森川涼子(大阪)
あたらしい眼科32(5):711-714, 2015
表在性膀胱癌術後に再発予防目的で、BCG膀胱内注入療法がおこなわれている
その副作用としてReiter症候群が知られ、尿路・腸管感染症の後しばらくして発症する「関節炎、尿道炎、結膜炎」を三徴とする症候群
多量の粘液性膿性眼脂、濾胞・乳頭は認めない、眼瞼結膜の高度な充血、結節状の結膜浮腫と角膜輪部の白色浸潤
結膜は関節炎やぶどう膜炎に先行し、初期に生じ、比較的軽症で一過性である
膀胱注入療法を複数回行った後に発症(HLA-27の関与ではなく、度重なる抗原刺激が惹起するのではないか)(MM)
古谷公一ら (日本大学)
臨眼 69(4): 529-534, 2015
・44歳男性軟式野球ボールで左眼受傷
・耳側120度に毛様体解離(隅角鏡で検査)
・外傷性毛様体解離による低眼圧黄斑症:毛様体解離による上脈絡膜腔への房水の流出増大と毛様体損傷による房水産生量の低下により発症
・毛様体解離の範囲が90度以上、発症時の眼圧が4mmHg以下で、1か月以上にわたり低眼圧黄斑症が持続する症例に対して、外科的治療に踏み切るべき(井上ら:眼科手術2007)
・治療法として、
・毛様体解離部光凝固:60度未満の解離(Joondeph: Ophthalmic Surg 1980)
・毛様体縫合術:強膜半層切開 解離部毛様体と強膜床をU字縫合、強膜床にジアテルミー凝固(藤野ら:臨眼1981)
・シリコンスポンジ(柴田ら 臨眼2009)
・眼内レンズのループによる圧迫、硝子体手術、ガスタンポナーデ(桜庭ら眼臨医報1999)
・低侵襲小切開経強膜毛様体縫合術:強膜弁不要、吸収糸を使うことで炎症から毛様体接着5-0吸収糸(愛新覚羅ら臨眼2012) 術後の前房出血、硝子体出血
・本法:8-0吸収糸で行った(MM)
伊藤麻、堀口正之他(籐保大)
眼科手術 28(4): 615-618, 2015
・硝子体出血例の白内障手術において、トリアムシノロンを硝子体内へ注入し、術中の水晶体の視認性を改善させた。TAが顕微鏡光を反射させて視認性が向上した(図)(TY)
後藤憲仁(獨協大)
IOL&RS 29(3): 367-371, 2015
・白内障手術後にドライアイを発症することが知られている。
・白色家兎に乾燥暴露2週間前からムコスタUD点、ジクアス点を1日4回点眼し、1時間開瞼器で角膜暴露すると、両点眼群ともコントロール群より有意に角膜上皮障害を抑制し、殊にジクアス群では殊に結膜杯細胞障害を抑制した。
・白内障手術患者でムコスタ点眼を術前1週間から術後3か月点眼した群ではBUTが術後有意に増加していた(図)(TY)
渡辺純一 ら (南青山アイクリニック)
あたらしい眼科 31(7): 1047-1051, 2014
・オートレフケラトメーターは角膜全面と後面が同一カーブと仮定して屈折を出してくるが、LASIK後では前面の度数が変化しているが後面は変化していない。また中心ずれなどが生じていたりして、非対称性が強い場合など、オートレフケラトメーターでの測定値を用いると遠視側にずれてしまう。
・OPD-Scanの瞳孔中心3mmでの屈折力(APP)とオートレフケラトメーターの測定値での誤差を非対称(+)群と非対称(-)群に分けてCamellin-Calossi式で予測値と実際の結果を比較
・角膜屈折力: (+)群 レフケラ 38.48D APP 37.8D
(-)群 レフケラ 39.6D APP 39.4D APPで有意差あり
・術後屈折予測値と実際の結果の差:
(+)群 レフケラ 1.22D APP 0.53D
(-)群 レフケラ0.27D APP 0.12D レフケラでは有意差あり
・LASIK眼では単純にレフケラではなく、瞳孔中心での屈折力などを用いる必要がある
・CASIAではACCP(average central corneal power)がAPPに相当(MM)
Comparative optical coherence tomography study of differences in scleral shape between the superonasal and superotemporal quadrants
Masayuki Kasahara et al (北里大学)
Jpn J Ophthalmol 58(5): 396-401, 2014
・白内障と屈折異常以外の異常のない患者34眼(すべて右眼、男性15、女性19)の水平から60°の上耳側、上鼻側強膜をCASIAを用いて測定
平均年齢63.2±15.9 (28-84) , 平均眼軸長 23.6±1.9 (21.5-27.8mm)
・SSから垂直にひいた強膜の点とそこからFornix側に5mmの点を結び、曲率半径と突出部の面積を計算
・眼軸と曲率半径、突出面積とは相関無
・上耳側の方が上鼻側よりもカーブが急峻であった
・上鼻側の方がレクトミー術後の眼圧下降が大きいという報告があり、強膜形状の違いによって、ブレブを抑える力に違いが出るのではないか。また鼻側の方がfornixまでの距離が短いことも影響していると考えられる。(MM)
Meibomian gland loss due to trabeculectomy.
Sagara H et al(福島)
Jpn J Ophthalmol 58(4): 334-341, 2014
・MMCを使用した線維柱帯切除後にマイボーム腺が減少するかどうかを39名55眼で、ペンタイプの非接触型マイボグラフィー装置を使用して検討。
・マイボーム腺の減少はマイボスコアで、0(減少なし)から3(全体の2/3以上)で評価した。
・評価部位は濾過胞に接触している上眼瞼、正面視では非接触の上眼瞼、下眼瞼である。
・手術後の期間は7.4年(4分位では3.1-14.2年)。
・マイボスコアは、接触部:2.33±0.72(いずれともp<0.001)、非接触部:1.64±0.68(下眼瞼とp<0.001)、下眼瞼:1.18±0.70であった。
・濾過胞が無血管である場合と有血管である場合とでは、接触部では2.7±0.6:2.2±0.7(p=0.011)、非接触部では2.0±0.7:1.5±0.6(p=0.008)で有意差があった。
・BUTの値とは接触部、非接触部とも有意な負の相関があった(r=-0.330 p=0.014と、r=-0.296 p=0.028)。
・MMC使用の線維柱帯後のマイボーム腺は減少し、殊に濾過胞が無血管であれば特に減少していた。
・シルマーテストとの関連はなかったが、このことは涙液分泌障害から眼表面の障害を起こしやすく濾過胞表面の障害を起こしやすいだろうと考えられた。(TY)
Meibomian gland loss due to trabeculectomy
Hideto Sagara, et al. (福島医大)
Jpn J Ophthalmol 58(4) : 334-341, 2014
【目的】マイトマイシンC (MMC)併用トラベクレクトミー後のマイボーム腺消失を調査
【方法】上方の象限にMMC併用レクトミーを施行された39例55眼。携帯式ペン型のマイボグラフィー(マイボペン®)でマイボーム腺の形状と喪失度を調査。喪失度をスコア化(マイボスコア;glade0:喪失なし、glade1:喪失1/3以下、glade2:1/3-2/3、glade3:2/3以上喪失)。
【結果】レクトミー後の平均経過期間は7.4年。上眼瞼でブレブに接する領域のマイボスコアは上眼瞼のブレブに接しない領域のそれに比べて有意に高値(p<0.001)。
ブレブが虚血性だった場合、上眼瞼のマイボスコアはブレブに接する領域・接しない領域ともに有意に高値(それぞれp=0.011、p=0.008)。
上眼瞼のマイボスコアはブレブの領域に関わらずBUTと有意な負の相関を示した(接する領域:r=-0.330, p=0.014、接しない領域:r=-0.296, p=0.028)。
【結論】MMC併用レクトミー後に生ずるブレブ、とりわけ虚血性ブレブはマイボーム腺喪失の原因となるかもしれない。虚血性ブレブの存在はマイボーム腺分泌の減少、さらには涙液の機能低下、ブレブを含む眼表面のダメージにつながる可能性があり用心が必要である。(MK)
Estimation of the melatonin suppression index through clear and yellow-tinted intraocular lenses
Ichiya Sano, Masaki Tanito, et al. (島根大)
Jpn J Ophthalmol 58(4): 320-326, 2014
【目的】透明・黄色着色IOLにおいて、視覚に拠らない光受容の機能を反映するmelatonin suppression index (MSI)を評価する。
【対象と方法】IOLに20Wの白色蛍光灯を照射し、300~800nmの波長の透過率を測定。各波長でのメラトニン抑制データ【Fig.2、過去の報告より】からMSIを算出。
IOLは13種類(透明6種、着色7種)、それぞれ3つのパワー(+10D、+20D、+30D)で分析
【結果】MSIは透明IOLで1.12 -1.18 mWcm-2 sr-1、着色IOLで0.74 -1.01 mWcm-2 sr-1。すべての着色IOLで透明IOLより有意にMSIが低かった (p<0.0001 – 0.0021)
透明IOLでは6種類ともレンズパワー間でMSIの有意差みられず。着色IOLでは1種類を除いたすべてにおいてハイパワーIOLがローパワーIOLより有意にMSIが低値であった (p<0.0001 – 0.0055)。
Phakic eye(過去の報告でMSI 1.03 mWcm-2 sr-1)と比べると、透明IOLのMSIは高値 (遮断率 -14.6~ -8.4%)であり着色IOLのMSIは低値 (2.6~28.1%)であった。
Aphakic eye(過去の報告でMSI 1.21 mWcm-2 sr-1)と比べると、透明IOL (遮断率2.1~7.4%)、着色IOL (16.7~38.6%)ともにMSIが低値だった。
【結論】透明IOLに比べて、着色IOLはサーカディアンリズムに関連する光をより多く吸収する。いくつかの着色IOLではレンズパワーが有意にMSI値と関連した。MSIの減少度がサーカディアンリズムにどう影響するのか今後明らかにされる必要がある。(MK)
Preserve the intraocular environment: the importance of maintaing normal oxygen gradients in the eye.(Review)
Beebe DC et al(MO USA)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 225-231, 2014
・酸素は網膜血管と角膜を介して分散されるが、眼内酸素分圧は低くコントロールされている。
・網膜血管からの酸素分圧は網膜から水晶体に向かって下がっているが、これは硝子体液と水晶体によって消費されるからである。
・硝子体の老化や硝子体手術による水晶体後面の酸素分圧上昇は核白内障を来すが、虚血性糖尿病網膜症では硝子体内酸素飽和度が低下し、硝子体術後の水晶体を保護している。
・高酸素治療も核白内障を発症することが知られているし、硝子体手術や水晶体手術は線維柱帯部の酸素飽和度を上げ、OAGのリスクを上げてしまう。
・角膜厚も酸素分圧に影響しており、アフリカ系の人は角膜厚が薄いことで前房酸素飽和度が上昇しており、OAG頻度が高くなる。
・硝子体術後の水晶体はOAG発症を予防しているだろう。
・白内障手術単独でも、硝子体手術単独でも隅角部の酸素飽和度は余り上昇しないが、白内障+硝子体手術では隅角部の酸素飽和度は2倍近くに上昇する。
・そして通常は2%程度の酸素分圧環境にある線維柱帯の細胞を傷害し眼圧上昇を来すだろう。図(TY)
Posture-induced changes in intraocular pressure: comparison of pseudoexfoliation glaucoma and primary open-angle glaucoma.
Ozkok A et al(Turkey)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 261-266, 2014
・POAG29例と偽落屑緑内障PXG32例で、眼圧測定を座位と仰臥位で測定した。
・測定はIcare PRO眼圧計を用いたが、座位ではGoldmann圧平眼圧計も併用した。
・GATとIcareとの差は0.12±0.8mmHgであり、良く相関していた(r=0.964 p<0.0001)。
・座位眼圧はPOAG:PXGは16.6±3.3:15.0±2.8(p<0.03)で有意にPXGが低い症例であったが、仰臥位では18.3±3.7:18.0±3.0(p>0.7)であり有意差はなくなり、座位と仰臥位との差をみると、1.7±1.2:2.9±1.9mmHg(p=0.001)と有意差があった。
・症例選択の基準に問題はあるものの、視野障害の程度は座位と仰臥位との眼圧差が大きいほど強かった(p<0.0001)。(TY)
Effect of axial length reduction after trabeculectomy on the development of hypotony maculopathy.
Matsumoto Y et al(神戸大)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 267-275, 2014
・MMC使用した線維柱帯切除後、4週間目の眼圧が6mmHg以下の25眼について低眼圧黄斑症の発症について検討した。
・10眼は低眼圧黄斑症を発症しており、15眼は発症していなかった。
・発症例と非発症例では年齢47.7±6.2:63.3±9.6歳(p=0.0002)、眼軸長の短縮度5.91±2.76:1.51±0.91%(p=0.0001)であったが、ロジスティク多変量回帰分析では年齢だけが低眼圧黄斑症に関与していた(OR=0.82 95%CI=0.71-0.95 p=0.0075)。(TY)
Preserve the (intraocular) environment: the importance of maintaining normal oxygen gradients in the eye
David C. Beebe et al (Washington Univ. MO)
Jpn J Ophthalmol 58(3): 225-231, 2014
・眼内酸素は網膜動脈と角膜からの拡散によって供給され、硝子体ゲルと水晶体で消費される。酸素分圧が高くなると酸素毒性で白内障やPOAGのリスクが上がる。
・毛様体の動脈からも供給されるが、毛様体の部位では酸素分圧は低い。可能性としてミトコンドリアの活動が盛んで、毛様体上皮での消費が多いことと、水晶体での消費が多いことが考えられる。
・硝子体手術後に硝子体の酸素分圧は上昇し、白内障の進行がみられる。しかし水晶体があるため前房や隅角の酸素分圧上昇は抑えられる。
・糖尿病網膜症患者では虚血のため、硝子体手術後でも白内障の進行は少ない。
・白内障単独手術では水晶体(IOL)前面の酸素分圧上昇は生じるが、隅角はそれほど上昇しない。
・硝子体と白内障同時手術では隅角の酸素飽和度が上昇し、それによってTMのダメージが引き起こされ、POAG発症のリスクとなると考えられる。
・残せるものであるなら硝子体手術で可能な限り水晶体温存が望ましいのではないか。(MM)
堀内二彦(堀内眼科;山梨県)
眼科臨床紀要7(2):83–89, 2014
【目的】角膜には鉄粉異物がなぜ多いのか、角膜鉄粉異物でなぜ虹彩毛様体炎が生じやすいのか、そして角膜鉄錆症の易出現環境について検討。
【方法と結果】(1)様々な薬液に浸したガーゼ上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図1-3】
(2)生理的食塩水に浸したガーゼ上にソフトコンタクトレンズ(SCL)を載せ、さらにそのSCL上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図4】
(3)病歴で、鉄粉を入れた時間が正確に確認できた症例について前房フレア値を測定。【図5】
(4)鉄キレート剤のデフェロキサミンメシル塩酸を浸したガーゼ上に鉄片を置いて、鉄の錆び方を観察。【図6】
【結論】(1)鉄は環境条件により表皮状鉄錆、顆粒状鉄錆、液状の形態を示した。(2)角膜の鉄粉付着性は、涙液主要成分の電気化学的特性が関与していると考えた。(3)角膜鉄粉異物では、早期から鉄イオンが前房へ流れ、前房内で顆粒状鉄錆を形成し、虹彩毛様体炎が生じ、前房フレア値が上昇すると考えた。(4)レボフロキサシンには鉄キレート作用があることを確認した。
*追加実験ではガチフロでも同様の結果、別の報告ではオフロキサシンが金属複合体を形成(キレート効果についての言及なし)→キレート効果はニューキノロン系薬液の共通特性?(MK)
Paracentral scotoma in glaucoma detected by 10-2 but not by 24-2 perimetry.
Hangai M et al(埼玉医大)
Jpn J Ophthalmol 58(2): 188-196, 2014
・SAP 10-2を3回行い、傍中心窩暗点を確認。
・Spectralis OCTで黄斑部を垂直スキャン(30°x15°)、TOPCON OCT-2000で黄斑厚を測定。
・24-2で暗点が検出されず、10-2で検出された3例を報告。
・2例は傍中心窩でRNFLとGCLが薄いことが検出され、1例では乳頭黄斑束にRNFLとGCLが薄いことが検出された(TY)
湯川英一 ら
あたらしい眼科 31(2):260-262,2014
正常者31例(38.7±9.2(21-54)歳、男/女=18/13)で安静時と息止め時、はき出し後1,3,5,10分後の眼圧をiCare眼圧計で測定
安静時と息止め時での動脈血酸素飽和度を測定
安静時:13.1±3.0mmHg
息止め時:19.2±3.9mmHg
息止め中止後 1分後:12.6±3.0mmHg 3分後:12.4±2.7mmHg
5分後:12.5±2.7mmHg 10分後:12.3±2.7mmHg
動脈血酸素飽和度は最大11%の低下がみられ、眼圧上昇幅と動脈血酸素飽和度の低下幅に有意な正の相関
息止めにより胸腔内圧上昇→中心静脈圧が上昇→上強膜静脈圧が上昇したと考えられる
SAS患者では胸腔内圧が陰性となり静脈血流の増加などにより心臓への負担が増えるとされており、静脈圧の大きな変動に伴い眼圧も変動している可能性がある。また酸素飽和度の低下もみられるため、眼圧上昇をきたしていることが考えられる。
今後SAS患者での検討を予定(MM)
Muller cells separete between wavelenghs to improve day vision with minimual effect upon night vision.
Labin AM, Safuri SK, Ribak EN, Perlman I
Nat Commun 5: 4319-4328, 2014 (日本の眼科85(9):1292,2014 )
・分光器としてのミュラー細胞の驚くべき機能の発見(日本の眼科85(9):1292,2014 吉田武史(東京医歯大)
・ミュラー細胞は網膜のほぼ全域に分布し,支柱のようにカバーしている
・ミュラー細胞は内境界膜側に広がる漏斗型をしており,その反対側では視細胞の錐体細胞と接している
・さらには錐体細胞の周りに取り囲むように存在する15個程度の桿体細胞にも接している。
・ヒト剖検眼から採取した傍黄斑部網膜,昼行性であるギニアピッグから採取した網膜を用いて実験
・ミュラー細胞が光路として視細胞に特殊な働きをするのではないかと考えた
・内境界膜側に漏斗型に開いているミュラー細胞に光を投影
・視細胞へと光を伝達する様子を光の波長を変えて観察:緑黄(560nm)と青(430nm)の二つの波長光
・網膜前面に投影された緑黄の波長光はミュラー細胞の漏斗状の形状に応じて約11倍まで集光された後、錐体細胞へと運ばれていた
・ミュラー細胞により伝達される光の波長の特性について調べたところ560nmにピークをもち,L-coneの視物質の吸収スペクトルとほぼオーバーラップし,M-coneとも近いスペクトルを示した。
・青の波長光については視細胞に到達するまでの間にミュラー細胞から周囲に散乱
・錐体細胞を取り囲む桿体細胞らに約半分の青色光が分配されていることが明らかになった
・日中の視機能に重要な赤から緑の波長光をミュラー細胞が効率よく集光し錐体細胞に当て視機能を高めていること。
・錐体細胞を取り巻く桿体細胞には夜間色として最も一般的な青から紫の波長光をミュラー細胞がある程度割り当てている
・光が弱く桿体細胞が重要な役割を果たす夜間にも,昼間の視機能を損なうことなく対応できるメカニズムになっている
・特殊な形状からミュラー細胞が波長に応じた光の分配機能を有するだろう(TY)
Nicotinic Acid Treatment for Retinal Vein Occlusion
Majid Abrishami et al. (MD USA)
Patient Saf Qual Improv, Vol. 2, No. 1, Win 2014,37-43
目的:網膜静脈閉塞症に対するニコチン酸(ビタミンB3)の効果を評価する。
対象と方法:CRVO 又は BRVOの患者20人21眼
虚血性CRVO 14人、非虚血性CRVO 5人、両眼BRVO 1人
5人が高血圧、1人は糖尿病だった。
ニコチン酸を1日3回100mgずつから始まり、1週毎に300mgずつ増やして1日3回1000mgまで増やし、トータル
12週間続けた。
よくある副作用である顔面紅潮を抑えるために最初の1ヶ月はアスピリン1日100mgを服用した。
発症から治療開始までの平均期間 59.69 ± 71.60 days (range 10- 240 days)
結果:4人が脱落し、2人が過敏反応と高血糖で脱落したため、15人16眼、平均年齢59.56 ± 11.12歳、
経過観察期間8.6 ± 2.7ヶ月。
視力 治療前 1.56 ± 0.66、治療1ヶ月後 1.38 ± 0.72 (p>0.05)、治療3ヶ月後0.88 ± 0.69 (p<0.01)、
最終視力0.97 ± 0.73 (p<0.01)
最終視力で8眼が治療前の視力を維持し、他は有意に改善していた。
虚血性CRVO 4眼(50%)、非虚血性CRVO 2眼(40%)が3 line以上改善した。
20/200より視力が悪い患者は68.7%から31.2%に減少した。
治療3ヶ月後、全ての患者で出血範囲、CWS、黄斑と視神経乳頭浮腫の減少、静脈の拡張を認めた。
ハンフリーMD値は治療前 – 29 ± 9、治療後3ヶ月 -24±7(p<0.01)、最終 -28±9 (p <0.05)だった。
副作用は、皮膚紅潮、蕁麻疹、糖尿病悪化(空腹時血糖値93mg/dl→102 mg/dl)を認めたが、いずれも軽症だった。
結果:ニコチン酸により血管拡張を誘発し、側副血管の発達に十分な時間を提供する。副作用はあるが軽かった。(CH)
眼灌流液中にガラスアンプルによるガラス片異物を認めた1例
助川俊之(石川)
臨眼 67(12): 1875-1878, 2013
・ガラスアンプル製剤(ボスミン注1mg)から眼灌流液にガラス片異物(1.0×1.5mm)が混入した症例の報告。
・同症例に使用したオペガードの残余眼灌流液を5μmサイズのフィルターで瀘過した所、15-113μm大のガラス片12個を見つけた。
・ガラスアンプルカット時に混入したと思われる。
・A)ボスミン注、B)注射用蒸留水(20ml)の2種を用い、2名で再現実験を行った所、1名ではA)では16-135μmのガラス片様異物26個、B)では42-98μm異物を3個、もう1名ではA)では14-112μmの異物11個、B)では18-167μmの異物7個が発見された。
・ガラスアンプルは製造過程で高熱で封印する為、内部が陰圧となり、カット時に発生するガラス片は薬液側に引き込まれるので防止は不能。
・プレフィルドシリンジ製剤あるいは、プラスチックアンプル製品を使用すべきであろう。
・ガラスアンプル製剤しか販売されていない場合は、0.2μmフィルターの使用が望ましい。
(通常の注射用フィルターは0.22μm、0.45μm)(TY)
木村大作ら (大阪医科大学)
眼科臨床紀要 6(12):955-959,2013
1例報告
50歳男性、右視神経乳頭上方に5乳頭径大の橙色の隆起性病変
黄斑部にかけて滲出性網膜剥離が生じており、視力0.1
ベバシズマブ(1.25mg/50μl)硝子体注射を行ったところ3週後にほぼ消失。再発し合計3回注射し、滲出性網膜剥離はわずかに残存し経過観察
腫瘍自体の大きさには変化なし
複数回行っても再発する場合はPDT併用も考慮すべき
*治療法:腫瘍が黄斑部を含む場合や続発性SRDや黄斑浮腫などにより視力低下をきたした場合に適応
レーザー光凝固、経強膜冷凍凝固術、放射線療法、硝子体手術、TTT、PDT、抗VEGF薬硝子体内注射
レーザー光凝固:腫瘍表面の血管等価性減弱・SRD消褪
腫瘍に厚みがある場合や高度なSRDでは効果不十分
網膜剥離の再発率は約40%
放射線療法: 白内障や続発緑内障、網膜症や視神経症など、特有の合併症
硝子体手術: 広範な網膜剥離をきたした症例が対象
視力予後が不良なことが多い
TTT: CME,ERM,BRVOなどを合併することがある
PDT: 69%視力改善、93%で滲出性変化の消失 (Boixadera ら)
腫瘍の最大径が大きい場合などは分割照射が必要(過剰凝固)
保険適用外(MM)