6か月後、LogMAR)はIVR/tPA群で0.72→0.51と有意に改善、コントロール群は0.70→0.79と改善みられず
・総投与回数に差はみられず
【結論】
・tPAには2型CNVにより形成された網膜下線維性物質を退縮させる特異的な作用があり、抗VEGFとの相乗作用で視力改善の機会を増やせるかもしれない(MK)
小椋祐一郎、高橋寛二、飯田知弘、日本網膜硝子体学会硝子体注射ガイドライン委員会
日眼会誌 120(2): 87-90, 2016
|
米国ガイドライン |
本邦ガイドライン |
周術期の抗菌薬使用 |
注射前・中・後ともルーチン使用が眼内炎を減らすエビデンス不十分 |
添付文書上は必要だが個別に判断 |
消毒薬 |
ポピドンヨード |
「ヨウ素系消毒薬」 |
マスク着用 |
患者 and/orスタッフ |
術者および介助者 |
ドレープやテガダームなど |
記載なし |
記載なし |
開瞼器 |
記載なし |
滅菌開瞼器 |
*どちらもヨウ素系消毒薬の使用、注射部位や注射針が眼瞼縁や睫毛に触れないよう注意することが重要
【ガイドライン本文より抜粋】
Ⅲ 方法
我が国において推奨される硝子体内注射方法は以下のとおりである。なお、この方法については欧米のガイドラインおよび我が国における研究を参考にした。なお、欧米のガイドラインでは、周術期(術前・術中・術後)における広域抗菌薬の常用については十分なエビデンスは存在しないと報告されている。以下に述べる方法はあくまでも推奨レベルであり、個々の対応については施設または施術者が責任を負うものである。臨床的判断のもと、個々の患者にとって最適と思われる方法を選択すべきである。
硝子体内注射の全般的注意事項
1)物品準備から投与に至るまで無菌操作を遵守する。
2)硝子体内注射に関する十分な経験のある眼科医が投与を行う。
3)各薬剤の添付文書を参考にする。
4)各施設の投与プロトコールに基づいて投与を行う。
硝子体注射前の注意点
1)硝子体内注射薬の薬剤添付文書では、投与3日前から広域抗菌薬を点眼することとされている。患者への抗菌薬の術前点眼の必要性については施設または施術者が個別に判断すべきである。
2)硝子体内注射に使用する薬剤(消毒液、局所麻酔薬、広域抗菌点眼薬および散瞳薬など)への過敏症、緑内障・高眼圧、脳梗塞の既往、妊婦または妊娠の可能性などについて事前に十分な問診を行う。小児に対する安全性は確立されていない。
3)注射当日は、直前のチェックとして、眼症状の変化(見え方の変化、眼または眼周囲に感染あるいは感染の疑いがないか)、全身状態の問診などを行う。
硝子体内注射手順
硝子体内注射のための必要物品を表2(略)に示す。手順は以下のとおりである。
1)治療前点眼:散瞳薬、局所麻酔薬を投与する。
2)術者、介助者はマスクを着用する。
3)術者は手指の消毒を行い、滅菌手袋を着用する。
4)術前の最終チェックとして、投与眼(左右)と投与する薬剤の確認を行う。
5)眼周囲皮膚、眼瞼縁、睫毛にヨウ素系消毒液を塗布する。塗布する順序は、眼瞼縁、睫毛、眼周囲皮膚の順とし、眼瞼縁および睫毛は鼻側から耳側に塗布する。余分な液は滅菌ガーゼで拭い取り、眼周囲の皮膚を乾燥させる。
6)結膜嚢内に希釈したヨウ素系消毒用洗浄液を投与し、しばらく放置する。
7)滅菌開瞼器で開瞼する。開瞼にあたっては、睫毛が術野から十分に除去されるような方法を画策する。
8)注射用シリンジを準備し、過量投与を防ぐため投与量の確認を行う。
9)硝子体内注射には30ゲージ注射針を用いる。滅菌鑷子で結膜組織を把持固定後、角膜輪部から3.5~4.0mm後方において注射針の刺入を行う。なお、注射針の刺入にあたっては、注射針が睫毛に接触しないよう注意し、水晶体、水平筋付着部近傍を避け、硝子体腔中心部に向けて注射針を刺入する。2回目以降の投与では、同一部位に繰り返し注射しないように、注射部位をずらして注射を行う。
10)薬液を硝子体内に緩徐に注入する。
11)注意深く注射針の抜針を行ったあと、薬液および液化硝子体の逆流を防ぐため、数秒間注射部位の結膜を鑷子で把持するか、滅菌綿棒にて圧迫する。
12)滅菌ガーゼで眼帯を行う。
硝子体内注射後の注意
1)抜針直後、患者の眼前において指数弁の有無をチェックする。光覚弁がない場合、視神経乳頭血流を確認して完全な血流途絶がみられれば、直ちに眼圧上昇の管理(前房穿刺など)を適切に行う。
2)硝子体内注射薬の薬剤添付文書では、投与2~3日後まで広域抗菌薬を点眼することとされている。患者への術後点眼の必要性については施設または施術者が個別に判断すべきである。
3)一過性霧視などが現れることがあるため、症状があれば、回復するまで機械類の操作や自動車などの運転に従事しないように指導する。
4)眼痛、眼の不快感、充血の悪化、羞明、飛蚊または見え方の変化など、眼内炎や感染の兆候が現れたら直ちに連絡するように患者指導を行う。また、万一感染症が発症しても早期治療ができるように、注射後1週間程度は上記のような症状に注意するように指導を行う。
5)注射後は、各施設で決められた規定の観察日に眼内炎のチェックを行う。(MK)
杉浦敦(静岡)
IOL&RS 30(1): 59-66, 2016
・落屑症候群の白内障に対して、IOLを水晶体嚢捕捉固定し、ループを毛様溝固定にすることによって将来のチン氏帯断裂に備えた(TY)
角膜内皮移植後の角膜片真菌感染症を認めた3例
冨田他(東京医科歯科大)
日眼 119(11): 819-820, 2015
・術中に採取した角膜輪部、保存液を培養し、9例/1,303例で真菌が検出された。
・DSAEKだけでは、4例/433例で、そのうち、感染を発症したのは2例である。
・移植片や培養液の培養検査は重要である。(TY)
小口 優ほか(大雄会第一病院、中京病院)
眼科臨床紀要 8(9): 661-664, 2015
【背景】従来、線維柱帯切開術(TOM)は手術適応として不向きとされてきた外傷性緑内障に対し、Trabectome®を用いたTOMが有効であった症例を経験したので報告した。
【症例】40歳男性、平成3年19歳時の交通事故後に左眼外傷性緑内障を発症し、平成24年12月、手術目的で当科へ紹介受診した。6時~8時にかけて虹彩離断と9時に虹彩癒着を伴っていた。
・当院初診時眼圧は右眼15mmHg、左眼22mmHg、Humphrey視野計にて左眼上方および下方の弓状暗点を認めており、上方角膜切開より4時30分~8時にかけてTOMを約100°施行した。
・術後眼圧は10~20mmHgの間で経過した。
【結論】TOMは外傷性緑内障に対して眼圧下降を得られることがあるため、結膜を温存できる本術式は二期的な濾過手術にも対応できることから外傷性緑内障に対する手術選択の一つとなりえた。(MK)
宇野 真(眼科好明館)
日眼会誌 119(8): 521-526, 2015
【背景】パラコート含有除草剤による眼障害は。受傷直後は軽微であっても数日から1週間かけて増悪する特異な経過をたどる。その毒性は、フリーラジカルを含む活性酸素種による酸化ストレスが主体であると考えられている。
【症例】82歳、女性。農作業中にパラコート含有除草剤の原液が左眼に飛入し、水で洗い流した。
・受傷後2日の初診時に中等度の角膜びらんを認め、徐々に増悪した。
・通常の治療に抵抗性であったが、2%レバミピド点眼処方後に、角膜びらんは速やかに軽快した。
【結論】レバミピドにはラジカルスカベンジャーとしての作用があるため酸化ストレス障害を軽減させ、パラコートによる角膜障害に著効したと考えられる。(MK)
Short Pulse Duration High-Power Laser Photocoagulation during Vitrectomy for Diabetic Retinopathy Reduces Postoperative Inflammation
Sugimoto M, Ichio A, Kondo M. (三重大)
PLOS ONE Aug 14, 2015, DOI: 10.1371/journal.pone.0135126
【目的】糖尿病網膜症に対する硝子体手術中に行う網膜光凝固(PC)を、従来のPCに比べ低侵襲のパターンスキャンレーザーに準じた短時間・高パワーの条件下で行い、術後炎症が軽減されるかを評価
【対象と方法】22例22眼の連続症例。従来PC(cPC)群12眼(パワー120~150mW、照射時間0.2秒、間隔0.2秒)およびショートパルスPC(sPC)群10眼(パワー340~360mW、照射時間0.02秒、間隔0.2秒)に前向きに割付け。炎症の程度は術前・術翌日・術後1・4・12週にレーザーフレアフォトセルメトリによる前房水フレア値を計測して比較。
【結果】sPC群の方が総照射数は有意に多かったが(P=0.03)、総照射エネルギー量は有意に低かった(P=0.007)。【Tab.2】
前房水フレア値:術前および術翌日には両群間に有意差なかったが、術後1週ではsPC群で有意に低下(P=0.04)し、この差は術後4週、12週まで持続(P<0.05)した。
手術時間はsPC群の方が有意に短かった(P=0.03)【Tab.1】
【結論】短時間・高パワー条件の術中ショートパルスPCは術後炎症の軽減に寄与する。(MK)
Microcystic inner nuclear layer changes and retinal nerve fiber layer defects in eyes with glaucoma.
長谷川智子他(京都大)
Plos One 10(6)e0130175: 1-17, 2015
・POAG133例217眼、preperimetric緑内障32例41眼、正常者117例181眼で黄斑部の内顆粒層内の微小チスト病巣について検討した。
・検討範囲は黄斑部の上下30°左右15°の範囲である。
・緑内障眼の6%に見つかったが、他の群では見つからなかった。
・微小チストが見つかった群の進行緑内障の比率は76.9%、そうでない群では41.7%で、進行緑内障の比率が有意に高く(p=0.013)、2年以上経過観察中の視野のMD slope(dB/year)は微小チストあり群では-0.43±4.47:なし群-0.15±0.44で、あり群で有意に悪かった(p=0.027)。
・微小チストの存在は年齢、性、屈折、眼軸長、眼圧や視野のMD値とは関連がなかった。
・緑内障性視野障害の進展に伴って微小チストの発生するものもあった。
・また、微小チストのある部位ではRNFL厚(p=0.013)、GCL+内網状層厚(p=0.023)は有意に薄く、内顆粒層厚は有意に厚かった(p=0.002)。
・微小チストは緑内障性の局所的で進行性の障害があることを示唆している(図)(TY)
川野 純廣ら(鹿児島大)
臨床眼科 69(5): 657-662, 2015
【目的】細隙灯顕微鏡用のスマートフォンアタッチメントの作製。
【対象と方法】規格瓶No.8K(PS-8K瓶、FDA認証No.7129、第一硝子株式会社)のキャップ中心に約9mmの穴をあけ、市販のスマートフォンケースを接着。スマートフォン内蔵の写真撮影ソフトを使用し細隙灯顕微鏡写真を撮影。
【結果】本アタッチメントにより前眼部、角膜、虹彩、水晶体に加え、眼底撮影も可能であった。
【考察】規格瓶アタッチメントは安価に作製でき、臨床使用も容易であった。前眼部写真撮影設備や眼底カメラがない施設での治療効果の判定や、記録情報を遠隔地に送信することで医療過疎地域での眼科診療支援などに有用である。(MK)
加治優一(筑波)
あたらしい眼科32(5):657-660, 2015
ニキビダニは最も身近な寄生生物
ほぼ100%の人にニキビダニが毛穴に寄生していると考えられる
気よりもやや細い程度の大きさのため、顕微鏡で容易に観察することができるが、毛穴に頭を突っ込んでいるのでお尻の部分しか表面に出ていないこと、ほぼ透明なので、毛根に付着した油や汗と見誤りやすい
通常は何の症状も引き起こさないが、異常増殖すると難治性のニキビや脱毛の原因となる
眼科的には眼瞼炎やドライアイの症状悪化に関与しているといわれる
はっきり見るには、睫毛を数本抜去して光学顕微鏡で観察するとみえる
従来の治療に抵抗性の眼瞼炎の原因として念頭に置いておくべき
マイボーム腺の開口部に引っ掛かり、マイボーム腺梗塞や霰粒腫の原因となりうる
駆除するにはTea Tree Oilが有効 数か月を要する
Tea Tree Oil入りの洗顔石けんや化粧水の利用をすすめる(薬剤アレルギーが起きうることも説明する必要あり)(MM)
森川涼子(大阪)
あたらしい眼科32(5):711-714, 2015
表在性膀胱癌術後に再発予防目的で、BCG膀胱内注入療法がおこなわれている
その副作用としてReiter症候群が知られ、尿路・腸管感染症の後しばらくして発症する「関節炎、尿道炎、結膜炎」を三徴とする症候群
多量の粘液性膿性眼脂、濾胞・乳頭は認めない、眼瞼結膜の高度な充血、結節状の結膜浮腫と角膜輪部の白色浸潤
結膜は関節炎やぶどう膜炎に先行し、初期に生じ、比較的軽症で一過性である
膀胱注入療法を複数回行った後に発症(HLA-27の関与ではなく、度重なる抗原刺激が惹起するのではないか)(MM)
古谷公一ら (日本大学)
臨眼 69(4): 529-534, 2015
・44歳男性軟式野球ボールで左眼受傷
・耳側120度に毛様体解離(隅角鏡で検査)
・外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症:毛様体解離による上脈絡膜腔への房水の流出増大と毛様体損傷による房水産生量の低下により発症
・毛様体解離の範囲が90度以上、発症時の眼圧が4mmHg以下で、1か月以上にわたり低眼圧黄斑症が持続する症例に対して、外科的治療に踏み切るべき(井上ら:眼科手術2007)
・治療法として、
・毛様体解離部光凝固:60度未満の解離(Joondeph: Ophthalmic Surg 1980)
・毛様体縫合術:強膜半層切開 解離部毛様体と強膜床をU字縫合、強膜床にジアテルミー凝固(藤野ら:臨眼1981)
・シリコンスポンジ(柴田ら 臨眼2009)
・眼内レンズのループによる圧迫、硝子体手術、ガスタンポナーデ(桜庭ら眼臨医報1999)
・低侵襲小切開経強膜毛様体縫合術:強膜弁不要、吸収糸を使うことで炎症から毛様体接着5-0吸収糸(愛新覚羅ら臨眼2012) 術後の前房出血、硝子体出血
・本法:8-0吸収糸で行った(MM)
伊藤麻、堀口正之他(籐保大)
眼科手術 28(4): 615-618, 2015
・硝子体出血例の白内障手術において、トリアムシノロンを硝子体内へ注入し、術中の水晶体の視認性を改善させた。TAが顕微鏡光を反射させて視認性が向上した(図)(TY)
後藤憲仁(獨協大)
IOL&RS 29(3): 367-371, 2015
・白内障手術後にドライアイを発症することが知られている。
・白色家兎に乾燥暴露2週間前からムコスタUD点、ジクアス点を1日4回点眼し、1時間開瞼器で角膜暴露すると、両点眼群ともコントロール群より有意に角膜上皮障害を抑制し、殊にジクアス群では殊に結膜杯細胞障害を抑制した。
・白内障手術患者でムコスタ点眼を術前1週間から術後3か月点眼した群ではBUTが術後有意に増加していた(図)(TY)
渡辺純一 ら (南青山アイクリニック)
あたらしい眼科 31(7): 1047-1051, 2014
・オートレフケラトメーターは角膜全面と後面が同一カーブと仮定して屈折を出してくるが、LASIK後では前面の度数が変化しているが後面は変化していない。また中心ずれなどが生じていたりして、非対称性が強い場合など、オートレフケラトメーターでの測定値を用いると遠視側にずれてしまう。
・OPD-Scanの瞳孔中心3mmでの屈折力(APP)とオートレフケラトメーターの測定値での誤差を非対称(+)群と非対称(-)群に分けてCamellin-Calossi式で予測値と実際の結果を比較
・角膜屈折力: (+)群 レフケラ 38.48D APP 37.8D
(-)群 レフケラ 39.6D APP 39.4D APPで有意差あり
・術後屈折予測値と実際の結果の差:
(+)群 レフケラ 1.22D APP 0.53D
(-)群 レフケラ0.27D APP 0.12D レフケラでは有意差あり
・LASIK眼では単純にレフケラではなく、瞳孔中心での屈折力などを用いる必要がある
・CASIAではACCP(average central corneal power)がAPPに相当(MM)