Residual cellular proliferation on the internal limiting membrane in macular pucker surgery.
Gandorfer A et al(Germany)
Retina 32(3): 477-85, 2012
・ILM剥離を行うか否かで黄斑前膜ERMの除去が完全にできたかどうかを検討した。
・22例の特発性ERMで、まず最初にERM剥離を行い、その後、brilliant blueで染めた。
・もし、ILMがあれば、剥離した。ERMとILMは別に集めて、干渉顕微鏡、免疫化学、透過電顕で検査した。
・14例(64%)でERM剥離後にILMは残存していたが、8例(36%)ではERMとILMは一緒に剥がされていた。
・ERM剥離だけでは、平均20%(2-51%)の細胞がILM上に残されていた。
・殆どはILM上のグリア細胞で、一部がhyalocyteであった。
・9眼では細胞は集積していた。ERMとILMが一緒に剥がれた群では、細胞増殖はILM上に付着していたが、ILMを続けて剥離した群では、ERMとILM間にコラーゲンが存在していたことから、この群では、ERM剥離時に硝子体皮質の分離が起こり、細胞の付着したILMが残ったと考えられた。
・ERM剥離だけでは約2/3の症例で細胞の20%がILM上に残ったままとなるため、これらが増殖してERM再発が起こりうる。
・ERM剥離後にILMを染めてしっかり剥離する必要があるだろう。
Anatomical and visual outcomes of macular hole surgery with short-duraton 3-day face-down positioning.
Almeida DRP et al(Canada)
Retina 32(3): 506-10, 2012
・連続する50眼の特発性黄斑円孔(Stage 2, 3)で、ILM剥離を行い、20%SF6ガスを注入し、術後3日間うつぶせとした。
・有水晶体眼では白内障手術も同時に行った。MHの閉鎖は初回手術で49眼(98%)であった。
Choroidal thickenss in patients with diabetic retinopathy anlyzed by spectral-domain optical coherence tomography.
Regatieri CV et al(Brazil)
Retina 32(3): 563-8, 2012
・49眼の糖尿病者と、正常者24例で脈絡膜厚を比較した。
・49例の内訳は、11例:軽度から中等度の非増殖性網膜症で黄斑症がない、18例:非増殖性網膜症で黄斑症がある、20例:治療の済んだ増殖性網膜症で黄斑症なし。
・脈絡膜厚は500μm間隔で中心窩から鼻側耳側2500μmまで測定した。
・脈絡膜厚が測定できたのは75.3%。脈絡膜厚を正常者と比較して差をみると、黄斑浮腫のある例(-63.3μm -27.2% p<0.05)、治療した増殖性網膜症例(-69.6μm -30.0% p<0.01)で最も薄かった。
・黄斑症のない非増殖性網膜症は(-10.3μm -4.5% p>0.05)で、正常者と有意差がなかった。
Transconjunctival drainage of serous and hemorrhagic choroidal detachment.
Rezende FA et al(Brazil)
Retina 32(2): 242-9, 2012
・2例の駆逐性出血による脈絡膜剥離と、4例の緑内障手術後の漿液性脈絡膜剥離につき、その処置法を考えた。
・前房に25Gの灌流をおき、出血性には20Gトロカールシステム(Synergetics製)を、漿液性には25Gトロカールシステムを輪部から7mm部に、1か所から2か所、強膜に沿って後極方向に挿入した。
・その部位の脈絡膜剥離高は最低7mmあることを確認。
・出血性では1ヶ月後に、漿液性では1週間後に脈絡膜剥離は消褪した。
・両群で術後1週間で眼圧は10mmHg以上に改善し、視力も改善した。合併症もなかった。
・このことから、脈絡膜剥離に対しては必ずしも、硝子体手術を行わなくてもいいと考えた。
Sutureless silicone oil removal: a quick and safe technique.
Abouammoh MA et al(Canada)
Retina 32(2): 396-8, 2012
・シリコンオイルを無縫合で、簡単に除去する方法を紹介。
・23Gの硝子体灌流ラインをまず作成し、L型の結膜切開を作り、輪部から6mm後方に、3.5mm幅で、輪部に並行に半層の強膜切開を作成。
・そこから、最低2mm幅の強膜トンネルを作成し、2.75mmの角膜切開ナイフで眼球に刺入し、シリコンオイルを抜去する。
The associaton between drusen extent and foveolar choroidal blood flow in age-related macular degeneration.
Berenberg TL et al(PA USA)
Retina 32(1): 25-31, 2012
・非滲出性加齢黄斑変性症157例239眼の眼底写真を解析し、網膜ドルーゼンの全面積、平均面積、総数を求めて、中心窩脈絡膜血行とを比較した。
・Laser Doppler flowmetryで、網膜中心窩の比較脈絡膜流速velocity(ChBvel)、容量volume(ChBvol)、流量flow(ChBflow)を測定した。
・ドルーゼンの全面積とChBvol、あるいはChBflowとは有意な負の相関があった(それぞれ、p=0.03とp=0.049)。
・ドルーゼンの平均面積とChBvol、あるいはChBflowとは有意な負の相関があった(それぞれ、p=0.001とp=0.004)。
・年齢で調整すると、有意性は下がったが、ドルーゼンの平均面積とChBvol、ChBflowは有意差があった(それぞれ、p=0.004とp=0.017)。
・このことは、虚血の存在を疑わせるもので、リスクの高いドルーゼンを持った人は病勢が進行し易いことを疑わせた。
Choroid is thinner in inferior region of optic disks of normal eyes.
Tanabe H et al(名大)
Retina 32(1): 134-9, 2012
・年齢54.1±20.0、屈折度-3.6±4.1Dの正常者28眼で測定した。
・ETDRSグリッド(直径1,3,6mm)の外円内の視神経乳頭周囲の脈絡膜厚は、上方196±62、下方146±47、鼻側183±80、耳側193±64μmで、下方で有意に薄かった(p<0.001)。
・ETDRS内円の黄斑部の脈絡膜厚は、上方268±74、下方245±73、鼻側190±68、耳側268±63μmで、鼻側で有意に薄かった(p<0.05)。
・視神経乳頭周囲の脈絡膜厚が下方で薄かったことは、この部位が低酸素や眼圧上昇の際に障害されやすいことを示唆しているだろう。
Anticoagulation and clinically significant postoperative vitreous hemorrhage in diabetic vitrectomy.
Brown JS et al(MI USA)
Retina 31(10): 1983-7, 2011
・糖尿病網膜症に対する20Gあるいは23G硝子体手術で、抗凝固薬を内服していると周術期に出血しやすいかどうかを検討した。
・88例97眼の内50眼はアスピリン、ワーファリンなどの抗凝固薬治療を受けていたが、この内27眼は内服継続のまま硝子体手術を行い、23眼は術前3-21日前から内服を中止して手術を行った。
・27眼のうち14眼はアスピリン、2眼はアスピリン+ワーファリン、10眼はアスピリン+プラビックス、1眼はプラビックスであった。
・結果は、抗凝固剤に由来する出血は1例もなかく、全身合併症を避けるために継続することが良いと考えた
Comparison of choroidal thickness among patients with healthy eyes, early age-ralated maculopathy, neovascular age-erlated macular degeneration, central serous chorioretinopathy, and polypoidal choroidal vasculopathy.
Kim SW et al(Korea)
Retina 31(9): 1904-11, 2011
・37眼のRPE変化とドルーゼンのみの初期加齢黄斑症、24眼の新生血管加齢黄斑症、12眼のPCV、31眼の中心性網脈絡膜症を対象として、脈絡膜厚を測定し、29名の正常者をコントロールとした。
・性、屈折異常は脈絡膜厚と相関はなく、年齢だけが強い負の相関があった(中心窩:F=12.0 p=0.001)。
・中心窩の脈絡膜厚は、厚い順に中心性網脈絡膜症 367.8±105.6→PCV 319.9±68.7→正常者 242.0±66.4→新生血管加齢黄斑症 226.5±102.9→初期加齢黄斑症 186.6±64.0であった。
A systematic review of the adverse events of intravitreal anti-vascular endothelial growth factor injections.
Reis MIVD et al(Netherlands)
Retina 31(8): 1449-69, 2011
・抗VEGF薬の硝子体内注入の全身的副作用について調査した。
・2009年4月にPubMed、Embase、Toxline、Cochrane libraryに登録された論文を検索した。
・4342の論文の中から278論文を選択し、結果を纏めた。
・重篤な眼あるいは眼外合併症は約1%弱、軽度の眼合併症は5%弱であり、bevacizumab(IVB)、ranibizumab(IVR)、pegaptanib(IVP)間には大きな差は検出されなかった。
・眼内炎発症率は、IVBでは0.05% (95%CI=0.03-0.10)、IVRでは0.04% (95%CI=0.02-0.08)、IVPでは0.11 (95%CI=0.07-0.18)で、平均0.04 (95%CI=0.02-0.14)。
・心血管合併症の発生率はIVBでは0.05% (95%CI=0.01-0.10)、IVRでは0.09 (95%CI=0.05-0.14)、IVPでは0.34 (95%CI=0.26-0.44)であった。
Macular features from spectral-domain optical coherence tomography as an adjunct to indirect ophthalmoscopy in retinopathy of prematurity.
Lee AC et al(NC USA)
Retina 31(8): 1470-82, 2011
・手持ちSD-OCT検査を38例76眼の未熟児網膜症において、118回検査を行った。
・倒像鏡検査では見つからなかった網膜の嚢腫様構造が38%、網膜前膜が32%のOCT検査でみつかった。
・ただ、OCT検査では検眼鏡でみつかる未熟児網膜症の検出はできず、検眼鏡に代わるものではない。
Endophthalmitis in microincision vitrectomy. Outcomes of gas-filled eyes.
Chiang A et al(PA USA)
Retina 31(8): 1513-7, 2011
・硝子体手術終了時に空気あるいはガス注入が眼内炎発症率に影響を与えるかどうかを、多施設、retrospectiveに調査した。
・2008/1から2009/12月までに行われた23 or 25ゲージ硝子体手術後にSF6ガスかC3F8ガスが注入された黄斑円孔の2336眼を対象とし、術後6週間未満に急性術後眼内炎を発症した率を調査した所、1眼(0.04%)で術後眼内炎を発症しており、他の合併症もなかった。
・Microincision無縫合硝子体手術のメタ分析では、12457例中22例(0.18%)の術後眼内炎の報告があり、ガス注入は有意に術後眼内炎リスクを減らすと考えられた。
Endophthalmitis after intravitreal injection. The importance of viridans streptococci.
Chen E et al(IL USA)
Retina 31(8): 1525-33, 2011
・硝子体注入後の眼内炎の発症率、起炎菌、外来での発症率と手術室での発症率の比較を行った。
・2000/7~2010/7までのHuston網膜外来での眼内炎を、白内障や角膜移植術後などの術後のものと、硝子体注射後のものに分けて検討した。
・ただし、緑内障や外傷などは除外した。
・眼内炎は109例あり、術後が88例、注射後が21例であった。
・他施設の物などを除くと、Huston網膜外来では、33580回中13例の発症(0.04% 95%CI=0.02-0.07%)であった。
・最も多い起炎菌はブドウ球菌であったが、ヒト口腔内常在菌であるviridans streptococci(緑色連鎖球菌)の比率は注射群で手術群よりも3倍検出されており、この菌による注射後の眼内炎は、他の菌による注射後眼内炎より早期に発症し(p<0.001)、そして重篤な予後であった(p=0.004)。
– 参照–
Meta-analysis of endophthalmitis after intravitreal injection of anti-vascular endothelial growth factor agents. Causative organisms and possible prevention stratergies. McCannel CA(CA USA) Retina 31(4):654,2011
VEGF抗体注射後ではブドウ球菌が眼内手術後よりも約3倍多く、術中にマスクをすることによって避けうるのではないか。
Same-day versus delayed vitrectomy with lensectomy for the management of retained lens fragments.
Colyer MH et al(MD USA)
Retina 31(8): 1534-40, 2011
・白内障手術中に水晶体片が硝子体内に残存した時、当日、硝子体手術を行った方がいいか、日を改めた方がいいかを、2005-2008年の171例172眼について、6ヶ月後の視力、CME、眼圧上昇、網膜剥離、硝子体出血、脈絡膜出血、眼内炎などを検討した。
・年齢は75±0.8歳、後日手術の平均日は15±2日である。
・最高矯正視力は当日手術が0.73±0.09、他日手術が0.72±0.06で有意差なし。
・当日手術をおこなった59眼中、17眼(29%)で術後合併症が発症したが、他日手術では113眼中38眼(38%)で有意差がなかった。
・最も多い合併症はCMEで、25/172(15%)に発症した。
Feasibility of intrasurgical spectral-domain optical coherence tomography.
Binder S et al(Germany)
Retina 31(7): 1332-6, 2011
・Zeiss OPMI VISU 200の手術用顕微鏡の光路にZeissのCirrus HD-OCTを取りつけ、術中に512×128 macular cube scansのできるOCTシステムを作った。
Comparative in vitro safety analysis of dyes for chromovitrectmy. Indocyanine Green(ICG), Brilliant Blue Green(BBG), Bromophenol Blue(BPB), and Infracyanine Green(IfCG).
Balaiya S et al(FL USA)
Retina 31(6): 1128-36, 2011
・ICG, BBG, BPB, IfCGの網膜色素上皮、神経節細胞に与える毒性を試験管内で検査した。
・BBG, BPB, IfCGはいずれも、ICGよりは毒性が低く、中でもIfCGが最も少なかった
Rebound of macular edema after intravitreal bevacizumab therapy in eyes with macular edema secondary to branch retinal vein occlusion.
Yasuda S et al(名大)
Retina 31(6): 1075-82, 2011
・65例65眼のBRVOによる黄斑浮腫に対するbevacizumab硝子体注射後の黄斑浮腫再発について検討。
・再発とは中心窩厚が ≧110%と定義すると、7例(10.8%)に再発。
・処置前の中心窩厚が薄いほど、症状発現からbevacizumab処置までの期間が短いほど再発が多く(p<0.01)、再発した7例全例で処置までの期間は8週未満であった。
・BRVOによる黄斑浮腫が最高に達する前に処置をすると再発しやすいと考えられ、bevacizumab処置はBRVO発症から8週間は待った方が良いと考えた。
Does vitrectomy increase the risk of glaucoma? (Editorial)
Thompson JT(MD USA)
Retina 31(6): 1007-8, 2011
・Chang(AJO 141:1033,2006)とLuk(Retina 29:218,2009)は硝子体手術は特に偽無水晶体眼では緑内障を発症しやすいと報告し、Yu(Graefes Arch Clin Ex Ophthal 248:1407,2010)とLalezary(Retina 31:679,2011)は緑内障発症のリスクは増加しないと報告している。
・Changは硝子体術後の緑内障発症リスクは15-20%で、原因は線維柱帯への酸化障害だとしている。
・Lukは有水晶体眼では2%、偽水晶体眼では13%に緑内障が発症するとした。
・Yuは術眼では緑内障4.3%、高眼圧症4.3%、他眼では緑内障2.5%、高眼圧症3.0%で傾向はあるが、有意差はないとした。
・Lalezaryの症例は多くが糖尿病眼で、元来虚血性の糖尿病眼では線維柱帯に酸化障害は起きにくいと考えられる。
・結論は得られていないが、硝子体手術を行った眼は緑内障についての経過観察が大切であろう。
Peripheral areas of nonperfusion in treated central retinal vein occlusion as imaged by wide-field fluoerscein angiography.
Spaide RF(NY USA)
Retina 31(5): 829-37, 2011
・Optos P200 Scanning Laser Ophthalmoscopeを用いた広角蛍光眼底撮影により、ranibizumab治療を受けた網膜中心静脈閉塞症の灌流障害について検討した。
・22例全例で、網膜周辺部に16~242 乳頭面積の非灌流領域がみられた。
・この面積は視力と負の相関があった(r=-0.52 p=0.013)。
Meta-analysis of endophthalmitis after intravitreal injection of anti-vascular endothelial growth factor agents. Causative organisms and possible prevention stratergies.
McCannel CA(CA USA)
Retina 31(4): 654-61, 2011
・全米の2005年から2009年までに報告されたVEGF抗体注射後と眼内手術後の眼内炎で、細菌の分離培養を行っている報告をまとめたもの。
・硝子体注射では 52/105,536回、頻度0.049%(95%CI=0.038-0.065%)で発生し、50眼の分離培養では24眼で陰性、26眼で培養陽性であった。
・26眼の内訳は、ブドウ球菌が17眼(65.4% 95%CI=46.0-80.6%)、連鎖球菌が8眼(30.8% 95%CI= 16.5-50.2%)、Cereus桿菌が1眼(3.8% 95%CI=0.9-19.0%)であり、ブドウ球菌が有意に多かった。
・Endophthalmitis Vitrectomy Studyでは 22/226例(9.0% 95%CI=6.3-12.6%、p=0.005)、角膜切開白内障手術では 6/73例(8.2% 95%CI=3.9-16.8、p=0.022)、硝子体手術後ではブドウ球菌の報告はなかった。
・ブドウ球菌は硝子体注射後では眼内手術後よりも約3倍多く、これは、術中に話をすることや、咳やくしゃみを抑えること、あるいはマスクをすることによって避けうるのではないかと考えた。
・Retina 31(4):662-8, 2011論文では、VEGF抗体注射後の発生率は 12/60,322(0.02% 95%CI= 0.0114-0.0348%)で、分離培養は7/12例で、5/7例がブドウ球菌であったとの報告。