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その他のジャーナル

2015
119巻

パラコート含有除草剤による角膜障害:2%レバミピド点眼が著効した1例

その他のジャーナル 119巻 (8号) 2015

宇野 真(眼科好明館)
日眼会誌 119(8): 521-526, 2015
【背景】パラコート含有除草剤による眼障害は。受傷直後は軽微であっても数日から1週間かけて増悪する特異な経過をたどる。その毒性は、フリーラジカルを含む活性酸素種による酸化ストレスが主体であると考えられている。
【症例】82歳、女性。農作業中にパラコート含有除草剤の原液が左眼に飛入し、水で洗い流した。
・受傷後2日の初診時に中等度の角膜びらんを認め、徐々に増悪した。
・通常の治療に抵抗性であったが、2%レバミピド点眼処方後に、角膜びらんは速やかに軽快した。
【結論】レバミピドにはラジカルスカベンジャーとしての作用があるため酸化ストレス障害を軽減させ、パラコートによる角膜障害に著効したと考えられる。(MK)

2015
8巻

糖尿病網膜症に対する硝子体手術時のショートパルス・高パワー条件の網膜光凝固は術後炎症を軽減する

その他のジャーナル 8巻 (8号) 2015

Short Pulse Duration High-Power Laser Photocoagulation during Vitrectomy for Diabetic Retinopathy Reduces Postoperative Inflammation
Sugimoto M, Ichio A, Kondo M. (三重大)
PLOS ONE  Aug 14, 2015,  DOI: 10.1371/journal.pone.0135126
【目的】糖尿病網膜症に対する硝子体手術中に行う網膜光凝固(PC)を、従来のPCに比べ低侵襲のパターンスキャンレーザーに準じた短時間・高パワーの条件下で行い、術後炎症が軽減されるかを評価
【対象と方法】22例22眼の連続症例。従来PC(cPC)群12眼(パワー120~150mW、照射時間0.2秒、間隔0.2秒)およびショートパルスPC(sPC)群10眼(パワー340~360mW、照射時間0.02秒、間隔0.2秒)に前向きに割付け。炎症の程度は術前・術翌日・術後1・4・12週にレーザーフレアフォトセルメトリによる前房水フレア値を計測して比較。
【結果】sPC群の方が総照射数は有意に多かったが(P=0.03)、総照射エネルギー量は有意に低かった(P=0.007)。【Tab.2】
前房水フレア値:術前および術翌日には両群間に有意差なかったが、術後1週ではsPC群で有意に低下(P=0.04)し、この差は術後4週、12週まで持続(P<0.05)した。
手術時間はsPC群の方が有意に短かった(P=0.03)【Tab.1】
【結論】短時間・高パワー条件の術中ショートパルスPCは術後炎症の軽減に寄与する。(MK)

2015
10巻

緑内障で見られる内顆粒層内の微小チストについて

その他のジャーナル 10巻 (6号) 2015

Microcystic inner nuclear layer changes and retinal nerve fiber layer defects in eyes with glaucoma.
長谷川智子他(京都大)
Plos One 10(6)e0130175: 1-17, 2015
・POAG133例217眼、preperimetric緑内障32例41眼、正常者117例181眼で黄斑部の内顆粒層内の微小チスト病巣について検討した。
・検討範囲は黄斑部の上下30°左右15°の範囲である。
・緑内障眼の6%に見つかったが、他の群では見つからなかった。
・微小チストが見つかった群の進行緑内障の比率は76.9%、そうでない群では41.7%で、進行緑内障の比率が有意に高く(p=0.013)、2年以上経過観察中の視野のMD slope(dB/year)は微小チストあり群では-0.43±4.47:なし群-0.15±0.44で、あり群で有意に悪かった(p=0.027)。
・微小チストの存在は年齢、性、屈折、眼軸長、眼圧や視野のMD値とは関連がなかった。
・緑内障性視野障害の進展に伴って微小チストの発生するものもあった。
・また、微小チストのある部位ではRNFL厚(p=0.013)、GCL+内網状層厚(p=0.023)は有意に薄く、内顆粒層厚は有意に厚かった(p=0.002)。
・微小チストは緑内障性の局所的で進行性の障害があることを示唆している(図)(TY)

2015
69巻

細隙灯顕微鏡写真を得るためのスマートフォンアタッチメントの作製

その他のジャーナル 69巻 (5号) 2015

川野 純廣ら(鹿児島大)
臨床眼科 69(5): 657-662, 2015
【目的】細隙灯顕微鏡用のスマートフォンアタッチメントの作製。
【対象と方法】規格瓶No.8K(PS-8K瓶、FDA認証No.7129、第一硝子株式会社)のキャップ中心に約9mmの穴をあけ、市販のスマートフォンケースを接着。スマートフォン内蔵の写真撮影ソフトを使用し細隙灯顕微鏡写真を撮影。
【結果】本アタッチメントにより前眼部、角膜、虹彩、水晶体に加え、眼底撮影も可能であった。
【考察】規格瓶アタッチメントは安価に作製でき、臨床使用も容易であった。前眼部写真撮影設備や眼底カメラがない施設での治療効果の判定や、記録情報を遠隔地に送信することで医療過疎地域での眼科診療支援などに有用である。(MK)

2015
32巻

ニキビダニ

その他のジャーナル 32巻 (5号) 2015

加治優一(筑波)
あたらしい眼科32(5):657-660, 2015
ニキビダニは最も身近な寄生生物
ほぼ100%の人にニキビダニが毛穴に寄生していると考えられる
気よりもやや細い程度の大きさのため、顕微鏡で容易に観察することができるが、毛穴に頭を突っ込んでいるのでお尻の部分しか表面に出ていないこと、ほぼ透明なので、毛根に付着した油や汗と見誤りやすい
通常は何の症状も引き起こさないが、異常増殖すると難治性のニキビや脱毛の原因となる
眼科的には眼瞼炎やドライアイの症状悪化に関与しているといわれる
はっきり見るには、睫毛を数本抜去して光学顕微鏡で観察するとみえる
従来の治療に抵抗性の眼瞼炎の原因として念頭に置いておくべき
マイボーム腺の開口部に引っ掛かり、マイボーム腺梗塞や霰粒腫の原因となりうる
駆除するにはTea Tree Oilが有効 数か月を要する
Tea Tree Oil入りの洗顔石けんや化粧水の利用をすすめる(薬剤アレルギーが起きうることも説明する必要あり)(MM)

2015
32巻

BCG膀胱内注入療法で生じたReiter症候群の結膜炎の特徴

その他のジャーナル 32巻 (5号) 2015

森川涼子(大阪)
あたらしい眼科32(5):711-714, 2015

表在性膀胱癌術後に再発予防目的で、BCG膀胱内注入療法がおこなわれている
その副作用としてReiter症候群が知られ、尿路・腸管感染症の後しばらくして発症する「関節炎、尿道炎、結膜炎」を三徴とする症候群
多量の粘液性膿性眼脂、濾胞・乳頭は認めない、眼瞼結膜の高度な充血、結節状の結膜浮腫と角膜輪部の白色浸潤
結膜は関節炎やぶどう膜炎に先行し、初期に生じ、比較的軽症で一過性である
膀胱注入療法を複数回行った後に発症(HLA-27の関与ではなく、度重なる抗原刺激が惹起するのではないか)(MM)

2015
69巻

外傷性毛様体解離に対する8-0吸収糸を使用した強膜毛様体縫合術

その他のジャーナル 69巻 (4号) 2015

古谷公一ら (日本大学)
臨眼 69(4): 529-534, 2015
・44歳男性軟式野球ボールで左眼受傷
・耳側120度に毛様体解離(隅角鏡で検査)
・外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症:毛様体解離による上脈絡膜腔への房水の流出増大と毛様体損傷による房水産生量の低下により発症
・毛様体解離の範囲が90度以上、発症時の眼圧が4mmHg以下で、1か月以上にわたり低眼圧黄斑症が持続する症例に対して、外科的治療に踏み切るべき(井上ら:眼科手術2007)
・治療法として、
・毛様体解離部光凝固:60度未満の解離(Joondeph: Ophthalmic Surg 1980)
・毛様体縫合術:強膜半層切開 解離部毛様体と強膜床をU字縫合、強膜床にジアテルミー凝固(藤野ら:臨眼1981)
・シリコンスポンジ(柴田ら 臨眼2009)
・眼内レンズのループによる圧迫、硝子体手術、ガスタンポナーデ(桜庭ら眼臨医報1999)
・低侵襲小切開経強膜毛様体縫合術:強膜弁不要、吸収糸を使うことで炎症から毛様体接着5-0吸収糸(愛新覚羅ら臨眼2012) 術後の前房出血、硝子体出血
・本法:8-0吸収糸で行った(MM)

2015
28巻

硝子体腔内トリアムシノロンを用いた白内障手術

その他のジャーナル 28巻 (4号) 2015

伊藤麻、堀口正之他(籐保大)
眼科手術 28(4): 615-618, 2015
・硝子体出血例の白内障手術において、トリアムシノロンを硝子体内へ注入し、術中の水晶体の視認性を改善させた。TAが顕微鏡光を反射させて視認性が向上した(図)(TY)

2015
29巻

ドライアイ点眼薬と白内障手術

その他のジャーナル 29巻 (3号) 2015

後藤憲仁(獨協大)
IOL&RS 29(3): 367-371, 2015
・白内障手術後にドライアイを発症することが知られている。
・白色家兎に乾燥暴露2週間前からムコスタUD点、ジクアス点を1日4回点眼し、1時間開瞼器で角膜暴露すると、両点眼群ともコントロール群より有意に角膜上皮障害を抑制し、殊にジクアス群では殊に結膜杯細胞障害を抑制した。
・白内障手術患者でムコスタ点眼を術前1週間から術後3か月点眼した群ではBUTが術後有意に増加していた(図)(TY)

2014
31巻

近視LASIK後非対称性が強い角膜における角膜屈折力および眼内レンズ度数計算

その他のジャーナル 31巻 (7号) 2014

渡辺純一 ら (南青山アイクリニック)
あたらしい眼科 31(7): 1047-1051, 2014
・オートレフケラトメーターは角膜全面と後面が同一カーブと仮定して屈折を出してくるが、LASIK後では前面の度数が変化しているが後面は変化していない。また中心ずれなどが生じていたりして、非対称性が強い場合など、オートレフケラトメーターでの測定値を用いると遠視側にずれてしまう。
・OPD-Scanの瞳孔中心3mmでの屈折力(APP)とオートレフケラトメーターの測定値での誤差を非対称(+)群と非対称(-)群に分けてCamellin-Calossi式で予測値と実際の結果を比較
・角膜屈折力:              (+)群               レフケラ 38.48D APP 37.8D
                            (-)群                レフケラ 39.6D               APP 39.4D  APPで有意差あり
・術後屈折予測値と実際の結果の差:
                            (+)群               レフケラ 1.22D               APP  0.53D
                            (-)群                レフケラ0.27D                APP 0.12D   レフケラでは有意差あり
・LASIK眼では単純にレフケラではなく、瞳孔中心での屈折力などを用いる必要がある
・CASIAではACCP(average central corneal power)がAPPに相当(MM)

2014
58巻

OCTを用いた上耳側と上鼻側の強膜形状の比較

その他のジャーナル 58巻 (5号) 2014

Comparative optical coherence tomography study of differences in scleral shape between the superonasal and superotemporal quadrants
Masayuki Kasahara et al (北里大学)
Jpn J Ophthalmol 58(5): 396-401, 2014
・白内障と屈折異常以外の異常のない患者34眼(すべて右眼、男性15、女性19)の水平から60°の上耳側、上鼻側強膜をCASIAを用いて測定
平均年齢63.2±15.9 (28-84) , 平均眼軸長 23.6±1.9 (21.5-27.8mm)
・SSから垂直にひいた強膜の点とそこからFornix側に5mmの点を結び、曲率半径と突出部の面積を計算
・眼軸と曲率半径、突出面積とは相関無
・上耳側の方が上鼻側よりもカーブが急峻であった
・上鼻側の方がレクトミー術後の眼圧下降が大きいという報告があり、強膜形状の違いによって、ブレブを抑える力に違いが出るのではないか。また鼻側の方がfornixまでの距離が短いことも影響していると考えられる。(MM)

2014
58巻

線維柱帯切除後の濾過胞とマイボーム腺機能障害

その他のジャーナル 58巻 (4号) 2014

Meibomian gland loss due to trabeculectomy.
Sagara H et al(福島)
Jpn J Ophthalmol 58(4): 334-341, 2014
・MMCを使用した線維柱帯切除後にマイボーム腺が減少するかどうかを39名55眼で、ペンタイプの非接触型マイボグラフィー装置を使用して検討。
・マイボーム腺の減少はマイボスコアで、0(減少なし)から3(全体の2/3以上)で評価した。
・評価部位は濾過胞に接触している上眼瞼、正面視では非接触の上眼瞼、下眼瞼である。
・手術後の期間は7.4年(4分位では3.1-14.2年)。
・マイボスコアは、接触部:2.33±0.72(いずれともp<0.001)、非接触部:1.64±0.68(下眼瞼とp<0.001)、下眼瞼:1.18±0.70であった。
・濾過胞が無血管である場合と有血管である場合とでは、接触部では2.7±0.6:2.2±0.7(p=0.011)、非接触部では2.0±0.7:1.5±0.6(p=0.008)で有意差があった。
・BUTの値とは接触部、非接触部とも有意な負の相関があった(r=-0.330 p=0.014と、r=-0.296 p=0.028)。
・MMC使用の線維柱帯後のマイボーム腺は減少し、殊に濾過胞が無血管であれば特に減少していた。
・シルマーテストとの関連はなかったが、このことは涙液分泌障害から眼表面の障害を起こしやすく濾過胞表面の障害を起こしやすいだろうと考えられた。(TY)

2014
58巻

MMC併用レクトミー後のマイボーム腺消失

その他のジャーナル 58巻 (4号) 2014

Meibomian gland loss due to trabeculectomy
Hideto Sagara, et al. (福島医大)
Jpn J Ophthalmol  58(4) : 334-341, 2014
【目的】マイトマイシンC (MMC)併用トラベクレクトミー後のマイボーム腺消失を調査
【方法】上方の象限にMMC併用レクトミーを施行された39例55眼。携帯式ペン型のマイボグラフィー(マイボペン®)でマイボーム腺の形状と喪失度を調査。喪失度をスコア化(マイボスコア;glade0:喪失なし、glade1:喪失1/3以下、glade2:1/3-2/3、glade3:2/3以上喪失)。
【結果】レクトミー後の平均経過期間は7.4年。上眼瞼でブレブに接する領域のマイボスコアは上眼瞼のブレブに接しない領域のそれに比べて有意に高値(p<0.001)。
ブレブが虚血性だった場合、上眼瞼のマイボスコアはブレブに接する領域・接しない領域ともに有意に高値(それぞれp=0.011、p=0.008)。
上眼瞼のマイボスコアはブレブの領域に関わらずBUTと有意な負の相関を示した(接する領域:r=-0.330, p=0.014、接しない領域:r=-0.296, p=0.028)。
【結論】MMC併用レクトミー後に生ずるブレブ、とりわけ虚血性ブレブはマイボーム腺喪失の原因となるかもしれない。虚血性ブレブの存在はマイボーム腺分泌の減少、さらには涙液の機能低下、ブレブを含む眼表面のダメージにつながる可能性があり用心が必要である。(MK)

2014
58巻

透明・着色IOLとメラトニン抑制

その他のジャーナル 58巻 (4号) 2014

Estimation of the melatonin suppression index through clear and yellow-tinted intraocular lenses
Ichiya Sano, Masaki Tanito, et al. (島根大)
Jpn J Ophthalmol  58(4): 320-326, 2014
【目的】透明・黄色着色IOLにおいて、視覚に拠らない光受容の機能を反映するmelatonin suppression index (MSI)を評価する。
【対象と方法】IOLに20Wの白色蛍光灯を照射し、300~800nmの波長の透過率を測定。各波長でのメラトニン抑制データ【Fig.2、過去の報告より】からMSIを算出。
IOLは13種類(透明6種、着色7種)、それぞれ3つのパワー(+10D、+20D、+30D)で分析
【結果】MSIは透明IOLで1.12 -1.18 mWcm-2 sr-1、着色IOLで0.74 -1.01 mWcm-2 sr-1。すべての着色IOLで透明IOLより有意にMSIが低かった (p<0.0001 – 0.0021)
透明IOLでは6種類ともレンズパワー間でMSIの有意差みられず。着色IOLでは1種類を除いたすべてにおいてハイパワーIOLがローパワーIOLより有意にMSIが低値であった (p<0.0001 – 0.0055)。
Phakic eye(過去の報告でMSI 1.03 mWcm-2 sr-1)と比べると、透明IOLのMSIは高値 (遮断率 -14.6~ -8.4%)であり着色IOLのMSIは低値 (2.6~28.1%)であった。
Aphakic eye(過去の報告でMSI 1.21 mWcm-2 sr-1)と比べると、透明IOL (遮断率2.1~7.4%)、着色IOL (16.7~38.6%)ともにMSIが低値だった。
【結論】透明IOLに比べて、着色IOLはサーカディアンリズムに関連する光をより多く吸収する。いくつかの着色IOLではレンズパワーが有意にMSI値と関連した。MSIの減少度がサーカディアンリズムにどう影響するのか今後明らかにされる必要がある。(MK)

2014
58巻

手術と硝子体内酸素飽和度

その他のジャーナル 58巻 (3号) 2014

Preserve the intraocular environment: the importance of maintaing normal oxygen gradients in the eye.(Review)
Beebe DC et al(MO USA)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 225-231, 2014
・酸素は網膜血管と角膜を介して分散されるが、眼内酸素分圧は低くコントロールされている。
・網膜血管からの酸素分圧は網膜から水晶体に向かって下がっているが、これは硝子体液と水晶体によって消費されるからである。
・硝子体の老化や硝子体手術による水晶体後面の酸素分圧上昇は核白内障を来すが、虚血性糖尿病網膜症では硝子体内酸素飽和度が低下し、硝子体術後の水晶体を保護している。
・高酸素治療も核白内障を発症することが知られているし、硝子体手術や水晶体手術は線維柱帯部の酸素飽和度を上げ、OAGのリスクを上げてしまう。
・角膜厚も酸素分圧に影響しており、アフリカ系の人は角膜厚が薄いことで前房酸素飽和度が上昇しており、OAG頻度が高くなる。
・硝子体術後の水晶体はOAG発症を予防しているだろう。
・白内障手術単独でも、硝子体手術単独でも隅角部の酸素飽和度は余り上昇しないが、白内障+硝子体手術では隅角部の酸素飽和度は2倍近くに上昇する。
・そして通常は2%程度の酸素分圧環境にある線維柱帯の細胞を傷害し眼圧上昇を来すだろう。図(TY)

2014
58巻

仰臥位と座位とでの眼圧変動

その他のジャーナル 58巻 (3号) 2014

Posture-induced changes in intraocular pressure: comparison of pseudoexfoliation glaucoma and primary open-angle glaucoma.
Ozkok A et al(Turkey)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 261-266, 2014
・POAG29例と偽落屑緑内障PXG32例で、眼圧測定を座位と仰臥位で測定した。
・測定はIcare PRO眼圧計を用いたが、座位ではGoldmann圧平眼圧計も併用した。
・GATとIcareとの差は0.12±0.8mmHgであり、良く相関していた(r=0.964 p<0.0001)。
・座位眼圧はPOAG:PXGは16.6±3.3:15.0±2.8(p<0.03)で有意にPXGが低い症例であったが、仰臥位では18.3±3.7:18.0±3.0(p>0.7)であり有意差はなくなり、座位と仰臥位との差をみると、1.7±1.2:2.9±1.9mmHg(p=0.001)と有意差があった。
・症例選択の基準に問題はあるものの、視野障害の程度は座位と仰臥位との眼圧差が大きいほど強かった(p<0.0001)。(TY)

2014
58巻

線維柱帯切除後の低眼圧黄斑症

その他のジャーナル 58巻 (3号) 2014

Effect of axial length reduction after trabeculectomy on the development of hypotony maculopathy.
Matsumoto Y et al(神戸大)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 267-275, 2014
・MMC使用した線維柱帯切除後、4週間目の眼圧が6mmHg以下の25眼について低眼圧黄斑症の発症について検討した。
・10眼は低眼圧黄斑症を発症しており、15眼は発症していなかった。
・発症例と非発症例では年齢47.7±6.2:63.3±9.6歳(p=0.0002)、眼軸長の短縮度5.91±2.76:1.51±0.91%(p=0.0001)であったが、ロジスティク多変量回帰分析では年齢だけが低眼圧黄斑症に関与していた(OR=0.82 95%CI=0.71-0.95 p=0.0075)。(TY)

2014
58巻

眼内環境を守る:眼内酸素勾配維持の重要性

その他のジャーナル 58巻 (3号) 2014

Preserve the (intraocular) environment: the importance of maintaining normal oxygen gradients in the eye
David C. Beebe et al (Washington Univ. MO)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 225-231, 2014
・眼内酸素は網膜動脈と角膜からの拡散によって供給され、硝子体ゲルと水晶体で消費される。酸素分圧が高くなると酸素毒性で白内障やPOAGのリスクが上がる。
・毛様体の動脈からも供給されるが、毛様体の部位では酸素分圧は低い。可能性としてミトコンドリアの活動が盛んで、毛様体上皮での消費が多いことと、水晶体での消費が多いことが考えられる。
・硝子体手術後に硝子体の酸素分圧は上昇し、白内障の進行がみられる。しかし水晶体があるため前房や隅角の酸素分圧上昇は抑えられる。
・糖尿病網膜症患者では虚血のため、硝子体手術後でも白内障の進行は少ない。
・白内障単独手術では水晶体(IOL)前面の酸素分圧上昇は生じるが、隅角はそれほど上昇しない。
・硝子体と白内障同時手術では隅角の酸素飽和度が上昇し、それによってTMのダメージが引き起こされ、POAG発症のリスクとなると考えられる。
・残せるものであるなら硝子体手術で可能な限り水晶体温存が望ましいのではないか。(MM)

2014
7巻

角膜鉄片異物の研究―鉄錆形成環境について―

その他のジャーナル 7巻 (2号) 2014

堀内二彦(堀内眼科;山梨県)
眼科臨床紀要7(2):83–89, 2014
【目的】角膜には鉄粉異物がなぜ多いのか、角膜鉄粉異物でなぜ虹彩毛様体炎が生じやすいのか、そして角膜鉄錆症の易出現環境について検討。
【方法と結果】(1)様々な薬液に浸したガーゼ上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図1-3】
(2)生理的食塩水に浸したガーゼ上にソフトコンタクトレンズ(SCL)を載せ、さらにそのSCL上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図4】
(3)病歴で、鉄粉を入れた時間が正確に確認できた症例について前房フレア値を測定。【図5】
(4)鉄キレート剤のデフェロキサミンメシル塩酸を浸したガーゼ上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図6】
【結論】(1)鉄は環境条件により表皮状鉄錆、顆粒状鉄錆、液状の形態を示した。(2)角膜の鉄粉付着性は、涙液主要成分の電気化学的特性が関与していると考えた。(3)角膜鉄粉異物では、早期から鉄イオンが前房へ流れ、前房内で顆粒状鉄錆を形成し、虹彩毛様体炎が生じ、前房フレア値が上昇すると考えた。(4)レボフロキサシンには鉄キレート作用があることを確認した。
*追加実験ではガチフロでも同様の結果、別の報告ではオフロキサシンが金属複合体を形成(キレート効果についての言及なし)→キレート効果はニューキノロン系薬液の共通特性?(MK)

2014
58巻

緑内障視野「10-2」の有用性

その他のジャーナル 58巻 (2号) 2014

Paracentral scotoma in glaucoma detected by 10-2 but not by 24-2 perimetry.
Hangai M et al(埼玉医大)
Jpn J Ophthalmol 58(2): 188-196, 2014
・SAP 10-2を3回行い、傍中心窩暗点を確認。
・Spectralis OCTで黄斑部を垂直スキャン(30°x15°)、TOPCON OCT-2000で黄斑厚を測定。
・24-2で暗点が検出されず、10-2で検出された3例を報告。
・2例は傍中心窩でRNFLとGCLが薄いことが検出され、1例では乳頭黄斑束にRNFLとGCLが薄いことが検出された(TY)

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